ゲスト
(ka0000)
ルーレット・フォレスト
マスター:紺堂 カヤ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/07/19 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/07/28 12:00
オープニング
つめたい泉の水をかき混ぜて、ガラス玉のような泡をつくってはその不思議に柔らかな感触を楽しむのが、夏の季節の、姉妹のお気に入りの遊びだった。
今年もその季節がきた。
泉は、森を北へまっすぐ抜けたところにある。姉妹は手を繋ぎ、その泉を目指す。
「あたしは左、そして前。あなたは右、そして前」
「あたしは右、そして前。お姉ちゃんは左、そして前」
自作の歌をデタラメに、けれどとても楽しそうに歌いながら、姉妹は森を進む。森は迷いやすいから、周囲を良く見て進むように、という母親のいいつけをきちんと守るための歌だ。
「あたしは左、そして前。あなたは右、そして前」
「あたしは右、そして前。お姉ちゃんは左、そして前」
歌に合わせて、姉妹はきょろきょろと周囲を確認する。
去年と同じ、大クスノキ。……の、はず。今年はなんだか、随分と葉っぱが少ないけれど。
去年と同じ、コケモモの茂み。……の、はず。今年は雨の所為かしら、随分と地面に実が落ちてしまっているけれど。
姉妹はきちんと、いいつけを守った。
けれど、姉妹は知らなかった。
今年の森は、いつもの森と違っていたことを。
今年の森は、ルーレット・フォレストと呼ばれる森になっていたことを。
森の木々が、ざわざわと揺れた。揺らしたのは、単なる風ではなかった。大きな鳥の羽ばたきが巻き起こした、湿った臭いのする風であった。
「雑貨屋の息子が昨日、森で迷ったってよ」
「森って、あの」
「そう、ルーレット・フォレストさ」
「本当かよ! で、戻ってこれたのか?」
「戻るには戻ってこれた、と言うかなあ。森の西側に抜けて、旅の商人と落ち合うはずが、西側にはたどり着けずに、元の地点に戻って来ちまったんだとさ」
「なーんだそりゃあ!」
どっと、笑い声が起こった。
村にひとつしかない酒場で、仕事を終えた男たちがジョッキを片手に噂話をしているのだ。噂好きは女の特徴としたものだが、実際のところ、男も嬉々として酒の肴に噂話を選ぶものなのだ。
「カジノでのルーレットだったら、大損だったところだなあ、そりゃ」
「違いない!」
村の境界線としても使われている森は、ここのところ、地図通りに歩いても目的地へたどり着けない、という不思議な現象が起こっている。まるで、ルーレットで行先を決められているようだ、ということで、誰がいつ発案したものやら、ルーレット・フォレスト、と呼ばれるようになった。随分と迷わされた、だの、結局目的地へ抜けられなくて森を迂回して進んだ、だのという話は上がっていたが、特に遭難者が出たというような実害がなかったため、ニュースの少ないこの村において恰好の笑い話のネタになっていた。
「俺もこの前、ルーレット・フォレストに入ったけどよ」
ビールの泡を上唇につけたまま、家具屋の主人が話し始めた。
「ひどい目にあった、というほどのことじゃなかったが、やっぱり迷わされたよ。去年まではそんなことなかったのに、なんでだろうなあ、気味が悪いなあ……それに」
「……それに?」
勿体つけて、家具屋の主人が精いっぱいの不気味な表情を作った。
「頭の上をな、見たこともないような大きな鳥が、ばさあっ、と飛んでいってなあ」
おおお、と一同がどよめくが、すぐに、その鳥なら俺も見た、という者が何人か声を上げた。
「一瞬しか姿は見てないけど、とにかく大きかったな。なんか、恐ろしくなっちまって、とにかく足早にその場を離れたもんだけどよ」
「ああ、わかるわかる。なんか、嫌な風を感じるんだよな、あの鳥が飛んでいくと」
「……あの鳥、本当にただの鳥なのか……?」
誰かが、そうぽつりと呟いた。そのときに。
「助けて……!!! お願いです!!!」
蒼白な顔をした女性が、酒場に駆け込んできた。
「娘たちが……、森に!!! ルーレット・フォレストに!!!」
女性は、姉妹の母親であった。
今年は森がおかしいから、入ってはいけないと注意するつもりだったのに、その前に姉妹は森へ出かけてしまい、日暮れになっても戻ってこないと言う。
「夫は仕事で十日ほど帰ってこないんです……! 私、もう、どうしたらいいか……」
混乱する頭を抱え、ひとまず、村で一番男手の集まっている酒場へ駆け込んだものらしかった。
泣きじゃくる母親をなだめつつ話を聞いた酒場の男たちは、決めた。
「俺たちの手には余る。確実に、お嬢さんたちを見つけ出さなければならない。ハンターに依頼しよう」
回り続けるルーレットを、止めてもらわねば。
その、回り続けるルーレットの渦中には、手を取り合う姉妹がいた。
歩き続け、歩き続け、自分たちが迷っているのだと気がついたときにはもう夕暮れだった。目指し続けた泉がようやく見えたけれど、ちっとも嬉しくなかった。泉ではなく、母親の待つ家が、恋しかった。
「疲れたよう、お姉ちゃん」
「うん……、でも、お家に帰らなくちゃ」
自分も泣き出したいのをこらえながら、姉は泣きべそをかく妹を必死になだめた。周囲は暗くなりかけ、薄っぺらな三日月が森の木々の間に見えた。……と、思った。
けれどそれは。
姉妹が三日月だと思ったそれは。
鋭く光る、鳥の嘴だった。
今年もその季節がきた。
泉は、森を北へまっすぐ抜けたところにある。姉妹は手を繋ぎ、その泉を目指す。
「あたしは左、そして前。あなたは右、そして前」
「あたしは右、そして前。お姉ちゃんは左、そして前」
自作の歌をデタラメに、けれどとても楽しそうに歌いながら、姉妹は森を進む。森は迷いやすいから、周囲を良く見て進むように、という母親のいいつけをきちんと守るための歌だ。
「あたしは左、そして前。あなたは右、そして前」
「あたしは右、そして前。お姉ちゃんは左、そして前」
歌に合わせて、姉妹はきょろきょろと周囲を確認する。
去年と同じ、大クスノキ。……の、はず。今年はなんだか、随分と葉っぱが少ないけれど。
去年と同じ、コケモモの茂み。……の、はず。今年は雨の所為かしら、随分と地面に実が落ちてしまっているけれど。
姉妹はきちんと、いいつけを守った。
けれど、姉妹は知らなかった。
今年の森は、いつもの森と違っていたことを。
今年の森は、ルーレット・フォレストと呼ばれる森になっていたことを。
森の木々が、ざわざわと揺れた。揺らしたのは、単なる風ではなかった。大きな鳥の羽ばたきが巻き起こした、湿った臭いのする風であった。
「雑貨屋の息子が昨日、森で迷ったってよ」
「森って、あの」
「そう、ルーレット・フォレストさ」
「本当かよ! で、戻ってこれたのか?」
「戻るには戻ってこれた、と言うかなあ。森の西側に抜けて、旅の商人と落ち合うはずが、西側にはたどり着けずに、元の地点に戻って来ちまったんだとさ」
「なーんだそりゃあ!」
どっと、笑い声が起こった。
村にひとつしかない酒場で、仕事を終えた男たちがジョッキを片手に噂話をしているのだ。噂好きは女の特徴としたものだが、実際のところ、男も嬉々として酒の肴に噂話を選ぶものなのだ。
「カジノでのルーレットだったら、大損だったところだなあ、そりゃ」
「違いない!」
村の境界線としても使われている森は、ここのところ、地図通りに歩いても目的地へたどり着けない、という不思議な現象が起こっている。まるで、ルーレットで行先を決められているようだ、ということで、誰がいつ発案したものやら、ルーレット・フォレスト、と呼ばれるようになった。随分と迷わされた、だの、結局目的地へ抜けられなくて森を迂回して進んだ、だのという話は上がっていたが、特に遭難者が出たというような実害がなかったため、ニュースの少ないこの村において恰好の笑い話のネタになっていた。
「俺もこの前、ルーレット・フォレストに入ったけどよ」
ビールの泡を上唇につけたまま、家具屋の主人が話し始めた。
「ひどい目にあった、というほどのことじゃなかったが、やっぱり迷わされたよ。去年まではそんなことなかったのに、なんでだろうなあ、気味が悪いなあ……それに」
「……それに?」
勿体つけて、家具屋の主人が精いっぱいの不気味な表情を作った。
「頭の上をな、見たこともないような大きな鳥が、ばさあっ、と飛んでいってなあ」
おおお、と一同がどよめくが、すぐに、その鳥なら俺も見た、という者が何人か声を上げた。
「一瞬しか姿は見てないけど、とにかく大きかったな。なんか、恐ろしくなっちまって、とにかく足早にその場を離れたもんだけどよ」
「ああ、わかるわかる。なんか、嫌な風を感じるんだよな、あの鳥が飛んでいくと」
「……あの鳥、本当にただの鳥なのか……?」
誰かが、そうぽつりと呟いた。そのときに。
「助けて……!!! お願いです!!!」
蒼白な顔をした女性が、酒場に駆け込んできた。
「娘たちが……、森に!!! ルーレット・フォレストに!!!」
女性は、姉妹の母親であった。
今年は森がおかしいから、入ってはいけないと注意するつもりだったのに、その前に姉妹は森へ出かけてしまい、日暮れになっても戻ってこないと言う。
「夫は仕事で十日ほど帰ってこないんです……! 私、もう、どうしたらいいか……」
混乱する頭を抱え、ひとまず、村で一番男手の集まっている酒場へ駆け込んだものらしかった。
泣きじゃくる母親をなだめつつ話を聞いた酒場の男たちは、決めた。
「俺たちの手には余る。確実に、お嬢さんたちを見つけ出さなければならない。ハンターに依頼しよう」
回り続けるルーレットを、止めてもらわねば。
その、回り続けるルーレットの渦中には、手を取り合う姉妹がいた。
歩き続け、歩き続け、自分たちが迷っているのだと気がついたときにはもう夕暮れだった。目指し続けた泉がようやく見えたけれど、ちっとも嬉しくなかった。泉ではなく、母親の待つ家が、恋しかった。
「疲れたよう、お姉ちゃん」
「うん……、でも、お家に帰らなくちゃ」
自分も泣き出したいのをこらえながら、姉は泣きべそをかく妹を必死になだめた。周囲は暗くなりかけ、薄っぺらな三日月が森の木々の間に見えた。……と、思った。
けれどそれは。
姉妹が三日月だと思ったそれは。
鋭く光る、鳥の嘴だった。
解説
□成功条件
森で行方不明になった姉妹の捜索と救出、および森に潜む雑魔の撃破。
□森の状況
ルーレット・フォレストと呼ばれる原因となった「迷う要素」は、幻術のたぐいではない。雑魔が住み着いたことによる環境への影響で木々が弱る・枯れるなどし、森の景観が短期間で変化を続けていることにより、道に迷う人が続出した、という現象である模様。
□鳥形雑魔
雑魔は鳥形のものが2体。むやみに人を襲うタイプではないために森が人を迷わせるようになるまで、誰もその存在に気がつかなかったとみられる。積極的な威嚇行動はしないものの、縄張り意識が強いため、長く森に留まる者には攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。鋭い嘴と爪が最大の武器。飛翔もすばやく、何らかの方法で動きを止めなければ飛び道具でもダメージを与えることは困難。
□姉妹
たいへん聞き分けの良い、仲の良い姉妹。ハンターの指示にも反発することなく従うと思われる。ただし、ふたりとも特に活発な方ではなく、恐怖への耐性もないため、とっさに素早く逃げる、というような行動は難しいと思われる。
森で行方不明になった姉妹の捜索と救出、および森に潜む雑魔の撃破。
□森の状況
ルーレット・フォレストと呼ばれる原因となった「迷う要素」は、幻術のたぐいではない。雑魔が住み着いたことによる環境への影響で木々が弱る・枯れるなどし、森の景観が短期間で変化を続けていることにより、道に迷う人が続出した、という現象である模様。
□鳥形雑魔
雑魔は鳥形のものが2体。むやみに人を襲うタイプではないために森が人を迷わせるようになるまで、誰もその存在に気がつかなかったとみられる。積極的な威嚇行動はしないものの、縄張り意識が強いため、長く森に留まる者には攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。鋭い嘴と爪が最大の武器。飛翔もすばやく、何らかの方法で動きを止めなければ飛び道具でもダメージを与えることは困難。
□姉妹
たいへん聞き分けの良い、仲の良い姉妹。ハンターの指示にも反発することなく従うと思われる。ただし、ふたりとも特に活発な方ではなく、恐怖への耐性もないため、とっさに素早く逃げる、というような行動は難しいと思われる。
マスターより
はじめまして。紺堂カヤと申します。
わたくしにも、歳の近い妹がおりまして、よくふたりで遊んだものでございます。勝負事はいつも妹の方が強く、負けてばかりの姉でございました。特に、某すごろく形式のボードゲームは、ルーレットを回すのが壊滅的にヘタクソで、なかなかゴールできませんでした……。
さて。まだまだこれからの人生が待っている姉妹でございます。どうぞ助けてあげてください。
わたくしにも、歳の近い妹がおりまして、よくふたりで遊んだものでございます。勝負事はいつも妹の方が強く、負けてばかりの姉でございました。特に、某すごろく形式のボードゲームは、ルーレットを回すのが壊滅的にヘタクソで、なかなかゴールできませんでした……。
さて。まだまだこれからの人生が待っている姉妹でございます。どうぞ助けてあげてください。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/07/25 13:07
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 フランソワーズ・ガロッテ(ka4590) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/07/19 06:53:21 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/17 05:55:44 |