ゲスト
(ka0000)
50年の罪と父性
マスター:瑞木雫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/06/28 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/07/07 19:00
オープニング
「……アト、これ、お前が作ったのか?」
男は思わず手が震えた。
息子のアトが作ったオブジェを見つめ、感銘を受けたのだ。
何十年も職人として仕事一筋に生き、身を削って来た人間だからこそ、衝撃だった。
粘土をこねて作ったそれは端から見れば、ただ子供が目一杯こねくりまわしただけのものに見えるだろう。
しかしこの男、クレフは違った。
このオブジェは類まれ無い才能を爆発させた芸術作品である、と。
「お前は天才だ……! ものづくりの道に進みなさい、きっと、いつか、お前はものすごいものを作れるはずだ……!」
こうしてクレフがアトを褒めたのは、前にも後にもただこれ限り。
息子の才能を見出し、いつか発揮できるものだと信じて瞳を爛々と輝かせていたのも、前にも後にも一度きり。
だからこそ過去の想い出なのに、身が奮い立ったあの瞬間をアトは忘れることなく、生きてきていた。
――そして、50年後。
アトは名誉ある賞を受賞することになる。
世界的に有名である訳ではないけれど、アトらが住む地域でものづくりをしている職人であるならば誰もが欲しい賞だ。かつて職人だったクレフでさえ届く事のなかった、憧れであり、夢なのだ。
芸術的な繊細さが何処か心を掴むような、立派なオブジェ。
美しすぎて、どこか物悲しい。
けれどじっくり見つめると幸福感が溢れだすような、
薄水色の花がとても印象的である。
受賞作品。
そのタイトルの名は、『心覚え』。
●依頼
「クレフおじいちゃんと一緒にこっそり授賞式に忍び込んで欲しいのです……。お父さんには内緒で……!」
ハンター達は、新人職員であるラフィーナに依頼されていた。
彼女によると父であるアトという男は、ある地域に限定したものづくり職人にとっての名誉ある賞を受賞することになったそうなのだ。
しかしその授賞式には『恥ずかしいから家族は呼ばない』ということになっていた。
アトは強烈な程頑固者で、不器用な、恥ずかしがり屋だった。
ラフィーナはというとそれ程ぴんと来る賞でも無かったのもあり、父が恥ずかしいというなら……と納得していたのだが、お爺ちゃんだけは(何も言わなかったけれど)残念そうにしていたのだそうで、出来れば見せてあげたいと思ったのだそうだ。
「クレフおじいちゃん……とても無口でちょっとお付き合いしづいらい感じもあるかもしれないですが、でも、本当は凄く優しいんです……! 悪い人じゃないので、あの、何かあったとしても、お気を悪くなさらないでくださいね……? ずっとずっと、私や家族にさえ、無口な人だったんです……」
ラフィーナのフォローは要するに、クレフがハンター達に何も喋らない上で不愛想にしてしまうかもしれない事を見越してのもの。
産まれてこの方、ずっと頑固一筋で無口を貫き通してきた性分だから、付き合いが悪く、人と衝突することも度々あったのだ。
孫として心配だったのだろう。
「だから、宜しくお願いします……!」
――しかしその心配は意外にも、クレフの方から破ったのだった。
当日。
授賞式開始まであと二時間。
とある村のクレフの自宅にて。
ラフィーナに要請されて迎えに来たというハンター達を見つめたクレフは、満面の笑顔を浮かべていた。
●50年の罪と父性
広大な街道を馬車で移動中。
授賞式開始まであと一時間。
……到着まであと三十分の予定。
「本当に凄い賞なんだ……! 俺達ものづくりの職人にとっては喉から手が出るほど欲しくて、たまらなくなるほどのな……!」
クレフは意気揚々と興奮気味にハンター達へ伝えていた。それがどんなに素晴らしい賞なのか、大変な賞なのかを、延々と語りながら。その様子はまるで息子を自慢する父親そのものだっただろう。
ラフィーナから紹介されていた人物像とは異なるような饒舌さがあったが、普段、無口だというのは本当らしい。
そればかりか今迄全くと言っていいほど、クレフは息子のアトを褒めた事が無いらしく、何があったとしても今のように素直な自分を曝け出すことは絶対にできない。
父親として厳しく叱り、甘やかすことなく、強く在れと育ててきたのだ。
その見本となるべく、人として、父として強く在るように生きてきたクレフは、アトの前で素直になることが何よりも難しい……。
「……アトは5歳の時に母親を亡くしてな。辛い想いも寂しい想いもいっぱいしてきただろうが、アイツは立派に育ってくれた。俺はというと、少し厳しく叱りすぎて、まったく甘やかせられなくて、良い父親では無かったのにな……。―――……。だが、本当に立派に育ってくれた……。楽しみだな………」
その代り、ハンター達の前では、今だけ、不思議と素直になれていた。
先ほどまでは上機嫌だったクレフが今度は泣きそうになりながらゆっくりと、呟く。
本当に本当に心から嬉しいのだろう。
そして同時に、今迄の育て方を悔いているところがあるのだろう。
ハンター達にはクレフの想いがひしひしと伝わっていたかもしれない。
しかし。
……そんな時間が突如、ある存在によってぶち壊されてしまった。
―――なんだあれは……!
ハンターは遠くの気配を察して、気付いた。
巨大かつ不気味な黒い影。
蜘蛛を模した歪虚が此方へと向かってきている。
―――こんな時に……!
何処で発生し、何処からやってきたかもわからない敵に遭遇してしまったのだ。
クレフを授賞式まで送りたいところだったが、奴をこのまま放っておくことはできない。
クレフの安全の為にも、だ。
こうしてハンター達は戦闘を余儀なくされてしまったのだ。
授賞式開始迄に間に合わせようとするならば、時間は掛けられそうにない―――!
一刻も早い討伐を要求されていた!
●会場では……
大きくて華やかな会場には、大勢の人々が集まっていた。
(やべぇ……緊張する……)
こんなに大勢の前で表彰されるなんて絶対耐えらんねぇ……とか言ってこっそり隠れていたアトは、盛大な溜息を吐いた。
そしてなんとなく、白いヴェールに包まれている受賞作品『心覚え』を見つめながら、物思いに耽る。
(親父……どうしてるかなぁ)
まさかそのクレフが此方へ向かってきているとは露知らず、また大きな溜息を、はぁ、と吐いているのだった。
男は思わず手が震えた。
息子のアトが作ったオブジェを見つめ、感銘を受けたのだ。
何十年も職人として仕事一筋に生き、身を削って来た人間だからこそ、衝撃だった。
粘土をこねて作ったそれは端から見れば、ただ子供が目一杯こねくりまわしただけのものに見えるだろう。
しかしこの男、クレフは違った。
このオブジェは類まれ無い才能を爆発させた芸術作品である、と。
「お前は天才だ……! ものづくりの道に進みなさい、きっと、いつか、お前はものすごいものを作れるはずだ……!」
こうしてクレフがアトを褒めたのは、前にも後にもただこれ限り。
息子の才能を見出し、いつか発揮できるものだと信じて瞳を爛々と輝かせていたのも、前にも後にも一度きり。
だからこそ過去の想い出なのに、身が奮い立ったあの瞬間をアトは忘れることなく、生きてきていた。
――そして、50年後。
アトは名誉ある賞を受賞することになる。
世界的に有名である訳ではないけれど、アトらが住む地域でものづくりをしている職人であるならば誰もが欲しい賞だ。かつて職人だったクレフでさえ届く事のなかった、憧れであり、夢なのだ。
芸術的な繊細さが何処か心を掴むような、立派なオブジェ。
美しすぎて、どこか物悲しい。
けれどじっくり見つめると幸福感が溢れだすような、
薄水色の花がとても印象的である。
受賞作品。
そのタイトルの名は、『心覚え』。
●依頼
「クレフおじいちゃんと一緒にこっそり授賞式に忍び込んで欲しいのです……。お父さんには内緒で……!」
ハンター達は、新人職員であるラフィーナに依頼されていた。
彼女によると父であるアトという男は、ある地域に限定したものづくり職人にとっての名誉ある賞を受賞することになったそうなのだ。
しかしその授賞式には『恥ずかしいから家族は呼ばない』ということになっていた。
アトは強烈な程頑固者で、不器用な、恥ずかしがり屋だった。
ラフィーナはというとそれ程ぴんと来る賞でも無かったのもあり、父が恥ずかしいというなら……と納得していたのだが、お爺ちゃんだけは(何も言わなかったけれど)残念そうにしていたのだそうで、出来れば見せてあげたいと思ったのだそうだ。
「クレフおじいちゃん……とても無口でちょっとお付き合いしづいらい感じもあるかもしれないですが、でも、本当は凄く優しいんです……! 悪い人じゃないので、あの、何かあったとしても、お気を悪くなさらないでくださいね……? ずっとずっと、私や家族にさえ、無口な人だったんです……」
ラフィーナのフォローは要するに、クレフがハンター達に何も喋らない上で不愛想にしてしまうかもしれない事を見越してのもの。
産まれてこの方、ずっと頑固一筋で無口を貫き通してきた性分だから、付き合いが悪く、人と衝突することも度々あったのだ。
孫として心配だったのだろう。
「だから、宜しくお願いします……!」
――しかしその心配は意外にも、クレフの方から破ったのだった。
当日。
授賞式開始まであと二時間。
とある村のクレフの自宅にて。
ラフィーナに要請されて迎えに来たというハンター達を見つめたクレフは、満面の笑顔を浮かべていた。
●50年の罪と父性
広大な街道を馬車で移動中。
授賞式開始まであと一時間。
……到着まであと三十分の予定。
「本当に凄い賞なんだ……! 俺達ものづくりの職人にとっては喉から手が出るほど欲しくて、たまらなくなるほどのな……!」
クレフは意気揚々と興奮気味にハンター達へ伝えていた。それがどんなに素晴らしい賞なのか、大変な賞なのかを、延々と語りながら。その様子はまるで息子を自慢する父親そのものだっただろう。
ラフィーナから紹介されていた人物像とは異なるような饒舌さがあったが、普段、無口だというのは本当らしい。
そればかりか今迄全くと言っていいほど、クレフは息子のアトを褒めた事が無いらしく、何があったとしても今のように素直な自分を曝け出すことは絶対にできない。
父親として厳しく叱り、甘やかすことなく、強く在れと育ててきたのだ。
その見本となるべく、人として、父として強く在るように生きてきたクレフは、アトの前で素直になることが何よりも難しい……。
「……アトは5歳の時に母親を亡くしてな。辛い想いも寂しい想いもいっぱいしてきただろうが、アイツは立派に育ってくれた。俺はというと、少し厳しく叱りすぎて、まったく甘やかせられなくて、良い父親では無かったのにな……。―――……。だが、本当に立派に育ってくれた……。楽しみだな………」
その代り、ハンター達の前では、今だけ、不思議と素直になれていた。
先ほどまでは上機嫌だったクレフが今度は泣きそうになりながらゆっくりと、呟く。
本当に本当に心から嬉しいのだろう。
そして同時に、今迄の育て方を悔いているところがあるのだろう。
ハンター達にはクレフの想いがひしひしと伝わっていたかもしれない。
しかし。
……そんな時間が突如、ある存在によってぶち壊されてしまった。
―――なんだあれは……!
ハンターは遠くの気配を察して、気付いた。
巨大かつ不気味な黒い影。
蜘蛛を模した歪虚が此方へと向かってきている。
―――こんな時に……!
何処で発生し、何処からやってきたかもわからない敵に遭遇してしまったのだ。
クレフを授賞式まで送りたいところだったが、奴をこのまま放っておくことはできない。
クレフの安全の為にも、だ。
こうしてハンター達は戦闘を余儀なくされてしまったのだ。
授賞式開始迄に間に合わせようとするならば、時間は掛けられそうにない―――!
一刻も早い討伐を要求されていた!
●会場では……
大きくて華やかな会場には、大勢の人々が集まっていた。
(やべぇ……緊張する……)
こんなに大勢の前で表彰されるなんて絶対耐えらんねぇ……とか言ってこっそり隠れていたアトは、盛大な溜息を吐いた。
そしてなんとなく、白いヴェールに包まれている受賞作品『心覚え』を見つめながら、物思いに耽る。
(親父……どうしてるかなぁ)
まさかそのクレフが此方へ向かってきているとは露知らず、また大きな溜息を、はぁ、と吐いているのだった。
解説
【想定するリプレイの流れ】
1.《馬車に乗って移動中》
※皆様の方でご用意せずとも、馬車と御者の手配は済んでいるものとします
2.《蜘蛛雑魔との戦闘》
3.《会場潜入》
皆様のプレイングによって各項目の量は変動したり、省略したりします。
【NPC情報】
※クレフとアトは、50年の罪と純愛、に登場したNPCと同一人物です。
《クレフ》
80歳のお爺さん。元ものづくり職人。
杖をついて歩いているので走る事は困難かもしれません。
無口で頑固者で、アトに対してはより一層素直になれませんが、
父親として今回の受賞はとても嬉しいことだったようです。
ですが心の何処かで甘やかさずに育ててきた罪悪感のようなものを、年老いてから一層感じているかもしれません。
50年前、最愛の妻を亡くし、残された息子の為だけに生きてきたつもりでしたが、今迄を振り返ると空回りしていたことは多かったかもしれません。
《アト》
55歳の青年。ものづくり職人。
オブジェ『心覚え』が見事受賞。
(そのオブジェは、クレフと亡き母との想い出をモチーフにしたものです(PL情報))
父に似て頑固者で不器用です。
5歳の時に優しい母を亡くし、子供時代は甘える事ができませんでしたが、アトはアトなりに父に感謝しているようです。
《ラフィーナ》
実は『想い出という名の宝物』でこっそり登場していた新人職員だったりします。(笑)
同行しておらず、会場にもおりません。
【敵の情報】
《巨大な蜘蛛歪虚》×1
体長2m。
強靭な歯に、強靭な足。
逃げようとすればかなり粘着の強い糸を吐き出します。
(消滅させれば、糸も消えます)
【会場の情報】
大勢の人が集まっていますので、静かにしていれば表彰中のアトに見つかる事は無いでしょう。
会場は基本、関係者以外立ち入り禁止です。
事前行動として交渉していた方がいれば裏口からスムーズに入る事が出来るかもしれません。(交渉時にラフィーナを同行させるのはOKです)
1.《馬車に乗って移動中》
※皆様の方でご用意せずとも、馬車と御者の手配は済んでいるものとします
2.《蜘蛛雑魔との戦闘》
3.《会場潜入》
皆様のプレイングによって各項目の量は変動したり、省略したりします。
【NPC情報】
※クレフとアトは、50年の罪と純愛、に登場したNPCと同一人物です。
《クレフ》
80歳のお爺さん。元ものづくり職人。
杖をついて歩いているので走る事は困難かもしれません。
無口で頑固者で、アトに対してはより一層素直になれませんが、
父親として今回の受賞はとても嬉しいことだったようです。
ですが心の何処かで甘やかさずに育ててきた罪悪感のようなものを、年老いてから一層感じているかもしれません。
50年前、最愛の妻を亡くし、残された息子の為だけに生きてきたつもりでしたが、今迄を振り返ると空回りしていたことは多かったかもしれません。
《アト》
55歳の青年。ものづくり職人。
オブジェ『心覚え』が見事受賞。
(そのオブジェは、クレフと亡き母との想い出をモチーフにしたものです(PL情報))
父に似て頑固者で不器用です。
5歳の時に優しい母を亡くし、子供時代は甘える事ができませんでしたが、アトはアトなりに父に感謝しているようです。
《ラフィーナ》
実は『想い出という名の宝物』でこっそり登場していた新人職員だったりします。(笑)
同行しておらず、会場にもおりません。
【敵の情報】
《巨大な蜘蛛歪虚》×1
体長2m。
強靭な歯に、強靭な足。
逃げようとすればかなり粘着の強い糸を吐き出します。
(消滅させれば、糸も消えます)
【会場の情報】
大勢の人が集まっていますので、静かにしていれば表彰中のアトに見つかる事は無いでしょう。
会場は基本、関係者以外立ち入り禁止です。
事前行動として交渉していた方がいれば裏口からスムーズに入る事が出来るかもしれません。(交渉時にラフィーナを同行させるのはOKです)
マスターより
こんにちは、瑞木雫です…!
MSスケジュールにて宣言しておりました通り、【50年の罪と純愛】でお世話になったクレフとアトが、またまたお世話になります。
ハンターの皆様の父親はどんな方でしたでしょうか?
自分の父を重ねて頂いたり、または親心という視点で見つめて頂いたり、
不器用な親子の様子を見守って頂きながら何かを想って頂ける機会となれば、とても嬉しく思います。
リプレイでは心情中心の描写となる予定なので、
心情を書いて頂けたら更に嬉しいなぁと思います……!
宜しくお願い致します……!
MSスケジュールにて宣言しておりました通り、【50年の罪と純愛】でお世話になったクレフとアトが、またまたお世話になります。
ハンターの皆様の父親はどんな方でしたでしょうか?
自分の父を重ねて頂いたり、または親心という視点で見つめて頂いたり、
不器用な親子の様子を見守って頂きながら何かを想って頂ける機会となれば、とても嬉しく思います。
リプレイでは心情中心の描写となる予定なので、
心情を書いて頂けたら更に嬉しいなぁと思います……!
宜しくお願い致します……!
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/07/20 23:48
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 レイレリア・リナークシス(ka3872) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/06/27 22:54:37 |
|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/24 21:22:19 |