ゲスト
(ka0000)
夏の夜の肝試し
マスター:硲銘介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在7人 / 4~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/08/17 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/08/26 12:00
オープニング
●
息を切らした少年は咄嗟に物陰へと身を滑り込ます。汗まみれの理由は真夏の夜特有の蒸し暑さだけが理由ではない。
不意に、背中を預けた石の冷たさを少し心地良く感じる。それが本来なら好んで触れるべきではない――墓石であっても、今の彼には瑣末な事であった。
全力疾走で乱れた呼吸を口に手を当て必死に押さえ込む。死人が眠るこの墓場に、自分という生きた者がいる事を悟らせないように。
「――――」
足音が、近づく。否、果たしてそれは本当に足音なのか。
歩を刻む度に聞こえるものが足音なら、確かにこれもそうだろう。
だが靴底が地面を叩く音こそを呼ぶのなら、これは、違う。
その人影――に見えるもの――が前進する度に少年の耳が拾うのはコツコツという靴音ではない。裸足が鳴らすペタペタという音とも違う。
喩えるなら、それは熟れた果実が潰れたような音だった。
何故そんな音が――近づく音源に対し、恐怖の色を濃く浮かべた少年は既にその解を得ていた。
故に少年が墓石の陰からそれを覗き見たのは決して好奇心からではない。思考ではなく本能で、自身が生き残る為の情報を得んとした。
「――――化け物」
墓場を歩く異形を再び目にし、少年は思わずそう呟いていた。
その言は正しい。人型でありながらその顔を、目を鼻を口を腐らせたどう見ても人間ではない存在。
死者はただただ黙すべし。その理を反故にし、再び地上へと繰り出した生ける屍。不死者――アンデッドの代表格、ゾンビ。それは間違いなく、化け物にカテゴライズされるものだろう。
そいつは彷徨うように墓地の中をうろつく。アレが墓穴から這い出した理由も目的も分からないが、この徘徊の終着は知っている。
もう一刻ほど前になるか。そこそこの広さを誇る墓地に最高の――或は最悪のタイミングで訪れた数人の子供たち。
怯える者、励ます者、それを笑う者。多様な反応を見せた彼等だがその目的は皆同じだった。真夜中の墓地にやってくる理由は――まぁ、それほど多くはないだろう。
一人、また一人と肝試しという試練に挑むべく墓場に踏み込んでいく。先発が上げる鬼気迫る悲鳴に後の者は緊張を増しながらも、数分置きに続いていった。
友人間で行われるある種の儀式。度胸を測る、なんて名目は実際のところどうでもよくて、実態は印象に残るひと時を残す為の行為、娯楽に他ならない。
だから、彼等は皆遊びのつもりで墓地へと踏み込む。そして、幾らか進んだ先に――友人の死体を見つけたその瞬間、彼等は正しく実態を悟る。
荒い呼吸を懸命に押さえ込む少年も例外ではない。つい先程まで怯えた子をからかって笑っていた友人――その顔が引き攣った恐怖に固定され、地面に横たわり動かなくなっているのを見つけ悲鳴を上げた。
すぐさま逃げようとしたその矢先に目の前に化け物が現れ――出口を見失い闇雲に走った結果が今、ということになる。
「っ……ぅ……」
頭がおかしくなりそうだった。突如顔を変えた現実が不親切すぎて吐き気がする。網膜に焼きついた友人の姿を思うたび嗚咽を漏らす。
幸い、ゾンビの察知能力は低いらしい。堪えられず声を溢す少年を見つけられず、ぐるぐる周囲を這っている。目も耳も腐っているのだから、当然といえば当然なのだろうか。
鼻を啜りながら少年は思考を始めていた。生きてここを脱出する、その為にはどう動くべきか。
――答えはシンプルだ。低級の怪物とはいえまさか子供が叶う筈もない。ならば逃げる以外の選択肢は無い。
最初の遭遇を凌いだのは僥倖だった。一度逃げおおせたという成果は、少年にとって自信という大きな武器に繋がっていた。
足腰の腐った死体の動きは鈍重で、子供の駆け足にも追いつけなかった。だったら、簡単だ。あそこで間抜けにうろつくゾンビの隙を見計らって飛び出して、後は一目散に走り去るだけ。
作戦と覚悟を決めた少年は墓石の背に身を隠したまま、ゾンビの動きを観察する。
自分の命がかかった大一番。暑さにやられ額から滝の様に汗が流れるのを無意識に袖口で拭う。少年の全神経は眼前の敵に集中し――
「――――……え?」
――背後から近寄る別個体を見過ごした。
ぐしゃり、と。くっついてるんだかどうか怪しいゾンビの腕が少年の頭へと伸び――その小さな球体を握り潰した。
灯りの乏しい暗がりにいた少年は――目の前の鮮明な恐怖に釘付けになった少年は気づけなかったが、周りには十を越える程の不死の群れがいた。
……あぁ、しかし、少年は分かっていたはずだったのだ。
ここは墓地。死者の為の領域。そもそも異端は生きる者であり、場の占有権は始めから冥府の側へ与えられていた。
最初から間違っていたのだ。この場所は子供たちのような生きとし生ける者の遊び場ではなく――眠れぬ死者の揺り籠なのだから。
息を切らした少年は咄嗟に物陰へと身を滑り込ます。汗まみれの理由は真夏の夜特有の蒸し暑さだけが理由ではない。
不意に、背中を預けた石の冷たさを少し心地良く感じる。それが本来なら好んで触れるべきではない――墓石であっても、今の彼には瑣末な事であった。
全力疾走で乱れた呼吸を口に手を当て必死に押さえ込む。死人が眠るこの墓場に、自分という生きた者がいる事を悟らせないように。
「――――」
足音が、近づく。否、果たしてそれは本当に足音なのか。
歩を刻む度に聞こえるものが足音なら、確かにこれもそうだろう。
だが靴底が地面を叩く音こそを呼ぶのなら、これは、違う。
その人影――に見えるもの――が前進する度に少年の耳が拾うのはコツコツという靴音ではない。裸足が鳴らすペタペタという音とも違う。
喩えるなら、それは熟れた果実が潰れたような音だった。
何故そんな音が――近づく音源に対し、恐怖の色を濃く浮かべた少年は既にその解を得ていた。
故に少年が墓石の陰からそれを覗き見たのは決して好奇心からではない。思考ではなく本能で、自身が生き残る為の情報を得んとした。
「――――化け物」
墓場を歩く異形を再び目にし、少年は思わずそう呟いていた。
その言は正しい。人型でありながらその顔を、目を鼻を口を腐らせたどう見ても人間ではない存在。
死者はただただ黙すべし。その理を反故にし、再び地上へと繰り出した生ける屍。不死者――アンデッドの代表格、ゾンビ。それは間違いなく、化け物にカテゴライズされるものだろう。
そいつは彷徨うように墓地の中をうろつく。アレが墓穴から這い出した理由も目的も分からないが、この徘徊の終着は知っている。
もう一刻ほど前になるか。そこそこの広さを誇る墓地に最高の――或は最悪のタイミングで訪れた数人の子供たち。
怯える者、励ます者、それを笑う者。多様な反応を見せた彼等だがその目的は皆同じだった。真夜中の墓地にやってくる理由は――まぁ、それほど多くはないだろう。
一人、また一人と肝試しという試練に挑むべく墓場に踏み込んでいく。先発が上げる鬼気迫る悲鳴に後の者は緊張を増しながらも、数分置きに続いていった。
友人間で行われるある種の儀式。度胸を測る、なんて名目は実際のところどうでもよくて、実態は印象に残るひと時を残す為の行為、娯楽に他ならない。
だから、彼等は皆遊びのつもりで墓地へと踏み込む。そして、幾らか進んだ先に――友人の死体を見つけたその瞬間、彼等は正しく実態を悟る。
荒い呼吸を懸命に押さえ込む少年も例外ではない。つい先程まで怯えた子をからかって笑っていた友人――その顔が引き攣った恐怖に固定され、地面に横たわり動かなくなっているのを見つけ悲鳴を上げた。
すぐさま逃げようとしたその矢先に目の前に化け物が現れ――出口を見失い闇雲に走った結果が今、ということになる。
「っ……ぅ……」
頭がおかしくなりそうだった。突如顔を変えた現実が不親切すぎて吐き気がする。網膜に焼きついた友人の姿を思うたび嗚咽を漏らす。
幸い、ゾンビの察知能力は低いらしい。堪えられず声を溢す少年を見つけられず、ぐるぐる周囲を這っている。目も耳も腐っているのだから、当然といえば当然なのだろうか。
鼻を啜りながら少年は思考を始めていた。生きてここを脱出する、その為にはどう動くべきか。
――答えはシンプルだ。低級の怪物とはいえまさか子供が叶う筈もない。ならば逃げる以外の選択肢は無い。
最初の遭遇を凌いだのは僥倖だった。一度逃げおおせたという成果は、少年にとって自信という大きな武器に繋がっていた。
足腰の腐った死体の動きは鈍重で、子供の駆け足にも追いつけなかった。だったら、簡単だ。あそこで間抜けにうろつくゾンビの隙を見計らって飛び出して、後は一目散に走り去るだけ。
作戦と覚悟を決めた少年は墓石の背に身を隠したまま、ゾンビの動きを観察する。
自分の命がかかった大一番。暑さにやられ額から滝の様に汗が流れるのを無意識に袖口で拭う。少年の全神経は眼前の敵に集中し――
「――――……え?」
――背後から近寄る別個体を見過ごした。
ぐしゃり、と。くっついてるんだかどうか怪しいゾンビの腕が少年の頭へと伸び――その小さな球体を握り潰した。
灯りの乏しい暗がりにいた少年は――目の前の鮮明な恐怖に釘付けになった少年は気づけなかったが、周りには十を越える程の不死の群れがいた。
……あぁ、しかし、少年は分かっていたはずだったのだ。
ここは墓地。死者の為の領域。そもそも異端は生きる者であり、場の占有権は始めから冥府の側へ与えられていた。
最初から間違っていたのだ。この場所は子供たちのような生きとし生ける者の遊び場ではなく――眠れぬ死者の揺り籠なのだから。
解説
『依頼内容』
とある町で肝試しに出かけた数人の子供達が殺される事件が発生しました。遺体に残った痕跡から、彼等を襲ったのは低級のゾンビだと推測されます。
今回の依頼は墓場に巣食うゾンビの討伐となります。
『敵勢情報』
標準的なゾンビが十~二十程度と思われる。
『現場情報』
町の中にある墓地。町の規模にしては広く、一周するには半刻以上かかる。
また今回の敵であるゾンビだが、事件当日の昼間に大人達が下見をした際には発見できなかったらしく、夜間でなければ遭遇は難しいと推測される。
とある町で肝試しに出かけた数人の子供達が殺される事件が発生しました。遺体に残った痕跡から、彼等を襲ったのは低級のゾンビだと推測されます。
今回の依頼は墓場に巣食うゾンビの討伐となります。
『敵勢情報』
標準的なゾンビが十~二十程度と思われる。
『現場情報』
町の中にある墓地。町の規模にしては広く、一周するには半刻以上かかる。
また今回の敵であるゾンビだが、事件当日の昼間に大人達が下見をした際には発見できなかったらしく、夜間でなければ遭遇は難しいと推測される。
マスターより
こんにちは。硲銘介です。
夏といえば怪談。怪談といえば……まぁ、学校とか色々あるのですが、墓場です。
墓場からゾンビ、ベタベタな内容ですがそれ故にイメージはしやすいのではないでしょうか。
皆様の参加をお待ちしております。
夏といえば怪談。怪談といえば……まぁ、学校とか色々あるのですが、墓場です。
墓場からゾンビ、ベタベタな内容ですがそれ故にイメージはしやすいのではないでしょうか。
皆様の参加をお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/08/25 06:35
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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夜は墓場で運動会? ミコト=S=レグルス(ka3953) 人間(リアルブルー)|16才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/08/17 02:49:43 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/13 01:42:55 |