ゲスト
(ka0000)
岬の花
マスター:松尾京

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/07/02 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/07/11 19:00
オープニング
十歳の少女リリーは、その日も鏡の前で髪を整え、身だしなみをチェックする。
そうして麻で編んだ籠を持つと、はきはきと家を出た。
「じゃあ、行ってきます」
「あら、リリー、また行くの?」
「またって、毎日行ってるんだから。いい加減にしてよね、お母さん」
言うと、走り出すようにリリーは出発した。
陽光の中、緑あふれる村で花を摘むと、森を抜け――岬へ。
岬は高い崖の上にある。
狭いが、海が見渡せてとても綺麗な場所だ。
ただ、リリーがここに通っているのは、風景が美しいからというだけではない。
リリーは摘んできた花を、石の周りに植え始めた。
紫がかった蒼色が美しい花。リアルブルーではアズマギクなどと呼ばれる、と前に聞いたことがあるが、リリーは花に詳しくないので、名前を意識したことはない。
植えていくと、今日も花畑は広がった。
リリーが作った、小さな楽園。
「セオ。今日はとても、風が気持ちいいね」
そうして、もう亡くなってしまった大切な人に、リリーは呼びかけた。
同い年の少年セオは、リリーの初めて出来た友達だった。
病気がちだったリリーにはじめて声をかけてきてくれた少年であり……彼も身体が弱かったけれど、穏やかで、優しくて、リリーは彼が好きだった。
そうして最初に知り合ったときから、二人はずっと仲よく、一緒だった。
けれど、病弱なセオはリリーより先に、死んだ。
リリーは以前、よくセオと二人で岬に来ていた。邪魔が入らないからだ。
だから、いつかセオが好きだと言った花を、セオが死んでから、リリーはここに植え続けている。
ここに来れば、セオに会えるという気がした。
ある日。
出かけようとするリリーに、父が厳しい顔を向けた。
「リリー。もう、あそこへ行くのはやめなさい」
父は、以前からリリーが岬へ通うことをよくないと繰り返していた。
事実、最近はリリーを出かけさせない日も続いていた。
「……どうして」
「何度も言わせるんじゃない。知っているだろう。最近の森の異変を。……植物が枯れはじめている。危険な動物が出たという話もあるんだ。だから……」
「いやよ」
リリーは震えた声で、拒否した。
森が危険だというのは、事実だ。けがをして帰ってきた猟師もいて、何かの変異があるのは半ば疑いない状況だった。
ただ、父はそれよりもリリーの行為自体をとがめるように、腕を掴んだ。
「リリー。聞きなさい。岬へ行くのは、もう駄目だ。あそこへ行くのに、毎日何時間もかけて……帰ってくる頃にはくたくたになっている。やつれているのが、自分でわかっているのかい」
「そんなこと、ない。離して。離してよ」
「リリー!」
「絶対に、いや!」
リリーは、冷たいかたくなさで父をふりほどいた。
「もう、セオに会えないなんて。そんなの、許せるわけがないじゃない」
「セオ君は、もう亡くなったんだ」
父は歯がみするリリーへ、厳しい言葉を重ねる。
「岬へ行っても、何かが変わるわけじゃない。どんなことをしても、彼が帰ってくるわけじゃない」
「セオは、いるわ! どうしてそんなに、心ないことが言えるの!」
リリーは叫んだ。
「私が小さいとき。身体が弱くてみんなにいじめられてた時……セオだけが、優しくしてくれた。セオだけが、わかってくれたの。大丈夫、っていう、あの言葉を、私は一生忘れない。毎日泣いていた私を、セオが助けてくれたの。だから、私は元気になれたの」
リリーは涙をこぼしながら訴えた。
「それなのに、どうしてそんなひどいこと言うの。セオを村の墓に入れて、それで全部おしまいにしようとするの……? 私は、いやよ。私だけは、セオを忘れない。消させない」
「――リリー!」
しゃくり上げながら、リリーは家を飛び出していた。
セオはもういない。そんなことは、リリーも自分でわかっていた。
そのことから目をそらし続けていることも。
父がそれを知っているのだって、わかってる。
でも、認めれば、つらくて、何かが決壊してしまう。
それをぎりぎりでつなぎ止めてくれるのが、岬だったのだ。
リリーは岬へ着く。
だが、そこで愕然とする。
「嘘……」
花畑が、荒らされていた。だけでなく、花が、食い散らかされている。
明らかに、人間の仕業ではない。
リリーは、茫然としながらも、急いで花畑にかがみ込む。
土に紛れた、まだ生きている花を、必死で整えた。土まみれになるのも構わず、息を上げながら、知らず知らずのうちに、嗚咽を漏らして。
「セオ。待ってて、今、元通りに……」
ぐぉ、という、低い鳴き声が轟いた。
リリーは、びくりと森の方を見る。
暗がりの中、目を光らせる、異形がいた。
原形は、蝶であろうか。元は美しかったであろう羽根は、禍々しい模様。身体は巨大にふくれており――それは醜い鳥獣のような化け物だった。
リリーは、花畑を荒らしたのが何者か、理解する。
化け物が咀嚼する口から、花畑にあった花の切れ端がのぞいていた。
まだ生きている植物を、喰ってまわっているのか?
直された花畑を見て、化け物は、また近づいてこようとする。
リリーは、そこに立ちふさがった。
「こないで」
両手を広げて、決死の表情で。
「ねえリリー。僕が死んだら……僕のことは忘れて、新しい友達を作りなよ」
「何言ってるのよ。セオは死になんてしないわ。それに、他に友達なんて……」
「リリーは元気になったんだからさ。明るくて、きれいだし。きっと、人気者になれるよ」
「冗談言わないで。私には……セオがいれば」
「まじめな話だよ。ねえ、僕にばかり構ってたら、駄目だよ。リリーには、新しい世界があるんだから」
リリーはふと、そんなやり取りを思い出した。
今も、それだけは拒否し続けている。
「死んでも、ここを、通さない」
そうして麻で編んだ籠を持つと、はきはきと家を出た。
「じゃあ、行ってきます」
「あら、リリー、また行くの?」
「またって、毎日行ってるんだから。いい加減にしてよね、お母さん」
言うと、走り出すようにリリーは出発した。
陽光の中、緑あふれる村で花を摘むと、森を抜け――岬へ。
岬は高い崖の上にある。
狭いが、海が見渡せてとても綺麗な場所だ。
ただ、リリーがここに通っているのは、風景が美しいからというだけではない。
リリーは摘んできた花を、石の周りに植え始めた。
紫がかった蒼色が美しい花。リアルブルーではアズマギクなどと呼ばれる、と前に聞いたことがあるが、リリーは花に詳しくないので、名前を意識したことはない。
植えていくと、今日も花畑は広がった。
リリーが作った、小さな楽園。
「セオ。今日はとても、風が気持ちいいね」
そうして、もう亡くなってしまった大切な人に、リリーは呼びかけた。
同い年の少年セオは、リリーの初めて出来た友達だった。
病気がちだったリリーにはじめて声をかけてきてくれた少年であり……彼も身体が弱かったけれど、穏やかで、優しくて、リリーは彼が好きだった。
そうして最初に知り合ったときから、二人はずっと仲よく、一緒だった。
けれど、病弱なセオはリリーより先に、死んだ。
リリーは以前、よくセオと二人で岬に来ていた。邪魔が入らないからだ。
だから、いつかセオが好きだと言った花を、セオが死んでから、リリーはここに植え続けている。
ここに来れば、セオに会えるという気がした。
ある日。
出かけようとするリリーに、父が厳しい顔を向けた。
「リリー。もう、あそこへ行くのはやめなさい」
父は、以前からリリーが岬へ通うことをよくないと繰り返していた。
事実、最近はリリーを出かけさせない日も続いていた。
「……どうして」
「何度も言わせるんじゃない。知っているだろう。最近の森の異変を。……植物が枯れはじめている。危険な動物が出たという話もあるんだ。だから……」
「いやよ」
リリーは震えた声で、拒否した。
森が危険だというのは、事実だ。けがをして帰ってきた猟師もいて、何かの変異があるのは半ば疑いない状況だった。
ただ、父はそれよりもリリーの行為自体をとがめるように、腕を掴んだ。
「リリー。聞きなさい。岬へ行くのは、もう駄目だ。あそこへ行くのに、毎日何時間もかけて……帰ってくる頃にはくたくたになっている。やつれているのが、自分でわかっているのかい」
「そんなこと、ない。離して。離してよ」
「リリー!」
「絶対に、いや!」
リリーは、冷たいかたくなさで父をふりほどいた。
「もう、セオに会えないなんて。そんなの、許せるわけがないじゃない」
「セオ君は、もう亡くなったんだ」
父は歯がみするリリーへ、厳しい言葉を重ねる。
「岬へ行っても、何かが変わるわけじゃない。どんなことをしても、彼が帰ってくるわけじゃない」
「セオは、いるわ! どうしてそんなに、心ないことが言えるの!」
リリーは叫んだ。
「私が小さいとき。身体が弱くてみんなにいじめられてた時……セオだけが、優しくしてくれた。セオだけが、わかってくれたの。大丈夫、っていう、あの言葉を、私は一生忘れない。毎日泣いていた私を、セオが助けてくれたの。だから、私は元気になれたの」
リリーは涙をこぼしながら訴えた。
「それなのに、どうしてそんなひどいこと言うの。セオを村の墓に入れて、それで全部おしまいにしようとするの……? 私は、いやよ。私だけは、セオを忘れない。消させない」
「――リリー!」
しゃくり上げながら、リリーは家を飛び出していた。
セオはもういない。そんなことは、リリーも自分でわかっていた。
そのことから目をそらし続けていることも。
父がそれを知っているのだって、わかってる。
でも、認めれば、つらくて、何かが決壊してしまう。
それをぎりぎりでつなぎ止めてくれるのが、岬だったのだ。
リリーは岬へ着く。
だが、そこで愕然とする。
「嘘……」
花畑が、荒らされていた。だけでなく、花が、食い散らかされている。
明らかに、人間の仕業ではない。
リリーは、茫然としながらも、急いで花畑にかがみ込む。
土に紛れた、まだ生きている花を、必死で整えた。土まみれになるのも構わず、息を上げながら、知らず知らずのうちに、嗚咽を漏らして。
「セオ。待ってて、今、元通りに……」
ぐぉ、という、低い鳴き声が轟いた。
リリーは、びくりと森の方を見る。
暗がりの中、目を光らせる、異形がいた。
原形は、蝶であろうか。元は美しかったであろう羽根は、禍々しい模様。身体は巨大にふくれており――それは醜い鳥獣のような化け物だった。
リリーは、花畑を荒らしたのが何者か、理解する。
化け物が咀嚼する口から、花畑にあった花の切れ端がのぞいていた。
まだ生きている植物を、喰ってまわっているのか?
直された花畑を見て、化け物は、また近づいてこようとする。
リリーは、そこに立ちふさがった。
「こないで」
両手を広げて、決死の表情で。
「ねえリリー。僕が死んだら……僕のことは忘れて、新しい友達を作りなよ」
「何言ってるのよ。セオは死になんてしないわ。それに、他に友達なんて……」
「リリーは元気になったんだからさ。明るくて、きれいだし。きっと、人気者になれるよ」
「冗談言わないで。私には……セオがいれば」
「まじめな話だよ。ねえ、僕にばかり構ってたら、駄目だよ。リリーには、新しい世界があるんだから」
リリーはふと、そんなやり取りを思い出した。
今も、それだけは拒否し続けている。
「死んでも、ここを、通さない」
解説
●目的
リリーの救助。
●状況
村の少女リリーが、岬にて歪虚に襲われようとしている。
ハンターは父の案内で岬へと向かう。
●場所
森と岬。
南側が深い森であり、北に突き出るように岬がある。
--------------------
■
□ ●
◆
●□ □ □
□□□□□
森□□□◆□□□森
森森森森森森森森森
--------------------
□:岬の地面。幅5スクエア。
■:岬の先端。花畑。リリーがいる。
◆:ビッグアゲハ。地面上。
●:ビッグアゲハ。空中。
空白部分は空中で、かなりの高度をおいて下に海。
北も東西も切り立った崖。
ハンターの初期位置は南側の森の中央。
岬先端までは直線距離で30スクエア。
●敵
ビッグアゲハ×4
アゲハチョウに似た虫。元は雑魚だが、歪虚化した上にかなりの巨大化を果たしており、戦闘力が飛躍的に上がっていると思われる。動きは鈍重。
新鮮な花や植物に関心を持つようである。
サイズ2。
鱗粉(射程12。範囲直径5スクエア。麻痺効果有)
超音波(射程18)
体当たり(射程1)
●他
リリーやセオのことについては、ハンターは父に教えてもらっている。
リリーの救助。
●状況
村の少女リリーが、岬にて歪虚に襲われようとしている。
ハンターは父の案内で岬へと向かう。
●場所
森と岬。
南側が深い森であり、北に突き出るように岬がある。
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■
□ ●
◆
●□ □ □
□□□□□
森□□□◆□□□森
森森森森森森森森森
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□:岬の地面。幅5スクエア。
■:岬の先端。花畑。リリーがいる。
◆:ビッグアゲハ。地面上。
●:ビッグアゲハ。空中。
空白部分は空中で、かなりの高度をおいて下に海。
北も東西も切り立った崖。
ハンターの初期位置は南側の森の中央。
岬先端までは直線距離で30スクエア。
●敵
ビッグアゲハ×4
アゲハチョウに似た虫。元は雑魚だが、歪虚化した上にかなりの巨大化を果たしており、戦闘力が飛躍的に上がっていると思われる。動きは鈍重。
新鮮な花や植物に関心を持つようである。
サイズ2。
鱗粉(射程12。範囲直径5スクエア。麻痺効果有)
超音波(射程18)
体当たり(射程1)
●他
リリーやセオのことについては、ハンターは父に教えてもらっている。
マスターより
大切な人のために生き続ける少女の話です。
あるいは、その行動は彼女にとっては正しく、幸福でもあるかも知れません。
それでも、この少女を導く言葉があるのなら考えてみてもいいかも知れません。
一番大事なことは何かを考えてみつつ、歪虚と戦ってみてください。
あるいは、その行動は彼女にとっては正しく、幸福でもあるかも知れません。
それでも、この少女を導く言葉があるのなら考えてみてもいいかも知れません。
一番大事なことは何かを考えてみつつ、歪虚と戦ってみてください。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/07/09 02:15
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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相談用 南條 真水(ka2377) 人間(リアルブルー)|22才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/07/02 00:09:17 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/29 19:50:31 |