ゲスト
(ka0000)
ゴブリン騎兵に追われて
マスター:北生見理一

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/06/29 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/07/08 19:00
オープニング
自由都市同盟が存在する半島東部。
そこは雨に包まれていた。
山の地肌を冷たい雨が打ち、濡れた木々の間から雨粒が容赦なく滴る。
ヒューゴという行商人は、足を引きずりながら、谷間を縫うように歩いていた。濁流が流れる音が聞こえる。刻一刻と水かさを増しているようだ。
追われているのか、ヒューゴは時折、周囲に視線を走らせる。
不意に山々の間から狼の咆哮が木霊した。
(奴らか……!)
ヒューゴは岩陰に身を潜ませ、しばらく様子をうかがう。
ここ最近、狼に騎乗したゴブリンたちが出没していた。狭い道しかない山間部でありながら、彼らゴブリン騎兵は狼の特性を活かし、騎兵としての強みを失うことがない。討伐は遅々として進まず、今も山道では旅人や行商人を悩ませている。
ヒューゴは念のため、一般魔法を利用した狼煙を携帯していた。
(助けが近くに来ていると分かれば、狼煙を上げられるんだが)
だが、狼煙を上げれば、ゴブリン騎兵にも気づかれてしまう。
闇雲に狼煙を上げるわけにはいかなかった。
改めて、自分が危険な道を選んだことを実感する。
ヒューゴにはどうしても村に届けたい物があった。
(この本を村に届ければ、みんなの生活が……!)
ヒューゴの村は貧しい。
痩せた土地に実る作物は少なく、暮らしはなかなか楽にならない。ヒューゴも娘を村に残し、行商人として各地を歩いている。妻亡き今、できれば娘と一緒に暮らしたい。そう願いながらも、村で生きてゆく道が見つからないのだった。
そんな折、一冊の魔法書を手に入れた。
マテリアルを活性化させるという内容らしい。これを使えば、土地の収穫量を増やすことも夢ではない。どうやら第二級禁術に当たり、魔法公害を起こす危険があった。だが、使い方さえ間違わなければ、きっと上手くいく。
ヒューゴはそう確信していた。
その確信が願望に基づくものだと気づかないまま。
実際問題、禁術を記した魔法書を手に入れるという偶然が起こりえるだろうか。その可能性をヒューゴは考えない。
(この魔法書は渡す訳にはいかない)
ヒューゴは歯を食いしばって痛みに耐えた。
雨で体は冷えきったというのに、怪我をした足は火が出たように熱い。過熱した脳裏に浮かぶのは、村の生活を向上させて娘と暮らしたいという思いだけだった。
岩陰から出て、ヒューゴは執念だけで進み始めた。
娘との生活を手に入れるために。
◆
「お願いします、父を助けて下さい」
ハンターソサエティ本部の一室で、少女が深々と頭を下げた。
三つ編みにした金髪が頭よりさらに深く垂れる。
少女の名前はシエラ。
今年一六歳になるというが、栄養が不足しているためか、痩せている印象が強かった。しかし、見目は決して悪くない。今はどこにでもいる村娘と言った装いだが、それなりの衣装を着せれば、驚くほど変わるだろう。
そんなシエラは切羽詰まった表情で、ハンターたちに救いを乞う。
「父の相方が言っていました。父はゴブリンに襲われて、谷底へ落ちていったと。でも私は父が生きていると信じています。お願いです。父が私の結婚資金として貯めていたお金を全部差し上げます。だから、父を助けて下さい」
シエラは目に涙を浮かべ、懸命に父親の救出を訴えた。
感極まったのだろうか、シエラは続く言葉が出てこない様子だった。
そんなシエラに代わり、ハンターソサエティ職員が説明を引き継ぐ。
「問題のゴブリンは狼に騎乗しています。山間部でありながら騎兵としての機動力を発揮する彼らは神出鬼没。なかなか討伐出来ていない現状です。こちらは歩兵、あちらが騎兵では、追撃は容易ではありません」
職員は事務的な口調で状況を述べてゆく。
しかもです、と職員は続ける。
「ヒューゴ氏が谷底へ落ちて無傷とは思えません。ゴブリンたちがうろつく中、彼をどうやって安全な場所まで運ぶのか。難しい問題だと思います。仮に彼を背負ったとして、そのハンターの戦闘力は激減するでしょう」
これも難しい問題だった。
職員は天候についても言及する。
「折り悪く、この地域では雨が降り続いています。ヒューゴ氏の体力はどんどん落ちているでしょうし、土砂崩れの危険もあるかもしれません。もし、この依頼を受けるであれば、足場には重々、気をつけてください」
それともう一つ、と職員は付け加えた。
「ヒューゴ氏の相方から聞いたところ、ヒューゴ氏は禁術が記された魔法書を手に入れたとか。マテリアルを活性化させることで、その土地の収穫量を飛躍的に増大させる。そのような内容のようです」
ですが、と職員は私見を述べる。
「魔法公害を引き起こしかねない内容です。第二級禁術に当たるでしょうね。そのようなシロモノがヒューゴ氏のような一般人の手に入るものでしょうか。私個人の考えを言えば、偽書ではないかと」
確かにそうだった。
しかし、ヒューゴ自身が本物だと信じているのであれば、決定的な証拠を突きつけなければならない。
それとも他に手段があるだろうか。
職員はそこに言及する。
「ヒューゴ氏は貧しい村を立て直して、娘さんとまた一緒に暮らしたいと思っているそうです。だとすれば、そのあたりに説得の鍵があるのかもしれませんね」
最後に職員は、情緒的な意見を付け加えた。
「自分の結婚資金を差し出してまで父親を救いたい。そんな依頼人の気持ちを察してください」
確かに女性として重い決断だ。
ようやく呼吸を整えたのか、シエラが再度お願いする。
「私は父と一緒に暮らせればいいんです。貧しくてもいい。ただ、昔のように一緒にいられれば……」
娘の想いは父に届くだろうか。
そこは雨に包まれていた。
山の地肌を冷たい雨が打ち、濡れた木々の間から雨粒が容赦なく滴る。
ヒューゴという行商人は、足を引きずりながら、谷間を縫うように歩いていた。濁流が流れる音が聞こえる。刻一刻と水かさを増しているようだ。
追われているのか、ヒューゴは時折、周囲に視線を走らせる。
不意に山々の間から狼の咆哮が木霊した。
(奴らか……!)
ヒューゴは岩陰に身を潜ませ、しばらく様子をうかがう。
ここ最近、狼に騎乗したゴブリンたちが出没していた。狭い道しかない山間部でありながら、彼らゴブリン騎兵は狼の特性を活かし、騎兵としての強みを失うことがない。討伐は遅々として進まず、今も山道では旅人や行商人を悩ませている。
ヒューゴは念のため、一般魔法を利用した狼煙を携帯していた。
(助けが近くに来ていると分かれば、狼煙を上げられるんだが)
だが、狼煙を上げれば、ゴブリン騎兵にも気づかれてしまう。
闇雲に狼煙を上げるわけにはいかなかった。
改めて、自分が危険な道を選んだことを実感する。
ヒューゴにはどうしても村に届けたい物があった。
(この本を村に届ければ、みんなの生活が……!)
ヒューゴの村は貧しい。
痩せた土地に実る作物は少なく、暮らしはなかなか楽にならない。ヒューゴも娘を村に残し、行商人として各地を歩いている。妻亡き今、できれば娘と一緒に暮らしたい。そう願いながらも、村で生きてゆく道が見つからないのだった。
そんな折、一冊の魔法書を手に入れた。
マテリアルを活性化させるという内容らしい。これを使えば、土地の収穫量を増やすことも夢ではない。どうやら第二級禁術に当たり、魔法公害を起こす危険があった。だが、使い方さえ間違わなければ、きっと上手くいく。
ヒューゴはそう確信していた。
その確信が願望に基づくものだと気づかないまま。
実際問題、禁術を記した魔法書を手に入れるという偶然が起こりえるだろうか。その可能性をヒューゴは考えない。
(この魔法書は渡す訳にはいかない)
ヒューゴは歯を食いしばって痛みに耐えた。
雨で体は冷えきったというのに、怪我をした足は火が出たように熱い。過熱した脳裏に浮かぶのは、村の生活を向上させて娘と暮らしたいという思いだけだった。
岩陰から出て、ヒューゴは執念だけで進み始めた。
娘との生活を手に入れるために。
◆
「お願いします、父を助けて下さい」
ハンターソサエティ本部の一室で、少女が深々と頭を下げた。
三つ編みにした金髪が頭よりさらに深く垂れる。
少女の名前はシエラ。
今年一六歳になるというが、栄養が不足しているためか、痩せている印象が強かった。しかし、見目は決して悪くない。今はどこにでもいる村娘と言った装いだが、それなりの衣装を着せれば、驚くほど変わるだろう。
そんなシエラは切羽詰まった表情で、ハンターたちに救いを乞う。
「父の相方が言っていました。父はゴブリンに襲われて、谷底へ落ちていったと。でも私は父が生きていると信じています。お願いです。父が私の結婚資金として貯めていたお金を全部差し上げます。だから、父を助けて下さい」
シエラは目に涙を浮かべ、懸命に父親の救出を訴えた。
感極まったのだろうか、シエラは続く言葉が出てこない様子だった。
そんなシエラに代わり、ハンターソサエティ職員が説明を引き継ぐ。
「問題のゴブリンは狼に騎乗しています。山間部でありながら騎兵としての機動力を発揮する彼らは神出鬼没。なかなか討伐出来ていない現状です。こちらは歩兵、あちらが騎兵では、追撃は容易ではありません」
職員は事務的な口調で状況を述べてゆく。
しかもです、と職員は続ける。
「ヒューゴ氏が谷底へ落ちて無傷とは思えません。ゴブリンたちがうろつく中、彼をどうやって安全な場所まで運ぶのか。難しい問題だと思います。仮に彼を背負ったとして、そのハンターの戦闘力は激減するでしょう」
これも難しい問題だった。
職員は天候についても言及する。
「折り悪く、この地域では雨が降り続いています。ヒューゴ氏の体力はどんどん落ちているでしょうし、土砂崩れの危険もあるかもしれません。もし、この依頼を受けるであれば、足場には重々、気をつけてください」
それともう一つ、と職員は付け加えた。
「ヒューゴ氏の相方から聞いたところ、ヒューゴ氏は禁術が記された魔法書を手に入れたとか。マテリアルを活性化させることで、その土地の収穫量を飛躍的に増大させる。そのような内容のようです」
ですが、と職員は私見を述べる。
「魔法公害を引き起こしかねない内容です。第二級禁術に当たるでしょうね。そのようなシロモノがヒューゴ氏のような一般人の手に入るものでしょうか。私個人の考えを言えば、偽書ではないかと」
確かにそうだった。
しかし、ヒューゴ自身が本物だと信じているのであれば、決定的な証拠を突きつけなければならない。
それとも他に手段があるだろうか。
職員はそこに言及する。
「ヒューゴ氏は貧しい村を立て直して、娘さんとまた一緒に暮らしたいと思っているそうです。だとすれば、そのあたりに説得の鍵があるのかもしれませんね」
最後に職員は、情緒的な意見を付け加えた。
「自分の結婚資金を差し出してまで父親を救いたい。そんな依頼人の気持ちを察してください」
確かに女性として重い決断だ。
ようやく呼吸を整えたのか、シエラが再度お願いする。
「私は父と一緒に暮らせればいいんです。貧しくてもいい。ただ、昔のように一緒にいられれば……」
娘の想いは父に届くだろうか。
解説
・ヒューゴが持っている狼煙は安価なものなので、一〇分程度しか保ちません。
また、狼煙は夜間に挙げても視認しづらいです。
雨の日も同様で、なにかしら工夫する必要があるでしょう。
狼煙が見える距離は山一つ分とします。
・雨が降り続いているため、足跡が残りにくいです。
逆に考えれば、足跡が残っているということは、かなり近くにヒューゴが、あるいはゴブリン騎兵がいるということですね。
・なんらかの方法で山間部に適した乗り物に騎乗することも可能です。
機械あるいは動物……。
クラスによって騎乗可能な乗り物があるはずですね。
・増水した川をゴブリン騎兵が渡ることはできません。
ということは……。
・ゴブリン騎兵の装備は、ショートスピアにスモールシールド、レザーアーマーと言った感じです。
あまり素材は良くないようですね。
狼は防具などを装備してはいません。
・ヒューゴは禁術が記された魔法書に強い執着があります。
しかし、魔法書は本物なのでしょうか。
執着を解いてあげないと、依頼人であるシエラが幸せになれないかもしれませんね。
また、狼煙は夜間に挙げても視認しづらいです。
雨の日も同様で、なにかしら工夫する必要があるでしょう。
狼煙が見える距離は山一つ分とします。
・雨が降り続いているため、足跡が残りにくいです。
逆に考えれば、足跡が残っているということは、かなり近くにヒューゴが、あるいはゴブリン騎兵がいるということですね。
・なんらかの方法で山間部に適した乗り物に騎乗することも可能です。
機械あるいは動物……。
クラスによって騎乗可能な乗り物があるはずですね。
・増水した川をゴブリン騎兵が渡ることはできません。
ということは……。
・ゴブリン騎兵の装備は、ショートスピアにスモールシールド、レザーアーマーと言った感じです。
あまり素材は良くないようですね。
狼は防具などを装備してはいません。
・ヒューゴは禁術が記された魔法書に強い執着があります。
しかし、魔法書は本物なのでしょうか。
執着を解いてあげないと、依頼人であるシエラが幸せになれないかもしれませんね。
マスターより
初めまして、北生見理一(きたうみりいち)と申します。
今回は山で遭難した行商人を救出してもらう依頼を考えました。
しかし、狼に乗ったゴブリン騎兵が行商人を狙っているようです。
険しい山道では狼の機動力は侮れません。
戦うのであれば、工夫が必要でしょう。
行商人は禁術が記載された魔法書に強い執着があるようです。
それだけ娘さんとの暮らしを取り戻したいんでしょうね。
しかし、禁術を記した魔法書は、そうそう手に入る物ではありません。
OPで触れたとおり、偽書という可能性もありますよね。
そのあたりの事情を加味した上で、娘さんであるシエラの気持ちを伝えてあげてください。
今回は山で遭難した行商人を救出してもらう依頼を考えました。
しかし、狼に乗ったゴブリン騎兵が行商人を狙っているようです。
険しい山道では狼の機動力は侮れません。
戦うのであれば、工夫が必要でしょう。
行商人は禁術が記載された魔法書に強い執着があるようです。
それだけ娘さんとの暮らしを取り戻したいんでしょうね。
しかし、禁術を記した魔法書は、そうそう手に入る物ではありません。
OPで触れたとおり、偽書という可能性もありますよね。
そのあたりの事情を加味した上で、娘さんであるシエラの気持ちを伝えてあげてください。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/07/02 00:26
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/29 08:08:02 |
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お父さまを救いましょう! パティ=アヴァロンウッド(ka3439) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/06/29 09:18:49 |