ゲスト
(ka0000)
山岳猟団〜辺境最前線
マスター:有坂参八
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- サポート
- 現在0人 / 0~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/07/21 07:30
- リプレイ完成予定
- 2014/07/30 07:30
オープニング
ゾンネンシュトラール帝国軍が辺境に擁する大要塞ノアーラ・クンタウ。
ドワーフによって築かれた堅牢な砦は、この地で歪虚に抗う人類にとって、また世界の覇権を狙う帝国にとっても、その未来の明暗を担う極めて重要な拠点である。
この要塞に、ある一つの部隊がある。
帝国軍第一師団分隊、通称『山岳猟団』。それは人類を守るという目的の為に歪虚の討伐を命じられ、この地へとやってきた誉れ高き部隊である。少なくとも、彼等自身はそう信じてきた。
だが、現実は理想に追随しない。
慣れない土地。一貫しない上層部の運用。外部戦力の合流。連日の戦闘による消耗。そして団長の死。問題は重なり、慢性化する。
極めつけは、代わりにやってきた新たな指揮官だ。
要塞責任者のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は、戦傷が元で死んだ前団長の後釜として、正規兵ですらない傭兵の八重樫敦を置いたのだ。
異例極まるその人事にざわめく空気を背負いながら、『極東十八傭兵団団長兼ねて山岳猟団団長代理』……八重樫敦は、その日、初めて兵舎の扉をくぐった。
「部隊の運用状況を把握したい」
単刀直入の切り出しに、猟団団員達から返る視線は、お世辞にも暖かいものとは言えなかった。帝国軍人、辺境の部族、傭兵、異界からの来訪者……並んだ顔ぶれは不揃いだが、その誰もが一様に仮にも団長の八重樫を厳しく見つめ、中には剥き出しの敵意を向ける物さえいる。
「現状で足りないものは」
「足りない? すべてだ。武器、薬、食料、被服、馬、施設、人。すべて足りん」
この場にいる人間の中では、まだ若い部類に入る戦士が答えた。纏った重鎧はボロボロに傷ついているが、帝国が正規兵に与える由緒正しきものだ。
彼の顔半分は、赤黒い染みの浮いた包帯で覆われていた。
「無い無いづくしの中で我らは歪虚と戦い続けてきた。正規兵ですらない傭兵を指揮官に据える、能『無し』の上層部に従いながらな。新たな団長代殿は、どうやってこの惨状に収拾をつけるつもりだ」
「あるもので戦うだけだ」
「何?」
突然、戦士は八重樫の胸ぐらを掴んだ。
同時に八重樫もその腕を掴み返す。互いの掌には、万力の様な握力が込められている。
「宣うなよ。元々あるもので戦っていたのが擦り減り続けた結果がこの様だ。それを傭兵如きが、どうにかできると?」
「愚痴はいらん。気力が萎えているならば団を去れ」
「きさま……」
戦士が激昂しかけたそのときだ。
すっ……と。
二人の視線を遮る様にして、皺まみれの掌が、静かに割って入った。
「……失礼。団長代殿に至急の報告があってな」
真っ白に染まった髪が、小麦色に染まった肌とは対照的な……それは老人、老兵だった。おそらくは辺境部族由来であろう皮鎧を身につけているが、その胸には、猟団の団員の証である徽章が輝いている。
「外様は黙っていろ、シバ。重要な話の最中だ」
団員が吐き捨てる。シバ、と呼ばれた老戦士は笑って流した。
「そうもいかんよ。歪虚が現れたからにはな」
「……!」
「灰色谷の奥に、影食らいの群狼が這っておる。彼奴ら、少しずつ南下して様子を伺っておるからに、今に里を襲うぞ」
場の空気が、一瞬にして変わった。
シバの言葉を聞き終え即座、団員達は出撃準備を始める。それまでの倦怠感が、まるで嘘だったかの様に機敏な動作。彼等の目には一人の例外も無く、修羅の様な闘志がみなぎっている。
その光景に、八重樫は僅かに眼を細めた。
「皆、すぐに出撃するぞ!」
「ダメだ」
八重樫の声は、部屋中に響きわたり、団員達を静止させた。
出鼻を挫かれて、殺意さえ籠もる視線が、山岳猟団団長代理に注がれる。
「今の猟団は消耗が激しすぎる。傷病者は予備戦力として待機。無傷で、助けのいらん者だけで出る」
「何ッ……」
「要塞管理者より正式に任命された指揮権者からの命令だぞ。従え」
頭の固い軍人の彼等にこそ、その言葉は重い。
屈辱に顔を染めた団員達を後目に、八重樫は部屋を後にした。
◆
「いやはや、新しい団長が傭兵とは聞いていたが、これは中々剛毅よの」
部屋から出た八重樫に声をかけたのは、彼を追ってきた例の老戦士だった。
「どうかね、猟団を見た感想は」
「劣悪だ。運用が破綻している」
「はは、儂と気が合う様だな」
からからと笑った老人に、八重樫はまた、眼を細めた。
「原因は何だ」
「そこはご自分で理解されよ。優秀だからヴェルナーに呼ばれたのじゃろ?」
老戦士の表情は、沼の様に穏やかで底知れず、真意を測れない。
八重樫は、意識を切り替えた。
「敵状はどうなっている?」
「数は三〇。かなりの大群じゃな。場所も悪い。灰色谷の細道は待伏に持ってこいだが、目と鼻の先に部族の集落がある故、谷の外でのんびり迎え討つわけにも行くまい」
「いま猟団内で動ける戦力は」
「さっきあんたが見た通りじゃよ」
「俺の傭兵団からも動ける戦力を出す。それにハンターを足せば、頭数は揃うだろう」
「ハンター?」
「俺の雇い主は、そういう方針だ。戦力不足を補う為に、ハンターを雇い入れると」
「ほ」
得心いったかの様に、老戦士は短く返す。
八重樫は踵を返し、歩き出した。
「十五分後に出る。俺は隊の戦闘準備を指揮する。そっちは、ハンターソサエティへの連絡を頼む」
頷き、足早に去っていく八重樫を見送る老戦士。肩幅の広い背が曲がり角に消えるのを確認してから……彼はくくく、と声を押し殺した。
「……とんだ寄せ集め部隊よな。さて、どいつが使い物になるか、見ものじゃて」
かくてハンター達は歪虚討伐の目的の元、ゾンネンシュトラール帝国軍第一師団分隊、山岳猟団へ招聘される。
帝国、辺境、傭兵、ハンター、青と赤、二つの世界、その全てが混濁した最果ての部隊……その、新たな戦力として。
そしてそれは、彼等が満身創痍で護り続けてきた、人類最前線の戦場への誘いでもあった。
ドワーフによって築かれた堅牢な砦は、この地で歪虚に抗う人類にとって、また世界の覇権を狙う帝国にとっても、その未来の明暗を担う極めて重要な拠点である。
この要塞に、ある一つの部隊がある。
帝国軍第一師団分隊、通称『山岳猟団』。それは人類を守るという目的の為に歪虚の討伐を命じられ、この地へとやってきた誉れ高き部隊である。少なくとも、彼等自身はそう信じてきた。
だが、現実は理想に追随しない。
慣れない土地。一貫しない上層部の運用。外部戦力の合流。連日の戦闘による消耗。そして団長の死。問題は重なり、慢性化する。
極めつけは、代わりにやってきた新たな指揮官だ。
要塞責任者のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は、戦傷が元で死んだ前団長の後釜として、正規兵ですらない傭兵の八重樫敦を置いたのだ。
異例極まるその人事にざわめく空気を背負いながら、『極東十八傭兵団団長兼ねて山岳猟団団長代理』……八重樫敦は、その日、初めて兵舎の扉をくぐった。
「部隊の運用状況を把握したい」
単刀直入の切り出しに、猟団団員達から返る視線は、お世辞にも暖かいものとは言えなかった。帝国軍人、辺境の部族、傭兵、異界からの来訪者……並んだ顔ぶれは不揃いだが、その誰もが一様に仮にも団長の八重樫を厳しく見つめ、中には剥き出しの敵意を向ける物さえいる。
「現状で足りないものは」
「足りない? すべてだ。武器、薬、食料、被服、馬、施設、人。すべて足りん」
この場にいる人間の中では、まだ若い部類に入る戦士が答えた。纏った重鎧はボロボロに傷ついているが、帝国が正規兵に与える由緒正しきものだ。
彼の顔半分は、赤黒い染みの浮いた包帯で覆われていた。
「無い無いづくしの中で我らは歪虚と戦い続けてきた。正規兵ですらない傭兵を指揮官に据える、能『無し』の上層部に従いながらな。新たな団長代殿は、どうやってこの惨状に収拾をつけるつもりだ」
「あるもので戦うだけだ」
「何?」
突然、戦士は八重樫の胸ぐらを掴んだ。
同時に八重樫もその腕を掴み返す。互いの掌には、万力の様な握力が込められている。
「宣うなよ。元々あるもので戦っていたのが擦り減り続けた結果がこの様だ。それを傭兵如きが、どうにかできると?」
「愚痴はいらん。気力が萎えているならば団を去れ」
「きさま……」
戦士が激昂しかけたそのときだ。
すっ……と。
二人の視線を遮る様にして、皺まみれの掌が、静かに割って入った。
「……失礼。団長代殿に至急の報告があってな」
真っ白に染まった髪が、小麦色に染まった肌とは対照的な……それは老人、老兵だった。おそらくは辺境部族由来であろう皮鎧を身につけているが、その胸には、猟団の団員の証である徽章が輝いている。
「外様は黙っていろ、シバ。重要な話の最中だ」
団員が吐き捨てる。シバ、と呼ばれた老戦士は笑って流した。
「そうもいかんよ。歪虚が現れたからにはな」
「……!」
「灰色谷の奥に、影食らいの群狼が這っておる。彼奴ら、少しずつ南下して様子を伺っておるからに、今に里を襲うぞ」
場の空気が、一瞬にして変わった。
シバの言葉を聞き終え即座、団員達は出撃準備を始める。それまでの倦怠感が、まるで嘘だったかの様に機敏な動作。彼等の目には一人の例外も無く、修羅の様な闘志がみなぎっている。
その光景に、八重樫は僅かに眼を細めた。
「皆、すぐに出撃するぞ!」
「ダメだ」
八重樫の声は、部屋中に響きわたり、団員達を静止させた。
出鼻を挫かれて、殺意さえ籠もる視線が、山岳猟団団長代理に注がれる。
「今の猟団は消耗が激しすぎる。傷病者は予備戦力として待機。無傷で、助けのいらん者だけで出る」
「何ッ……」
「要塞管理者より正式に任命された指揮権者からの命令だぞ。従え」
頭の固い軍人の彼等にこそ、その言葉は重い。
屈辱に顔を染めた団員達を後目に、八重樫は部屋を後にした。
◆
「いやはや、新しい団長が傭兵とは聞いていたが、これは中々剛毅よの」
部屋から出た八重樫に声をかけたのは、彼を追ってきた例の老戦士だった。
「どうかね、猟団を見た感想は」
「劣悪だ。運用が破綻している」
「はは、儂と気が合う様だな」
からからと笑った老人に、八重樫はまた、眼を細めた。
「原因は何だ」
「そこはご自分で理解されよ。優秀だからヴェルナーに呼ばれたのじゃろ?」
老戦士の表情は、沼の様に穏やかで底知れず、真意を測れない。
八重樫は、意識を切り替えた。
「敵状はどうなっている?」
「数は三〇。かなりの大群じゃな。場所も悪い。灰色谷の細道は待伏に持ってこいだが、目と鼻の先に部族の集落がある故、谷の外でのんびり迎え討つわけにも行くまい」
「いま猟団内で動ける戦力は」
「さっきあんたが見た通りじゃよ」
「俺の傭兵団からも動ける戦力を出す。それにハンターを足せば、頭数は揃うだろう」
「ハンター?」
「俺の雇い主は、そういう方針だ。戦力不足を補う為に、ハンターを雇い入れると」
「ほ」
得心いったかの様に、老戦士は短く返す。
八重樫は踵を返し、歩き出した。
「十五分後に出る。俺は隊の戦闘準備を指揮する。そっちは、ハンターソサエティへの連絡を頼む」
頷き、足早に去っていく八重樫を見送る老戦士。肩幅の広い背が曲がり角に消えるのを確認してから……彼はくくく、と声を押し殺した。
「……とんだ寄せ集め部隊よな。さて、どいつが使い物になるか、見ものじゃて」
かくてハンター達は歪虚討伐の目的の元、ゾンネンシュトラール帝国軍第一師団分隊、山岳猟団へ招聘される。
帝国、辺境、傭兵、ハンター、青と赤、二つの世界、その全てが混濁した最果ての部隊……その、新たな戦力として。
そしてそれは、彼等が満身創痍で護り続けてきた、人類最前線の戦場への誘いでもあった。
解説
【依頼内容】
山岳猟団に参加し、歪虚『影食らいの群狼』を撃退する。
以上。
【敵】
影食らいの群狼:
真っ黒な狼型の歪虚。数は30体。1体1体がそこそこ強いです。
優れた戦術・連携能力を持ち、奇襲や陽動など、組織的な戦闘を得意とします。
個々の能力としての特筆点は、スピードと、噛み付きの威力・拘束力。
また見た目は狼ながら悪路走破能力にも優れ、壁の様な急傾斜の崖面も楽々駆け抜けます。
【味方】
八重樫敦以下、山岳猟団24名:
指揮官は傭兵、八重樫敦。
人類を守護するべく結成された、帝国軍が誇る対歪虚部隊……というのが建前ですが、現実はOPの通り。
中身は帝国軍正規兵、帝国に帰順した辺境部族、傭兵、ハンター等の寄せ集め部隊です。
個々の実力は確かですが組織として統制が取れておらず、放っておくと各個に戦闘し始めます。
PCはOPに記載された猟団の内情を、何らかの理由で予め知っているという前提にする事ができます。
(リプレイ執筆の都合上、その理由に修正が入る可能性は予めご了承ください)
【地理】
灰色谷:
狭く細長い谷道が続く、山間の谷。
道幅は10〜15m程度で、道の両端は高さ20m程の崖の様な斜面によって閉鎖されています。
所々に落石による障害物が転がっており、また道も曲がりくねっていて、見通しは悪いです。
時刻は午後5時頃、天候は曇り。
山岳猟団に参加し、歪虚『影食らいの群狼』を撃退する。
以上。
【敵】
影食らいの群狼:
真っ黒な狼型の歪虚。数は30体。1体1体がそこそこ強いです。
優れた戦術・連携能力を持ち、奇襲や陽動など、組織的な戦闘を得意とします。
個々の能力としての特筆点は、スピードと、噛み付きの威力・拘束力。
また見た目は狼ながら悪路走破能力にも優れ、壁の様な急傾斜の崖面も楽々駆け抜けます。
【味方】
八重樫敦以下、山岳猟団24名:
指揮官は傭兵、八重樫敦。
人類を守護するべく結成された、帝国軍が誇る対歪虚部隊……というのが建前ですが、現実はOPの通り。
中身は帝国軍正規兵、帝国に帰順した辺境部族、傭兵、ハンター等の寄せ集め部隊です。
個々の実力は確かですが組織として統制が取れておらず、放っておくと各個に戦闘し始めます。
PCはOPに記載された猟団の内情を、何らかの理由で予め知っているという前提にする事ができます。
(リプレイ執筆の都合上、その理由に修正が入る可能性は予めご了承ください)
【地理】
灰色谷:
狭く細長い谷道が続く、山間の谷。
道幅は10〜15m程度で、道の両端は高さ20m程の崖の様な斜面によって閉鎖されています。
所々に落石による障害物が転がっており、また道も曲がりくねっていて、見通しは悪いです。
時刻は午後5時頃、天候は曇り。
マスターより
この依頼をご紹介いたします、有坂参八と申します。
辺境の最前線を守る帝国軍部隊、山岳猟団に関わるシナリオとなります。
達成目標自体はシンプルに『歪虚殺すべし』ですが、味方の問題の方が割と深刻。
色々な情報から、各人が何に対して、どう対処するのがよいか、考えてみてください。
それでは、みなさまのご武運をお祈り致します。
辺境の最前線を守る帝国軍部隊、山岳猟団に関わるシナリオとなります。
達成目標自体はシンプルに『歪虚殺すべし』ですが、味方の問題の方が割と深刻。
色々な情報から、各人が何に対して、どう対処するのがよいか、考えてみてください。
それでは、みなさまのご武運をお祈り致します。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/07/29 21:16
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
相談卓 クラリッサ=W・ソルシエール(ka0659) 人間(リアルブルー)|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/07/21 07:18:09 |
||
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/16 20:05:35 |
||
質問卓 ハイネ・ブランシェ(ka1130) 人間(リアルブルー)|14才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/07/19 19:26:14 |