ゲスト
(ka0000)
小さな森、秘められた命
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/08/17 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/08/26 07:30
オープニング
ドワーフのギムレットは黒ずんだ荒野を歩いていた。
以前、ここには豊かな森があったが歪虚との戦いで焼失してしまった。汚染された森は炭となった朽ち木などの残骸すら残さず全て塵となって消えていた。
歪虚の侵攻は止まったものの、負のマテリアルによる瘴気はまだ消え去らぬ。
故に残るは荒野ばかり。ハンターとして戦うギムレットでなければ、きっと誰も近寄らないことだろう。
「はぁ……はぁ……」
ギムレットは新鮮な空気を求めて喘いだ。まるで高山にいるような息苦しさだった。大きく空気を吸い込んでも吸い込んだ気にならない。風に含まれるマテリアルですら死滅しかかっているのだろう。
だが、進まねばならぬ。
塵として森は消えたが、その森に住んでいたエルフ達の遺体はまだ野に晒されたままだ。
一つでも拾って帰るのが彼の仕事であった。歪虚の先兵とならぬように。安らかに眠ってもらうために。
が、何日もこの大地を歩き続けた疲労と苦しみに耐えかねてついにギムレットは倒れてしまった。
水で冷やされた布の感触が顔に当てられ、ギムレットは目を覚ました。
「……大丈夫ですか」
ギムレットを覗き込んだ顔を見て、彼はぼやけた頭を一気に目覚めさせた。
つる草のような緑の巻き髪。重たるそうな目蓋の奥に見える翡翠の瞳。病的な白い肌に尖った耳。エルフだ。
随分と痩せこけた女エルフだったが、水桶をどかせる動きはけっして幽霊などではなかった。
ギムレットはすぐに起き上がると、周りを確認した。カーキ色のテントに光蟲をガラス瓶に入れて吊るした明かりがギムレットの動きが伝わってユラユラ揺れていた。
先ほどよりかはずっとマシだが、空気の質はそれほど変わっていないことから、自分が倒れた場所からそれ程離れていないことをギムレットは自覚した。
「助けてくれたのか?」
「ええ……ここはずっと前に歪虚との戦いで大きく傷ついた森です。無暗に立ち入らないでください」
エルフの言葉は淡々として抑揚にかけていた。命は助けたもののギムレット本人にはさして興味のないような。
ああ、歪虚の侵攻で生き残ったエルフなんだろう。ギムレットはすぐ直感した。
「森ったって、もうここには森なんてないだろう。こういうところは荒野っていうんだ。俺はギムレット。この森の供養にやってきたんだ。未だに成仏できねぇ遺体をちゃんと眠らせてやるようにしにきたんだよ。生きている奴がいるだなんて思いもよらなかったぜ。僥倖だな」
人懐っこい笑みを浮かべて挨拶したが、エルフは眉ひとつ動かす様子もなく、淡々と片付け、代わりに粗末な食べ物をギムレットに渡しただけだった。
「森は、まだあります」
それはギムレットと共に外に出ることを拒否する言葉でも、あった。
「おい、待てよ。ここのどこに森があるってんだ。森どころか木だってないんだぞ」
「あります。森は死んでいません」
かちん、と来たようだ。
一つの場所、一つのモノにこだわり続けるエルフらしい修正だと思った。
「こんな空気の悪いところ、人が住む場所じゃねぇよ。街にはエルフもいっぱいいる。他の森に行ってまた森作ればいいだろう。俺を救ってくれた恩人には悪いんだが、このままじゃあんたもいつか倒れ……」
パシン。
ギムレットの頬から乾いた音が響いた。エルフが平手打ちを放ったのだ。
「今が良ければそれで良いというドワーフの典型のようなお考えですね。私の住むところはここ以外有りません」
そしてどうぞ回復したのならお気をつけて。
と、エルフは立ち上がってテントから出て行ってしまった。
「~~~~!!! っの偏屈がっ! 今日生きられなきゃ明日はねぇだろ! 過去に縛られんな! 時間は逆向きには動かねぇんだ!!」
ギムレットは爆発してそう言うと、テントから飛び出てエルフの後を追った。
そしてそこで足が止まった。
「今日だけのことを考えて明日に思いが至らない。森は……ここにあります」
緑が芽吹いていた。
といってもそれは小さい。手のひらほどの若木の芽がエルフの前に顔を出していただけだった。
だが、この負のマテリアルが漂うこの地域で、その新緑の緑が生む正のマテリアルは輝くほどに美しく、そして爽やかな空気を生み出していた。
「これが、私の『森』です」
若木を見つめる翡翠の瞳の向こうには確かに豊かな森が映っていた。
馬鹿だと思った。
あんな芽吹いたばかりの若木を森だとか称して、自分の生活の不便さもかなぐり捨てて後生大事に育てるなんて。
そんなものに胸打たれるなんて自分も相当の馬鹿だ。
「どうしても、ここを離れねぇってのか」
「森はここにしかありませんので」
決然というエルフにギムレットは深くため息をつくと、しゃあねぇなあ。と頭をかいた。
「ちょっくら街に戻ってハンター呼んでやるよ」
「そんなの不要……」
断ろうとするエルフにギムレットは詰め寄るとしっかり睨みつけた。
「馬鹿野郎。こんな所で一人で頑張っても仕方ねぇだろ。祭祀で負のマテリアルを払おうってんだよ。その方が……森のためにもなるだろ。こんな陰気くさい土地なんだ。そのひょろこいのが病気になったり、枯れたりしたらそれこそ終わりじゃねえか。いいか、お前だって俺を助けたんだ。だったら、俺にも助けさせろ!」
価値観の違いはある。
だが、想いはそう違わないのだとギムレットは語った。
以前、ここには豊かな森があったが歪虚との戦いで焼失してしまった。汚染された森は炭となった朽ち木などの残骸すら残さず全て塵となって消えていた。
歪虚の侵攻は止まったものの、負のマテリアルによる瘴気はまだ消え去らぬ。
故に残るは荒野ばかり。ハンターとして戦うギムレットでなければ、きっと誰も近寄らないことだろう。
「はぁ……はぁ……」
ギムレットは新鮮な空気を求めて喘いだ。まるで高山にいるような息苦しさだった。大きく空気を吸い込んでも吸い込んだ気にならない。風に含まれるマテリアルですら死滅しかかっているのだろう。
だが、進まねばならぬ。
塵として森は消えたが、その森に住んでいたエルフ達の遺体はまだ野に晒されたままだ。
一つでも拾って帰るのが彼の仕事であった。歪虚の先兵とならぬように。安らかに眠ってもらうために。
が、何日もこの大地を歩き続けた疲労と苦しみに耐えかねてついにギムレットは倒れてしまった。
水で冷やされた布の感触が顔に当てられ、ギムレットは目を覚ました。
「……大丈夫ですか」
ギムレットを覗き込んだ顔を見て、彼はぼやけた頭を一気に目覚めさせた。
つる草のような緑の巻き髪。重たるそうな目蓋の奥に見える翡翠の瞳。病的な白い肌に尖った耳。エルフだ。
随分と痩せこけた女エルフだったが、水桶をどかせる動きはけっして幽霊などではなかった。
ギムレットはすぐに起き上がると、周りを確認した。カーキ色のテントに光蟲をガラス瓶に入れて吊るした明かりがギムレットの動きが伝わってユラユラ揺れていた。
先ほどよりかはずっとマシだが、空気の質はそれほど変わっていないことから、自分が倒れた場所からそれ程離れていないことをギムレットは自覚した。
「助けてくれたのか?」
「ええ……ここはずっと前に歪虚との戦いで大きく傷ついた森です。無暗に立ち入らないでください」
エルフの言葉は淡々として抑揚にかけていた。命は助けたもののギムレット本人にはさして興味のないような。
ああ、歪虚の侵攻で生き残ったエルフなんだろう。ギムレットはすぐ直感した。
「森ったって、もうここには森なんてないだろう。こういうところは荒野っていうんだ。俺はギムレット。この森の供養にやってきたんだ。未だに成仏できねぇ遺体をちゃんと眠らせてやるようにしにきたんだよ。生きている奴がいるだなんて思いもよらなかったぜ。僥倖だな」
人懐っこい笑みを浮かべて挨拶したが、エルフは眉ひとつ動かす様子もなく、淡々と片付け、代わりに粗末な食べ物をギムレットに渡しただけだった。
「森は、まだあります」
それはギムレットと共に外に出ることを拒否する言葉でも、あった。
「おい、待てよ。ここのどこに森があるってんだ。森どころか木だってないんだぞ」
「あります。森は死んでいません」
かちん、と来たようだ。
一つの場所、一つのモノにこだわり続けるエルフらしい修正だと思った。
「こんな空気の悪いところ、人が住む場所じゃねぇよ。街にはエルフもいっぱいいる。他の森に行ってまた森作ればいいだろう。俺を救ってくれた恩人には悪いんだが、このままじゃあんたもいつか倒れ……」
パシン。
ギムレットの頬から乾いた音が響いた。エルフが平手打ちを放ったのだ。
「今が良ければそれで良いというドワーフの典型のようなお考えですね。私の住むところはここ以外有りません」
そしてどうぞ回復したのならお気をつけて。
と、エルフは立ち上がってテントから出て行ってしまった。
「~~~~!!! っの偏屈がっ! 今日生きられなきゃ明日はねぇだろ! 過去に縛られんな! 時間は逆向きには動かねぇんだ!!」
ギムレットは爆発してそう言うと、テントから飛び出てエルフの後を追った。
そしてそこで足が止まった。
「今日だけのことを考えて明日に思いが至らない。森は……ここにあります」
緑が芽吹いていた。
といってもそれは小さい。手のひらほどの若木の芽がエルフの前に顔を出していただけだった。
だが、この負のマテリアルが漂うこの地域で、その新緑の緑が生む正のマテリアルは輝くほどに美しく、そして爽やかな空気を生み出していた。
「これが、私の『森』です」
若木を見つめる翡翠の瞳の向こうには確かに豊かな森が映っていた。
馬鹿だと思った。
あんな芽吹いたばかりの若木を森だとか称して、自分の生活の不便さもかなぐり捨てて後生大事に育てるなんて。
そんなものに胸打たれるなんて自分も相当の馬鹿だ。
「どうしても、ここを離れねぇってのか」
「森はここにしかありませんので」
決然というエルフにギムレットは深くため息をつくと、しゃあねぇなあ。と頭をかいた。
「ちょっくら街に戻ってハンター呼んでやるよ」
「そんなの不要……」
断ろうとするエルフにギムレットは詰め寄るとしっかり睨みつけた。
「馬鹿野郎。こんな所で一人で頑張っても仕方ねぇだろ。祭祀で負のマテリアルを払おうってんだよ。その方が……森のためにもなるだろ。こんな陰気くさい土地なんだ。そのひょろこいのが病気になったり、枯れたりしたらそれこそ終わりじゃねえか。いいか、お前だって俺を助けたんだ。だったら、俺にも助けさせろ!」
価値観の違いはある。
だが、想いはそう違わないのだとギムレットは語った。
解説
歪虚との戦いで滅びた森にエルフの生存者をハンターのギムレットが発見しました。
女エルフのアガスティアは再び芽吹いた若木を守って生きています。ギムレットはその若木が負のマテリアルに冒され枯れてしまわないように、ハンターに負のマテリアルを祓う祭祀をしてあげて欲しいと依頼しています。
●目的
若木の健やかな成長を祈願し負のマテリアルを祓う。
森の復興運動を行う。
●祓い方について
基本的にお祭り騒ぎをしていれば、その賑やかさで負のマテリアルは祓われます。
ただしエルフのアガスティアは騒がしいのはあまり好きではありません。
場所に合わせた祈りを捧げてください。
●NPC
ギムレット
ハンターのドワーフ。機導士。40代前半。ちょっと気難しいところはありますが、割と真面目なドワーフの男性です。
アガスティア
エルフ。聖導士。外見30代。実際は60代。元はこの森に住む小部族の巫女でした。しかし彼女以外は歪虚との戦いで死に絶えました。森を失ってから少し感情表現が希薄になっています。
●若木
シラカシの木です。
今年芽吹きました。
それまではアガスティアが一人で負のマテリアルを祓ったり、土壌整備を続けていて、その結果が今結実しているという感じです。
今のところ負のマテリアルの影響はなく、生き生きと成長しています。
●舞台
ゾンネンシュトラール帝国にある森だった場所です。(エルフハイムとは遠く離れています)
3年ほど前に歪虚に侵攻を受け、苛烈な戦いののちに森は焼失しました。襲ってきた歪虚もその時に退治されており、以後は誰も近寄らぬ土地となっています。
今は荒野が続くだけの土地であり、アガスティアのテントがぽつねんと立っています。
●設定について
上記の舞台の項であることを了承した、種族がエルフのPCは、この焼失した森を故郷と設定することができます。(もちろんしなくても構いません)
女エルフのアガスティアは再び芽吹いた若木を守って生きています。ギムレットはその若木が負のマテリアルに冒され枯れてしまわないように、ハンターに負のマテリアルを祓う祭祀をしてあげて欲しいと依頼しています。
●目的
若木の健やかな成長を祈願し負のマテリアルを祓う。
森の復興運動を行う。
●祓い方について
基本的にお祭り騒ぎをしていれば、その賑やかさで負のマテリアルは祓われます。
ただしエルフのアガスティアは騒がしいのはあまり好きではありません。
場所に合わせた祈りを捧げてください。
●NPC
ギムレット
ハンターのドワーフ。機導士。40代前半。ちょっと気難しいところはありますが、割と真面目なドワーフの男性です。
アガスティア
エルフ。聖導士。外見30代。実際は60代。元はこの森に住む小部族の巫女でした。しかし彼女以外は歪虚との戦いで死に絶えました。森を失ってから少し感情表現が希薄になっています。
●若木
シラカシの木です。
今年芽吹きました。
それまではアガスティアが一人で負のマテリアルを祓ったり、土壌整備を続けていて、その結果が今結実しているという感じです。
今のところ負のマテリアルの影響はなく、生き生きと成長しています。
●舞台
ゾンネンシュトラール帝国にある森だった場所です。(エルフハイムとは遠く離れています)
3年ほど前に歪虚に侵攻を受け、苛烈な戦いののちに森は焼失しました。襲ってきた歪虚もその時に退治されており、以後は誰も近寄らぬ土地となっています。
今は荒野が続くだけの土地であり、アガスティアのテントがぽつねんと立っています。
●設定について
上記の舞台の項であることを了承した、種族がエルフのPCは、この焼失した森を故郷と設定することができます。(もちろんしなくても構いません)
マスターより
エルフとドワーフの考えの違い。そりが合わない二者の関係。というものを描くことから今回のシナリオが生まれました。
どちらも思いはそんなに違わないのですが、どことなしに馬が合わない。
僕が考えるエルフとドワーフってそんな感じかなと考えています。
二人の微妙な信頼関係と、若木が育つことによる未来は、ハンターの皆様によって作られるものと考えられます。
この話は3話でお送りする予定となっています。
どうぞよろしくお願いいたします。
どちらも思いはそんなに違わないのですが、どことなしに馬が合わない。
僕が考えるエルフとドワーフってそんな感じかなと考えています。
二人の微妙な信頼関係と、若木が育つことによる未来は、ハンターの皆様によって作られるものと考えられます。
この話は3話でお送りする予定となっています。
どうぞよろしくお願いいたします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/08/23 01:01
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談しましょう! ルナ・レンフィールド(ka1565) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/08/15 21:33:45 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/11 23:35:29 |