• 無し

クリス&マリー 水路とタニシとハンターと

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/06/17 19:00
リプレイ完成予定
2015/06/26 19:00

オープニング

 グラズヘイム王国南部・シエラリオ地方は、西方世界の穀倉である。
 主な産物は『小麦』を初めとする穀物類だが、丘陵地帯で栽培される野菜や根菜、肉や乳製品といった畜産物、『葡萄』等の果実、それ等を原料にした果実酒や蒸留酒等、この地で生み出される農産物は枚挙に暇が無い。
 これらの食品は王国の民の腹を満たすだけでなく、戦略物資として他国にも輸出され、交易の主要品目として王国に富をもたらしている。
 歴史学者は言う。この地を掌握できたことが、一地方国家に過ぎなかったグラズヘイムに後の西方統一をなさしめた。政治学者は言う。帝国と同盟が独立した後、まがりなりにも王国が大国の地位を維持し得ているのは、かの地が王国領であるからだ、と──

 王国南部・シエラリオ地方は、王国の栄光と繁栄の象徴である。
 とは言え、かの地で日々、作業に勤しむ農民たちに。その様な自覚があるかと言えば、そんなことはないのだが。


 真っ直ぐ伸びた道の両脇に、延々と緑の原が広がっていた。
 日差し柔らかな春の日中。蒼空を背景に、柔らかな風に乗って白い雲が緩やかに流れ行く。
 波の様に風に揺れる一面の緑の原は、その地平に至るまで全て『小麦』の畑であるという。
 オードラン伯爵息女・クリスティーヌの供として王国巡礼の旅を巡っている若き侍女・マリーは、その事実を仕える主人から聞かされて…… 目口を大きく開けて驚愕したまま再びグルリと回って全周を見やり、ぶんぶんと両の拳を振った。
「これがっ! 全部っ! 見渡す限りっ! 小麦の畑だって言うんですかっ!!!?」
「そうですよ。あの地平線の向こうも、この道の先も、まだずっと畑です。あと何日かはずっとこの風景が続くでしょうね」
「マジですかっ!? ハァー…… うちんとことはまた偉い違いだ……」
「……あのー、オードラン領だって、よそと比べれば十分、肥沃で豊かな土地なんですヨ?」
 ここと比べられたらどこの土地だってたまらないです、と苦笑してみせるクリス。自分の知らない世界を目の当たりにして新鮮な驚きに満ち満ちているマリーを見やって、暫し温かい微笑と共に目を細める。
「そもそもこの南部の発展は、王国暦401年、『レメルムの大飢饉』に端を発した二つの乱を受け、トマス・グラハム農業王が各地で大規模な開拓と灌漑を……」
 クリスが薀蓄を傾けだすと、マリーは両手で耳を閉じた。ムッとしたクリスはマリーの両腕をガッと掴み。ぶらんぶらんと振り回しながら『歴史の授業』を再開して聞かせる……

「過去の出来事とかどーでもいいです。大事なことは、ここの! ご飯(?)が! とても! おいしい! その事実が分かったことこそが重要なのではないでしょーか」
 翌日。日除けにした街路樹の枝の下でお弁当をガツガツと頬張りながら、マリーが言った。
 王国北西部、西部と巡礼の旅をして来て、聖堂や町村で取る以外の食事はその殆どが携帯食だった。それが、この南部では新鮮な美味しい食事にありつける。マリーにとって、それ以上に重要なことはない。
「確かにそうです。でも、どうしてそうなったのか、その原因となった状況や背景をちゃんと知っておくことも大事なことなんですよ?」
 空となった弁当箱を手に、先に食べ終わったクリスが立ち上がり、近所の農家と思しき建物の庭先から呼びかけた。
「すいませーん。弁当箱を洗いたいので、井戸を貸してもらっても良いですか?」
「構わないよ! ……おっ!? 『巡礼者の弁当箱』。若い身空で巡礼の旅とは感心じゃないか! 今日の泊まりは聖堂かい? なら、明日の朝にでもまた寄りなよ。弁当のおかずを詰めてあげるから」
 赤子を背に屋敷から出てきた丸々としたおかみさんが、そう言って屈託なく笑った。この南部の一部地域では、クリスのような巡礼者たちにささやかな便宜を図ることが文化として根付いている所もある。
 恐縮し、頭を下げるクリスを見やって、マリーは小さく溜め息を吐いた。
「……勉強かぁ。でも、どーせ、私には……」
 箸を止めて空を見上げる…… クリスが笑顔で戻って来た。その両手には瑞々しい果実が二つ。食後のデザートに、とおかみさんから貰ったものだと言う。
 マリーはおおお…… と声を上げると、岩の上に飛び乗り、おかみさんに向かって何度も激しく頭を下げた。
 皮ごとその甘さを頬張る。口中いっぱいに広がる果汁に、その表情がでれんと緩んだ。
「この幸せがいつまでも続けばいいのに……」
 クリスと二人、並んで果実を食べながら、染み入るような心地でマリーが呟いた。


 翌日、朝方──
 聖堂での参拝を終えて巡礼の旅を再開したクリスとマリーは、おかみさんの言葉に甘えて再び屋敷を訪れた。
 村の男たちは既に畑に出た後で、屋敷には女たちが集まって、男たちに出す『昼食』の炊き出しが行われていた。仕事中の差し入れは各農家持ち回りの交代制らしく、今日はおかみさんが担当のようだった。
 作業中の話題は、村の水車小屋に関するものだった。『小麦』の製粉に使う水車に大量発生した『田螺(タニシ)』が付着してしまっており、困っているとの話だった。
「これは…… 一食の恩を返す良い機会かもしれません」
 クリスとマリーは話を聞いて頷き合った。二人が手伝いを申し出るとおかみさんは遠慮したが、これも縁と説得するとありがたく受け入れた。
 差し入れの準備を終えて、件の水車小屋へと案内された二人は、まず、己の目を疑い、そして、後悔した。
 木製の水車に張り付いたタニシは、皆、人頭ほどの大きさがあった。それがビッチリと水車の表面を埋め尽くしていた。
「え……? タニ……シ……?」
「そう、田螺。あんなに大きいのは私も見たこと無いけどねー。リアルブルーの外来生物? それとも黒大公が南部に出た影響かね?」
 そんな影響は、きっと、ない。思いながら、二人はゴクリと息を呑み込んだ。
 おかみさんの説明が続く。大きさはご覧の通り。殻は銃弾を弾き返すくらいに固い。本体は鋤で突けるほど柔らかいが、水車にびっちりと隙間なく張り付いている為、まず普通には狙えない。大の大人が複数で掛かれば引っぺがすことも出来ると言うが……
「でも、こいつら、近づいたり攻撃したりすると、ウネウネとした管から水を引っ掛けてくるんだよ。酸性があるのかヒリヒリ焼けてね。あと粘性があるからヌルヌル滑って手も掛け難くなるし……」
 嘆息するおかみさん。クリスとマリーは改めて『タニシ』を見やった。こちらに気づいたのか、頭部から殻の隙間を縫って触手状の管が何本も伸び、こちらへ向かって届かぬもののピューッ、となんかネバッとした水を吐いてくる。
 クリストマリーは互いに目を合わせると、改めて頷いた。
「……ハンターの皆さんに頼みましょう」

解説

1.状況と目的
 PCたちは、何らかの理由で王国南部の聖堂にいた、或いは、王国南部を移動していたハンターとなります。
 巡礼中のクリスティーヌに現地で声を掛けられ、『大タニシ群の退治』を依頼されました。
 その実体はOP本文中の通り。
 ちなみに契約は事後に行われ、正規の報酬が支払われます。……事後に。つまり、あれです。逃げちゃダメ(

 依頼内容は水車から『タニシ』を全て引っぺがすこと。ですが、成功度はその後の対応も含めて判定されます。


2.舞台
 王国南部のとある巡礼路上の村。その水路。農業王時代の灌漑路だが、今となっては普通の小川と見分けはつかない。
 タニシの張り付いた水車は水路の中。水車周囲の水位は腰程度。
 水に入りたくない人にはメンテ用の通路(苔生した木の板)もあるが、そちらにもタニシがびっちり。
 なお、元灌漑路なので川底は石畳。苔や堆積物で『非情に』滑りやすい(=転びやすい)ため、金属鎧は非推奨。
 ちなみに、川の中には蟹とか虫とか魚とかもいるらしいです。


3.タニシ
 卑猥虚…… もとい、非歪虚。数はたくさん。24匹とか36匹とか。
 やたらと硬いが攻撃力は低い。けど、金属鎧は非推奨なので、というか薄着推奨? 夏はまだ先なのに。
 攻撃方法は本文参照。というかソレは攻撃なのか?
 ハンターの力なら一人でもひっぺがせるか。
 なお、殻にはキチン質の蓋があり、閉じ篭られると倒すのが面倒くさい。でもおかみさんはきっと倒し方を知っている(←ヒント)

マスターより

「どうしてこうなった……?」
 そんなわけでクリスとマリーの巡礼もの。今回は王国南部。こんにちは、柏木雄馬です。
 なんか出発してから随分と長く旅をしているような気がしますが、気にしない。大陸広いですし、貴族ですし、実は理由もありますし(え
 当初は純粋な戦闘ものを企図して書き始めたのですが、できあがってみればこんなんなってました。後悔はしていない。嘘です。震えて眠ります(主に字数)
 でも、まぁ、比較的平和な王国南部ならこっちの感じでがいいかなぁ、と考えたりもするので結果オーラ以下。もとい、オーライか。
 というわけで戦闘系でなく描写系です。こんなんでもいーよ、という方、待ちしております
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/06/25 18:36

参加者一覧

  • エアロダンサー
    月影 夕姫(ka0102
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • ヌリエのセンセ―
    アルト・ハーニー(ka0113
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • アンバランサー
    メルザ・ヘイ・阿留多伎(ka4329
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士

  • 守屋 昭二(ka5069
    人間(蒼)|92才|男性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
シレークス(ka0752
ドワーフ|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/06/16 22:37:41
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/16 22:02:32