ゲスト
(ka0000)
祈りよ、深潭に眠れ
マスター:冬野泉水

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在7人 / 5~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/07/20 12:00
- リプレイ完成予定
- 2014/07/29 12:00
オープニング
「教会に歪虚……ですか?」
訓練を終え、教会の様子をセドリック・マクファーソンに報告するため謁見を許されたヴィオラ・フルブライトは鸚鵡返しに大司教に尋ねた。
こんなご時世だ、神聖な場所である教会に歪虚が出ることに今更驚きはない。
彼女が言葉を返したのは、敢えてそんな話をセドリックが口にしたからだ。
「フルブライト。君は王女と聖堂教会に永久の忠誠を誓っているね?」
「勿論です。聖堂戦士としての誓いに偽りはありません」
「そう。それで良い。君は王女と聖堂教会のために命を差し出すことも厭わない。それでこそ、王の鎧の長であろう」
「……」
セドリックの真意が掴みかねるヴィオラの無言を前に、王国の核である大司教は淡々と言った。
「教会現れる歪虚が増えている。巡礼、信仰の拠点がこの様では、信徒の安寧たる祈りは届くまい」
「……承知いたしました。すぐ体制を整えます」
皆まで言わせることなく、ヴィオラは大司教の執務室を最敬礼で辞去した。
扉が閉まると同時に、大司教の誰に向けるでもない独白が満ちる。
「その祈りが何に覆われようと、君は教会に命を捧げなくてはならないのだよ」
●
聖堂戦士団の宿舎に戻ったヴィオラの行動は早かった。即座に主要な団員を集め、各地の教会の安全を確認するための隊を編成した。ある隊は遠方に、ある隊は王国内を、という具合だ。
ヴィオラ本人は、ごく少数の団員を率い、聖ヴェレニウス大聖堂へと至る道にある教会の巡回に向かうこととなった。国内において最も重要な巡礼地であるがゆえに、訪れる信徒の数も他の教会の比ではない。
「『深き祈りは光を導く。祈りよ、深潭に眠れ』って一節があるくらいだもんな。もしもその祈りが邪悪なものなら、相当の魔が教会にはびこってるんじゃね?」
「不謹慎なことを言うな」
若い団員をいかつい団員がたしなめる。団長を前にしても、彼らはいつもこんな感じだ。
銀の鎧の集団は王国内でも非常に目立つ。王国民の様々な視線を浴びながら、聖堂戦士団が到着したのは、トルティアという村――王国においては『始まりの村』と呼ばれる場所であった。
「何か変わったことはありませんか?」
聖堂戦士団長直々の訪問について、事前に何の連絡も受けていない村の司祭たちは揃って腰を抜かしそうになった。それでも何とかこらえながら、彼らは報告する程でもないという不安の種をぽつぽつと語ってくれた。
「アークエルスの方の教会で歪虚騒ぎがあってハンターが向かうとか……あの辺りは教会にまつわる言い伝えがあるじゃないですか。ここトルティアもそうですし、もう不安で」
「向こうみたいに教会から夜な夜な変な声が聞こえたりとかしないですよね?」
いかつい戦士団の男性が尋ねると司祭達は首を横に振り、少しだけ顔を俯けた。
「トルティアは至って平和ですが……ここから東へ少し行った村に孤児院がありますでしょ? そこの墓地で、最近夜に変な音が聞こえるそうなんです」
「変な音、ですか」
「ええ。あまりにも怖いんで、村の人は夜になるとここに来て泊まっていきますよ。昼間は聞こえないんで、村に戻っているみたいですが……」
「東ですね。分かりました。少し、こちらで様子を見ましょう」
ヴィオラの答えに満足したのか、それとも聖女、あるいは戦乙女と言われる彼女を間近で見れたためか、司祭たちは高揚仕切った声で「お願いします」と頭を下げた。
●
「先程の一節、確か古い伝承のものと記憶していますが、合っていますか?」
「へ?」
東へ向かう道中、若い団員は妙な声を出した。すぐに団長の言葉がトルティアへ向かう途中のことを指していると気付き頷く。
「ええ。聖女と言われた乙女と、英雄と称された青年騎士の悲しい恋の物語……だっけ?」
「俺はそういう言い伝えだけは信じてないから分からん」
大体、悲恋なんてものは――といかつい団員が独り身の愚痴を語ろうとしたのを制し、若い団員は肩を竦めた。
「団長、この言い伝えってこの辺のものでしたっけ?」
「いえ……すみません、私もその手の言い伝えには疎いので」
敬虔なエクラ教信者ではあるが、言い伝え――王国内では『伝承』と言われているが、その伝承の細部までは明るくないヴィオラである。ただ、その一節だけが心に引っかかっているだけだ。
――深き祈りは光を導く。祈りよ、深潭に眠れ。
「うーん……何だったかな、思い出せない」
「おい、ちゃんと仕事をしろよ」
「違いますって! その物語、何かあったような……俺、ばあちゃんから聞いたんですけど、あんまりちゃんと覚えてないんですよね」
確か悲恋だったと思うんですけど、と若い団員が記憶をこねくりまわしているうちに、聖堂戦士団一行は件の村に到着していた。
ちょうど、夜の帳が下りる頃だ。
「……静か、ですね」
「ええ。嫌な静けさです」
「後続の隊に、念のためハンターへの応援を要請するよう伝えて下さい。この静けさは、違和感があります」
「承知しました」
いかつい団員が来た道を引き返すために馬の鼻先を翻す。
「……教会ってこの辺りですよね。なんで明かりがついてないんでしょうか」
「……」
眉を潜める若い団員を手で制し、ヴィオラは目をこらす。
その視線の先には、教会の奥に設けられた祈りの場所――村の墓地だ。
「皆、武器をとりなさい」
小さな声で、しかし凛として命じたヴィオラの手には、既に槍が握られている。
戦士団を包んでいた空気がガラリと変わる。
それに呼応するように、墓地の方から何かを抉る音が聞こえてきた。
「……うえぇ。マジっすか」
若い団員はそれが何の音か気づいて青ざめる。団長の手前なのに、素の言葉遣いに戻る程度には。
この村は土葬が主だ。そんな墓地を夜に掘り起こす目的は、そう多くない。
抉るような音の元には、身をかがめる女の後ろ姿が見える。暗闇に目が慣れた戦士団達ならば、それが異様なものであることは一目瞭然だ。
女は長い髪を乱すように頭を上下に振り、ボロ布のようなドレスを纏っている。その裾から覗く白い足は、既に骨が見え、周りの皮膚は腐食を始めていた。
「マジ、あれ……伝承の聖女の亡霊とかじゃないっすよね……」
「それは分かりませんが、間違いなく歪虚でしょうね」
ぽつ、ぽつ、と墓地の周りを光が飛び交う。それに照らされて、地中から骨となった手が這い出してくるのが見えた。
「分かりやすいくらいにホラーですよ、これ……そりゃ、村の人も逃げ出しますよね」
くるり、と彼らの気配に気づいて振り返った女の顔は、最早人のそれとは分からないほど腐食していた。
見たくない、見たくない、と首を振った団員は、苦し紛れに祈りの言葉を口にした。
「歪虚に清き光の制裁を。これより聖堂戦士団は歪虚の殲滅に入る。見たくない奴はそこで祈ってろ!」
訓練を終え、教会の様子をセドリック・マクファーソンに報告するため謁見を許されたヴィオラ・フルブライトは鸚鵡返しに大司教に尋ねた。
こんなご時世だ、神聖な場所である教会に歪虚が出ることに今更驚きはない。
彼女が言葉を返したのは、敢えてそんな話をセドリックが口にしたからだ。
「フルブライト。君は王女と聖堂教会に永久の忠誠を誓っているね?」
「勿論です。聖堂戦士としての誓いに偽りはありません」
「そう。それで良い。君は王女と聖堂教会のために命を差し出すことも厭わない。それでこそ、王の鎧の長であろう」
「……」
セドリックの真意が掴みかねるヴィオラの無言を前に、王国の核である大司教は淡々と言った。
「教会現れる歪虚が増えている。巡礼、信仰の拠点がこの様では、信徒の安寧たる祈りは届くまい」
「……承知いたしました。すぐ体制を整えます」
皆まで言わせることなく、ヴィオラは大司教の執務室を最敬礼で辞去した。
扉が閉まると同時に、大司教の誰に向けるでもない独白が満ちる。
「その祈りが何に覆われようと、君は教会に命を捧げなくてはならないのだよ」
●
聖堂戦士団の宿舎に戻ったヴィオラの行動は早かった。即座に主要な団員を集め、各地の教会の安全を確認するための隊を編成した。ある隊は遠方に、ある隊は王国内を、という具合だ。
ヴィオラ本人は、ごく少数の団員を率い、聖ヴェレニウス大聖堂へと至る道にある教会の巡回に向かうこととなった。国内において最も重要な巡礼地であるがゆえに、訪れる信徒の数も他の教会の比ではない。
「『深き祈りは光を導く。祈りよ、深潭に眠れ』って一節があるくらいだもんな。もしもその祈りが邪悪なものなら、相当の魔が教会にはびこってるんじゃね?」
「不謹慎なことを言うな」
若い団員をいかつい団員がたしなめる。団長を前にしても、彼らはいつもこんな感じだ。
銀の鎧の集団は王国内でも非常に目立つ。王国民の様々な視線を浴びながら、聖堂戦士団が到着したのは、トルティアという村――王国においては『始まりの村』と呼ばれる場所であった。
「何か変わったことはありませんか?」
聖堂戦士団長直々の訪問について、事前に何の連絡も受けていない村の司祭たちは揃って腰を抜かしそうになった。それでも何とかこらえながら、彼らは報告する程でもないという不安の種をぽつぽつと語ってくれた。
「アークエルスの方の教会で歪虚騒ぎがあってハンターが向かうとか……あの辺りは教会にまつわる言い伝えがあるじゃないですか。ここトルティアもそうですし、もう不安で」
「向こうみたいに教会から夜な夜な変な声が聞こえたりとかしないですよね?」
いかつい戦士団の男性が尋ねると司祭達は首を横に振り、少しだけ顔を俯けた。
「トルティアは至って平和ですが……ここから東へ少し行った村に孤児院がありますでしょ? そこの墓地で、最近夜に変な音が聞こえるそうなんです」
「変な音、ですか」
「ええ。あまりにも怖いんで、村の人は夜になるとここに来て泊まっていきますよ。昼間は聞こえないんで、村に戻っているみたいですが……」
「東ですね。分かりました。少し、こちらで様子を見ましょう」
ヴィオラの答えに満足したのか、それとも聖女、あるいは戦乙女と言われる彼女を間近で見れたためか、司祭たちは高揚仕切った声で「お願いします」と頭を下げた。
●
「先程の一節、確か古い伝承のものと記憶していますが、合っていますか?」
「へ?」
東へ向かう道中、若い団員は妙な声を出した。すぐに団長の言葉がトルティアへ向かう途中のことを指していると気付き頷く。
「ええ。聖女と言われた乙女と、英雄と称された青年騎士の悲しい恋の物語……だっけ?」
「俺はそういう言い伝えだけは信じてないから分からん」
大体、悲恋なんてものは――といかつい団員が独り身の愚痴を語ろうとしたのを制し、若い団員は肩を竦めた。
「団長、この言い伝えってこの辺のものでしたっけ?」
「いえ……すみません、私もその手の言い伝えには疎いので」
敬虔なエクラ教信者ではあるが、言い伝え――王国内では『伝承』と言われているが、その伝承の細部までは明るくないヴィオラである。ただ、その一節だけが心に引っかかっているだけだ。
――深き祈りは光を導く。祈りよ、深潭に眠れ。
「うーん……何だったかな、思い出せない」
「おい、ちゃんと仕事をしろよ」
「違いますって! その物語、何かあったような……俺、ばあちゃんから聞いたんですけど、あんまりちゃんと覚えてないんですよね」
確か悲恋だったと思うんですけど、と若い団員が記憶をこねくりまわしているうちに、聖堂戦士団一行は件の村に到着していた。
ちょうど、夜の帳が下りる頃だ。
「……静か、ですね」
「ええ。嫌な静けさです」
「後続の隊に、念のためハンターへの応援を要請するよう伝えて下さい。この静けさは、違和感があります」
「承知しました」
いかつい団員が来た道を引き返すために馬の鼻先を翻す。
「……教会ってこの辺りですよね。なんで明かりがついてないんでしょうか」
「……」
眉を潜める若い団員を手で制し、ヴィオラは目をこらす。
その視線の先には、教会の奥に設けられた祈りの場所――村の墓地だ。
「皆、武器をとりなさい」
小さな声で、しかし凛として命じたヴィオラの手には、既に槍が握られている。
戦士団を包んでいた空気がガラリと変わる。
それに呼応するように、墓地の方から何かを抉る音が聞こえてきた。
「……うえぇ。マジっすか」
若い団員はそれが何の音か気づいて青ざめる。団長の手前なのに、素の言葉遣いに戻る程度には。
この村は土葬が主だ。そんな墓地を夜に掘り起こす目的は、そう多くない。
抉るような音の元には、身をかがめる女の後ろ姿が見える。暗闇に目が慣れた戦士団達ならば、それが異様なものであることは一目瞭然だ。
女は長い髪を乱すように頭を上下に振り、ボロ布のようなドレスを纏っている。その裾から覗く白い足は、既に骨が見え、周りの皮膚は腐食を始めていた。
「マジ、あれ……伝承の聖女の亡霊とかじゃないっすよね……」
「それは分かりませんが、間違いなく歪虚でしょうね」
ぽつ、ぽつ、と墓地の周りを光が飛び交う。それに照らされて、地中から骨となった手が這い出してくるのが見えた。
「分かりやすいくらいにホラーですよ、これ……そりゃ、村の人も逃げ出しますよね」
くるり、と彼らの気配に気づいて振り返った女の顔は、最早人のそれとは分からないほど腐食していた。
見たくない、見たくない、と首を振った団員は、苦し紛れに祈りの言葉を口にした。
「歪虚に清き光の制裁を。これより聖堂戦士団は歪虚の殲滅に入る。見たくない奴はそこで祈ってろ!」
解説
トルティアから東へ少し行ったところにある村に出没する歪虚の群れを殲滅してください。
既に聖堂戦士団長を始め、複数の聖堂戦士が戦闘に入っています。
ハンター達は救援要請を受け、転移門よりトルティアに入り、速やかに合流してください。
【地形】
戦闘区域は、村の教会の奥にある墓地です。
教会内部は聖堂戦士達がほぼ制圧しています。
墓地はおよそ20人程度の墓があり、それほど大きくはありません。
既にいくつか掘り返されており、白骨等が散乱しています。
【歪虚】
・アンデット×3体 ※ヴィオラ達がOPで攻撃を仕掛けた後の数
死者が転化したもの。見た目がちょっと怖い。
魂への執着からか、動いているものを見ると飛びかかります。
・ウィスプ×2体
掌大の光の塊。青白い光を放ち、目眩まし等の攻撃を仕掛けます。
物理攻撃無効
【友軍】
・聖堂戦士団
団長のヴィオラ、及びOP中の若い団員は墓地にて交戦中
ヴィオラの実力は言うに及ばず、若い団員もそれなりに強い模様
残りの聖堂戦士は上述の通り、教会内部の制圧に向かっています。
【その他】
・ご質問はヴィオラがお答えします。
・白紙及び仮プレイングにはご注意下さい。
・口調や性格の確立のため、相談卓での積極的発言や、設定欄の記載、PC口調でのプレイングを推奨。
既に聖堂戦士団長を始め、複数の聖堂戦士が戦闘に入っています。
ハンター達は救援要請を受け、転移門よりトルティアに入り、速やかに合流してください。
【地形】
戦闘区域は、村の教会の奥にある墓地です。
教会内部は聖堂戦士達がほぼ制圧しています。
墓地はおよそ20人程度の墓があり、それほど大きくはありません。
既にいくつか掘り返されており、白骨等が散乱しています。
【歪虚】
・アンデット×3体 ※ヴィオラ達がOPで攻撃を仕掛けた後の数
死者が転化したもの。見た目がちょっと怖い。
魂への執着からか、動いているものを見ると飛びかかります。
・ウィスプ×2体
掌大の光の塊。青白い光を放ち、目眩まし等の攻撃を仕掛けます。
物理攻撃無効
【友軍】
・聖堂戦士団
団長のヴィオラ、及びOP中の若い団員は墓地にて交戦中
ヴィオラの実力は言うに及ばず、若い団員もそれなりに強い模様
残りの聖堂戦士は上述の通り、教会内部の制圧に向かっています。
【その他】
・ご質問はヴィオラがお答えします。
・白紙及び仮プレイングにはご注意下さい。
・口調や性格の確立のため、相談卓での積極的発言や、設定欄の記載、PC口調でのプレイングを推奨。
マスターより
こんにちは、冬野です。
私はホラーとかそういうのが本当に駄目な人間なので、あんまり怖くなかったらごめんなさい。
さて……今回のシナリオは、現在公開中のとあるシナリオとリンクしていると見せかけて、実はあまりリンクしていないような、という位置づけのものです。
なにそれ、と思われそうですが、答えは雨龍MSの今後のシナリオにご期待ください。
皆様のご参加、お待ちしております。
私はホラーとかそういうのが本当に駄目な人間なので、あんまり怖くなかったらごめんなさい。
さて……今回のシナリオは、現在公開中のとあるシナリオとリンクしていると見せかけて、実はあまりリンクしていないような、という位置づけのものです。
なにそれ、と思われそうですが、答えは雨龍MSの今後のシナリオにご期待ください。
皆様のご参加、お待ちしております。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/07/27 21:12
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 楠木 惣介(ka2690) 人間(リアルブルー)|18才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/07/20 07:32:18 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/16 09:26:45 |