• 調査

交わる楔

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
APV

難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/08/03 12:00
リプレイ完成予定
2015/08/12 12:00

オープニング

「世話になったわね、組合長」
「まだリハビリも終わったばかりだというのに……どこへ行くつもり?」
 女の肩には重すぎる左腕はトランクに収めた。
 これはまだ試作品。戦闘時以外に装備するには過ぎた代物。装着手術は住んでいるし、手順は覚えた。後は一人でもやれるだろう。
 帝都バルトアンデルスの錬金術士組合本部。リーゼロッテ・クリューガーに見送られ、女は微笑を作る。
「止めても無駄だとはわかっていますが……命を落としてはそれまでです。あなたのその腕はあなただけではなく、ハンターの皆さんやブリちゃんの想いが篭っています。それを努々忘れないでください」
 しっかりと頷くハイデマリー。リーゼロッテは腕を組み、溜息を一つ。
「あなた程の力があれば、組合で正博士としてやっていく道もあるでしょうに」
「浄化術の研究は所詮異端……錬金術士の正道には程遠いもの」
「だとしても、誰かが成さねばならない事です。錬金術の罪は、術師の手によって濯がれるべきですから」
「……そうね。安心して。進展があれば、また顔を出すわ。メンテナンスも必要だし……ね」
 ハイデマリーの工房とは名ばかりのボロアパートにこの腕は見合わない。
 どちらにせよ、組合に顔を出す必要がある。そういう意味で首輪はしっかりと嵌められているのだ。
「またね、組合長。おチビさんにもよろしく」



「あれ? ハイデマリーさん! もうお体の具合はよろしいんですか?」
 ハイデマリーが戸をくぐったのはリゼリオにある帝国ユニオンAPVであった。
 以前から足繁く通っていた事もあり、フクカンとは顔見知りだ。
 剣妃との一件を知っていたフクカンは直ぐにタングラムを呼ぶが、今日は別の人物に用があった。
「シャイネ。今日はあなたに話があって来たのよ」
 APVの片隅で愛用の弓を磨いていたシャイネが顔を上げる。彼も普段からとまではいかないが、ここによく顔を出す人物だ。
 出会えたのは偶然だが、ある意味必然でもあったのかもしれない。
「やあ。ハイデマリー君だね。噂の方はかねがね」
「それは此方のセリフよ。まさか、こんなに身近に過去へ通じる人がいたなんてね」
 二人は無言で見つめ合う。ふと、そこへタングラムが顔を出した。
「ん? 不思議な組み合わせですね?」
「僕達にはどうやら共通の知人がいるらしい、という事でね……」
「ヴォール……と言えば、あなたも知っているかしら?」
 口元に手をやり考えこむタングラム。
 ヴォールと言えば、帝国領の事件で何度か姿を見せている歪虚の名だ。
 直接やりあった事はないが、そもそもヴォールが表舞台に姿を表すようになったのはごく最近の事。タングラムも多くの情報を有しているわけではなかった。
「森では知る人ぞ知るという存在なのだけれど……そうだね。君が森を出た後の事だったかな」
「シャイネはヴォールと知り合いなのですか」
「というか……そうだね。なんというか……兄弟という事になるのかな?」
 思わず仰け反るタングラム。
「ず、随分他人事ですね……」
「あまり実感がないんだ。元々家族に構うような人ではなかったからね」
「そして恐らく、ヴォールは私の機導術の師でもあるわ。私の機導式浄化術のルーツは彼にあると言っていい」
「彼はエルフハイム式浄化術や結界術のプロフェッショナルだったから」
「ちょっと待つですよ。それってつまり、奴もエルフハイムから出た錆という事ですか?」
 肩を竦めるシャイネ。エルフハイムにとってはこれもオルクス同様頭の痛い問題だ。
「先の歪虚CAMがエルフハイム付近を通過した時の事は覚えているかい? あの時、敵は術者を的確に攻撃してきた。浄化術に詳しい者がいなければ取れない作戦だ」
「シャイネ、この事は長老会の耳に入っているの?」
「うん。けれど、彼らがそれと認めるのは難しいだろうね」
「でも、何か対策を打たないと。エルフハイムの術に精通した彼が歪虚側にいるという事はとてつもない問題よ」
 これから先浄化術を使おうにも妨害を受ける可能性は高く、またその気になればエルフハイムを覆う結界林も通過してくるだろう。
「私のこの力を追求する上でも、エルフハイムとは連携を取るべきと考えているわ。それに、恐らく森を出た後の彼の研究成果でもあるこの機械楔には、長老会も興味があるんじゃないかしら?」
「ふむ……それで? 僕に何をさせたいのかな?」
「維新派の筆頭、ユレイテル・エルフハイムにお目通しを願いたい」
 シャイネは腕を組み、眉を潜め。
「どうかな。彼も今や長老会の一員、一躍時の人だ。急に部外者が面会できるかは……」
「――そういう事なら、俺の方からも手を回しておくぜ」
 全員同時に入り口に目を向ける。そこには勢い良く扉を開けたハジャと呼ばれるエルフの男が立っていた。
「なんならヨハネ・エルフハイム名義で正式な招待状でも出そうか?」
「……あなた、誰?」
「タングラム様。なんだかAPVがエルフハイムみたいになってきましたね」
 耳打ちするフクカンにタングラムは溜息と共に肩を落とした。



「ようこそエルフハイムへ。歓迎するよ」
 これまで固く閉ざされ、物流も大きく制限されていたエルフハイム。
 四つある区画の中でもここナデルハイムは特に維新派が多く住まう、ヒトとエルフの緩衝地帯だ。
「僕はヨハネ。長老会の一員で、立場としては恭順派という奴だね。彼はユレイテル。史上初の維新派長老だ」
 椅子にかけたままのユレイテルを笑顔で紹介するヨハネ。ユレイテルは冷や汗を流し。
「……ハイデマリー殿。このような片田舎まで遠路遥々ご苦労だったな。機導師には退屈な道程であったろう」
「こちらこそ、お忙しい中時間を作って頂きありがとうございます。この森都の景色は、私にとっても新鮮ですわ」
「前置きはこのくらいにしてこう。何やら急を要する相談事があると見たが?」
 頷くハイデマリー。それから傍らのシャイネに目配せし。
「今日お話したい事は、この機械式楔の技術を私に伝えた人物、ヴォールについて。それから、今後の浄化術の扱いについてです」
「実に興味深いね。僕も浄化術の今後については是非相談したかったところなんだ。ユレイテルも構わないね?」
 ユレイテルが答える前にヨハネにこう言われては首を横に振るわけにも行かない。
 二人の力関係は拮抗しているように見えて、実は一方的なのだ。
「……ああ。私としても、どうやら無関係ではないらしいからな」
「ではハンターの諸君も交え、忌憚なく意見を交わそうじゃないか。ハジャ、お茶を入れてくれないか?」
「なんでや!? 茶なんか淹れた事もねーよ、知ってんだろ!?」
「……パウラ、頼めるか?」
 ため息混じりのユレイテルの声に、補佐役の女性が頷いた。
 案内されたのは森の中にある会議室……いや、部屋ではない。
 開放的な、しかし静かな空間。川の畔に並んだ木製のテーブルが、ハンター達を待っていた。

解説

●目的
浄化技術交流会への出席。


●概要
エルフハイムの一角、維新派が仕切る町、ナデルハイムに向かう。
現地の会議室を借り受け、そこで浄化術についての意見交換に参加してほしい。
また、長老会の人間と対面できる数少ない機会でもある為、浄化術以外の話を聞く機会でもある。
この機会をどのように活かしてもらっても構わない。
但し、出席者にはそれぞれの思惑があることを忘れずに。


●出席者

『ハイデマリー』
錬金術師組合所属。正博士になれるほどの逸材だが、辞退中。
機械式の浄化の楔を作り、オルクス相手に一定の効果を挙げたが、技術的に行き詰まる。
嘗てそれと知らず、ヴォールの弟子として基礎理論を授かった。
ヴォールへの感情は言葉に表せないほど複雑で、自分でもどうしたいのかわかっていない。

『ヨハネ』
恭順派長老。長老会の中でも高い発言力を誇る。
恭順派の立場を示さねばならない為外部の人間への技術流出は好ましくないし、ヴォールの存在も認められない。
……筈なのだが、ハンターを呼ぶように言ったりハジャを仕向けたり、目的はよくわからない。
器とハンターを接触させたりしているのだが……。

『ユレイテル』
維新派長老。維新派の中で初の長老で、ナデルハイムの責任者。
エルフハイム数少ない常識人で、浄化技術の改良、歪虚との戦いの為外部との協調は必要と考える。
心情としては錬金術師組合との協調は吝かではないのだが、恭順派の顔色も伺わねばならない立場にある。

『シャイネ』
エルフハイム出身の詩人。
ある意味において諜報員のような立場にあり、エルフハイムに外部の情報を伝える立場にある。
恭順派にも維新派にも属しておらず、一人のハンターとしての立場で物事に当たっている。
浄化術の権威でもあるヴォールの実の弟でもある。

『ハジャ』
ヨハネの護衛。お茶すら淹れられないので見ているだけ。

『パウラ』
ユレイテルの部下。お茶を淹れたり議事録を作ってくれるだけ。

マスターより

お世話になっております、神宮寺でございます。

NPCがすごい数出ているので、全部分かる人は帝国博士だと思います。
メインは浄化術とヴォールについてです。
基本的に、既に錬金術師組合はハンターと協力する立場にある為、エルフハイム側の協力をどれくらい引き出せるかがポイントです。
またこの場にいる人達は本心は別としてそれぞれ立場があり、何か決めるには「利益」や「顔を立てる事」が必要です。
議題以外の話をするのも歓迎しますが、本題を忘れないように。
更に、器ちゃんとジエルデはいません。

それではよろしくお願い致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/08/07 20:03

参加者一覧

  • ユレイテルの愛妻
    イーリス・エルフハイム(ka0481
    エルフ|24才|女性|機導師
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 抱き留める腕
    ユリアン・クレティエ(ka1664
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 夢への誓い
    ハッド(ka5000
    人間(紅)|12才|男性|霊闘士
依頼相談掲示板
アイコン 【浄化技術交流会】ω・)
ハッド(ka5000
人間(クリムゾンウェスト)|12才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/08/02 01:18:18
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/29 23:19:37