●貧乏くじ
「やれやれ、大掃除とは面倒くせえなあ」
　男はぶつぶつと愚痴りながら道を歩いていた。目指しているのは田舎にある一軒の家。
　別荘、などという表現は全く似合わない、ただの小さな家だ。
　家族会議により、男はその建物の大掃除を任されたのだ。実際は家族会議という名のくじびきだったが。
　文句を言いつつも足をとめることはなく、やがて男の目に古びた家が見えてきた。
「はあ……蜘蛛とかねずみとかいなけりゃいいけどな……」
　男は不安を口にしながら扉を開ける。
　真っ暗な部屋へと、男は無造作に足を踏み入れ……。
「うおっ！？」
　暗闇の中、男の腕が何かに囚われた。
　粘性のある、太い紐状のもの。男は慌てて振りほどこうとするも、それは一向に離れない。
「なんだあ！？　こりゃあ！？」
　わめく男の耳に聞こえたのは、何かが蠢く音。
　まだ暗闇に慣れない瞳に映ったのは、何かが這いよる影。
「ひっ……！！」
　男は恐怖のあまり、悲鳴をあげる。
　その何者かは、空を滑るかのように、男の方へと向かってきた。
「く、来るな来るな来るなーーーーーーーー！！」
　悲鳴をあげながらもがく男。
　まだ腕しか囚われていなかったのが幸いしたか、男は絡まっていた紐状のものからなんとか腕を振りほどく。
　あとは一目散だ。家から少しでも早く離れようと全力で手足を動かし、駆けた。
　男は逃げる途中、一度だけ背後を振り返る。
　開けっ放しの入り口の奥、闇の中に赤い複数の目が光って見えた……。

　男はすぐにハンターオフィスに飛び込み、ことの次第を受付嬢へと伝え、家を化け物の手から取り戻してくれるよう依頼した。

・目的
男が遭遇した謎の魔物を討伐し、家を取り戻すことです。

・家について
木製の一軒家。
二階はありません。
玄関を開けると中は居間になっています。
居間には丸いテーブルがあり、いくつかの粗末な椅子があります。
居間の隣には寝室があり、やはり粗末なベッドが一つだけあります。
この家にある部屋は上記の二つとあとは台所だけです。
台所も居間とつながっています。
家の壁には鎧戸付きの窓がついていますが、サイズは小さく、人が通るのは難しいでしょう。
出入りが出来ると思われるのは男が帰った時に開けた玄関と、台所側にある裏口のドアです。どちらも木製です。
なお、家の周りには目立った障害物はありません。
以下、依頼人からのお願いになります。
可能な限り家には傷をつけないで欲しい、とのことです。

こんにちは、こんばんは。秋風落葉（しゅうふうらくよう）です。
今回の敵は……正体は謎ですが、サイズの大きな雑魔であり、一体しかいないということだけはここで明言いたします。
ご参加お待ちしております。