ハンター諸君に告げる。今回のミッションはかなり特殊である。敵となるものの姿、特性、すべてが不明なのだ。


　まずこの城を見てくれたまえ。見事に荒れ果てているだろう。人里からさほど遠くないにもかかわらず。
　５０年前さる忌まわしい事件が起きて以来、完全に放棄されてしまっているのだ。
　近隣の住民はそのことを知っているから誰も近づこうとしないのだが、近年リアルブルーとの交流が盛んになるにつれ、『廃墟マニア』なる人種が現れ、それらがちょいちょい無断で出入りするようになった。
　長年整備していない建物だ。不意に床が抜けたり壁が崩れたり天井が落ちたりといったことも、あるやも知れぬ。そのように憂慮した関係者が立ち入り禁止の札を掲げても、無断出入りは止まなかった。
　仕方ないので近くに監視小屋を設置し回り持ちで人を置き、入ろうとするものに注意を促すことにしたが、監視員のいない夜を狙って忍び込む者についてはとても手が回らない……。
　そして、今回の事件が起きた。
　昨日、監視小屋に来た監視員は、城の前に白っぽい固まりが散らばっているのを見つけた。始めは正体がよく分からなかったそうだ。しかしためつすがめつ見ているうちに、人間の骨だと確信するに至った。確かめれば周辺には潰れたメガネだの腕時計だのも落ちていたそうだ。
　昨日夕方小屋を引き上げる際そんなものはなかったと、彼は証言している。つまり、夜の間に城に忍び込んだものが何かに襲われ食われたということだ。

　被害者の身元については現在調査中だが、何分にも人目を避けて忍び込んでいるだけに、生前の目撃情報がない。特定までにはかなりの時間を要することだろう。

　とにかく、何かがこの城の中にいるのは確かだ。ハンター諸君はそれを捜し出し、よろしく殲滅してほしい。
　なお出発に際しては、城の見取り図の写しを配布する。５０年前のものだが、十分参考になると思う。
　……忌まわしい事件とは何か、と？
　……そうだな、事件解決の参考になるかもしれないから教えておこう。ただし、他言は無用に願う。この周辺の人々はその話が広がるのを好まないのだ。

　５０年前この城に住んでいた城主は、大層な美食家だったそうだ。クリムゾンウェスト中の美味珍味をくまなく味わい尽くし、おしまいに禁断の食物へ手をつけた――人肉だ。
　外部から来た旅行客などを『歓待したいから』と城に招いて酔いつぶさせ、そのまま調理場へ連れていったとか。
　そういった行いの報いなのか、ある晩突然発狂し、燃え盛る竈の中に自ら飛び込んで死んだ。
　その竈は人肉を焼くのに使っていた、特注の竈だったそうだ。

　補足説明

　これは城にいる人食い歪虚を退治することを目的とするシナリオです。
　ＰＣはミッション開始時において、ＯＰ内にある情報しか手にしていません。手探りで敵を捜し、戦うことになります。

　ここからＰＬ情報です。


　城に住む歪虚データ

　数：１匹
　大きさ：２・５メートル
　形：ゴキブリに人の顔がついている。この顔は城主だった人間のものである。顔面が裏返るほど大きく口を開くことが出来る。
　動き：素早い。体が平たいので狭いところにも楽々入れる。ごく短距離なら飛べる。
　性質：獰猛。人の肉を好んで食す。暗いところが好きであるが、明るさに弱いというわけではない。人の持つ明かりには敏感に反応し、寄ってくる。
　戦い方：ゴキブリレベル。噛む。毛だらけの足で押さえ込んでくる。
　知能：ゴキブリレベル。会話は成立しない。
　生命力：ゴキブリレベル。なかなか死なない。
　弱点：触覚。これを千切られると方向感覚がつかめなくなる。とはいえ千切られた触覚は、２分ほどで再生する。
　主な生息場所：地下の調理場。例の竈があるところ。ここを拠点とし、餌を求め城内を巡回している。

　補足：城内からは今回の犠牲者以外の骨が多数発見出来る（人だけでなく、コボルド、ゴブリンのものもある）。

ＫＩＮＵＴＡです。

このたび新人divからＣdivに移動となりました。今後ともよろしくお願いいたします。

さて暑さも本番、ということで今回は、幾らかホラー仕立ての依頼です。
黒くて平たいＧの人。
振り返れば奴がいたときの衝撃は図り知れません。