• 戦闘

しっと骸骨団

マスター:ゐ炉端

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/05/28 19:00
リプレイ完成予定
2015/06/06 19:00

オープニング

 最近噂のデートスポットがある。

 それはいつの時代のものか。遠い昔に使われていたであろう古い石造りの砦で、もう放棄されて久しく、風化し、既に天井らしき天井は全て崩れ、壁も大きく欠けて、まともに建つのは柱だけ。――どちらかといえばもう、遺跡というに相応しい。しかしそれは、長い年月を経て自然へと回帰し、やがては幻想的とも思える絶妙な色合いの調和を奏で、人の手では到底成し得ない美しさを魅せている。
 街道から外れ、郊外から離れたこの場所は人気も無く、滅多に人が立ち入ることも無かったが、だが逆にそれが、密かに逢引する若者達には都合が良く、また、朧げに射す月光が、ムーディに二人だけのステージを演出するのだ。勿論、魔物に襲われる危険もあるし、古びた砦が何の拍子で崩れるとも限らない。それでも、いや、危険や困難もまた恋愛のスパイスとなっているからこそ、この場所は密かなデートスポット足り得るのだろう。

 そんなこんなで今晩も、ひと組のカップルがやってきていた。陽のあるうちは鬱蒼とした、ただのボロい砦だが、闇夜に浮かぶ月光が瓦礫に淡いコントラストを与え、ロマンチックな空間を演出する。それに得てして、劣情というものは、人目に付き難いに越したことは無い。
「……今宵の君は一段と素敵だ、ジュリア」
 艶やかな黒い短髪の優男がジュリアと呼ばれた女――ジュリア・ハウの、その透き通るような手を恭しく取り、その紅瞳を見詰める。ジュリアの髪は太陽の様な茜色であったが、それにも負けないほどに朱く、火照った顔が、僅かな月明かりに浮かぶ。
「つ、ツシロ……」
「ハクバでいい」
 そっと壁にジュリアを押し付け、男――津城柏葉は耳元で、囁くように呟く。身体が密着して、お互いの胸の鼓動が早鐘の様に鳴る。リズムを打つ鼓動。それが互いに隠せない距離。
「……だ、ダメだよ、ハクバ」
 ジュリアは身を捩り、くびきを逃れようとするが、しかし身体には力が入らない。それどころか、何かに支配されるように身は硬く、マグネットの様にお互いが引き合っているかのようにすら感じる。出会ってから半年、リアルブルーからやって来たばかりの頃の、世界に馴染めず怯え、臆病な眼をしていた頃の柏葉はもう、そこにはいない。ジュリアには分かっている。自分は恋をしているのだ。この、黒い瞳をした人に。

 ガサッ。

「!?」
 ――物音がして、二人は驚き、飛び上がった。高い壁に囲まれてはいるが、所々崩れたところを通り抜ける風が草木を揺らすことはあったし、小さな動物が迷い込むこともあるだろう。だが、この異様な気配は一体何か。二人は壁を背に、周囲を見回す。覚醒者である柏葉には勿論、そうでないジュリアにも伝わるピリピリとした空気。
「……ハクバ」
「ああ、何かいるな……。下がってて、ジュリア」
 柏葉は腰から下げたスタッフを構え覚醒し、ジュリアを自分の背へと庇う。

 カタカタカタカタ。

 歯を鳴らし、のっそりと、されこうべがボンヤリと夜の帳を割いて浮かび上がる。一つだけではない。ふたつ、みっつと現れ、いつの間にか二人を取り囲んでいた。
「スケルトンか。……成程、いかにもな雑魔だな」
 スタッフを振り、柏葉が詠う。
「喰らえッ! ファイアアロー!!」
 燃え盛る炎の矢が闇を切り裂いて、スケルトンの頭部へと中り、腹に響く衝撃音を残して炸裂した。もうもうと立ち込める白い煙を頭部に纏わせ、一歩、二歩と、ふらふらと後退するスケルトン。
「なっ……なにっ!?」
 確信を得た一撃はしかし、僅かに歩みを止めただけに留まり、斃すどころか、大きなダメージを与えているようにも見えない。
「ね、ねぇ、ハクバ……。あれ……」
 ジュリアが指し示すスケルトンの頭骨、その目の窪みから灼熱の炎のような模様が浮かび上がる。

『バ……プル……ホ……ベシ……』

 薄気味悪い声がコダマする。地獄の底から響いてくるような、そんな声で。

『バカップル……ホロブベシ!!』

 虚空の瞳に赤く眩い、嫉妬の炎が灯り、輝いた。



「――ということがあってね。このスケルトンの討伐が今回の依頼の内容なのだけど」
 まだ、少年という風貌の、ハンターズソサエティ職員が言う。昼休みももう終わりの時間か、静まり返っていたオフィスに、少しずつ人の声が増えていく。少年はチラリと柱時計を一瞥し、再び目の前のハンターへと視線を戻した。
「でも日中、たまたまそこに立ち寄ったハンターが言うには、そこに敵の気配は感じられなかったそうなんだ」
 少年は小さくため息を零し、言葉を続ける。
「でも、襲われたカップルの証言から、どうにもこの雑魔、カップルを妬むような言葉を繰り返していたらしい。もしかすると、カップルでイチャついていると、出てくるのかもしれないね」
 ――つまり、一芝居打てと、暗に言うのだろうか。最も、芝居である必要もないのだろうが。ハンターは首を捻った。捻りながら、ふと、話の中のカップルの事が気になって、少年へと訊ねる。
「うん? ……いいや、件のカップルは無事だよ。男の方は、結構な怪我を負ったらしいけど、命には別状はないそうだ。彼女も軽傷だと聞いている」
 多勢に無勢であったとはいえ、覚醒者に怪我を負わせるとなると、中々油断の出来ない相手なのかもしれない。しかし、一先ず彼らが無事であったことは喜ばしいことだと、ハンターは胸を撫で下ろした。
「彼にとっては災難だったかもしれないけど、彼女を守ったことで、彼の株は上がったのかもしれないね。……ま、そのまま倒してくれてれば、ボクも楽で良かったのだけど」
 小悪魔のようにクスクスと笑う少年をよそに、ハンターは手渡された資料に、再び視線を落とした。

解説

○依頼目的
 雑魔の討伐。

○討伐目標詳細
 しっとスケルトン。恋愛の波動(?)を察知すると現れる。合計6体。ファイヤーパターンの入った頭蓋骨という独特な外観を持つ。原始的な打撃武器(棍棒や角材)、格闘攻撃主体。ややアグレッシブに動く。飛び道具は無いが、飛び蹴りくらいならかましてくる。嫉妬の力が影響しているかはわからないが、通常型よりも攻守共に強く、火に耐性がある模様。知性は無いと思われるが、カップルに対する嫉妬の言葉を呪文のように吐きながら襲ってくる。

○古びた砦
 50平方m程度の広さ。高さ20m程の崩れかけの外壁に囲まれている。中は草木が生い茂り、瓦解した建物がある為、視界はそれ程よくない。
 OPにある通り、隠れたデートスポット。勿論、日中に訪れることもできるが、夜の方が雰囲気が格段に良い。

マスターより

 こんにちは、ゐ炉端です。
 今回の敵さんは、恋愛の波動を察知すると集まってきます。ガチカップルで参加するもよし、即席カップルで演じてみるもよし、これを切欠に付き合い始めるもよし、でございます。ちなみに異性カップルである必要はありませんが、異性の方が効果は高まります(PL情報)
 また、討伐後にデートスポットを満喫するのも良いかと思います。その際にまた、新たな嫉妬戦士が生まれるかもしれませんが、それは皆様次第かもしれません(何

 それでは皆様のご参加、心よりお待ちしております。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/06/08 00:44

参加者一覧

  • 古塔の守り手
    クリスティア・オルトワール(ka0131
    人間(紅)|22才|女性|魔術師
  • クリスティアの友達
    シルヴェーヌ=プラン(ka1583
    人間(紅)|15才|女性|魔術師
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • それでも私はマイペース
    レイン・ゼクシディア(ka2887
    エルフ|16才|女性|機導師
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 幻獣王のライバル
    ロジェ・オデュロー(ka3586
    エルフ|14才|男性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
シルヴェーヌ=プラン(ka1583
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/05/27 23:16:52
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/26 01:12:05