ゲスト
(ka0000)
君と見る星
マスター:桐崎ふみお

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/06/30 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/07/09 19:00
オープニング
●
窓際に置かれたベッドの上、エーリクは枕に背を預け本を読む。
外は風が吹いているのだろう、レースのカーテンから差し込む陽光が作り出す木陰がページの上に複雑な模様を作りだす。そのせいで字は追い難いが別段急いで読む必要はない、むしろ退屈しているエーリクにとって光と影のダンスは見ていて面白かった。
まもなく15回目の誕生日だ。
本を傍らに置き、ブランケットの上からそっと足を撫でる。
ベッドから一人で起き上がれなくなってどれくらい経っただろうか……数えようとして止めた。エーリクの体は原因不明の病におかされていた。時折一族に発症する病である。
十歳の誕生日を過ぎたころ、急に立ち止まることができなくなったのが最初だった。そのうち歩けなくなり、今は背筋をまっすぐに保つことも辛い。こうして徐々に体が動かなくなり、最終的に死に至る。病の進行速度は人それぞれだが、一度発症すれば治ることはない。
手をゆっくりと握って開く、それを数度繰り返した。
今年は誕生日を迎えることができそうだが来年はどうだろうか……。
「最近外に出ていないなぁ」
苦笑を零し窓の外へと顔を向ける。コツンと何かがガラスに当たる音。
ベッドの上を腕だけで進み、窓を押し開いた。
「エーリク」
下から聞こえる彼を呼ぶ小さな声。幼馴染の少女エッダが手を振っている。
「ちょっと待ってね」
口の動きだけでそう伝えたエッダは近くの木を登り始め、あっという間に二階のエーリクの部屋の窓の近くの枝に腰掛けた。
「危ないよ」
「だいじょーぶ。私が木登り得意なの知っているでしょ」
少し呆れた様子のエーリクにエッダはそばかすの浮かんだ顔をくしゃりと崩して笑う。そろそろ女の子らしくしてもよい年齢だろうに、泥だらけになって遊んでいた子供のころと変わらない。
「これお土産、マルガさんに活けてもらって」
そう言うとエッダはベルトに挟んでいたアジサイの枝をエーリクの膝の上に投げてよこした。エーリクが寝たきりの生活になってからというものエッダはこうして遊びに来ては外のことを話してくれる。
日がな一日ベッドで寝るか本を読むか家政婦のマルガと話をするしかないエーリクにとってそれはとても楽しみな時間であった。
「そろそろエーリクの誕生日だね。何かほしいものある?」
話の途中、エッダが尋ねる。
「欲しいもの……」
問われて脳裏に浮かんだのが病になる少し前、10歳の誕生日のこと。毎年エーリクの誕生日近くになると流れ星をたくさん見ることができる。10歳の誕生日の夜、家族が寝静まった後、二人で近くの丘まで流れ星を見に行ったのだ。結局、家を抜け出したことが双方の家族にばれて大目玉を食らったが、真夜中の冒険、あの夜二人で見上げた流れ星はエーリクにとって大切な思い出だった。
「ながれぼし……」
言いかけて飲み込む。
「ん? 何?」
「あ……うん、エッダは絵が得意だろ。だから丘から見た街を描いてよ」
エッダが先ほどの呟きを聞いてなかったことに胸を撫で下ろす。もしも聞いていたら彼女のことだ、無理をしてでもエーリクに流れ星をみせようと頑張ってくれるだろう。そんな迷惑かけることはできない。
「りょーか……あっ!」
カチャリと部屋の戸が開く。お茶のワゴンとともに家政婦のマルガが顔を覗かせた。
「坊ちゃま、お茶を……。エッダ!!」
「エーリク、ちゃあんと額縁用意しといてね。マルガさんもお元気そうで何より!」
エッダは慌てて木から飛び降りると「またねー」と庭を走って横切っていく。
「まったくあのお転婆ときたら……。そういえば先ほど先触れがやってきて、明後日旦那様がお戻りなるそうですよ」
「ああ、だから今日は賑やかだったのか」
「誕生日プレゼントは期待してくれと旦那様からの伝言です」
エーリクは街で古くから続く商家バルテン家の末っ子だ。上には兄と姉が一人ずつ。
商人である父アルノーは家を空けていることが多い。今回も王都まで使用人と護衛のハンターを連れ商談に出掛けていた。
毎回、帰ってくると同行した皆を労うため宴を開くのが常だ。今、屋敷内ではその準備に追われているのだろう。
「ねぇ、マルガ、今年の誕生日少しでいいから星を見にいけないかな?」
「だめですよ、夜の風はお体に悪いと旦那様も仰っていたじゃないですか」
決して治ることのない病に今更体に悪いも何もないだろうにと思うが自分のことを心配してくれる相手に当たるわけにもいかない。エーリクは「そうだね」と微笑むとアジサイを差し出した。
「これを花瓶に活けておいてくれないかい?」
「エッダからのお土産ですか。すぐに活けてきましょうね」
ベッド脇のテーブルにお茶を置いたマルガがアジサイを持って部屋から出て行く。
カップを取り上げる。手が震えなかなかうまく持つことができない。
「……もう流れ星をみることはできないだろうなぁ……」
溜息がカップの中、漣を立てた。
●
商隊の護衛任務も無事終了。商隊の主であるアルノーが開いてくれた宴も終わった夜更け、酔い覚ましに外を散歩していると荷車を引く人影を見かけた。
その人影は辺りを伺うと人通りの少ない屋敷の裏手に回り込む。どう見ても怪しい。
「泥棒でも怪しい者でもないの!!」
何をしているのかと声をかければ、慌てたその人物が頭に巻いていた布を取り顔を見せる。10代半ばくらいの少女だ。
「お願いです。見なかったことにして下さい」
エッダと名乗る少女は顔の前で手を合わせた。
「理由?……」
エッダは躊躇いつつも口を開く。10歳の誕生日を過ぎて間もなく幼馴染のエーリクが不治の病にかかってしまったこと。その病は年々悪くなり、来年の誕生日まで生きているかどうかと使用人たちが話しているのを聞いてしまったこと。
そして彼が見たいと言っている流れ星をもう一度見せてあげたいこと。そのために明日、彼の誕生日の夜に屋敷から連れ出そうとしていること。
「アルノーさんもマルガもエーリクの体に外の空気が悪いと思っているから連れ出すことを許してくれないし……」
エーリクといえば、アルノーがその子のために本や図鑑を買い集めていたのを思い出す。なんでも重い病気という話だ。
「……ひょっとして皆さんはアルノーさんが護衛を頼んだハンターさんですか? もしもハンターさんなら力を貸してくれませんか」
お願いします、と涙を浮かべエッダが頭を下げた。
窓際に置かれたベッドの上、エーリクは枕に背を預け本を読む。
外は風が吹いているのだろう、レースのカーテンから差し込む陽光が作り出す木陰がページの上に複雑な模様を作りだす。そのせいで字は追い難いが別段急いで読む必要はない、むしろ退屈しているエーリクにとって光と影のダンスは見ていて面白かった。
まもなく15回目の誕生日だ。
本を傍らに置き、ブランケットの上からそっと足を撫でる。
ベッドから一人で起き上がれなくなってどれくらい経っただろうか……数えようとして止めた。エーリクの体は原因不明の病におかされていた。時折一族に発症する病である。
十歳の誕生日を過ぎたころ、急に立ち止まることができなくなったのが最初だった。そのうち歩けなくなり、今は背筋をまっすぐに保つことも辛い。こうして徐々に体が動かなくなり、最終的に死に至る。病の進行速度は人それぞれだが、一度発症すれば治ることはない。
手をゆっくりと握って開く、それを数度繰り返した。
今年は誕生日を迎えることができそうだが来年はどうだろうか……。
「最近外に出ていないなぁ」
苦笑を零し窓の外へと顔を向ける。コツンと何かがガラスに当たる音。
ベッドの上を腕だけで進み、窓を押し開いた。
「エーリク」
下から聞こえる彼を呼ぶ小さな声。幼馴染の少女エッダが手を振っている。
「ちょっと待ってね」
口の動きだけでそう伝えたエッダは近くの木を登り始め、あっという間に二階のエーリクの部屋の窓の近くの枝に腰掛けた。
「危ないよ」
「だいじょーぶ。私が木登り得意なの知っているでしょ」
少し呆れた様子のエーリクにエッダはそばかすの浮かんだ顔をくしゃりと崩して笑う。そろそろ女の子らしくしてもよい年齢だろうに、泥だらけになって遊んでいた子供のころと変わらない。
「これお土産、マルガさんに活けてもらって」
そう言うとエッダはベルトに挟んでいたアジサイの枝をエーリクの膝の上に投げてよこした。エーリクが寝たきりの生活になってからというものエッダはこうして遊びに来ては外のことを話してくれる。
日がな一日ベッドで寝るか本を読むか家政婦のマルガと話をするしかないエーリクにとってそれはとても楽しみな時間であった。
「そろそろエーリクの誕生日だね。何かほしいものある?」
話の途中、エッダが尋ねる。
「欲しいもの……」
問われて脳裏に浮かんだのが病になる少し前、10歳の誕生日のこと。毎年エーリクの誕生日近くになると流れ星をたくさん見ることができる。10歳の誕生日の夜、家族が寝静まった後、二人で近くの丘まで流れ星を見に行ったのだ。結局、家を抜け出したことが双方の家族にばれて大目玉を食らったが、真夜中の冒険、あの夜二人で見上げた流れ星はエーリクにとって大切な思い出だった。
「ながれぼし……」
言いかけて飲み込む。
「ん? 何?」
「あ……うん、エッダは絵が得意だろ。だから丘から見た街を描いてよ」
エッダが先ほどの呟きを聞いてなかったことに胸を撫で下ろす。もしも聞いていたら彼女のことだ、無理をしてでもエーリクに流れ星をみせようと頑張ってくれるだろう。そんな迷惑かけることはできない。
「りょーか……あっ!」
カチャリと部屋の戸が開く。お茶のワゴンとともに家政婦のマルガが顔を覗かせた。
「坊ちゃま、お茶を……。エッダ!!」
「エーリク、ちゃあんと額縁用意しといてね。マルガさんもお元気そうで何より!」
エッダは慌てて木から飛び降りると「またねー」と庭を走って横切っていく。
「まったくあのお転婆ときたら……。そういえば先ほど先触れがやってきて、明後日旦那様がお戻りなるそうですよ」
「ああ、だから今日は賑やかだったのか」
「誕生日プレゼントは期待してくれと旦那様からの伝言です」
エーリクは街で古くから続く商家バルテン家の末っ子だ。上には兄と姉が一人ずつ。
商人である父アルノーは家を空けていることが多い。今回も王都まで使用人と護衛のハンターを連れ商談に出掛けていた。
毎回、帰ってくると同行した皆を労うため宴を開くのが常だ。今、屋敷内ではその準備に追われているのだろう。
「ねぇ、マルガ、今年の誕生日少しでいいから星を見にいけないかな?」
「だめですよ、夜の風はお体に悪いと旦那様も仰っていたじゃないですか」
決して治ることのない病に今更体に悪いも何もないだろうにと思うが自分のことを心配してくれる相手に当たるわけにもいかない。エーリクは「そうだね」と微笑むとアジサイを差し出した。
「これを花瓶に活けておいてくれないかい?」
「エッダからのお土産ですか。すぐに活けてきましょうね」
ベッド脇のテーブルにお茶を置いたマルガがアジサイを持って部屋から出て行く。
カップを取り上げる。手が震えなかなかうまく持つことができない。
「……もう流れ星をみることはできないだろうなぁ……」
溜息がカップの中、漣を立てた。
●
商隊の護衛任務も無事終了。商隊の主であるアルノーが開いてくれた宴も終わった夜更け、酔い覚ましに外を散歩していると荷車を引く人影を見かけた。
その人影は辺りを伺うと人通りの少ない屋敷の裏手に回り込む。どう見ても怪しい。
「泥棒でも怪しい者でもないの!!」
何をしているのかと声をかければ、慌てたその人物が頭に巻いていた布を取り顔を見せる。10代半ばくらいの少女だ。
「お願いです。見なかったことにして下さい」
エッダと名乗る少女は顔の前で手を合わせた。
「理由?……」
エッダは躊躇いつつも口を開く。10歳の誕生日を過ぎて間もなく幼馴染のエーリクが不治の病にかかってしまったこと。その病は年々悪くなり、来年の誕生日まで生きているかどうかと使用人たちが話しているのを聞いてしまったこと。
そして彼が見たいと言っている流れ星をもう一度見せてあげたいこと。そのために明日、彼の誕生日の夜に屋敷から連れ出そうとしていること。
「アルノーさんもマルガもエーリクの体に外の空気が悪いと思っているから連れ出すことを許してくれないし……」
エーリクといえば、アルノーがその子のために本や図鑑を買い集めていたのを思い出す。なんでも重い病気という話だ。
「……ひょっとして皆さんはアルノーさんが護衛を頼んだハンターさんですか? もしもハンターさんなら力を貸してくれませんか」
お願いします、と涙を浮かべエッダが頭を下げた。
解説
エッダを助けエーリクに誕生日の夜、流れ星を見せてあげてください。
誕生日は明日。
連れ出すのに手を貸す、アルノーやマルガを説得し正々堂々と星を見に行くなど方法は問いません。
必要なことがあればエッダは積極的に力を貸します。
皆さんは商人アルノーの護衛任務を終え、彼の屋敷の滞在中です。「時間があるなら末の息子に色々話をしてやって欲しい」と頼まれておりますので、エーリクとの接触は問題ありません。
エッダからOPの二人のやり取りについて聞いているという前提で進めて下さって構いません。
エーリクの部屋は屋敷の裏手の二階、静かな場所にあります。近くに大きな木がありそれを伝って部屋まで行くことが可能です。
庭には番犬代わりの二匹の犬が放されてます。二匹ともエッダと仲が良いですが、夜中にいきなり現れれば彼女と認識するまで吠えることもあるでしょう。
また夜エーリクの体調が急変したときのことを考え廊下に使用人が交代で詰めており、時折マルガが様子を見にきます。
エッダはエーリクを荷車に乗せ10歳のときに流れ星を見た街外れの丘に行く予定です。
丘は大人で屋敷から徒歩30分ほど。エッダ一人でも荷車を引いて一時間もすればつくでしょう。子供が良く遊んでいるなだらかな開けた場所です。
エーリクとの会話から何かあると思ったマルガから皆さんに明日の夜、ひょっとしたらエーリクが屋敷から抜け出すかもしれないので何か気づいたら教えて欲しいと伝えられています。
人物
エッダ:かなりお転婆な13歳の少女。流れ星を見に行くことをエーリクには伝えていない。
エーリク:不治の病を患う14歳の少年。エッダとは幼馴染。足の力が弱くなり歩くことができない。
アルノー:エーリクの父。病の末の息子を過保護気味に愛している。
マルガ:エーリクが生まれる前からいる家政婦。幼いころに母を失ったエーリクの母代わり。
アルノー、マルガとエッダの仲は良好。
誕生日は明日。
連れ出すのに手を貸す、アルノーやマルガを説得し正々堂々と星を見に行くなど方法は問いません。
必要なことがあればエッダは積極的に力を貸します。
皆さんは商人アルノーの護衛任務を終え、彼の屋敷の滞在中です。「時間があるなら末の息子に色々話をしてやって欲しい」と頼まれておりますので、エーリクとの接触は問題ありません。
エッダからOPの二人のやり取りについて聞いているという前提で進めて下さって構いません。
エーリクの部屋は屋敷の裏手の二階、静かな場所にあります。近くに大きな木がありそれを伝って部屋まで行くことが可能です。
庭には番犬代わりの二匹の犬が放されてます。二匹ともエッダと仲が良いですが、夜中にいきなり現れれば彼女と認識するまで吠えることもあるでしょう。
また夜エーリクの体調が急変したときのことを考え廊下に使用人が交代で詰めており、時折マルガが様子を見にきます。
エッダはエーリクを荷車に乗せ10歳のときに流れ星を見た街外れの丘に行く予定です。
丘は大人で屋敷から徒歩30分ほど。エッダ一人でも荷車を引いて一時間もすればつくでしょう。子供が良く遊んでいるなだらかな開けた場所です。
エーリクとの会話から何かあると思ったマルガから皆さんに明日の夜、ひょっとしたらエーリクが屋敷から抜け出すかもしれないので何か気づいたら教えて欲しいと伝えられています。
人物
エッダ:かなりお転婆な13歳の少女。流れ星を見に行くことをエーリクには伝えていない。
エーリク:不治の病を患う14歳の少年。エッダとは幼馴染。足の力が弱くなり歩くことができない。
アルノー:エーリクの父。病の末の息子を過保護気味に愛している。
マルガ:エーリクが生まれる前からいる家政婦。幼いころに母を失ったエーリクの母代わり。
アルノー、マルガとエッダの仲は良好。
マスターより
少女は少年と流れ星をみることができるか……。
エッダとエーリクに皆さんの力を貸して下さいませ。
というわけで、はじめましてこんにちは桐崎と申します。
FNB初めてのシナリオとなります。これからもよろしくお願いいたします。
エッダとエーリクに皆さんの力を貸して下さいませ。
というわけで、はじめましてこんにちは桐崎と申します。
FNB初めてのシナリオとなります。これからもよろしくお願いいたします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/07/07 07:26
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/27 16:17:35 |
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流星に願いを イルム=ローレ・エーレ(ka5113) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/06/30 14:09:31 |