ゲスト
(ka0000)
ユグディラは日頃の行いが悪いので……
マスター:秋風落葉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 6~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/08/10 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/08/19 07:30
オープニング
●森の中で
リンダールの森の奥、一本の木に頭をもたれかからせて寝そべる者がいた。頭上で生い茂る緑の葉っぱの隙間から覗く青い空を、物憂げに見つめてため息をついてみたり。
そこに、がさ、と小さな音を立てて茂みの中から現れた者達がいる。総勢三名。皆、寝ている彼と同族の者であり、さらに言うと顔なじみでもあった。
内一体が、彼らの種族にしか理解できない言葉で話しかける。
(なあなあ、一盗り行こうぜ!)
そう口にしたのは茶トラの毛並みを持つやや大柄な個体。
まだ寝転がったままの、黒い毛並みを持った個体は心ここにあらずといった様子で答える。
(……やめておくニャ。あまり気分が乗らないニャ)
彼らの姿は、一言で表現すると猫だった。つれない返事に、茶トラの猫は露骨に顔をしかめる。
(ちっ……なんだよ、最近付き合い悪いなあ……)
茶トラの隣にいる、いかにも腰ぎんちゃく然とした猫が囁いた。
(なんだかこの前からこいつ様子がおかしいんですよ)
(ああ。そういえば人間に捕まりそうになったって話を聞いたぜ。まさか怖気づいたのか?)
(……そんなことはないニャ)
挑発にも乗らず、黒猫は言葉短かに答えるのみだ。
彼らの正体はユグディラ。猫にそっくりの外見の、時折二足歩行する小さな幻獣である。人並みの知恵を持っており、さらにちょっとした幻術やテレパシーといった不思議な力を行使することが可能だ。
ユグディラはよく人間の社会に出没しては食料品などを盗み、人間に追い掛け回されることもしばしばある。しかしそこは猫のように素早い彼らのこと。そうそう捕まったりはしないのであるが。
なお、一盗り行こうぜ! とは、盗みに行こうぜ! という意味である。
茶トラは黒猫のやる気のなさに舌打ちした。
(まあいいや。俺達は行って来るからな。美味いもんが手に入ってもお前には分けてやらねーぞ)
そう捨て台詞を残し、三体のユグディラはそれぞれ去っていった。あとにはまだ寝そべったままの黒い猫が取り残される。
(……)
先日。この黒ユグディラがとあるハンター達と出会った時、その中の一人が彼に対し、人間の社会で盗みを行っているとその内害獣として討伐されてしまう、ということを真摯な表情でこんこんと語って聞かせるということがあった。
黒ユグディラはその時しおらしく聞いていた――ように見せかけて半分ほど聞き流していたのだが、今になってその言葉が気になりだしていたのである。
黒ユグディラは気だるげに起き上がると、歩き出した。
●街の中で
結局リンダールの森近くの、人間達の街に来てしまった黒ユグディラ。通りには露店が並び、人がはげしく行き交っている。
黒ユグディラの注意を引くのは、もちろん露店に陳列されている美味しそうな食べ物だ。全身がうずうずするものの、なんとかこらえるユグディラ。
そんな折、彼の目に興味深い光景が映った。
一人の人間が、露店の売り物である綺麗なアクセサリーをこっそりと懐に納め、そのまま立ち去ったのである。
「……ん? あ? な、ないぞ!? 盗まれた! くそっ! どこのどいつだ!!」
窃盗にあったことに気付いた店の主が騒ぎだし始め、周囲は騒然とし始めた。盗みの当事者は一瞬びくりと首をすくめたものの、足の速度はそのままに立ち去ろうとする。
そこに飛び出したのはかのユグディラだ。
彼は二本脚で立ち塞がると、肉球のついた前脚を、その盗みを行った不届き者にびしりと突きつけ、ニャアニャアと大声で騒ぎ立てた。たちまち人々が集まり、周囲を取り囲む。
窃盗をした男は驚愕の表情とともにユグディラを見返すのみだ。
ユグディラは得意げににやりと笑うが、なにやら周囲の反応が芳しくない。
盗みは悪いこと→発見した自分は凄い→周囲が褒めてくれる→美味しいものをいっぱい貰えるかも。
という目論みだったのだが。
ユグディラは辺りを見回す。なぜか人間達は真犯人ではなく、彼の小さな体をじっと見つめていた。
その中の一人、被害にあった店のおやじが怒りの形相で口を開く。
「まさか犯人が自分から出てくるとはな……ユグディラの仕業だったか!」
「ああ。しかも他人に罪をなすりつけようなんざ、ふてえ野郎だ!」
「姿を見せたのが運の尽きだわ! 逃がさないで!」
――ニャアアアアアア!?
とユグディラは慌てふためき、脱兎のごとく逃げようとするがもう遅い。周囲を完全にふさがれた状態ではいくら彼でも逃げおおせることは出来ず、あっさりと捕まってしまった。
疑いが晴れた――というかユグディラ以外はまったく気にもとめてなかったが――男は口元にぎこちない笑みを浮かべた。
「まったく何て奴だ。俺に罪を着せようとするなんて……本当にどうしようもない連中だな。ユグディラというのは」
「ああ。災難だったな」
「違いない……さてと。では皆さん。コイツにはしっかりとした仕置きをお願いするよ。見届けたいのはやまやまだが、俺は旅の途中で急いでいてね」
「おう任せとけ!」
男はユグディラを一瞥すると、そそくさと立ち去り始める。
ユグディラは必死で鳴き始めるが、真犯人はそのまま逃げていくし、人間達の怒りがおさまった様子もない。
最終手段。
ユグディラはテレパシー能力を用い、簡単なビジョンを周囲の人間たちに無差別に送り込んだ。それは以前彼が出会ったハンター達のイメージだ。もしかしたら彼らがこの街にいて、ちゃんと事情を分かってくれるかもという期待を込めて。
人々は突然見えたイメージに戸惑い、やがて一人が恐る恐る口を開いた。
「これってひょっとしてひょっとすると……ロザリーさんじゃないか?」
銀色の長い髪を持った少女の幻影を見た一人がぽつりと呟いた。
ロザリーことロザリア=オルララン。彼女は最近この街を拠点にしており、街の人達はユグディラが見せた幻影の一つである彼女のことをよく知っていた。
猫を捕まえている者とその周囲にいる者達はそれぞれ顔を見合わせる。
「こいつ、ロザリーさんの知り合いなのか?」
「はっはっは、そんなわけないだろう。きっとこれもこいつの作戦だ!」
「だよねー!」
「まったく、ロザリーさんまで利用しようだなんて本当に救いようがない奴だ!」
――ニャアアアアアア!?
状況がどんどん悪化していく。
ユグディラの視線の先では、真犯人である男はさっさと路地裏に入り込み、ついに姿が見えなくなってしまった。
「さて、どうしてくれようか?」
人間達は険しい顔で手の中の黒猫を見下ろしている。
哀れを誘う声で今度は人間達の情に訴えかけるユグディラであったが……。
先日のように、全身をモフられる程度で終わることはなさそうであった。
――ちなみにその頃。
「このクレープ美味しいですわ! もう一ついただきますわ!」
噂のロザリーはこの街の屋台で一人、クレープをぱくついていた……。
リンダールの森の奥、一本の木に頭をもたれかからせて寝そべる者がいた。頭上で生い茂る緑の葉っぱの隙間から覗く青い空を、物憂げに見つめてため息をついてみたり。
そこに、がさ、と小さな音を立てて茂みの中から現れた者達がいる。総勢三名。皆、寝ている彼と同族の者であり、さらに言うと顔なじみでもあった。
内一体が、彼らの種族にしか理解できない言葉で話しかける。
(なあなあ、一盗り行こうぜ!)
そう口にしたのは茶トラの毛並みを持つやや大柄な個体。
まだ寝転がったままの、黒い毛並みを持った個体は心ここにあらずといった様子で答える。
(……やめておくニャ。あまり気分が乗らないニャ)
彼らの姿は、一言で表現すると猫だった。つれない返事に、茶トラの猫は露骨に顔をしかめる。
(ちっ……なんだよ、最近付き合い悪いなあ……)
茶トラの隣にいる、いかにも腰ぎんちゃく然とした猫が囁いた。
(なんだかこの前からこいつ様子がおかしいんですよ)
(ああ。そういえば人間に捕まりそうになったって話を聞いたぜ。まさか怖気づいたのか?)
(……そんなことはないニャ)
挑発にも乗らず、黒猫は言葉短かに答えるのみだ。
彼らの正体はユグディラ。猫にそっくりの外見の、時折二足歩行する小さな幻獣である。人並みの知恵を持っており、さらにちょっとした幻術やテレパシーといった不思議な力を行使することが可能だ。
ユグディラはよく人間の社会に出没しては食料品などを盗み、人間に追い掛け回されることもしばしばある。しかしそこは猫のように素早い彼らのこと。そうそう捕まったりはしないのであるが。
なお、一盗り行こうぜ! とは、盗みに行こうぜ! という意味である。
茶トラは黒猫のやる気のなさに舌打ちした。
(まあいいや。俺達は行って来るからな。美味いもんが手に入ってもお前には分けてやらねーぞ)
そう捨て台詞を残し、三体のユグディラはそれぞれ去っていった。あとにはまだ寝そべったままの黒い猫が取り残される。
(……)
先日。この黒ユグディラがとあるハンター達と出会った時、その中の一人が彼に対し、人間の社会で盗みを行っているとその内害獣として討伐されてしまう、ということを真摯な表情でこんこんと語って聞かせるということがあった。
黒ユグディラはその時しおらしく聞いていた――ように見せかけて半分ほど聞き流していたのだが、今になってその言葉が気になりだしていたのである。
黒ユグディラは気だるげに起き上がると、歩き出した。
●街の中で
結局リンダールの森近くの、人間達の街に来てしまった黒ユグディラ。通りには露店が並び、人がはげしく行き交っている。
黒ユグディラの注意を引くのは、もちろん露店に陳列されている美味しそうな食べ物だ。全身がうずうずするものの、なんとかこらえるユグディラ。
そんな折、彼の目に興味深い光景が映った。
一人の人間が、露店の売り物である綺麗なアクセサリーをこっそりと懐に納め、そのまま立ち去ったのである。
「……ん? あ? な、ないぞ!? 盗まれた! くそっ! どこのどいつだ!!」
窃盗にあったことに気付いた店の主が騒ぎだし始め、周囲は騒然とし始めた。盗みの当事者は一瞬びくりと首をすくめたものの、足の速度はそのままに立ち去ろうとする。
そこに飛び出したのはかのユグディラだ。
彼は二本脚で立ち塞がると、肉球のついた前脚を、その盗みを行った不届き者にびしりと突きつけ、ニャアニャアと大声で騒ぎ立てた。たちまち人々が集まり、周囲を取り囲む。
窃盗をした男は驚愕の表情とともにユグディラを見返すのみだ。
ユグディラは得意げににやりと笑うが、なにやら周囲の反応が芳しくない。
盗みは悪いこと→発見した自分は凄い→周囲が褒めてくれる→美味しいものをいっぱい貰えるかも。
という目論みだったのだが。
ユグディラは辺りを見回す。なぜか人間達は真犯人ではなく、彼の小さな体をじっと見つめていた。
その中の一人、被害にあった店のおやじが怒りの形相で口を開く。
「まさか犯人が自分から出てくるとはな……ユグディラの仕業だったか!」
「ああ。しかも他人に罪をなすりつけようなんざ、ふてえ野郎だ!」
「姿を見せたのが運の尽きだわ! 逃がさないで!」
――ニャアアアアアア!?
とユグディラは慌てふためき、脱兎のごとく逃げようとするがもう遅い。周囲を完全にふさがれた状態ではいくら彼でも逃げおおせることは出来ず、あっさりと捕まってしまった。
疑いが晴れた――というかユグディラ以外はまったく気にもとめてなかったが――男は口元にぎこちない笑みを浮かべた。
「まったく何て奴だ。俺に罪を着せようとするなんて……本当にどうしようもない連中だな。ユグディラというのは」
「ああ。災難だったな」
「違いない……さてと。では皆さん。コイツにはしっかりとした仕置きをお願いするよ。見届けたいのはやまやまだが、俺は旅の途中で急いでいてね」
「おう任せとけ!」
男はユグディラを一瞥すると、そそくさと立ち去り始める。
ユグディラは必死で鳴き始めるが、真犯人はそのまま逃げていくし、人間達の怒りがおさまった様子もない。
最終手段。
ユグディラはテレパシー能力を用い、簡単なビジョンを周囲の人間たちに無差別に送り込んだ。それは以前彼が出会ったハンター達のイメージだ。もしかしたら彼らがこの街にいて、ちゃんと事情を分かってくれるかもという期待を込めて。
人々は突然見えたイメージに戸惑い、やがて一人が恐る恐る口を開いた。
「これってひょっとしてひょっとすると……ロザリーさんじゃないか?」
銀色の長い髪を持った少女の幻影を見た一人がぽつりと呟いた。
ロザリーことロザリア=オルララン。彼女は最近この街を拠点にしており、街の人達はユグディラが見せた幻影の一つである彼女のことをよく知っていた。
猫を捕まえている者とその周囲にいる者達はそれぞれ顔を見合わせる。
「こいつ、ロザリーさんの知り合いなのか?」
「はっはっは、そんなわけないだろう。きっとこれもこいつの作戦だ!」
「だよねー!」
「まったく、ロザリーさんまで利用しようだなんて本当に救いようがない奴だ!」
――ニャアアアアアア!?
状況がどんどん悪化していく。
ユグディラの視線の先では、真犯人である男はさっさと路地裏に入り込み、ついに姿が見えなくなってしまった。
「さて、どうしてくれようか?」
人間達は険しい顔で手の中の黒猫を見下ろしている。
哀れを誘う声で今度は人間達の情に訴えかけるユグディラであったが……。
先日のように、全身をモフられる程度で終わることはなさそうであった。
――ちなみにその頃。
「このクレープ美味しいですわ! もう一ついただきますわ!」
噂のロザリーはこの街の屋台で一人、クレープをぱくついていた……。
解説
皆さんは、たまたまこの場に居合わせて騒ぎを目撃しました。そして、黒ユグディラが発信したイメージも受け取っています。
可能ならば、黒ユグディラを助けてあげてください。彼は(少なくとも今回の件については)無罪です。
なお、ユグディラは人語を耳で理解することはできますが、人語を喋ることは出来ません。
真犯人はOPに書かれている男で間違いありません。男が盗みだしたのは、宝石のついた指輪です。
男は覚醒者ではありませんが、それなりの身のこなしを見せます。
目ざとい者ならば、懐に短剣を隠し持っていることに気付くでしょう。
ロザリーはOPの通り、どこかの屋台でクレープを食べています。彼女はこの街ではよく知られており、また目立つ容貌なので、『探す』という行動を取った場合はすぐに見つかります。
彼女は先日この黒ユグディラと出会ったハンターの中の一人です。
なお、誰も呼びに来なかった場合、ロザリーはそのまま屋台でクレープを食べ続けると思います。
※関連シナリオ
クルセイダーの邂逅
可能ならば、黒ユグディラを助けてあげてください。彼は(少なくとも今回の件については)無罪です。
なお、ユグディラは人語を耳で理解することはできますが、人語を喋ることは出来ません。
真犯人はOPに書かれている男で間違いありません。男が盗みだしたのは、宝石のついた指輪です。
男は覚醒者ではありませんが、それなりの身のこなしを見せます。
目ざとい者ならば、懐に短剣を隠し持っていることに気付くでしょう。
ロザリーはOPの通り、どこかの屋台でクレープを食べています。彼女はこの街ではよく知られており、また目立つ容貌なので、『探す』という行動を取った場合はすぐに見つかります。
彼女は先日この黒ユグディラと出会ったハンターの中の一人です。
なお、誰も呼びに来なかった場合、ロザリーはそのまま屋台でクレープを食べ続けると思います。
※関連シナリオ
クルセイダーの邂逅
マスターより
こんにちは、こんばんは。秋風落葉(しゅうふうらくよう)です。
ユグディラ大ピンチです。
こういった結果になったのは、ユグディラ族の身から出た錆ではありますが、助けていただけると幸いです。
ご参加、お待ちしております。
ユグディラ大ピンチです。
こういった結果になったのは、ユグディラ族の身から出た錆ではありますが、助けていただけると幸いです。
ご参加、お待ちしております。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/08/14 10:51
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142) 人間(リアルブルー)|30才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/08/09 18:22:44 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/08 12:08:51 |