• 戦闘

路地裏工房コンフォートの昔話

マスター:佐倉眸

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/06/01 12:00
リプレイ完成予定
2015/06/10 12:00

オープニング

●エーレンフリートと宝飾工房コンフォート
 極彩色の街ヴァリオスで宝飾の工房を持っていた義父はどちらかと言えば頑固で堅い職人気質の人だった。
 彼と仲違いしていた妻を掠い、と言うには温い有様だったが当時は当に掠ったつもりで、工場都市のフマーレで職人達を相手に小さな喫茶店を始めた。
 商売が軌道に乗り、常連客が付く頃には妻と義父は和解し、子供も授かった。
 店は私と妻と通いの店員が1人で、子供の世話を片手に何とか切り盛りしていた。
 子供が長じて孫が生まれる前に、妻は喫茶店の内装にその面影を濃く残して逝って仕舞った。
 子供も、孫が生まれてすぐの頃、幼いその娘をこの皺だらけの手に託すように逝って仕舞った。
 幼い孫を同じ年頃の子を持つ家に預けて店を開け、夜に締めてから迎えに行き、いつ頃からかその孫娘が店の看板娘と親しまれるようになった。
 喫茶店の娘のくせに珈琲だけは上手く煎れられない彼女は、偶然知り合った男に嫁いで、海の町へと去って行った。
 その頃、義父の訃報を受け取った。
 それから1年ほど、この工房をほったらかしにしたが、昨年孫が帰ってきた。
 夫を、海で亡くしたと言って。
 詳しくは聞かなかったし、葬式なんかも向こうで済ませたらしいんだが、酷く窶れた顔をしていたから、気晴らしになればと思って店を預けることにしたんだ。
 丁度、階段で挫いた足首が痛んで、暫く休もうと思っていたところだったんで、ね。
 店の賑わいが少しでもあの子を元気づけてくれれば良いと思っていたんだが、聞く話ではどうにもまだ喪服すら脱がないらしい。
 困った娘だ。

 君よりも、10程年嵩なんだが。

 私の昔話はこんな所か。
 それで、暇になったから、工房の片付けついでに、埋もれさせるには惜しい作品を良くしてくれる人に託そうと思って……掃除をしつつ看板を出している。

「だからここにある作品は全て義父の物で、何を言われたって私が君に教えられることもなければ、ここの人手は1人で十分足りている」
「そこを何とか!」

 義父の残した宝飾工房。
 ヴァリオスの片隅にひっそりと佇む埃っぽいドアを叩いたのは、10代半ばを過ぎた頃の少女だった。
 小さな弟を背負った少女が弟子入りと宿を請うてきたとき、エーレンフリートは溜息交じりに他を当たれと手を振った。
「この辺は、君がやっていける土地ではないだろう」
「私、この辺来たばっかなんで! 大丈夫です、やる気はあります!」

●モニカとピノと老舗通り
 エーレンフリートと名乗った老人がスカーフに飾っていたブローチはとても素敵な物だった。
 外して見せて貰えたのは僥倖。緑の石を細かな細工が囲っている、石の質も細工の技法も、何もかも勉強を始めたばかりだけれど、素晴らしい物だということだけは分かった。
 こんな素敵な物を作れるなんて、とその老人に詰め寄ってみたけれど、そのブローチは彼のお義父様の作品らしい。彼との結婚祝いに娘に贈られた物を、今は彼が形見で持っているのだとか。
 暫く見とれて、細工の再現方法を考えていたが、どうもこの老人は私をここから追い出したいらしい。
「やる気はあります!」
 そう言ったら、
「…………それなら、少し街を見てきなさい」
 深い深い溜息を吐いてそう言われた。

 私の名前はモニカ・フィオリーノ。背中の小っちゃいのは弟のピノ。まだおんぶ紐が手放せない可愛い弟。
 暫く街を歩いてみたけれど、ここの人達はやっぱりちょっと厳しそうだ。
 すれ違う人みんな、綺麗な服を着ているし、街の建物はドアも窓もぴかぴかに磨かれている。
 窓のガラスには罅の1つも入っていない。
「すっごいねー。……すごいとこに、来ちゃったんだねー」
 背中の弟をあやしながら通りを眺める。広い道も細い道も、とっても綺麗に掃かれて、落ち葉の1つも落ちていない。道の並木も軒先の植え込みも丸く整えられて、可憐な花を咲かせている。
 花の香りに惹かれたとき、ころん、と足下に何かが転げた。
「あ。ブローチ。……持って来ちゃった」
 拾って光を透かしてみる。曇ってきた空の柔らかな光でも、その石はきらきらと眩しく輝いてみせた。
「――街も見たし、帰ろっか。返さないとびっくりしちゃう、だろう、――」

 ブローチを翳しながら踵を返したモニカの目が膝下、点々と繋がった土の跡を見た。
 何だろうと顔を上げると、彼女の手からブローチを掠った黒い影。
 どこから紛れ込んだのか、枯れ葉や土埃に塗れたコボルトが1匹、華やかな通りを走っていった。
「っん、の野郎ぉ――、待てー!」
 弟を支えながら、モニカはそのコボルトを追って走り出す。

 追いかけっこの目撃者が、ハンターオフィスへ連絡した。

●再び、エーレンフリート
 一雨来そうだ。
 エーレンフリートは空を見上げて呟いた。
 何だか表が騒がしい、あの子はまだ戻らないのか。
 諦めたのかも知れないが、まあ、その方が良いだろう。
 若い子がやっていける土地ではないし、私も、片付けを終えたらフマーレに帰るつもりだ。
 エーレンフリートは傘を手に通りへ出る。
 雨の近づく湿り気の所為か、工房に溜まった埃の所為か、軽く咳き込んで空を見た。
 雨雲が、差し迫る。

解説

目的 ブローチを取り戻す

エネミー
 コボルト1匹
 通常の非武装なコボルトです
 ブローチを握っています
 攻撃的ではありませんが、逃げたり隠れたりします

場所
 ヴァリオスの片隅のちょっと華やかな通りと、
 その路地裏にひっそり佇む宝飾工房
 人通りがある中を追って貰います
 もうすぐ雨が降り出します

NPC
 モニカ・フィオリーノ
  ブローチを取り戻そうと追っている。弟を背負っている為、現状見失わないことがやっと。
  ハンターの指示には従います。

 エーレンフリート
  雨が降ってきたら、傘を片手にモニカを探しに出発します。

マスターより

どっかの喫茶店のおじいちゃんサイド。

通行人と雨に注意して、コボルトからブローチを取り戻して下さい。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/06/09 14:25

参加者一覧

  • お茶会の魔法使い
    白水 燈夜(ka0236
    人間(蒼)|21才|男性|魔術師

  • シリル・ラングフォード(ka0672
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 堕落者の暗躍を阻止した者
    レオン・フォイアロート(ka0829
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 希望の火を謡う者
    ギルバート・フォーサイス(ka1395
    エルフ|34才|男性|聖導士
  • 勝利の女神
    アニス・エリダヌス(ka2491
    エルフ|14才|女性|聖導士
  • 最強守護者の妹
    コントラルト(ka4753
    人間(紅)|21才|女性|機導師
依頼相談掲示板
アイコン 【相談卓】ブローチを追って
白水 燈夜(ka0236
人間(リアルブルー)|21才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/06/01 02:34:48
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/29 13:20:09