ゲスト
(ka0000)
森の王者とその代償
マスター:明乃茂人

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/07/24 19:00
- リプレイ完成予定
- 2014/08/02 19:00
オープニング
●
思い出されるのは濃く深い緑の匂いと、足元で鳴る小枝の音。
加えて歩むごとに見つかる、様々ないきものの姿。
むっとした草いきれの中を歩いて、森の中へと進んでゆく。
色鮮やかな花を見て、顔を綻ばせることもあった。
木に止まる虫の姿を見つけては、
「なんでこんな形なんだろう?」
「どうして、この場所にいるんだろう?」
なんてことをいつまでも考えながら、じいっと眺めたこともあった。
今となっては他愛のない疑問だったと思う。
幼い頃から好きだった、なんて言ってみると少々照れくさいのだけれど、わたしにとっては身近で、大切な場所。それが――
「クレアせんせーいっ!」
夏の日差しが降り注ぎ、木々の影を濃く落とす。そんな季節のことだった。
まだ声変りも迎えぬ声が、窓際の椅子に腰掛けていたクレアの耳朶を打つ。
ゆっくりと目を開けてから、手元の本に栞を挟み、一度大きく伸びをする。
ふぅ、と一息をついて窓から外を見ると、走り寄ってくる少年の姿が見えた。
もう一度、手元に視線を落とす。
少々擦り切れてしまった表紙に踊る、「もりのいきもの」の文字。
子供の頃好きだった図鑑を読み返していたら、
少しうたた寝してしまったようだった。
日頃いねむりはしないように、と言っている側なのにこの体たらく。
気をつけないといけない。
少し待つと、どたどたと足音を立てて少年も部屋に入ってきた。
改めて近くで見てみると、身体も顔もずいぶんと汚れている。
年の頃は七つかそこら。
同年代がいないせいか、休みに入ってもよく顔を出しに来るのだ、学校まで。
つまりは見慣れた顔であり、馴染みの状況である。
「……今日は、どうしたの?」
こちらから水を向けてみると、
「えへへ、また凄いの見つけたからさ。ちょっと一緒に来てみてよ!」
――そう、顔をほころばせながらこの子は言うのだ。いつものように。
●
「えっと……次は、こっち……うん、そう」
前を歩く少年は、前もって付けておいた目印を頼りに目的地へ向かっていく。
下生えへ分け入りながら進む少年は、後ろから見ていても少々危なっかしい。
一方あとへ続くクレアの方からしてみれば、幼少の頃から馴染んだ森である。
踏み入る際になるべく草花を潰さぬようにしよう。とか、
足元に虫はいないだろうか、などと気にすることはあれど、
奥へ進むだけならさしたる苦労もない。
驚かせようとしていると聞いたところで、そう緊張することもないのだ。実際は。
しかし、しかしだ。
かつての自分と同じように森を好いた少年が、
「コレなら先生は驚く!」と考えて見つけてきた状況、生き物。
これにはやはり、わくわくする。
むろん驚きもあるが、それ以上に懐かしくなるのだ。
探し出すにあたり、一体どれほどこの森を歩いたのか。
どんなものを見つけ、実際に触れてみたのか。
そんな話を聞いていると、かつての自分と重ねてしまったりもする。
加えて色々と、思い出してしまうのだ。
「あっ……もう少しだよ先生!」
気づけば、随分と森の深くまで来ていた。
少年も慣れているとはいえ、少し注意しなければ、などと考えたところで、妙なことに気づく。
夏の森ともなれば、通常は様々な生き物が息づいている。
多少周囲に目を凝らせば何かしら見つかるはずだし、聞こえるはずだった。
だが、それ等がないのだ。
見回しても姿は見えず、耳を澄ましてみても鳥や蝉の声すら聞こえない。
何かが、おかしい。そう結論づけた時、前方の草むらがざわめいた。
「――!」
――咄嗟に身構えるも出てきたのは兎で、
そっと息を吐いたところ突然視界が開けた。
「先生っ、ほら――!」
突然の明るさの変化に目が慣れて、景色が薄ぼんやりと見えてきて、
「ぅ、あぁ……」
焦げ茶と黒の体表が、夏の日差しを照り返す。
節ごとに刺が生えた両足が、地面をがっしと掴んでいた。
感情を映さない無機質な目が、お互いの様子を油断なく伺って動かない。
大木をも両断できるであろう顎がギチギチと動き、
向かうそそり立つ角を挟み込んで対峙する。
――見えたのは、巨大なカブトムシとクワガタが戦っている姿だった。
「ほらっ、凄いでしょ! あんなの見たことないもん、ぼく!」
傍らで少年が騒ぐ。だけど、今見ているクレアとしてはそれどころではない。
確かに一瞬目を奪われはした。
それに少年心として、カブトとクワガタ、
おまけにでっかい奴が戦っていたらそれは盛り上がることだろう。
だけど、自分は違う。あれが何か、わかるのだ。
かつて街で学んだ時に見知った、『魔法生物』。
あの巨体、あの威容。そうとしか、考えられなかった。
じっと観察を続ける。見てみれば足元には根こそぎにされた木が転がり、土をまだつけた根が露わになっている。ちょくちょく見慣れた動物の脚が見えていて、周囲への被害は確定的だった。もう、疑う余地もない。
唇を噛みしめる。己のせいではないとはいえ、既に被害は出ていた。
それも自分の好きな場所で、だ。
となれば、対処方がそうあるわけでもない。
この場からたたき出すか、それとも――
対峙する両者が、ゆっくりと身動ぎをする。
響く振動が、確かに自分たちとは違う膂力を感じさせ、
「――ッ!」
クレアは少年の手を掴んで走り出す。
「ねっ、ねぇっ! どうしたのっ、先生!」
問う声も、今は耳に入らない。その余裕が、ない。
先ほど見た光景が思い出される。
向かい合う両者、身の丈は優に五メートルは超えていた。
今はまだ向い合って沈黙しているが、動き出したら、どうなるか。
少しだけ身動ぎしただけで、自分たちまで届いたあの地響き。
踏み荒らされ、荒れ果ててしまった草木。
よく見れば薙ぎ倒されて、木々がぽっかりと空いてしまった広場。
自分の好きな森が、生き物たちが、どうなってしまうのか。
先を想像した所で、そのままあの二体にまで想像が及ぶ。
だけど、あの二体もまた生きているはずで、
――巨大化してしまったのも、彼らのせいではなかったはずなのだ。
「――ッ」
しかし、現実に被害は出ている。
加えて、もしあの二体が村まで来たら、自分たちに対処する術は、ない。
走りながらも鋭く息をつき、村の教師クレアは決断する。
●
「お願いしたいことが、あります」
夏の日差しも弱まらぬ中、ある一人の女性がハンターズオフィスを訪れた。
華奢な体つきに、どことなく不安げな様子が伺える。
恐らく、こういった場所に慣れていないのだろう。
それとも、今から言おうとすることに、慣れていなかったのだろうか。
「退治して――いや、倒していただきたい生き物が二体……います
どうか、……あの二体を、倒していただけないでしょうか」
そう言った彼女の瞳には、強い決意の色が宿っていた……
思い出されるのは濃く深い緑の匂いと、足元で鳴る小枝の音。
加えて歩むごとに見つかる、様々ないきものの姿。
むっとした草いきれの中を歩いて、森の中へと進んでゆく。
色鮮やかな花を見て、顔を綻ばせることもあった。
木に止まる虫の姿を見つけては、
「なんでこんな形なんだろう?」
「どうして、この場所にいるんだろう?」
なんてことをいつまでも考えながら、じいっと眺めたこともあった。
今となっては他愛のない疑問だったと思う。
幼い頃から好きだった、なんて言ってみると少々照れくさいのだけれど、わたしにとっては身近で、大切な場所。それが――
「クレアせんせーいっ!」
夏の日差しが降り注ぎ、木々の影を濃く落とす。そんな季節のことだった。
まだ声変りも迎えぬ声が、窓際の椅子に腰掛けていたクレアの耳朶を打つ。
ゆっくりと目を開けてから、手元の本に栞を挟み、一度大きく伸びをする。
ふぅ、と一息をついて窓から外を見ると、走り寄ってくる少年の姿が見えた。
もう一度、手元に視線を落とす。
少々擦り切れてしまった表紙に踊る、「もりのいきもの」の文字。
子供の頃好きだった図鑑を読み返していたら、
少しうたた寝してしまったようだった。
日頃いねむりはしないように、と言っている側なのにこの体たらく。
気をつけないといけない。
少し待つと、どたどたと足音を立てて少年も部屋に入ってきた。
改めて近くで見てみると、身体も顔もずいぶんと汚れている。
年の頃は七つかそこら。
同年代がいないせいか、休みに入ってもよく顔を出しに来るのだ、学校まで。
つまりは見慣れた顔であり、馴染みの状況である。
「……今日は、どうしたの?」
こちらから水を向けてみると、
「えへへ、また凄いの見つけたからさ。ちょっと一緒に来てみてよ!」
――そう、顔をほころばせながらこの子は言うのだ。いつものように。
●
「えっと……次は、こっち……うん、そう」
前を歩く少年は、前もって付けておいた目印を頼りに目的地へ向かっていく。
下生えへ分け入りながら進む少年は、後ろから見ていても少々危なっかしい。
一方あとへ続くクレアの方からしてみれば、幼少の頃から馴染んだ森である。
踏み入る際になるべく草花を潰さぬようにしよう。とか、
足元に虫はいないだろうか、などと気にすることはあれど、
奥へ進むだけならさしたる苦労もない。
驚かせようとしていると聞いたところで、そう緊張することもないのだ。実際は。
しかし、しかしだ。
かつての自分と同じように森を好いた少年が、
「コレなら先生は驚く!」と考えて見つけてきた状況、生き物。
これにはやはり、わくわくする。
むろん驚きもあるが、それ以上に懐かしくなるのだ。
探し出すにあたり、一体どれほどこの森を歩いたのか。
どんなものを見つけ、実際に触れてみたのか。
そんな話を聞いていると、かつての自分と重ねてしまったりもする。
加えて色々と、思い出してしまうのだ。
「あっ……もう少しだよ先生!」
気づけば、随分と森の深くまで来ていた。
少年も慣れているとはいえ、少し注意しなければ、などと考えたところで、妙なことに気づく。
夏の森ともなれば、通常は様々な生き物が息づいている。
多少周囲に目を凝らせば何かしら見つかるはずだし、聞こえるはずだった。
だが、それ等がないのだ。
見回しても姿は見えず、耳を澄ましてみても鳥や蝉の声すら聞こえない。
何かが、おかしい。そう結論づけた時、前方の草むらがざわめいた。
「――!」
――咄嗟に身構えるも出てきたのは兎で、
そっと息を吐いたところ突然視界が開けた。
「先生っ、ほら――!」
突然の明るさの変化に目が慣れて、景色が薄ぼんやりと見えてきて、
「ぅ、あぁ……」
焦げ茶と黒の体表が、夏の日差しを照り返す。
節ごとに刺が生えた両足が、地面をがっしと掴んでいた。
感情を映さない無機質な目が、お互いの様子を油断なく伺って動かない。
大木をも両断できるであろう顎がギチギチと動き、
向かうそそり立つ角を挟み込んで対峙する。
――見えたのは、巨大なカブトムシとクワガタが戦っている姿だった。
「ほらっ、凄いでしょ! あんなの見たことないもん、ぼく!」
傍らで少年が騒ぐ。だけど、今見ているクレアとしてはそれどころではない。
確かに一瞬目を奪われはした。
それに少年心として、カブトとクワガタ、
おまけにでっかい奴が戦っていたらそれは盛り上がることだろう。
だけど、自分は違う。あれが何か、わかるのだ。
かつて街で学んだ時に見知った、『魔法生物』。
あの巨体、あの威容。そうとしか、考えられなかった。
じっと観察を続ける。見てみれば足元には根こそぎにされた木が転がり、土をまだつけた根が露わになっている。ちょくちょく見慣れた動物の脚が見えていて、周囲への被害は確定的だった。もう、疑う余地もない。
唇を噛みしめる。己のせいではないとはいえ、既に被害は出ていた。
それも自分の好きな場所で、だ。
となれば、対処方がそうあるわけでもない。
この場からたたき出すか、それとも――
対峙する両者が、ゆっくりと身動ぎをする。
響く振動が、確かに自分たちとは違う膂力を感じさせ、
「――ッ!」
クレアは少年の手を掴んで走り出す。
「ねっ、ねぇっ! どうしたのっ、先生!」
問う声も、今は耳に入らない。その余裕が、ない。
先ほど見た光景が思い出される。
向かい合う両者、身の丈は優に五メートルは超えていた。
今はまだ向い合って沈黙しているが、動き出したら、どうなるか。
少しだけ身動ぎしただけで、自分たちまで届いたあの地響き。
踏み荒らされ、荒れ果ててしまった草木。
よく見れば薙ぎ倒されて、木々がぽっかりと空いてしまった広場。
自分の好きな森が、生き物たちが、どうなってしまうのか。
先を想像した所で、そのままあの二体にまで想像が及ぶ。
だけど、あの二体もまた生きているはずで、
――巨大化してしまったのも、彼らのせいではなかったはずなのだ。
「――ッ」
しかし、現実に被害は出ている。
加えて、もしあの二体が村まで来たら、自分たちに対処する術は、ない。
走りながらも鋭く息をつき、村の教師クレアは決断する。
●
「お願いしたいことが、あります」
夏の日差しも弱まらぬ中、ある一人の女性がハンターズオフィスを訪れた。
華奢な体つきに、どことなく不安げな様子が伺える。
恐らく、こういった場所に慣れていないのだろう。
それとも、今から言おうとすることに、慣れていなかったのだろうか。
「退治して――いや、倒していただきたい生き物が二体……います
どうか、……あの二体を、倒していただけないでしょうか」
そう言った彼女の瞳には、強い決意の色が宿っていた……
解説
●目的
森の中央で戦う巨大カブト&クワガタを退治すること
●解説
今回、ハンターの皆さんには森を荒らす巨大カブト&クワガタを退治していただきます。
そこまで速くはないものの、敵の外皮は厚く、その力は強大です。
森にこれ以上の被害が出ないよう、迅速な対応が求められるところとなります。
また、迂闊に手を出してトドメを刺しきれなかった場合、討伐対象は飛んで逃げる可能性もあるでしょう。
強烈な一撃で、きっちり倒しきる必要があると思われます。
また、どうやら足場も巨大甲虫たちが踏み荒らして随分と荒れているようです。
注意して行動すれば、もしやすると相手を陥れる策となるも……?
森の中央で戦う巨大カブト&クワガタを退治すること
●解説
今回、ハンターの皆さんには森を荒らす巨大カブト&クワガタを退治していただきます。
そこまで速くはないものの、敵の外皮は厚く、その力は強大です。
森にこれ以上の被害が出ないよう、迅速な対応が求められるところとなります。
また、迂闊に手を出してトドメを刺しきれなかった場合、討伐対象は飛んで逃げる可能性もあるでしょう。
強烈な一撃で、きっちり倒しきる必要があると思われます。
また、どうやら足場も巨大甲虫たちが踏み荒らして随分と荒れているようです。
注意して行動すれば、もしやすると相手を陥れる策となるも……?
マスターより
こんにちは。一ヶ月ぶりのシナリオ提出、新人Divの明乃茂人です。
……「夏だ! カブト&クワガタと殴り合おう!」というお話なのですが、
なんだかしんみりした気配&しりあすな雰囲気に……!?
えぇ、いやぁ基本は「殴りあって迅速にぶっ倒そう! トドメは派手に!」というのが主なのです。
夏らしく、スカッと戦いたい人にオススメでございます。はい。
……「夏だ! カブト&クワガタと殴り合おう!」というお話なのですが、
なんだかしんみりした気配&しりあすな雰囲気に……!?
えぇ、いやぁ基本は「殴りあって迅速にぶっ倒そう! トドメは派手に!」というのが主なのです。
夏らしく、スカッと戦いたい人にオススメでございます。はい。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/08/02 02:37
参加者一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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相談卓 柊 恭也(ka0711) 人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/07/23 17:37:43 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/21 00:09:44 |