• 戦闘

奪われた平穏・共に生きる森

マスター:芹沢かずい

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/06/27 22:00
リプレイ完成予定
2015/07/06 22:00

オープニング

「今日もいいお天気だね、ルイお兄ちゃん」
「うん。こんな時に森を歩けたら気持ちいいだろうなあ……」
「あたしたちはまだ奥に行っちゃダメなのよ。それに今日は、お客様用に凄い獲物を捕って来るって言ってたよ」
「うん、お母さんも張り切ってたね」
 森の入り口からさほど入らない場所に、清らかな流れを湛える小川がある。傍の手頃な岩に腰掛け、二人の兄妹は森の奥に入って行った両親を待っていた。父親は猟師として獲物を狩りに、母親は季節の植物を採集する為だ。
 この村に住む者たちは、全てとは言わないが、この森から得られる自然のものに頼って生活している。村がここに出来た時から、それはずっと変わらずにある。
 緑豊かな広い森には、立派に育った広葉樹がいくつもそびえ立ち、見上げる高さからは木漏れ日が地面にまで届き、無数の陽だまりをつくっている。森の奥に水源地があり、そこから清らかな小川が蛇行しつつ、森中を潤すように流れている。川に近い場所にある岩や、倒れて年月が経った木には苔が生えている。命のサイクルを自然のままに繰り返すこの森は、まさに自然の宝庫。
 森の男たちは(例外もいるが)猟師として腕をふるい、女たちは季節の植物を採集する。小動物を狙った大型の肉食獣もいるにはいるが、村の者たちは彼らと遭遇した時の対処法を心得ている。獣たちでさえ、危害を及ぼさないと分かっている村の人間たちには、滅多に牙を剥くこともない。……まさに、理想的な森との共存関係だった。
 だから、この森が村人に牙を剥くことなど予想だにしていなかっただろう。

 留まることない、清らかな流れに足をつけ、ばしゃばしゃと楽しんでいた兄妹の耳に、突然奇妙な音が届いた。
 ガサガサガサっ……ズシン……
「何の音……?」
 突風が木の枝を揺らした音ではない。地響きのような音も僅かに聞こえた気がした。……少しずつ近付いてくるようだ。
「何だろう……ライ、こっちにきて」
 ルイは妹の手を取って座っていた岩から降りるのを手伝うと、比較的乾いた地面の多い場所へと誘導した。そこから、森の奥へ目を凝らす。不気味に響いてくるその音は、消えるどころか少しずつ大きくなってきていた。
「……い! ……さい! ルイ、ライ! 逃げなさいっ!」
「っ! お母さんっ?」
 低木の茂みを掻き分け、必死の形相で向かって来たのは彼らの母親だった。あちこちにぶつかり、躓きながらこちらへ向かって必死に叫んでいる。
「逃げるのよっ! そのまま村まで走りなさい!」
 子供たちは顔を見合わせて一瞬戸惑った様子を見せたが、母親の叫びに尋常ならざるものを感じたのだろう。そのまま手を繋ぎ、村へと向かって駆け出した。

 ルイとライが懸命に走って村に到着するのと、村の青年が彼らの姿を見つけるのはほぼ同時だった。少し遅れて母親が、汗だくの上に埃まみれになって追いついてきた。まだかなり息があがっている。
「どうしたんです? こんなに慌てて……旦那さんは? 今日は一緒に森に行くと言ってなかったですか?」
 三人の呼吸が落ち着くのを待って、村の青年、サレスが問うた。彼は若いが、先日村の長の座を受け継いだばかりの新米村長だ。
「夫は……、まだ、森の中に……私だけ逃がしてくれて……」
「待って、ゆっくり話して」
 取り乱す母親の背中に手を当て、宥めながら優しく話を聞き出そうとするサレス。子供たちは混乱しているが、気丈にも母親を気遣い、同じように背中をさすっている。
「足元の草や茂みが枯れている部分があったの……不自然に枯れてる木もあったわ。……そんなに奥には入り込んでいない場所よ……。そしたら、……そうしたら! 突然黒い塊が飛びかかって来たの! 夫は私を庇って……怪我をしたのかどうかも分からない……とにかく、子供たちを逃がせって……それで、それで私……!」
 そのまま母親は、サレスの腕の中にくずおれるように座り込んでしまった。サレスはしっかりと母親を抱き上げると、子供たちに向き直った。
「君たちはその『黒い塊』というのは見なかったの?」
「うん、僕たちは見てない。大きな熊みたいな……ずしんっていう足音は聞こえたけど」
「そうか。この辺りで大きな動物といえば、確かに熊くらいだろうけど……猟師が入り込む場所での目撃情報は少ないはず……もしかして……」
 サレスの最後の言葉は独り言のようだ。
「サレスお兄ちゃん?」
 大きな目に涙を浮かべたライは、不安げな声だ。健気にも、泣くまいとしている様子が伝わってくる。
「ん、大丈夫だよ。とにかくお母さんを休ませてあげよう」
「うん」
 サレスの言葉に、二人の子供は大きく頷いた。

「……と、言うわけなんです。これまで俺たちは、ずっとこの森と共に生きてきました。今日森に現れたのヴォイドと呼ばれるものだったら、俺たち一般人にはとても太刀打ちできません。どうか、皆様のお力で、この森と、森と共にある俺たちの村を救って頂けないでしょうか?」
 彼は偶然にもこの村にやってきていたハンターたちに、森に出現したヴォイドらしきものの退治を依頼したのだった。
「村人が直接被害を受けたのは今回が初めてなのですが……実は数日前から、季節外れの落ち葉や立ち枯れなどを目撃したという話もあります。……もっと早くに依頼を出すべきでした……。皆様がここにいらっしゃるのも何かのご縁……どうか、宜しくお願いします!」
 深々と頭を下げるサレスの後ろから、ルイとライが恐る恐る顔を出す。
「僕たちのお父さんはちょっとくらい怪我したって、死んじゃったりしないよ!」
「そうだよ! 隠れ家もいっぱいあるんだから!」
「だからお願い! 真っ黒なヤツやっつけたら、お父さんも助けて!」
 小さな兄妹にとっても、森は生活して行く上で欠くことの出来ない存在として、心に根付いているようだ。
 三人は改めて、目の前にいるハンターたちに頭を下げるのだった。

解説

●目的は、雑魔を倒し、森と、森と生活を共にする村の生活を守ることと、消息を絶っている父親を捜し出すことです。
●障害となっているのは、突如出現した熊型の雑魔と思しきもの。攻撃の手段や大きさなどは不明です。
●父親が怪我をしている可能性は大きいですが、森には彼らが身を守る、あるいは身を隠すための場所もあるようです。
●森は村人が生活を営む上で、なくてはならない存在です。森での狩りや植物の採集に限らず、多くの村人が森の恵みを分け合い、助け合って暮らしています。勿論、生活のすべてを森に依存しているわけではありませんが、『森があれば生活ができる』程度には大切にしています。戦闘となった場合でも、彼らの生活を守るという意味では、被害は最小限にとどめるべきでしょう。
●舞台は緑豊かな広葉樹林です。地面は水分を多く含んでいて踏み心地は柔らかく、足音をある程度消してくれます。
●比較的高い位置に葉を茂らせる大木が多いので、戦闘になった場合、剣などを振り回すスペースは十分にあります。またこの森は奥へと入って行くと、切り立った岩壁を有する岩山に三方への進行を妨げられ、山越えをするのは例え雑魔であっても容易ではないでしょう。

マスターより

初めまして、芹沢一唯と申します。今回が初めてのお仕事になります。宜しくお願いします。
今回は熊の雑魔を出してみました。実際熊と遭遇した時って、死んだフリはNGなんですよね。でも雑魔だったら……死んだフリで動かないでいたら興味が無くなって本人は助かったりしないかな、なんて思ってみたりしました。
村の人間ならばほとんど全員が森へ入ったことがあるようです。単に森林浴を楽しんだり……豊かな自然は大切にしたいですね。どこをうろついているのか分からない熊がいるのだとしたら、近付くのも危ないでしょうね。……芹沢の実家近くにも熊は出ますが。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/07/02 23:54

参加者一覧


  • リィン・ファナル(ka0225
    人間(蒼)|19才|女性|猟撃士
  • ♯冷静とは
    ミネット・ベアール(ka3282
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士
  • 不撓の森人
    リュカ(ka3828
    エルフ|27才|女性|霊闘士
  • 火力こそパワー
    アーデルハイト ライジンガー(ka4406
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 満月の夜の静かな宴
    ユズ・コトノハ(ka4706
    人間(紅)|12才|女性|霊闘士

  • 鳴瀬 桜(ka4919
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
リュカ(ka3828
エルフ|27才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/06/27 20:28:05
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/24 11:24:57