ゲスト
(ka0000)
悪意無き無垢なる悪意
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/06/02 22:00
- リプレイ完成予定
- 2015/06/11 22:00
オープニング
「うふふふふ……」
第二師団都市カールスラーエ要塞に本拠を構えるロジーナ商会。その社長であるロジーナ・リュッカーは、漏れ出す笑いを堪えられない。
棚からご馳走が降ってきたような幸運。それがどんなに色々な人の不幸の上に成り立った不謹慎極まりないものだとしても、商売人としての彼女には自社の利益という数字以外のものが見えていないようだった。
「脳まで筋肉に侵された連中に、耐えてきた甲斐があったというものだわ」
最前線という立場のこの都市が盾として完全に機能するには、再興中という状況は当然芳しくない。辺境以東での歪虚の攻撃に伴い、都市の復興計画は間違いなく加速する。
この都市に腰を落ち着ける商人は、それほど多くない。軍から民間へと降りてくる建築関係の仕事の殆どは、彼女の会社が請け負うことになるだろう。
ロジーナは叩き付けるように呼び鈴を鳴らす。
やることは山積みだ。直ぐさま駆けつけた秘書の怪訝な顔もどこ吹く風、緩む口元を抑えることもせずにロジーナは素早く指示を飛ばした。
●
ロジーナ商会雇われの傭兵達が、若干の怯えと疲れを顔に滲ませながら山を登る。
小さな山だ。麓から頂上まで、茂みを掻き分けながら歩いても、それほど時間はかからない。ただ、まばらに生えた木々は太く、幹も真っ直ぐで、素人目から見てもこういう木があるから商会はここに目を付けたんだろうなと確信を持った。
だが同時に、森の雰囲気が良くないような気もしていた。全体的に薄暗いような、空気が薄いような、森の青臭さに何か別の臭いが混じっているような……。
ただ、それが心にうっすら絡みつく恐怖から来る錯覚なのか、五感に感じる現実なのか。一般人である彼らに判別は付かない。
「……何もねえな」
「そっすね」
疲れからか、会話は常に最小限だ。何せ、今日の早朝に命令を受けて叩き起こされ、ろくに準備の時間も与えられずに駆り出されたのだ。都市からここまで寝起きの頭で歩きづめで、元気など残っているはずがない。
しかも、命令はこの山に何か異常がないかの調査だ。ということは、異常がある可能性が存在するということで。
異常といえば、つまり歪虚。危険手当がたんまり貰える約束を取り付けたとはいえ、それでも割にあう仕事がどうか、ここに来て不安が湧き出してきていた。
とはいえ、今のところ異常は見当たらない。何の気配も感じず、耳を澄ましても木の葉の擦れる音が静かに流れているだけだ。
目的地である頂上が近づき、彼らは胸を撫で下ろす。
人が入って何もなければ、それなりに安全。商会の基準はそうなっているらしい。一番高い地点で伝話をかければ、それで任務は終了だ。
――と、思った矢先だった。
『アノ、チョットヨロシイデスカ?』
甲高く、酷く単調な、男とも女とも知れない声が響いた。
全員がびくりと肩をふるわせ、ひっ、と小さな悲鳴が漏れる。
『ヒトツ、カンタンナ、ゲームヲシテイタダキタイノデス』
腰に下げた剣に手をかける。拳銃を抜き、銃弾の装填を確かめる。
素早く辺りに視線を這わせ、音源の位置を特定しようとする。
『ホントウニカンタンデス。ワタシノシツモンニ、イエス、カ、ノー、デ、コタエテルダケデス』
何も見つからない。
ただ、かさかさと小さな何かが草むらで蠢くような音だけが、徐々に耳に届き始めていた。
『ソレデハ、イキマス』
かさかさという音は続く。
数が増える。
距離が縮まる。
『アナタガタノ――カワ、ヲ、イタダイテモ、ヨロシイデショウカ?』
次の瞬間、全ての音が消えた。
答えを待っているのだろうと、容易に想像できた。
「か、かわって、何のことだ」
思わず口に出していた。
察しは付く。だが、聞かずにいられなかった。
しかし、答えはない。ただ静かに、木の葉だけが揺れる。
「……ちっ、隠れて奇襲しようってか。ゲームだかなんだか知らんが、卑怯なくれてやるもんなんかねえよ」
手にした剣の先が震える。どこか遠くにいる自分が、今すぐ逃げろと叫んでいる。
だが、逃げたところで良いことなど、恐らくない。
だから、口で強がるしか、取れる手段は存在しなかった。
「ノーだ!」
『ザンネンデス』
叫んだ瞬間に、草むらから小さな影が飛び出した。咄嗟に剣を振るう。大した手応えもなく、それは真っ二つになって地面に落ちた。
目を向ければ、それはいびつな人型をした黄ばんだ人形だった。目にはボタン、黒い糸がV字に口を作っている。
「何匹いんだよ!」
同じものが次々と、草むらから飛びかかってくる。一体一体は非常に弱い。だが、草むらから、木の上から、あるいは地面を突き破って出てくるそれらに対応しきる能力を……彼らは持っていなかった。
悲鳴が上がる。
その悲鳴に感情を向ける暇もなく、次の悲鳴が上がる。
最後の一人は、力を振り絞って伝話に手をかけた。
第二師団都市カールスラーエ要塞に本拠を構えるロジーナ商会。その社長であるロジーナ・リュッカーは、漏れ出す笑いを堪えられない。
棚からご馳走が降ってきたような幸運。それがどんなに色々な人の不幸の上に成り立った不謹慎極まりないものだとしても、商売人としての彼女には自社の利益という数字以外のものが見えていないようだった。
「脳まで筋肉に侵された連中に、耐えてきた甲斐があったというものだわ」
最前線という立場のこの都市が盾として完全に機能するには、再興中という状況は当然芳しくない。辺境以東での歪虚の攻撃に伴い、都市の復興計画は間違いなく加速する。
この都市に腰を落ち着ける商人は、それほど多くない。軍から民間へと降りてくる建築関係の仕事の殆どは、彼女の会社が請け負うことになるだろう。
ロジーナは叩き付けるように呼び鈴を鳴らす。
やることは山積みだ。直ぐさま駆けつけた秘書の怪訝な顔もどこ吹く風、緩む口元を抑えることもせずにロジーナは素早く指示を飛ばした。
●
ロジーナ商会雇われの傭兵達が、若干の怯えと疲れを顔に滲ませながら山を登る。
小さな山だ。麓から頂上まで、茂みを掻き分けながら歩いても、それほど時間はかからない。ただ、まばらに生えた木々は太く、幹も真っ直ぐで、素人目から見てもこういう木があるから商会はここに目を付けたんだろうなと確信を持った。
だが同時に、森の雰囲気が良くないような気もしていた。全体的に薄暗いような、空気が薄いような、森の青臭さに何か別の臭いが混じっているような……。
ただ、それが心にうっすら絡みつく恐怖から来る錯覚なのか、五感に感じる現実なのか。一般人である彼らに判別は付かない。
「……何もねえな」
「そっすね」
疲れからか、会話は常に最小限だ。何せ、今日の早朝に命令を受けて叩き起こされ、ろくに準備の時間も与えられずに駆り出されたのだ。都市からここまで寝起きの頭で歩きづめで、元気など残っているはずがない。
しかも、命令はこの山に何か異常がないかの調査だ。ということは、異常がある可能性が存在するということで。
異常といえば、つまり歪虚。危険手当がたんまり貰える約束を取り付けたとはいえ、それでも割にあう仕事がどうか、ここに来て不安が湧き出してきていた。
とはいえ、今のところ異常は見当たらない。何の気配も感じず、耳を澄ましても木の葉の擦れる音が静かに流れているだけだ。
目的地である頂上が近づき、彼らは胸を撫で下ろす。
人が入って何もなければ、それなりに安全。商会の基準はそうなっているらしい。一番高い地点で伝話をかければ、それで任務は終了だ。
――と、思った矢先だった。
『アノ、チョットヨロシイデスカ?』
甲高く、酷く単調な、男とも女とも知れない声が響いた。
全員がびくりと肩をふるわせ、ひっ、と小さな悲鳴が漏れる。
『ヒトツ、カンタンナ、ゲームヲシテイタダキタイノデス』
腰に下げた剣に手をかける。拳銃を抜き、銃弾の装填を確かめる。
素早く辺りに視線を這わせ、音源の位置を特定しようとする。
『ホントウニカンタンデス。ワタシノシツモンニ、イエス、カ、ノー、デ、コタエテルダケデス』
何も見つからない。
ただ、かさかさと小さな何かが草むらで蠢くような音だけが、徐々に耳に届き始めていた。
『ソレデハ、イキマス』
かさかさという音は続く。
数が増える。
距離が縮まる。
『アナタガタノ――カワ、ヲ、イタダイテモ、ヨロシイデショウカ?』
次の瞬間、全ての音が消えた。
答えを待っているのだろうと、容易に想像できた。
「か、かわって、何のことだ」
思わず口に出していた。
察しは付く。だが、聞かずにいられなかった。
しかし、答えはない。ただ静かに、木の葉だけが揺れる。
「……ちっ、隠れて奇襲しようってか。ゲームだかなんだか知らんが、卑怯なくれてやるもんなんかねえよ」
手にした剣の先が震える。どこか遠くにいる自分が、今すぐ逃げろと叫んでいる。
だが、逃げたところで良いことなど、恐らくない。
だから、口で強がるしか、取れる手段は存在しなかった。
「ノーだ!」
『ザンネンデス』
叫んだ瞬間に、草むらから小さな影が飛び出した。咄嗟に剣を振るう。大した手応えもなく、それは真っ二つになって地面に落ちた。
目を向ければ、それはいびつな人型をした黄ばんだ人形だった。目にはボタン、黒い糸がV字に口を作っている。
「何匹いんだよ!」
同じものが次々と、草むらから飛びかかってくる。一体一体は非常に弱い。だが、草むらから、木の上から、あるいは地面を突き破って出てくるそれらに対応しきる能力を……彼らは持っていなかった。
悲鳴が上がる。
その悲鳴に感情を向ける暇もなく、次の悲鳴が上がる。
最後の一人は、力を振り絞って伝話に手をかけた。
解説
・概要
伐採場の安全を確保しろ。
・敵
不明です。
小さな人形が襲いかかってくることは伝話により伝わっていますが、口のないそれが喋っているとは思えないという報告でした。
人形の総数も不明ですが、かなりの数が存在します。
・場所
まばらに木の並んだ森です。
足下には膝ほどまでの草が密生しており、快適に動ける環境とは言えません。
・補足
目的は敵の討伐ではなく、場所の安全の確保です。
敵はどうやら臆病なようであり、条件が揃うと逃亡を開始します。しかし、あまり深追いはしない方が良いかも知れません。
伐採場の安全を確保しろ。
・敵
不明です。
小さな人形が襲いかかってくることは伝話により伝わっていますが、口のないそれが喋っているとは思えないという報告でした。
人形の総数も不明ですが、かなりの数が存在します。
・場所
まばらに木の並んだ森です。
足下には膝ほどまでの草が密生しており、快適に動ける環境とは言えません。
・補足
目的は敵の討伐ではなく、場所の安全の確保です。
敵はどうやら臆病なようであり、条件が揃うと逃亡を開始します。しかし、あまり深追いはしない方が良いかも知れません。
マスターより
片言はどこで区切ったら良いか、たまに曖昧になりますT谷です。
何か厄介なものが、森に住み着いてしまっているようです。あんまり深追いし過ぎると……どうなるんでしょうね?
何か厄介なものが、森に住み着いてしまっているようです。あんまり深追いし過ぎると……どうなるんでしょうね?
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/06/10 05:05
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/30 02:47:24 |
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【相談卓】 フローラ・ソーウェル(ka3590) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/06/02 10:05:35 |