• 日常

秘密基地にさよならを

マスター:柚烏

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
プレイング締切
2015/07/14 19:00
リプレイ完成予定
2015/07/23 19:00

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

 ――その廃墟は、僕たちの秘密基地だった。
 錆びついた螺子や、面白い形の小石。鮮やかな鳥の羽根なんかを、大切に小瓶に詰めて。おんぼろのシーツを上手く利用して、お手製のハンモックを作ったりもした。
 ひびの入った壁には、お伽噺の絵を描いたり――ふたりでこれからの夢を、文字に残して絶対叶えるんだって誓い合った。
『……ほら、こうして見ると綺麗だろう?』
 あの日の事は忘れない。廃墟の窓から見上げた夜空には、銀色の月が輝いていた。淡い月の光に、ちいさな硝子玉を翳してみると――まるで、この瞬間を大切に閉じ込めたみたいで。そう、この時間はずっと続いていくのだと、根拠も無く信じられたんだ。
『あの、さ。俺……ハンターになろうと思うんだ』
 けれど唐突に。とっておきの秘密を、彼は囁く。それは、ふわりとした甘い夢が、ぱちんと弾けて消えていくかのようだった。
 真っ直ぐに、彼の瞳が僕を見つめていて。ややあって彼は、少し照れ臭そうに笑った。
『必ず、ここに帰って来るから。だからそれまで、この秘密基地をお前が守ってくれないか?』
 ――勿論だよと、僕は頷いていた。ずっと待ってるから。忘れたりなんてしないから、と。

 依頼をお願いしたいんです、とその日、ハンターオフィスをひとりの婦人が訪ねてきた。少し変わった依頼なのですけれどと前置きして、彼女は言葉を選びながら話し始める。
「実は、息子のリュカと一夜、秘密基地で過ごして欲しいのです」
 何故と言う視線で彼女を見遣れば、最後の思い出を作る手伝いをして欲しいのだと婦人は答えた。急な話になるが、彼女たち一家は仕事の都合で、別の街へ引っ越さねばならなくなった。この街で過ごす最後の夜に、何とかしてリュカの願いを叶えてやりたくて、と彼の母親は訴える。
「リュカには、ふたつ年上の友達が居たのです。本当に仲が良くて……近所の廃墟を秘密基地にして、よく二人で遊んでいるようでした」
 けれど数か月前、その友達はハンターを目指して都会へ出ることを決めたらしい。その際、彼はリュカに言ったそうだ――『絶対ハンターになって帰ってくるから、それまで秘密基地を守っていて欲しい』と。
「でも、私達はここを離れなければなりません。リュカは仕方ないよねと言っていますが、気持ちの整理が付いていないみたいなんです」
 仕方のないこととは言え、約束が守れずにやりきれない想いもあるのだろう。最近のリュカは元気がなく、何処か上の空で過ごしているのだそうだ。
 だから――と、そこで職員がハンターの皆に告げた。皆さんの力で、彼がさよならを言えるように助けてくれないかと。
「お友達がハンターになると言っていたので、リュカさんもハンターと言う存在には憧れているみたいです。ですから、彼にハンターとしての冒険譚を話したりして、それから……童心に帰って秘密基地で一緒に遊ぶと言うのは如何でしょう?」
 そうして、共に思い出を作ってあげて――最後に、秘密基地を守る代わりに、何かをしてあげられれば良いでしょうと職員は言った。忘れないと言う証のようなものを打ち立てるのもいいし、いつか帰ってくる友に何かを残すのもいい。皆で相談し合って、考えて貰えたらと職員は穏やかな瞳を向ける。
「……大なり小なり、別れは誰もが乗り越えていかなければならないものですが」
 それでも、出来るなら想いに寄り添って、共に越えていってあげて欲しい。
 ――そう、いつか。笑顔でおかえりと言えるように、今はこの瞬間にさよならを、と。

解説

●成功条件
リュカと一緒に秘密基地で夜を過ごし、彼と思い出を作る。

●秘密基地
リュカの近所にある廃墟で、友達と一緒に秘密基地にして遊んでいました。ですが、友達はハンターになる為に街を出る事になり、それまでリュカがこの場所を守ると約束をしていました。がらくたの宝物をしまったり、壁に絵や文字を書いたり。快適な寝床を作ったりしていたようです。

●リュカ
12歳になる少年。性格は大人しいですが、一度こうと決めたら意志を曲げない面もあります。ふたつ年上の友達を慕い、彼がなりたいと願うハンターに憧れています。急に街を引っ越す事に戸惑い、気持ちに折り合いが付けられずにいます。

●思い出づくり
リュカの心残りが無くなるよう、秘密基地で彼と一緒に最後の思い出を作ってください。どうやって夜を過ごすか、ノスタルジックな世界に思いを馳せてみるのも良いかも知れません。秘密基地を守る、と言う約束の代わりに何かをしてあげれば、リュカもふっきれる事でしょう。

マスターより

 柚烏と申します。誰もが経験するであろう、別れ。子供時代との決別のような、ちょっぴりせつない心情系の依頼となります。
 秘密基地、と聞いてわくわくすると言う方、思い出にじっくりと浸りたい方、よろしければ力をお貸しください。それではよろしくお願いします。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/07/19 11:23

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 瑞鬼「白澤」
    鬼百合(ka3667
    エルフ|12才|男性|魔術師
  • 不撓の森人
    リュカ(ka3828
    エルフ|27才|女性|霊闘士
  • 想い伝う花を手に
    シャルア・レイセンファード(ka4359
    人間(紅)|18才|女性|魔術師
  • 不破の剣聖
    紅薔薇(ka4766
    人間(紅)|14才|女性|舞刀士
  • 清冽なれ、栄達なれ
    龍華 狼(ka4940
    人間(紅)|11才|男性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/14 15:18:33
アイコン 相談卓
龍華 狼(ka4940
人間(クリムゾンウェスト)|11才|男性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2015/07/14 15:23:26