ゲスト
(ka0000)
鈍の心
マスター:松尾京

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/06/02 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/06/11 19:00
オープニング
●フマーレの、ある裏通りで
「よう、元鍛冶屋。こそ泥から金奪ったんだろ。俺らに分けてくれよ」
同業者から金を巻き上げたあとは、いつもこんな輩が現れる。犯罪者の世界というのは、意外に狭い。もっとも、それはスティーブが警戒していないだけの話だが。
「ロスト(全てを失った)・スティーブか。ちょうどいいあだ名だな」
言って笑ってくる若い輩を、中年の男……スティーブは酒に濁った目で見た。
「帰んな。今、酒盛り中だ」
「だったら、酒もおいて行けよ、ちょうどいい」
スティーブはため息をついた。そしてのっそりと立ち上がって――男たちを一撃で蹴り倒した。
●鍛冶屋の男
廃工場の一角にスティーブの住処はある。といっても工場自体を間借りしただけだが。
スティーブは酩酊しながら寝床に戻ると、ぼうっとした。
――ロスト・スティーブか。確かにおあつらえ向きだ、と思った。
スティーブは腕のいい鍛冶職人だった。若い時分から才能を見せ、鍛冶一本で生きてきた男。
昔住んでいた界隈では、刃物に困ったらスティーブへ、と言われたものだった。
だが、不幸は偶然に起こる。
フマーレに侵入した雑魔に襲われたのが、当時工房を盛況にさせていたスティーブだった。
スティーブは両腕にけがを負った。気付けば、片腕はほぼ動かず、もう片方もものを持つのがやっとの状態になっていた。
その瞬間から、スティーブの人生は変わった。
鍛冶が出来なくなったスティーブを周りはなぐさめた。だが本人にとって、鍛冶の出来ない自分に価値はない。生きていても無意味だった。
絶望と諦観。
それからスティーブは、荒れた。
当時妻と生まれたばかりの子もいたが、自棄になった挙げ句、その家庭も失った。
あとは、生きるために犯罪に手を染めることになった。
覚醒者としての素養があったスティーブには、人から小銭を奪うことくらいは可能だったのだ。
スティーブは朦朧とした状態から覚めて、また酒をついだ。
あれから、スティーブは無為に日々を過ごしている。仕事も家庭も無い、惰性の日々。
後悔は、ある。家族のことだ。
優しい妻と、可愛い子共だった。当時、全てが憎らしかった自分にとって、家族すら怒りの対象でしか無く、結果として自ら捨ててしまう形となった。
今思えば、もっと別の形があったろうという気がするが、そんなもしもに、意味は無い。
物置から一本のナイフを取り出す。おぼつかない手で一年かけて打ったナイフだが、いまだ未完成。
とうに鍛冶など出来ないと、証明するようなものだった。
●邂逅
そんなある日だった。
スティーブのねぐらに、一人の若造――少年といっていい――が、訪ねてきた。
あどけない、こんな場所とは無縁そうな少年だ。
「腕のいい鍛冶屋がいるって聞いてきたんだけど」
開口一番、こうだ。寝起きのスティーブは、二日酔いのまま、しばし何が起こったかわからなかった。
スティーブは横になる。
「そんなものはいねえよ。ガキがくるとこじゃない。帰んな」
「刃物に困ったらスティーブへ」
「……」
「ロスト・スティーブ。あんたなんだろ」
「何の用だ。悪いが、もう包丁は打てんよ」
それでも動じず返した。スティーブが元鍛冶屋なのは、このあたりのチンピラでも知っていることだ。
すると少年は言った。
「それでもいい。教えてくれれば。僕が打つ」
「なんだって?」
「鍛冶職人になりたいんだ。だからやり方を教えてくれ」
これが少年との出会いだ。
少年は翌日もその翌日もやってきた。
スティーブは無視したが、こそ泥を襲うときもついてこようとしたので、怒った。
「いい加減にしろ。殴られたいか?」
「殴られても、教えてくれるまでは帰らない」
「……鍛冶屋なら他にもいる。かたぎの弟子になれ」
「あんたが一番、腕がいい」
堂々巡りだ。
まあ、鍛冶の仕事は泥臭い。工房じゃないが最低限の道具はあるし、少し実践させれば、音を上げて帰るだろう。
そうして準備させて打たせて見ると……少年は、意外にも一生懸命だった。
溶解した金属にひるみもせず。見た目よりずっと重い鎚を、力強く握っていた。
汗だくになりながら、スティーブの教えの通り、かん、かん、と音を立てる。筋もいい。これまでに取った弟子の中で、一番といってもよかった。
「お前、どこのガキだ?」
「普通の、ガキだよ」
少年は短期間で見事に成長した。文字通りの付け焼き刃だが、既に素人の段階は越えていた。
少年に才覚を見て、スティーブの指導にも、いつしか熱が入っていた。
こんな気持ちはいつぶりか。自分が見習いだった頃を思い出す。
少年が打った包丁を見つつ、スティーブは酒をついだ。
「飲むか?」
「僕は子供だよ。スティーブ」
構いやしないと言ったが、少年は遠慮した。純朴なものだ、とスティーブは笑った。
そうして、明日も来るだろう、とスティーブが聞こうとしたときのことだった。
そこに歪虚が現れたのは。
●脅威
どおん、と、大音が鳴ると、天井に穴が開いていた。
土煙に咳をして、スティーブが目を開けると……そこにいた。
狼のような、大きな四足獣の歪虚。
「な、なんだこの化け物」
「近寄るな!」
スティーブは叫んだ。瞬間から、嫌な汗が体を伝っていた。
歪虚が危険なのはとうに知っているが――心臓が早鐘を鳴らすようになりながら、スティーブは声を絞り出す。
――どうしてお前がここに。
あの歪虚は、当時覚醒者に撃退されてフマーレから逃げたはずだった。
が、思い出せば、確かに死んだという記憶もない。再びスティーブの前に現れる可能性も、ゼロではなかった。
腕が、うずく。
それは確かに……スティーブの腕を動かなくさせた、あの獣の歪虚の姿だった。
「どうして俺を、襲いに来る」
何の恨みがあって。
咆吼を上げて突っ込んでくる歪虚に、スティーブは目を見開く。
狙いは、少年だった。スティーブはとっさに跳んで、体当たりを自ら受けた。
「スティーブ!」
少年が駆け寄るが、スティーブは倒れ込みながら、外を見る。
「早く逃げろ……」
「何言ってるんだよ、置いていけるかよ!」
「こっちのせりふだ。こんな犯罪者なんかおいて逃げろ」
言う間にも、歪虚はじりじりと間を詰めて、獲物を吟味する。
そのときに、スティーブは理解した気持ちになった。
ああ、そうか。
これはきっと、罰だ。
だから、俺から奪いにやってきたんだろう?
少年は涙を浮かべて、歯をかみしめてから言った。
「逃げないと……、父さん……」
「馬鹿野郎。俺はお前の父さんじゃねえ」
しがない、ただの犯罪者だ。父親らしいことなんて、何一つしたこと無かったのだから。
だから、やきがまわっただけ。
「違うよ! 父さんだろ! だから、ちゃんと一人前になるまで、教えろよ!」
無視して、スティーブは未完成のナイフを構えた。
「最後に、まだなまくらじゃねえところを、見せてやるよ」
「よう、元鍛冶屋。こそ泥から金奪ったんだろ。俺らに分けてくれよ」
同業者から金を巻き上げたあとは、いつもこんな輩が現れる。犯罪者の世界というのは、意外に狭い。もっとも、それはスティーブが警戒していないだけの話だが。
「ロスト(全てを失った)・スティーブか。ちょうどいいあだ名だな」
言って笑ってくる若い輩を、中年の男……スティーブは酒に濁った目で見た。
「帰んな。今、酒盛り中だ」
「だったら、酒もおいて行けよ、ちょうどいい」
スティーブはため息をついた。そしてのっそりと立ち上がって――男たちを一撃で蹴り倒した。
●鍛冶屋の男
廃工場の一角にスティーブの住処はある。といっても工場自体を間借りしただけだが。
スティーブは酩酊しながら寝床に戻ると、ぼうっとした。
――ロスト・スティーブか。確かにおあつらえ向きだ、と思った。
スティーブは腕のいい鍛冶職人だった。若い時分から才能を見せ、鍛冶一本で生きてきた男。
昔住んでいた界隈では、刃物に困ったらスティーブへ、と言われたものだった。
だが、不幸は偶然に起こる。
フマーレに侵入した雑魔に襲われたのが、当時工房を盛況にさせていたスティーブだった。
スティーブは両腕にけがを負った。気付けば、片腕はほぼ動かず、もう片方もものを持つのがやっとの状態になっていた。
その瞬間から、スティーブの人生は変わった。
鍛冶が出来なくなったスティーブを周りはなぐさめた。だが本人にとって、鍛冶の出来ない自分に価値はない。生きていても無意味だった。
絶望と諦観。
それからスティーブは、荒れた。
当時妻と生まれたばかりの子もいたが、自棄になった挙げ句、その家庭も失った。
あとは、生きるために犯罪に手を染めることになった。
覚醒者としての素養があったスティーブには、人から小銭を奪うことくらいは可能だったのだ。
スティーブは朦朧とした状態から覚めて、また酒をついだ。
あれから、スティーブは無為に日々を過ごしている。仕事も家庭も無い、惰性の日々。
後悔は、ある。家族のことだ。
優しい妻と、可愛い子共だった。当時、全てが憎らしかった自分にとって、家族すら怒りの対象でしか無く、結果として自ら捨ててしまう形となった。
今思えば、もっと別の形があったろうという気がするが、そんなもしもに、意味は無い。
物置から一本のナイフを取り出す。おぼつかない手で一年かけて打ったナイフだが、いまだ未完成。
とうに鍛冶など出来ないと、証明するようなものだった。
●邂逅
そんなある日だった。
スティーブのねぐらに、一人の若造――少年といっていい――が、訪ねてきた。
あどけない、こんな場所とは無縁そうな少年だ。
「腕のいい鍛冶屋がいるって聞いてきたんだけど」
開口一番、こうだ。寝起きのスティーブは、二日酔いのまま、しばし何が起こったかわからなかった。
スティーブは横になる。
「そんなものはいねえよ。ガキがくるとこじゃない。帰んな」
「刃物に困ったらスティーブへ」
「……」
「ロスト・スティーブ。あんたなんだろ」
「何の用だ。悪いが、もう包丁は打てんよ」
それでも動じず返した。スティーブが元鍛冶屋なのは、このあたりのチンピラでも知っていることだ。
すると少年は言った。
「それでもいい。教えてくれれば。僕が打つ」
「なんだって?」
「鍛冶職人になりたいんだ。だからやり方を教えてくれ」
これが少年との出会いだ。
少年は翌日もその翌日もやってきた。
スティーブは無視したが、こそ泥を襲うときもついてこようとしたので、怒った。
「いい加減にしろ。殴られたいか?」
「殴られても、教えてくれるまでは帰らない」
「……鍛冶屋なら他にもいる。かたぎの弟子になれ」
「あんたが一番、腕がいい」
堂々巡りだ。
まあ、鍛冶の仕事は泥臭い。工房じゃないが最低限の道具はあるし、少し実践させれば、音を上げて帰るだろう。
そうして準備させて打たせて見ると……少年は、意外にも一生懸命だった。
溶解した金属にひるみもせず。見た目よりずっと重い鎚を、力強く握っていた。
汗だくになりながら、スティーブの教えの通り、かん、かん、と音を立てる。筋もいい。これまでに取った弟子の中で、一番といってもよかった。
「お前、どこのガキだ?」
「普通の、ガキだよ」
少年は短期間で見事に成長した。文字通りの付け焼き刃だが、既に素人の段階は越えていた。
少年に才覚を見て、スティーブの指導にも、いつしか熱が入っていた。
こんな気持ちはいつぶりか。自分が見習いだった頃を思い出す。
少年が打った包丁を見つつ、スティーブは酒をついだ。
「飲むか?」
「僕は子供だよ。スティーブ」
構いやしないと言ったが、少年は遠慮した。純朴なものだ、とスティーブは笑った。
そうして、明日も来るだろう、とスティーブが聞こうとしたときのことだった。
そこに歪虚が現れたのは。
●脅威
どおん、と、大音が鳴ると、天井に穴が開いていた。
土煙に咳をして、スティーブが目を開けると……そこにいた。
狼のような、大きな四足獣の歪虚。
「な、なんだこの化け物」
「近寄るな!」
スティーブは叫んだ。瞬間から、嫌な汗が体を伝っていた。
歪虚が危険なのはとうに知っているが――心臓が早鐘を鳴らすようになりながら、スティーブは声を絞り出す。
――どうしてお前がここに。
あの歪虚は、当時覚醒者に撃退されてフマーレから逃げたはずだった。
が、思い出せば、確かに死んだという記憶もない。再びスティーブの前に現れる可能性も、ゼロではなかった。
腕が、うずく。
それは確かに……スティーブの腕を動かなくさせた、あの獣の歪虚の姿だった。
「どうして俺を、襲いに来る」
何の恨みがあって。
咆吼を上げて突っ込んでくる歪虚に、スティーブは目を見開く。
狙いは、少年だった。スティーブはとっさに跳んで、体当たりを自ら受けた。
「スティーブ!」
少年が駆け寄るが、スティーブは倒れ込みながら、外を見る。
「早く逃げろ……」
「何言ってるんだよ、置いていけるかよ!」
「こっちのせりふだ。こんな犯罪者なんかおいて逃げろ」
言う間にも、歪虚はじりじりと間を詰めて、獲物を吟味する。
そのときに、スティーブは理解した気持ちになった。
ああ、そうか。
これはきっと、罰だ。
だから、俺から奪いにやってきたんだろう?
少年は涙を浮かべて、歯をかみしめてから言った。
「逃げないと……、父さん……」
「馬鹿野郎。俺はお前の父さんじゃねえ」
しがない、ただの犯罪者だ。父親らしいことなんて、何一つしたこと無かったのだから。
だから、やきがまわっただけ。
「違うよ! 父さんだろ! だから、ちゃんと一人前になるまで、教えろよ!」
無視して、スティーブは未完成のナイフを構えた。
「最後に、まだなまくらじゃねえところを、見せてやるよ」
解説
●目的
獣の雑魔の退治。
●状況
廃工場にて、男が雑魔に襲われている。
少年が道に出て助けを求めている声を、居合わせたハンターが捉え、対処に向かう。
●場所
廃工場近辺。
----------------
■■○■■ ■■
■■ ■■ ■■
★ ★ ★
■■ ■■ ■■
■■ ■■ ■■
☆
■■ ■■ ■■
■■ ■■ ■■
----------------
○:少年。表に出て助けを呼んでいる。
★:獣の小型雑魔。
☆周辺:ハンターの初期位置。
2×2の■で工場一つ。
道の幅は4スクエア。工場は一つ20×20スクエア。
工場はそれぞれ南側と東側に入口が一つずつ。
左上の工場の入口は両方開いていて、あとはしまっている。
左上の工場にスティーブがいるようである。
地図の外は入り組んだ路地。
●敵
獣の大型雑魔×1
狼のような見た目をしている。サイズ2。
体力や攻撃力などが小型雑魔より高い。
がれきを脚で蹴って飛ばす(射程8)。
体当たり、爪での斬撃(射程1)。
獣の小型雑魔×3
大型雑魔の子共のような大きさ。サイズ1。
敵を見つければ追いかけてくる。
体当たり、爪での斬撃(射程1)。
獣の雑魔の退治。
●状況
廃工場にて、男が雑魔に襲われている。
少年が道に出て助けを求めている声を、居合わせたハンターが捉え、対処に向かう。
●場所
廃工場近辺。
----------------
■■○■■ ■■
■■ ■■ ■■
★ ★ ★
■■ ■■ ■■
■■ ■■ ■■
☆
■■ ■■ ■■
■■ ■■ ■■
----------------
○:少年。表に出て助けを呼んでいる。
★:獣の小型雑魔。
☆周辺:ハンターの初期位置。
2×2の■で工場一つ。
道の幅は4スクエア。工場は一つ20×20スクエア。
工場はそれぞれ南側と東側に入口が一つずつ。
左上の工場の入口は両方開いていて、あとはしまっている。
左上の工場にスティーブがいるようである。
地図の外は入り組んだ路地。
●敵
獣の大型雑魔×1
狼のような見た目をしている。サイズ2。
体力や攻撃力などが小型雑魔より高い。
がれきを脚で蹴って飛ばす(射程8)。
体当たり、爪での斬撃(射程1)。
獣の小型雑魔×3
大型雑魔の子共のような大きさ。サイズ1。
敵を見つければ追いかけてくる。
体当たり、爪での斬撃(射程1)。
マスターより
今回は廃工場での戦闘シナリオです。
戦闘面では、凝った攻撃をする敵はいませんが、少々切羽詰まった状況ですので、死者をゼロにしたいのならばそれなりに急ぐ必要があるかも知れません。
戦闘面では、凝った攻撃をする敵はいませんが、少々切羽詰まった状況ですので、死者をゼロにしたいのならばそれなりに急ぐ必要があるかも知れません。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/06/09 14:44
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/28 03:53:24 |
|
![]() |
作戦相談 高円寺 義経(ka4362) 人間(リアルブルー)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/06/02 18:04:27 |