ゲスト
(ka0000)
【聖呪】元騎士の後悔と誇り
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在7人 / 4~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/07/28 22:00
- リプレイ完成予定
- 2015/08/06 22:00
オープニング
●
戦略的な動きを見せるゴブリンたち。
亜種――茨小鬼(ホロム・ゴブリン)の目撃情報も増え、王国も対策に本腰を入れざるを得なくなった。
比較的平穏な土地。王国北部ルサスール領。
その領主カフェ・W・ルサスールも、頭を悩ませていた。
王族と貴族間の政治的な動き、領民の不安緩和への施策、戦力の確認……。
やらねばならぬことを頭に、王都での会合を終えたのだ。
だが、カフェが帰ってすぐに事態は一変した。
深く考えるだけの時間を、ゴブリンどもは与えてくれはしなかったのだ。
「騎士団の編成はどうなっている? 住民の避難と受け入れ先の確保を……占領された場合に備えて前線基地を築く準備はしておけ」
矢継ぎ早に指示を飛ばすカフェの顔色には、疲れが見える。
ルサスール領内でも北端に位置する町、オーレフェルト。そこを目指して、ゴブリンの軍勢が動き出したというのだ。
「あそこは領の関門にもなっている場所だ。何としても、死守しなければっ」
カフェの息子たちは政治的外遊のため不在。騎士団も散発するゴブリンへの対処で手薄となっていた。
時間も、戦力も足りてはいない。
「すぐに、緊急事態を発令させろ……戦えるものを全てオーレフェルトへ集めるのだ」
せめて、教会だけでも死守しなければならない。
精神的拠り所として、あそこは領北部の村々にとっても重要な位置を占める。
「間に合ってくれればよいのだが……」
オーレフェルトは、空気が変わるのを感じていた。
そよぐ風も、飛び立つ鳥のさえずりも、嵐の前の静けさという言葉を思い起こさせる。
少女は空を見上げ、母の袖をぎゅっと掴んで楽しそうに言う。
「鳥! 大きな鳥がいっぱい!」
次の瞬間、鳥が何かを落とした。いや、そいつらは降り立ったのだ。
ゴブリンの眼が少女をとらえる。
母は叫び、娘は呆然と立ち尽くす。暴虐が、始まろうとしていた。
●
「何だ、これは……」
街中の酒場で飲んだくれていたラーセフ・メドラは自分の目を疑った。
飲みすぎで、酔っぱらってるものとばかり思った。
まるで……戦場ではないか。
四十代後半となった今でこそ、ただの飲んだくれだが、ラーセフは元騎士だった。
血のにおいが充満する戦場で、ラーセフは初めて命を失う恐怖を覚えた。
誇りのためなら命はいらぬと常日頃から豪語しておきながら、敵に背を向けた。
ラーセフは逃げたのだ。戦場から、己の誇りから。
生き残ったラーセフに周囲の反応は冷たかった。
いたたまれなくなって騎士を辞め、住み慣れた街を離れた。
それでも同い年の妻と今年で十五歳の娘は、ろくに働かず、最低な男になったラーセフを父と認めてくれる。
慕ってくれる家族の声と、未練たらしく腰に下げたロングソードの鳴る音が、堕落しきったラーセフをかろうじて支えていた。
このままではいけないと思いながらも、朝から営業している行きつけの安い酒場で飲んだくれた。
酔っぱらって眠れば、戦場から逃げた悪夢を見なくて済む。
ふらつく足取りで外へ出たラーセフを待っていたのは、街を蹂躙しようとするゴブリンの群れだった。
しかも、その数はどんどん増えている。
軍が派遣されるだろうが、その前にかなりの被害が出る。
「何が……起きてるんだ」
酔いならとっくにさめた。
ジャイアントみたいなやつが、周りのゴブリンたちをこき使うようにしている。
恐らく、あれが最近よく噂になっている茨小鬼――ホロム・ゴブリンと呼ばれてる奴だろう。
「……ターニア! アンナ!」
ターニアは心優しい妻。そしてアンナは、誰より大切な娘だった。
急いで戻り、自宅に飛び込む。二人とも、中にいてくれた。
居間にしゃがみ込んでいるターニアが、守るように両腕で娘のアンナを抱いていた。
「二人とも無事か。理由はわからないが、どうやら街にゴブリンが攻めてきたようだ。すぐに逃げるぞ」
ラーセフが二人を連れて家を出ると、そこには逃げ惑うたくさんの人々がいた。
助けを求める人たちの声が、失われていたラーセフの騎士としての心を取り戻させる。
今の自分は飲んだくれの中年親父かもしれないが、ここにいる住民を救える可能性がある。
騎士だった頃の知識と経験をフル動員する。
「……逃げるなら、地下水路だな。脱出経路にはならないが、隠れ場所にはなる」
不安そうにするアンナを安心させるために、ラーセフは強引に笑顔を作る。
「大丈夫だ。統率のとれた動きで攻めてきた以上、奴らには狙いがある。仮に占領だったとしても、住民の殲滅より先に中枢部の制圧を優先するはずだ」
相手はゴブリン。何かきっかけがあれば、かならず隙を見せるはずだ。
その機会を逃さずに、地下水路から出て街を脱出する。
「可能なら、西方あたりが無難だろう。とにかく、まずは身を隠すのが――」
ラーセフが最後まで言い終わるのを待たずに、ゴブリンたちが現れた。
獲物となる住民を見つけ、舌なめずりでもしそうな顔つきになる。
「……お前たちはすぐに逃げろ」
「パパはどうするの?」
「元がつくとはいえ、俺は騎士だ。不愉快な汚名を、この場で返上してやろうと思う」
「そんな……! 駄目だよっ!」
「……ターニア、アンナとこの場にいる他の住民たちを頼む」
悲しそうな表情を見せながらも、ターニアは強く頷いた。
さすが俺の愛した女だ。ラーセフは心から思った。
震える右手に力を入れ、鞘からロングソードを抜く。
今度は……絶対に逃げない。
逃げた戦場ではともに戦えなかった相棒が、待ってましたとばかりに剣身を輝かせた。
●
偶然、街にいたハンターたちは目撃する。
多数のゴブリンを相手に一歩も引かず、逃げ惑う住民の盾になっているひとりの男の姿を。
「……ハンターか。俺の名はラーセフ。ただの……飲んだくれだ」
そう言って笑ったあと、すでに左手が上がらなくなっているラーセフは、ハンターたちに住民の避難誘導を依頼した。
「この先に地下水路がある。住民たちはそこへ向かった。俺はここで食い止めるつもりだったが……」
そう言って、ラーセフは唇を噛む。
すでに、結構な数のゴブリンに抜かれてしまっていた。
「このままでは住民が危うい。一刻も早く、追いかけてくれ」
追ったダメージのせいで、ラーセフは素早く動けそうもない。
それどころか、死神が愛しげに寄り添ってるような感じすらあった。
「住民の中には……俺の妻と、娘もいる。どうか……助けてくれ……」
戦略的な動きを見せるゴブリンたち。
亜種――茨小鬼(ホロム・ゴブリン)の目撃情報も増え、王国も対策に本腰を入れざるを得なくなった。
比較的平穏な土地。王国北部ルサスール領。
その領主カフェ・W・ルサスールも、頭を悩ませていた。
王族と貴族間の政治的な動き、領民の不安緩和への施策、戦力の確認……。
やらねばならぬことを頭に、王都での会合を終えたのだ。
だが、カフェが帰ってすぐに事態は一変した。
深く考えるだけの時間を、ゴブリンどもは与えてくれはしなかったのだ。
「騎士団の編成はどうなっている? 住民の避難と受け入れ先の確保を……占領された場合に備えて前線基地を築く準備はしておけ」
矢継ぎ早に指示を飛ばすカフェの顔色には、疲れが見える。
ルサスール領内でも北端に位置する町、オーレフェルト。そこを目指して、ゴブリンの軍勢が動き出したというのだ。
「あそこは領の関門にもなっている場所だ。何としても、死守しなければっ」
カフェの息子たちは政治的外遊のため不在。騎士団も散発するゴブリンへの対処で手薄となっていた。
時間も、戦力も足りてはいない。
「すぐに、緊急事態を発令させろ……戦えるものを全てオーレフェルトへ集めるのだ」
せめて、教会だけでも死守しなければならない。
精神的拠り所として、あそこは領北部の村々にとっても重要な位置を占める。
「間に合ってくれればよいのだが……」
オーレフェルトは、空気が変わるのを感じていた。
そよぐ風も、飛び立つ鳥のさえずりも、嵐の前の静けさという言葉を思い起こさせる。
少女は空を見上げ、母の袖をぎゅっと掴んで楽しそうに言う。
「鳥! 大きな鳥がいっぱい!」
次の瞬間、鳥が何かを落とした。いや、そいつらは降り立ったのだ。
ゴブリンの眼が少女をとらえる。
母は叫び、娘は呆然と立ち尽くす。暴虐が、始まろうとしていた。
●
「何だ、これは……」
街中の酒場で飲んだくれていたラーセフ・メドラは自分の目を疑った。
飲みすぎで、酔っぱらってるものとばかり思った。
まるで……戦場ではないか。
四十代後半となった今でこそ、ただの飲んだくれだが、ラーセフは元騎士だった。
血のにおいが充満する戦場で、ラーセフは初めて命を失う恐怖を覚えた。
誇りのためなら命はいらぬと常日頃から豪語しておきながら、敵に背を向けた。
ラーセフは逃げたのだ。戦場から、己の誇りから。
生き残ったラーセフに周囲の反応は冷たかった。
いたたまれなくなって騎士を辞め、住み慣れた街を離れた。
それでも同い年の妻と今年で十五歳の娘は、ろくに働かず、最低な男になったラーセフを父と認めてくれる。
慕ってくれる家族の声と、未練たらしく腰に下げたロングソードの鳴る音が、堕落しきったラーセフをかろうじて支えていた。
このままではいけないと思いながらも、朝から営業している行きつけの安い酒場で飲んだくれた。
酔っぱらって眠れば、戦場から逃げた悪夢を見なくて済む。
ふらつく足取りで外へ出たラーセフを待っていたのは、街を蹂躙しようとするゴブリンの群れだった。
しかも、その数はどんどん増えている。
軍が派遣されるだろうが、その前にかなりの被害が出る。
「何が……起きてるんだ」
酔いならとっくにさめた。
ジャイアントみたいなやつが、周りのゴブリンたちをこき使うようにしている。
恐らく、あれが最近よく噂になっている茨小鬼――ホロム・ゴブリンと呼ばれてる奴だろう。
「……ターニア! アンナ!」
ターニアは心優しい妻。そしてアンナは、誰より大切な娘だった。
急いで戻り、自宅に飛び込む。二人とも、中にいてくれた。
居間にしゃがみ込んでいるターニアが、守るように両腕で娘のアンナを抱いていた。
「二人とも無事か。理由はわからないが、どうやら街にゴブリンが攻めてきたようだ。すぐに逃げるぞ」
ラーセフが二人を連れて家を出ると、そこには逃げ惑うたくさんの人々がいた。
助けを求める人たちの声が、失われていたラーセフの騎士としての心を取り戻させる。
今の自分は飲んだくれの中年親父かもしれないが、ここにいる住民を救える可能性がある。
騎士だった頃の知識と経験をフル動員する。
「……逃げるなら、地下水路だな。脱出経路にはならないが、隠れ場所にはなる」
不安そうにするアンナを安心させるために、ラーセフは強引に笑顔を作る。
「大丈夫だ。統率のとれた動きで攻めてきた以上、奴らには狙いがある。仮に占領だったとしても、住民の殲滅より先に中枢部の制圧を優先するはずだ」
相手はゴブリン。何かきっかけがあれば、かならず隙を見せるはずだ。
その機会を逃さずに、地下水路から出て街を脱出する。
「可能なら、西方あたりが無難だろう。とにかく、まずは身を隠すのが――」
ラーセフが最後まで言い終わるのを待たずに、ゴブリンたちが現れた。
獲物となる住民を見つけ、舌なめずりでもしそうな顔つきになる。
「……お前たちはすぐに逃げろ」
「パパはどうするの?」
「元がつくとはいえ、俺は騎士だ。不愉快な汚名を、この場で返上してやろうと思う」
「そんな……! 駄目だよっ!」
「……ターニア、アンナとこの場にいる他の住民たちを頼む」
悲しそうな表情を見せながらも、ターニアは強く頷いた。
さすが俺の愛した女だ。ラーセフは心から思った。
震える右手に力を入れ、鞘からロングソードを抜く。
今度は……絶対に逃げない。
逃げた戦場ではともに戦えなかった相棒が、待ってましたとばかりに剣身を輝かせた。
●
偶然、街にいたハンターたちは目撃する。
多数のゴブリンを相手に一歩も引かず、逃げ惑う住民の盾になっているひとりの男の姿を。
「……ハンターか。俺の名はラーセフ。ただの……飲んだくれだ」
そう言って笑ったあと、すでに左手が上がらなくなっているラーセフは、ハンターたちに住民の避難誘導を依頼した。
「この先に地下水路がある。住民たちはそこへ向かった。俺はここで食い止めるつもりだったが……」
そう言って、ラーセフは唇を噛む。
すでに、結構な数のゴブリンに抜かれてしまっていた。
「このままでは住民が危うい。一刻も早く、追いかけてくれ」
追ったダメージのせいで、ラーセフは素早く動けそうもない。
それどころか、死神が愛しげに寄り添ってるような感じすらあった。
「住民の中には……俺の妻と、娘もいる。どうか……助けてくれ……」
解説
●成功条件
住民の犠牲が五人以下で、住民の避難及び街からの脱出を成功させる。
●失敗条件
住民の犠牲が五人以上になる。
●避難
住民は地下水路の入口を目指して移動中です。市街の外れに地下水路の入口があります。
ですが、すぐ後ろまで追手のゴブリンが迫りつつあります。急がなければ、手遅れになります。
ラーセフがいる地点から、地下水路までは街の外へ向かって一直線です。およそ五キロメートルほどあります。
住民の現在地点は二キロメートル。追手のゴブリンは千五百メートル地点にいます。歩行速度を考慮しても、数分後には追いつかれます。
なんとか敵の足を止め、住民と合流した上で避難経路の護衛をしてください。
●地下水路
地下水路に住民を避難させる。
住民が全員地下水路へ入るまでは、十分近くかかります。その間、追手から住民を守ってください。
ゴブリンはハンターよりも、住民への攻撃を優先します。
●脱出
地下水路を追ってくる一団の大将となるホロム・ゴブリンを倒す。
一時的に統率が乱れますので、その隙をついて街から脱出します。
時間がかかりすぎると、他のホロム・ゴブリンがやってきて窮地になります。
●味方
元騎士のラーセフが命を懸けて、ホロム・ゴブリンを食い止めます。
ラーセフが倒されたあとは、ホロム・ゴブリンも避難する住民を追ってきます。
ラーセフを助けられなくとも、依頼は失敗になりません。
●敵情報
ゴブリンはさほど強くありませんが、この場における敵の数はおよそ二十匹ほどいます。武器は槍やショートソードになります。
今回の一団の大将としてホロムゴブリンがいます。
ホロムゴブリンはジャイアントと同じくらい巨大です。油断すると一気にやられます。武器は両手斧です。
腕力と耐久に優れているのが特徴で、瞬発はやや低いです。
ゴブリンは増援があるため、殲滅を狙うのは得策ではありません。
住民の犠牲が五人以下で、住民の避難及び街からの脱出を成功させる。
●失敗条件
住民の犠牲が五人以上になる。
●避難
住民は地下水路の入口を目指して移動中です。市街の外れに地下水路の入口があります。
ですが、すぐ後ろまで追手のゴブリンが迫りつつあります。急がなければ、手遅れになります。
ラーセフがいる地点から、地下水路までは街の外へ向かって一直線です。およそ五キロメートルほどあります。
住民の現在地点は二キロメートル。追手のゴブリンは千五百メートル地点にいます。歩行速度を考慮しても、数分後には追いつかれます。
なんとか敵の足を止め、住民と合流した上で避難経路の護衛をしてください。
●地下水路
地下水路に住民を避難させる。
住民が全員地下水路へ入るまでは、十分近くかかります。その間、追手から住民を守ってください。
ゴブリンはハンターよりも、住民への攻撃を優先します。
●脱出
地下水路を追ってくる一団の大将となるホロム・ゴブリンを倒す。
一時的に統率が乱れますので、その隙をついて街から脱出します。
時間がかかりすぎると、他のホロム・ゴブリンがやってきて窮地になります。
●味方
元騎士のラーセフが命を懸けて、ホロム・ゴブリンを食い止めます。
ラーセフが倒されたあとは、ホロム・ゴブリンも避難する住民を追ってきます。
ラーセフを助けられなくとも、依頼は失敗になりません。
●敵情報
ゴブリンはさほど強くありませんが、この場における敵の数はおよそ二十匹ほどいます。武器は槍やショートソードになります。
今回の一団の大将としてホロムゴブリンがいます。
ホロムゴブリンはジャイアントと同じくらい巨大です。油断すると一気にやられます。武器は両手斧です。
腕力と耐久に優れているのが特徴で、瞬発はやや低いです。
ゴブリンは増援があるため、殲滅を狙うのは得策ではありません。
マスターより
お世話になっております、鳴海惣流です。
今回の依頼は、ゴブリンに襲われる街の住民の避難です。
優先されるべきは、住民の避難になります。
大成功の条件は、助ける人間をひとり増やせるかどうかになります。
ただ、無理をしすぎると失敗に繋がりますので、気をつけてください。
今回の依頼は、ゴブリンに襲われる街の住民の避難です。
優先されるべきは、住民の避難になります。
大成功の条件は、助ける人間をひとり増やせるかどうかになります。
ただ、無理をしすぎると失敗に繋がりますので、気をつけてください。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/08/02 22:41
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
作戦相談卓 ユルゲンス・クリューガー(ka2335) 人間(クリムゾンウェスト)|40才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/07/28 21:31:41 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/23 23:27:40 |