青年が足の不自由な妻を連れて霧の深い小さな農村に家を構えたのは、ほんの一年前のことだ。都会の喧騒から離れた穏やかな暮らしは幸せだった。このままずっとこの幸せが続くものだと思っていた。
　けれど、あの日唐突に終わってしまったのだ。

　大抵の物は村で手に入るが、時折、都会に出て色々な物を買い足すことがあった。その日も青年は妻を置いて家を出た。
　そして数時間の後、村に帰る道の途中で青ざめた村人達が走って来るのに遭遇したのだった。
「ジャイアントとゴブリンが村に出た！　あんたも戻っちゃ駄目だ！」
　そう話している間にも、次々と村人が青年を追い抜いていった。しかしざっと見る限りで、これは村に残っていた全員ではない。青年の妻は見当たらない。
　村人の制止を無視して走りだそうとした青年を、複数人の男が押さえつけた。
「離してくれ、妻が家に……！」
「……あんたの家はもう半分くらい潰されちまってる、私も助けようと思ったがもう……」
　そう苦々しい顔で言ったのは、隣に住んでいる老人だった。
「何だって！？　それならなおさら早く助けに――」
「あいつらは武器も持ってるんだ！　あんた戦えるのかよ！　ただ死にに行くことに何の意味があるっていうんだ！？」
　激しく怒鳴られ、青年は言葉を失う。
　彼の言う通り、青年には戦う力は無かった。
　けれど、そんなことは百も承知で、それでも走り出さずにいられなかったのだ。
「ったく、力尽くでも連れて行くから、な！」
　なおも男達の手を振り解こうとする青年の身体に、鈍い衝撃が走った。殴られたらしい。ぐらりと世界が歪んだ。
　この程度で気絶してしまう青年には、やはり妻の元へたどり着くことは出来なかったのだろう。

　青年は呆然とベッドに横たわり天井を眺めている。今頃ハンターが討伐しに行っている頃だ。
（下手な希望は持たないようにしようと思ったが、私が信じずに誰が信じるというのだ。きっと彼女はまだ家の隅で震えながら助けを待っている――）

●目的
ジャイアント１体とゴブリン２体の討伐

●敵
◆ジャイアント　１体
サイズ２。攻撃力と生命力は高め。攻撃動作が大振りなので、回避しやすい。ジャイアント自身が攻撃を受ける際はほぼ回避しない。
簡単な鎧と棍棒で武装しており、攻撃方法は棍棒を振り回すか素手での殴りかかり。
なお攻撃が家に当たると家が壊れる。

◆ゴブリン　２体
サイズ１。PCからの攻撃は回避される確率がやや高い。
簡単な鎧と弓で武装しており、主にジャイアントの後ろから弓で攻撃してくる。近接された場合は素手で殴ってくる。

●場所
深い霧が立ち込めた村の放牧地。霧のため、視界と武器の射程は４５スクエアまでとなる。
目標まで２１スクエア以上離れていた場合、『目標までのスクエア数％の３分の１』のペナルティが通常の距離のペナルティに加算される（端数切り捨て）。
戦闘は２０スクエア後ろに青年の家がある状態で放牧地に立ち、２５スクエア先にいるジャイアントとゴブリンに相対する状態から始まるとする。

【PL情報】
青年の妻は到着時点では生きており、任意で助けに行くことが出来ます。
ただし家にジャイアントの攻撃が２回当たると家が全壊して救出不可能になります。
救出のために家に入っている間に怪我をすることはありません。
助けようとしなくても、ジャイアントとゴブリンさえ倒せば依頼自体が失敗になることはありません。

こんにちは。神崎結衣です。
今回は戦闘メインです。ちょっと攻撃力高めのジャイアントと回避能力が高いゴブリンとの戦闘になります。また遠距離攻撃へのペナルティが多くなるのでご注意ください。
青年の妻を救助する場合、救助部分は詳細を省いて「半壊した家に慎重に侵入し、無事救助しました」くらいのさらっとした書き方になるので、救助の詳細よりも青年と妻の再会に際した心情描写を書いてくださるとありがたいです。