ゲスト
(ka0000)
【東征】ひよことたまごの総力戦
マスター:鳥間あかよし

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在25人 / 1~25人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 2日
- プレイング締切
- 2015/08/03 22:00
- リプレイ完成予定
- 2015/08/12 22:00
オープニング
●小景
こんな深夜だというのに、屋敷には煌々と明かりがついている。
変わった屋敷だ、泉の上に建てられているのだから。
周りは宵闇より濃い憤怒を恐れて、ぴしゃんと口をつぐんでいるのに、その屋敷だけ熱気にあふれている。縁側を走りまわり、障子を乱暴に開け閉め。時に荷車が出入りし、怒鳴りあう声はさながら戦場のよう。
そうだ、戦場だ。ここは筆が刃な戦の場。
モノノフの護符を作り出す、陰陽寮が一翼。
いま、人影がひとつ、開けっ放しの門から表の暗闇へまろびいでた。
伸びかけの黒髪をざっくりと束ねた少年だ。玄関から顔を出した同輩へ、なにごとか返事をして道を急ぐ。
向かう先は城。名を龍尾城。
請うはモノノフ、またの名を、あなた。
●つまりなんなのさ
「護符作りが、追いつかないよ!」
泉玄舎の鴻池ユズル(こうのいけ・ゆずる)は、新たに積み上げられた白紙の山を見上げ、崩れ落ちた。
年のころは十二かそこら。伸びかけの黒髪をざっくり束ね、すりきれた狩衣を着ている。声変わりもまだなのか、水色の瞳はまだまだ幼い。その瞳に、疲れた顔の妹弟子が四人、ずるずる這い出てくる姿が映った。
「おなかすいたよう」
「……ねむい」
「札作り飽きたー」
「荷造りやだー」
「アオナ! アケミ! シロミツ! クロミツ! いいかげんにしろ!」
廊下側から突然、怒鳴りつけられた。
振り返った先に立っていたのは、白い狩衣の少年、尼崎チアキ(あまがさき・ちあき)。とび色の瞳に鬱憤が燃えている。年上なのだろう鴻池よりも、半年かそこらくらいは。
「恐れ多くもスメラギ様よりおおせつかった護符作りだぞ、真面目にやれ!」
だって、と頬をふくらませる子ども四人を、守るように鴻池が手を広げた。
「認めようよ尼崎。ここは人手が足りないんだよ」
「くだらんことを言っていないで手を動かせ! やらなきゃ終わらんぞ!」
「降参しよう。最初の分はどうにか城へ納めることができたけれど、おかわりが出るなんて僕もおまえも考えてなかったじゃないか」
「当然だ。流派を問わず作成でき、かつ効力を均一にするために、数を頼みにする方法に出たのだからな。あればあるだけいい」
「だけど僕達だけではとても、護符に込めるマテリアルが足りないよ」
「この戦に負けたなら俺たちは滅ぶしかないんだぞ!」
押し問答に、鴻池はほぞをかんだ。
泉玄舎は数ある陰陽寮の中でも玄武の流れを汲む小さな学び舎だ。天ノ都の下町にあり、寮を名乗るほどの規模ではなく、舎をもって符術師育成の許認可を得ている。隣近所の評判は、住み込みの寺子屋と同程度。創始者は元武家で、四十を過ぎてから陰陽道をこころざし泉玄舎を建設した。道楽だったのではと四代目になる先生は言っていた。その先生は、南の戦いへ行ったきり、音沙汰がない。
そんなわけで屋敷には、子どもしかいない。みんな弟子とは名ばかりの拾われっ子だから、家事や礼儀は仕込まれているけれど、肝心の符術が使えるのは鴻池と尼崎だけ。その二人だって、半年前先生に苗字をいただいたばかりの駆け出しだった。
半人前二人を足しても泉玄舎の看板はやっぱり重い。だから護符作りは妹弟子もそろっての総力戦だった。
泉玄舎の玄関を入って正面、屋敷の中心を貫く廊下から左へ行けば、泉へ面した畳敷きの間。今日はふすまがすべて取り払われ、障子も開けっ放しの大広間だ。妹弟子たちはそこで、丈夫な紙から札を切り出し、鴻池が符術の礎を組む。方法は人によって違うが、泉玄舎では戦勝を意味するとんぼの絵を入れることで札を聖別している。
よく乾かした札を束にして廊下を右へ行けば、こちらは板壁で仕切られた生活の場。お勝手に納戸に先生の部屋、そして神棚のある小広間。そこだけ、切り取られたように静かで、木戸を押し開けば、護符を手に瞑目している尼崎が居る。
それが彼らの戦いだった。
だけどもしかし、戦線が保たれたのは最初の護符作りが終わるまでだった。追加の圧倒的物量は、あっさりとこの名も無き小隊の許容量を越え瓦解寸前へ追い込んだ。その様は、あの大きな大きな火狐の王へ突撃していく東方軍のようで……。
パチンパチンと、行灯のそばでハサミの音が響いている。
うとうとしながら、アオナが札の切り出しを再開していた。いちばんおねえさんのアオナだけは、重大さを飲み込んでいるようで、手伝えることを探して鴻池のあとをついてまわっていた。
縁側ではアケミが、筆を入れた札を乾かしている。普段から何を考えているのかよくわからない子で、ただ言われたことを言われたようにするだけだ。
さらに下の妹弟子、シロミツとクロミツにいたっては遊びの延長で、しかもとうに飽きている。集中しろと言うほうが無理だ。
冷静さを保つために、我ながらわざとらしく感じるほど、鴻池は深く呼吸をした。
「アオナたちはもう寝る時間だろう。尼崎だってフラフラじゃないか」
「ならばこの白紙の山をどうするつもりなんだ。一度は引き受けておいて断るなど、泉玄舎の名折れだ!」
尼崎が床板を踏んだ。シロミツとクロミツが驚いて抱き合い、アケミが口を真一文字に結びアオナの後ろに隠れる。そのアオナも、瞳いっぱいに涙をためていた。
「無理なものは無理だよ。後生だ、ちーちゃん。僕だってケンカなんかしたかないんだ」
「ケンカ? 悠長なことだな、歪虚との全面戦争だぞ。大概にしろ!」
握りつぶした札を投げ捨て、尼崎が鴻池の胸倉をつかむ。何かが鴻池のなかで堰を切った瞬間。
ぐぎゅううううう。
腹の虫が鳴った。
ぐぎゅー。ぎゅるるる。きゅー。きゅるーりぎゅりっ。
つられて鳴きだし大合唱。夕飯を食べてから、ずいぶん経っている。シロミツとクロミツがわめきだした。
「おなか!」
「すいたー!」
「「ばんごはん、お茶漬けしか食べてないっ!」」
「て、手抜きじゃない、忙しかったんだ!」
炊事担当こと尼崎が空いたほうの手を振り回した。そうだねと、鴻池も苦笑で答え……ふと気づいた。
「ハンターの力を借りよう」
つぶやきに尼崎は目を見開いた。鴻池が独り言をもらす。
「そうだ、どうして気づかなかったんだろう。ハンターなら僕達よりずっとマテリアルの扱いに長けている。協力してもらえばいいじゃないか。符術の基礎を組むまでなら、負担は少ないから僕達も手伝えるし、泉玄舎の名目は保てるし、流通する護符の量は増えるし、誰も損しない!」
言い切った鴻池に、尼崎が若干引く。頭に昇った血もついでに下がったようだ。善は急げと鴻池は駆け出した。
「行ってくるよちーちゃん、留守はお願い!」
草履をひっかけて門の外へ。つまづき転びかける鴻池。その背へ声をかけたのは、玄関から顔を出した尼崎だ。
「……同じ頼むなら正式な依頼にしろ。救援任務、大至急と。卑屈は泉玄舎の名折れだからな」
わかった、と力強く返事をすると、鴻池は龍尾城を目指し走り出した。
こんな深夜だというのに、屋敷には煌々と明かりがついている。
変わった屋敷だ、泉の上に建てられているのだから。
周りは宵闇より濃い憤怒を恐れて、ぴしゃんと口をつぐんでいるのに、その屋敷だけ熱気にあふれている。縁側を走りまわり、障子を乱暴に開け閉め。時に荷車が出入りし、怒鳴りあう声はさながら戦場のよう。
そうだ、戦場だ。ここは筆が刃な戦の場。
モノノフの護符を作り出す、陰陽寮が一翼。
いま、人影がひとつ、開けっ放しの門から表の暗闇へまろびいでた。
伸びかけの黒髪をざっくりと束ねた少年だ。玄関から顔を出した同輩へ、なにごとか返事をして道を急ぐ。
向かう先は城。名を龍尾城。
請うはモノノフ、またの名を、あなた。
●つまりなんなのさ
「護符作りが、追いつかないよ!」
泉玄舎の鴻池ユズル(こうのいけ・ゆずる)は、新たに積み上げられた白紙の山を見上げ、崩れ落ちた。
年のころは十二かそこら。伸びかけの黒髪をざっくり束ね、すりきれた狩衣を着ている。声変わりもまだなのか、水色の瞳はまだまだ幼い。その瞳に、疲れた顔の妹弟子が四人、ずるずる這い出てくる姿が映った。
「おなかすいたよう」
「……ねむい」
「札作り飽きたー」
「荷造りやだー」
「アオナ! アケミ! シロミツ! クロミツ! いいかげんにしろ!」
廊下側から突然、怒鳴りつけられた。
振り返った先に立っていたのは、白い狩衣の少年、尼崎チアキ(あまがさき・ちあき)。とび色の瞳に鬱憤が燃えている。年上なのだろう鴻池よりも、半年かそこらくらいは。
「恐れ多くもスメラギ様よりおおせつかった護符作りだぞ、真面目にやれ!」
だって、と頬をふくらませる子ども四人を、守るように鴻池が手を広げた。
「認めようよ尼崎。ここは人手が足りないんだよ」
「くだらんことを言っていないで手を動かせ! やらなきゃ終わらんぞ!」
「降参しよう。最初の分はどうにか城へ納めることができたけれど、おかわりが出るなんて僕もおまえも考えてなかったじゃないか」
「当然だ。流派を問わず作成でき、かつ効力を均一にするために、数を頼みにする方法に出たのだからな。あればあるだけいい」
「だけど僕達だけではとても、護符に込めるマテリアルが足りないよ」
「この戦に負けたなら俺たちは滅ぶしかないんだぞ!」
押し問答に、鴻池はほぞをかんだ。
泉玄舎は数ある陰陽寮の中でも玄武の流れを汲む小さな学び舎だ。天ノ都の下町にあり、寮を名乗るほどの規模ではなく、舎をもって符術師育成の許認可を得ている。隣近所の評判は、住み込みの寺子屋と同程度。創始者は元武家で、四十を過ぎてから陰陽道をこころざし泉玄舎を建設した。道楽だったのではと四代目になる先生は言っていた。その先生は、南の戦いへ行ったきり、音沙汰がない。
そんなわけで屋敷には、子どもしかいない。みんな弟子とは名ばかりの拾われっ子だから、家事や礼儀は仕込まれているけれど、肝心の符術が使えるのは鴻池と尼崎だけ。その二人だって、半年前先生に苗字をいただいたばかりの駆け出しだった。
半人前二人を足しても泉玄舎の看板はやっぱり重い。だから護符作りは妹弟子もそろっての総力戦だった。
泉玄舎の玄関を入って正面、屋敷の中心を貫く廊下から左へ行けば、泉へ面した畳敷きの間。今日はふすまがすべて取り払われ、障子も開けっ放しの大広間だ。妹弟子たちはそこで、丈夫な紙から札を切り出し、鴻池が符術の礎を組む。方法は人によって違うが、泉玄舎では戦勝を意味するとんぼの絵を入れることで札を聖別している。
よく乾かした札を束にして廊下を右へ行けば、こちらは板壁で仕切られた生活の場。お勝手に納戸に先生の部屋、そして神棚のある小広間。そこだけ、切り取られたように静かで、木戸を押し開けば、護符を手に瞑目している尼崎が居る。
それが彼らの戦いだった。
だけどもしかし、戦線が保たれたのは最初の護符作りが終わるまでだった。追加の圧倒的物量は、あっさりとこの名も無き小隊の許容量を越え瓦解寸前へ追い込んだ。その様は、あの大きな大きな火狐の王へ突撃していく東方軍のようで……。
パチンパチンと、行灯のそばでハサミの音が響いている。
うとうとしながら、アオナが札の切り出しを再開していた。いちばんおねえさんのアオナだけは、重大さを飲み込んでいるようで、手伝えることを探して鴻池のあとをついてまわっていた。
縁側ではアケミが、筆を入れた札を乾かしている。普段から何を考えているのかよくわからない子で、ただ言われたことを言われたようにするだけだ。
さらに下の妹弟子、シロミツとクロミツにいたっては遊びの延長で、しかもとうに飽きている。集中しろと言うほうが無理だ。
冷静さを保つために、我ながらわざとらしく感じるほど、鴻池は深く呼吸をした。
「アオナたちはもう寝る時間だろう。尼崎だってフラフラじゃないか」
「ならばこの白紙の山をどうするつもりなんだ。一度は引き受けておいて断るなど、泉玄舎の名折れだ!」
尼崎が床板を踏んだ。シロミツとクロミツが驚いて抱き合い、アケミが口を真一文字に結びアオナの後ろに隠れる。そのアオナも、瞳いっぱいに涙をためていた。
「無理なものは無理だよ。後生だ、ちーちゃん。僕だってケンカなんかしたかないんだ」
「ケンカ? 悠長なことだな、歪虚との全面戦争だぞ。大概にしろ!」
握りつぶした札を投げ捨て、尼崎が鴻池の胸倉をつかむ。何かが鴻池のなかで堰を切った瞬間。
ぐぎゅううううう。
腹の虫が鳴った。
ぐぎゅー。ぎゅるるる。きゅー。きゅるーりぎゅりっ。
つられて鳴きだし大合唱。夕飯を食べてから、ずいぶん経っている。シロミツとクロミツがわめきだした。
「おなか!」
「すいたー!」
「「ばんごはん、お茶漬けしか食べてないっ!」」
「て、手抜きじゃない、忙しかったんだ!」
炊事担当こと尼崎が空いたほうの手を振り回した。そうだねと、鴻池も苦笑で答え……ふと気づいた。
「ハンターの力を借りよう」
つぶやきに尼崎は目を見開いた。鴻池が独り言をもらす。
「そうだ、どうして気づかなかったんだろう。ハンターなら僕達よりずっとマテリアルの扱いに長けている。協力してもらえばいいじゃないか。符術の基礎を組むまでなら、負担は少ないから僕達も手伝えるし、泉玄舎の名目は保てるし、流通する護符の量は増えるし、誰も損しない!」
言い切った鴻池に、尼崎が若干引く。頭に昇った血もついでに下がったようだ。善は急げと鴻池は駆け出した。
「行ってくるよちーちゃん、留守はお願い!」
草履をひっかけて門の外へ。つまづき転びかける鴻池。その背へ声をかけたのは、玄関から顔を出した尼崎だ。
「……同じ頼むなら正式な依頼にしろ。救援任務、大至急と。卑屈は泉玄舎の名折れだからな」
わかった、と力強く返事をすると、鴻池は龍尾城を目指し走り出した。
解説
護符作成を手伝いましょう。
だれかさんの手元へ届いた護符は、じつはあなたが作ったのかも。
OPの内容はすべてPC情報とし、泉玄舎へは既に到着しています。
相談期間がタイトになっております。お気をつけて。
開発シナリオではありません。
護符は自力で集めてくださいね。
>行動例
【護符】
小広間で戦勝祈願を行い、札へマテリアルをそそぎ護符へ変えます。
方法は人それぞれですが、この行動だけ泉玄舎では静寂を重んじます。
【支援】
大広間で札の作成、点検、荷造りをします。
厨房で夜食を作るもよし。作業場を掃除するもよし。
疲れたら先生の部屋へ布団を引いて寝るもよし。
>泉玄舎簡略図 屋敷の下から泉が湧いている
縁側>大広間=廊下=厨房・先生の部屋など>小広間
>NPC ガン無視してOKです
鴻池ユズル
駆け出し符術師 十二才 熱意だけはある
尼崎チアキ
駆け出し符術師 十三才 ネガティブなできすぎくん
妹弟子
アオナ 十才 おねえさん役
アケミ 七才 無口ふしぎちゃん
シロミツ・クロミツ 同時に拾われたっぽい 四才くらい
マスターより
ほら、イベント前日って、コピー本出したくなるよね。
コンビニコピー機の中にラストページ忘れちゃったりとか、さ。
そんなノリでシナリオをお届けいたしますですよ。
ひとまず白紙回避に
\腹が減っては/
と、お送りください。
エトファリカがどう動くのか、一読者としても皆さんの活躍をたのしみにしています。
コンビニコピー機の中にラストページ忘れちゃったりとか、さ。
そんなノリでシナリオをお届けいたしますですよ。
ひとまず白紙回避に
\腹が減っては/
と、お送りください。
エトファリカがどう動くのか、一読者としても皆さんの活躍をたのしみにしています。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/08/11 23:54
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/03 19:06:30 |
|
![]() |
護符作り準備室 トルステン=L=ユピテル(ka3946) 人間(リアルブルー)|18才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/08/03 23:05:22 |