ゲスト
(ka0000)
p831 『世界の音色』
マスター:のどか

このシナリオは2日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/07/08 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/07/19 19:00
オープニング
『世界の音色』
夜の繁華街にて、その男は苛立ちを隠せなかった。
男が自らの職を失ってから1ヶ月。
腕利きの楽器職人だった彼は、不慮の事故で聴覚にハンデを負ってしまい、音を正確に聞き取る力が弱くなってしまっていた。
音を扱う職人である彼にとって、そのことは致命的であり、結果、職を追われる形になってしまったのである。
職人として名を馳せた頃の蓄えで、質素にはならざるを得ないが生活自体に不自由はしていない。
それでも自身を象っていた名声を失った彼にとっては、自暴放棄にならないわけが無い。
音の薄れ行く世界で、ただただ彼を哀れみ、時に嘲るような視線だけが、日常を描き出していた。
そんな日々の生活に、唐突に放り込まれた一介の人間が耐えられる事も無く、次第に人を避け、街の隅のほうでひっそりと暮らすようになるのに特別な理由など必要は無かった。
そのような生活が続いたある日、彼がいつものように暗い路地を通って自宅へと帰る途中、不意にその後ろ髪を呼び止められた。
「――ずいぶんと、荒んでいるようだね」
こんな路地に人が居るなんて露とも思わず、自分を呼び止めるその声にびくりと肩を震わせて立ち止まる男。
よくよく目を見張ると、路地の片隅に投げ捨てられた木箱に腰掛けたヒゲ面の男が手に持った分厚い本を読みふけっているのである。
頭からすっぽりと覆う白い衣装で顔はよく分からないが、おそらくは青年と言った顔つき。
「な、なんだ。俺は急いでいるんだ」
どこかで虫に刺されたのか、赤く貼れた二の腕をポリポリと掻き毟りながら、男は答えた。
人とかかわりたくは無い。それもこんな所に居る、見るからに怪しい青年なんかに。
心の底からそう思い、男はそそくさとその場を立ち去ろうとする。
「まあ、待ちなさい。一つ、面白い話を語らせてくれないか」
「あいにく、そんな時間は無くてね」
なぜこの青年は自分に絡んでくるのか。彼もまた、自分の身の上を知った上で哀れみか、蔑みを向ける者なのだろうか。
そう思うと、わざわざこんなところで待ち構える手の込みように、無性に腹立たしさも感じ入るもの。
「そう、怒らないでくれ。私はただ、このせっかくの出会いを彩りたいだけなのだよ」
気持ちを見透かされたのか、そう言葉を返す青年に対し、男はついには無視を決め込んでその場を後にする。
否、そうしようと歩みを進めたところで、もう一言だけ青年の声が背後から響いていた。
「今夜、君はステキな体験をする事だろう。それを良しとするも悪しとするも、君次第だ――」
それ以上、青年の声は路地に響かず、男も彼の事を振り向こうとはしなかった。
その不可思議な出会いに、青年の言葉がなぜはっきりと耳に聞こえていたのか……その時の男には、疑問にすら感じる事は無かったのだった。
その夜、強烈な痒みを伴う腕に苛まれながらも、男は家で不思議な夢を見た。
いつものように街を歩くのだが、その視点が妙に高い。
それだけではない、自らが足を踏み出す音、遠くに聞こえるケモノの泣き声、夜鳴きの赤ん坊。
街を彩る音という音が、その耳に飛び込んで来る。
自らが失った世界の色を、夢とは言えども取戻し、心が踊るが如く気分も高揚する。
不意に、悲鳴のような雑音が耳にけたたましく響き渡った。
視線を下ろすと、そこには腰を抜かした様子で地面に身を投げ出した中年の男の姿。
この美しい音の世界に響き渡る不協和音に、男は内心の苛立ちを覚えた男は脳裏で念じる。
「黙らないかな」
次の瞬間、地面の男の頭が何か大きなものに踏み潰され、パチンと潰れたトマトのようにはじけ飛ぶ。
邪魔者を始末した事に対する、妙な満足感にその身を浸しながら、男は目を覚ました。
日中、いつものように人目を盗んで街へと繰り出すと、通りがなにやら騒がしい。
息を殺しながら様子を伺ってみれば、昨夜、中年の男が一人惨殺されたと言うではないか。
その話を聞いて、昨晩の夢の事を思い出す。
いや、そんなハズは無い……額に嫌な汗を垂らしながら、男は現場を後にする。
夜、相変わらず痒い腕にもはや諦めを付けながら、男は再び夢を見た。
沢山の音に囲まれて、幸せに満ちた街の夜。男の気分は年甲斐もなく耳をつんざく不協和音が一つ。
苛立ちのままに見下していると、取り乱した若い男が懐からナイフを取り出して切りかかってきた。
足先に感じる熱い痛み、思わずうめき声を上げる。
切られた? 何もしていないのに?
許さない――そう激しい感情が心に疼いた時、巨大な腕がチンピラらしい風貌の男をまっぷたつに引き千切った。
次の日、繰り出した街でチンピラの死体が発見されたと言う話を聞いて、男の鼓動がどくりと高鳴る。
いや、夢だ。自分は一歩も外には出ていない。
ならばコレは何だ……?
そう、正夢だ。
そうに違いない。
予知夢にも等しいその力を前に、もっともな理由を付けながら、男は気分が激しく高揚するのを感じていた。
それは、掻きすぎて真っ赤に晴れ上がった腕の痛みをなおも吹き飛ばす、甘美なる世界への扉。
男はあの日の占い風情の青年に、心の中で小さく感謝をしていた。
その日の夜。
道端で吠え立てる犬を一思いに潰してやった。
その次の夜。
街の景観を汚す、哀れな浮浪者を楽にしてやった。
そのまた次の夜。
日中にたまたま肩がぶつかって、しつこくいちゃもんを付けた男を見かけたので、憂さ晴らしに搾ってやった。
夢を見る度に、次の日街に繰り出しては、現場を探して己の予知夢の結果に心を躍らせる。
それまで人目を盗んでこそこそと生きていたのが嘘のように、男は日中から堂々と街を練り歩き、夜に奏でられていた世界の音色を思い出してうっとりとした表情を浮かべるのであった。
夜の繁華街にて、その男は苛立ちを隠せなかった。
男が自らの職を失ってから1ヶ月。
腕利きの楽器職人だった彼は、不慮の事故で聴覚にハンデを負ってしまい、音を正確に聞き取る力が弱くなってしまっていた。
音を扱う職人である彼にとって、そのことは致命的であり、結果、職を追われる形になってしまったのである。
職人として名を馳せた頃の蓄えで、質素にはならざるを得ないが生活自体に不自由はしていない。
それでも自身を象っていた名声を失った彼にとっては、自暴放棄にならないわけが無い。
音の薄れ行く世界で、ただただ彼を哀れみ、時に嘲るような視線だけが、日常を描き出していた。
そんな日々の生活に、唐突に放り込まれた一介の人間が耐えられる事も無く、次第に人を避け、街の隅のほうでひっそりと暮らすようになるのに特別な理由など必要は無かった。
そのような生活が続いたある日、彼がいつものように暗い路地を通って自宅へと帰る途中、不意にその後ろ髪を呼び止められた。
「――ずいぶんと、荒んでいるようだね」
こんな路地に人が居るなんて露とも思わず、自分を呼び止めるその声にびくりと肩を震わせて立ち止まる男。
よくよく目を見張ると、路地の片隅に投げ捨てられた木箱に腰掛けたヒゲ面の男が手に持った分厚い本を読みふけっているのである。
頭からすっぽりと覆う白い衣装で顔はよく分からないが、おそらくは青年と言った顔つき。
「な、なんだ。俺は急いでいるんだ」
どこかで虫に刺されたのか、赤く貼れた二の腕をポリポリと掻き毟りながら、男は答えた。
人とかかわりたくは無い。それもこんな所に居る、見るからに怪しい青年なんかに。
心の底からそう思い、男はそそくさとその場を立ち去ろうとする。
「まあ、待ちなさい。一つ、面白い話を語らせてくれないか」
「あいにく、そんな時間は無くてね」
なぜこの青年は自分に絡んでくるのか。彼もまた、自分の身の上を知った上で哀れみか、蔑みを向ける者なのだろうか。
そう思うと、わざわざこんなところで待ち構える手の込みように、無性に腹立たしさも感じ入るもの。
「そう、怒らないでくれ。私はただ、このせっかくの出会いを彩りたいだけなのだよ」
気持ちを見透かされたのか、そう言葉を返す青年に対し、男はついには無視を決め込んでその場を後にする。
否、そうしようと歩みを進めたところで、もう一言だけ青年の声が背後から響いていた。
「今夜、君はステキな体験をする事だろう。それを良しとするも悪しとするも、君次第だ――」
それ以上、青年の声は路地に響かず、男も彼の事を振り向こうとはしなかった。
その不可思議な出会いに、青年の言葉がなぜはっきりと耳に聞こえていたのか……その時の男には、疑問にすら感じる事は無かったのだった。
その夜、強烈な痒みを伴う腕に苛まれながらも、男は家で不思議な夢を見た。
いつものように街を歩くのだが、その視点が妙に高い。
それだけではない、自らが足を踏み出す音、遠くに聞こえるケモノの泣き声、夜鳴きの赤ん坊。
街を彩る音という音が、その耳に飛び込んで来る。
自らが失った世界の色を、夢とは言えども取戻し、心が踊るが如く気分も高揚する。
不意に、悲鳴のような雑音が耳にけたたましく響き渡った。
視線を下ろすと、そこには腰を抜かした様子で地面に身を投げ出した中年の男の姿。
この美しい音の世界に響き渡る不協和音に、男は内心の苛立ちを覚えた男は脳裏で念じる。
「黙らないかな」
次の瞬間、地面の男の頭が何か大きなものに踏み潰され、パチンと潰れたトマトのようにはじけ飛ぶ。
邪魔者を始末した事に対する、妙な満足感にその身を浸しながら、男は目を覚ました。
日中、いつものように人目を盗んで街へと繰り出すと、通りがなにやら騒がしい。
息を殺しながら様子を伺ってみれば、昨夜、中年の男が一人惨殺されたと言うではないか。
その話を聞いて、昨晩の夢の事を思い出す。
いや、そんなハズは無い……額に嫌な汗を垂らしながら、男は現場を後にする。
夜、相変わらず痒い腕にもはや諦めを付けながら、男は再び夢を見た。
沢山の音に囲まれて、幸せに満ちた街の夜。男の気分は年甲斐もなく耳をつんざく不協和音が一つ。
苛立ちのままに見下していると、取り乱した若い男が懐からナイフを取り出して切りかかってきた。
足先に感じる熱い痛み、思わずうめき声を上げる。
切られた? 何もしていないのに?
許さない――そう激しい感情が心に疼いた時、巨大な腕がチンピラらしい風貌の男をまっぷたつに引き千切った。
次の日、繰り出した街でチンピラの死体が発見されたと言う話を聞いて、男の鼓動がどくりと高鳴る。
いや、夢だ。自分は一歩も外には出ていない。
ならばコレは何だ……?
そう、正夢だ。
そうに違いない。
予知夢にも等しいその力を前に、もっともな理由を付けながら、男は気分が激しく高揚するのを感じていた。
それは、掻きすぎて真っ赤に晴れ上がった腕の痛みをなおも吹き飛ばす、甘美なる世界への扉。
男はあの日の占い風情の青年に、心の中で小さく感謝をしていた。
その日の夜。
道端で吠え立てる犬を一思いに潰してやった。
その次の夜。
街の景観を汚す、哀れな浮浪者を楽にしてやった。
そのまた次の夜。
日中にたまたま肩がぶつかって、しつこくいちゃもんを付けた男を見かけたので、憂さ晴らしに搾ってやった。
夢を見る度に、次の日街に繰り出しては、現場を探して己の予知夢の結果に心を躍らせる。
それまで人目を盗んでこそこそと生きていたのが嘘のように、男は日中から堂々と街を練り歩き、夜に奏でられていた世界の音色を思い出してうっとりとした表情を浮かべるのであった。
解説
▼目的
歪虚「ボーヤ」の撃破
▼概要
フマーレの住宅区域に突如として現れた怪物を退治してください。
事件はすべて夜中に起こっており、たまたま起きていた住人から僅かながらの目撃情報もございます。
怪異を撃破し、街の平和を取り戻して下さい。
▼PL情報
エネミー:歪虚「ボーヤ」
名前とは裏腹に、毎夜毎夜街に現れては犠牲者を増やす残忍な処刑人です。
目撃情報からは巨人に鼻の無い象のような頭が付いているとの事ですが、目撃者達の事件の記憶に対する精神状態が不安定であるため、真偽の程は確かではありません。
☆特殊スキル「根源的狂怖」
その不可解でおぞましい外見を見た対象は、「見慣れている」等関係無しに、
本能的に恐怖、嫌悪、あるいは見惚れるなどし、動作にためらいが起きる。
PCの命中・回避の値を50%低下させます。
この効果はPCが該当の判定を行う度に10%ずつ低下値が緩和され、
最終的には0になります(『慣れ』ます)。
この効果は、アクティブスキルによる能力の一時的上昇が行われる前の数値に反映されます。
NPC:ベッペ 32歳 ♂
住宅区域に住む無職の男です。
楽器工場で働いて居た頃に不慮の事故で難聴となってしまい、職を手放す事になってしまいました。
腕は確かであったため他の道も模索できるとは思うのですが、天職を失った今の彼は自暴放棄気味に日々を過ごしています。
PC様にとってはこの事件にどう関わっているかは事前に知る由無く、街にやってきた段階では通りすがる「住人A」に過ぎません。
なお、右腕の二の腕辺りに掻き毟った痕と、大きな蚯蚓腫れのような腫瘍があります。
歪虚「ボーヤ」の撃破
▼概要
フマーレの住宅区域に突如として現れた怪物を退治してください。
事件はすべて夜中に起こっており、たまたま起きていた住人から僅かながらの目撃情報もございます。
怪異を撃破し、街の平和を取り戻して下さい。
▼PL情報
エネミー:歪虚「ボーヤ」
名前とは裏腹に、毎夜毎夜街に現れては犠牲者を増やす残忍な処刑人です。
目撃情報からは巨人に鼻の無い象のような頭が付いているとの事ですが、目撃者達の事件の記憶に対する精神状態が不安定であるため、真偽の程は確かではありません。
☆特殊スキル「根源的狂怖」
その不可解でおぞましい外見を見た対象は、「見慣れている」等関係無しに、
本能的に恐怖、嫌悪、あるいは見惚れるなどし、動作にためらいが起きる。
PCの命中・回避の値を50%低下させます。
この効果はPCが該当の判定を行う度に10%ずつ低下値が緩和され、
最終的には0になります(『慣れ』ます)。
この効果は、アクティブスキルによる能力の一時的上昇が行われる前の数値に反映されます。
NPC:ベッペ 32歳 ♂
住宅区域に住む無職の男です。
楽器工場で働いて居た頃に不慮の事故で難聴となってしまい、職を手放す事になってしまいました。
腕は確かであったため他の道も模索できるとは思うのですが、天職を失った今の彼は自暴放棄気味に日々を過ごしています。
PC様にとってはこの事件にどう関わっているかは事前に知る由無く、街にやってきた段階では通りすがる「住人A」に過ぎません。
なお、右腕の二の腕辺りに掻き毟った痕と、大きな蚯蚓腫れのような腫瘍があります。
マスターより
おはようございます、のどかです。
4回目を数える事となりました怪異連作。今回は色んな意味で節目となる予定のシナリオです。
怪異を撃破すれば依頼自体は達成となるため、NPCとは関わっても関わらなくとも問題はございません。
しかし、世界の音色に耳を傾けるには……時に難解かつ不可解な世界に足を踏み入れる必要もあるでしょう。
質問がございましたらギルドフォーラムで美味しいお料理を食べて絶好調のルミちゃんがお答えいたしますので、別途質問卓を立ててご用命ください。
皆様の勇気と知恵、そしてほんの一握りの良心をお待ちしております。
4回目を数える事となりました怪異連作。今回は色んな意味で節目となる予定のシナリオです。
怪異を撃破すれば依頼自体は達成となるため、NPCとは関わっても関わらなくとも問題はございません。
しかし、世界の音色に耳を傾けるには……時に難解かつ不可解な世界に足を踏み入れる必要もあるでしょう。
質問がございましたらギルドフォーラムで美味しいお料理を食べて絶好調のルミちゃんがお答えいたしますので、別途質問卓を立ててご用命ください。
皆様の勇気と知恵、そしてほんの一握りの良心をお待ちしております。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/07/18 03:16
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 メリル・E・ベッドフォード(ka2399) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/07/05 08:54:14 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/06 02:40:54 |
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相談卓 シェリル・マイヤーズ(ka0509) 人間(リアルブルー)|14才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/07/08 12:40:04 |