ゲスト
(ka0000)
陽光絶えし水面(みなも)は歪み
マスター:稲田和夫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/06/16 15:00
- リプレイ完成予定
- 2014/06/25 15:00
オープニング
ゾンネンシュトラール帝国・首都バルトアンデルス。
機導工場が吐き出す煙による曇天が常のこの街も、正午が近づくにつれて雲の隙間から洩れる陽光がその強さを増して少しずつ明るくなっている。
早い時間には各々の勤め先に赴く人々で混雑していた街路も落ち着き、人通りもまばら。
そこを歩く一際目立つ一団。
思い思いの改造が施され、左右非対称なデザインの軍服を着こなしつつ、全員が整然と盾を構える帝国の師団兵である。
市内の警備か、別の任務に向かう彼らだったが、そこに場違いな声が響いて来た。
「助けて兵隊さん!」
一口に帝国兵といっても、当然だが様々な人物がいる。この隊長は穏やかな風貌の中年男性で子供たちから見ても話しかけやすかったのだろう。
実際、彼は部下に手で合図すると腰をかがめて子供たちの話に耳を傾けていたが、やがて軍人らしい険しい表情になるとこう叫んだ。
「何てことをしたんだ!」
恐らく、何か事情があったのだろうが子供たちは6人でこのバルトアンデルスの地下に広がる下水道に入り込んでしまったという。
しかも、そこで汚水の中から這い上がって来た「何か」を目撃して命からがら逃げだしたは良いが、地上に出てみれば仲間の一人とはぐれてしまっていたというのだ。
「雑魔だな……」
子供たちには聞こえぬよう、顔を見合わせて囁き合う兵士たち。
バルトアンデルスは、勿論帝国の首都だけあって歪虚の勢力圏からは遠く隔たっている。
だが、最先端の機導術の代表として深刻な魔法公害を抱える帝国の中心部であるバルトアンデルスでも汚染の集中する下水という環境では、雑魔の自然発生は必然であった。
無論、下水が雑魔で溢れかえっているというほどではない。
それに、帝国の首都をまもる兵士たちが定期的に部隊を派遣し、雑魔の掃討を行っている。
だが、それでも汚染そのものと合わせて危険な環境である事は間違いなかった。
「とにかく、起こってしまった事は仕方がない。これから現場に向かうから君たちが見たそのお化けとやらのことを詳しく聞かせてもらえないか」
歩きながら隊長に向かって口々に説明する子供たちの声に、また兵士たちの声が曇る。
「ミジンコの化け物だと……」
「この前の掃討で取り逃がした奴じゃ……」
やがて、一行が市内の真ん中を流れるイルリ河に面した下水の入り口まで辿り着いた時一人の兵士が堪り兼ねたように声を上げた。
「皆さん、何をしているんですか!? 一刻も早く助けに行かないと……!」
それは、まだ若い女性の兵士であった。しかし、隊長は厳しい声でいう。
「二等兵。君の発言を許可した覚えはないぞ」
だが、その兵士はいまにも泣きそうな顔を見せ――何と命令も待たず、下水に向かって駆け出した!
制止する間もなく暗闇の向うに消えていくその姿に舌打ちする隊長。
「無理もないよ……あいつ、たしか弟とかを歪虚に殺されてるって……」
だが、隊長は冷たい視線でその部下を黙らせた。
「だから、現状を顧みず部隊を危険に晒しても許されると? ……いいか、然るべき準備もない状態で、この人数で飛び込むのがどれだけ危険か解るだろう。……不本意だが仕方がない。誰かハンターズオフィスへ、駆け足! それと上への報告を!」
幸い現場はオフィスの近く。増援を要請するよりもその辺で暇をしているハンターを捕まえた方が早いと判断したのだ。
一刻を争うかもしれない状況への対処。そしてそれは、決して間違いではなかった。
●
「お待たせしましたー! 本日のお勧め品でーす! ……お客さんたち、ハンター? 運が良いね! 今日のは特に美味しくできたよーっ」
そう言って、貴方たちのテーブルにドカン! と大皿を置いた三角布の良く似合う少女はにっこり笑って去っていた。
しかし、残された貴方たちは、引きつった笑みを浮かべ、こう思っている筈だ。
また、芋か――と。
ここ、帝都のハンターズオフィスの近くにある食堂にて、偶然居合わせたあなたたちは帝国領に入って以来運座入りしていた筈だ。
連日のじゃがいも尽くしに。
そして、食堂の看板に書かれた「一味違う本日のお勧め!」とやらを注文してでてきたのが――潰したじゃがいもに塩辛い干し肉を混ぜ込んだいわゆるジャーマンポテトの一種であった。
涙が出る。
だが、腹が減っては戦は出来ぬ。ハンターとして日々の糧を得るためには今日も依頼をこなさなければならない。そして、貴方たちが食器を取った時――向うから一人の帝国兵士が駈けてきたのだった。
●
「それ」は微かな光に照らされた、不気味に濁った汚水から頭だけを出して、たった一つしかない黒い眼球で周囲を見回していた。
鋭い口吻が、ぱくぱくと開閉する様は正に「それ」が空腹らしいことを示していた。
無理もないだろう。半透明の殻につつまれた内臓にはまだ、子供のものらしい小さな靴と、帝国軍で一般的に支給されている盾しか収まっていないのだから。
機導工場が吐き出す煙による曇天が常のこの街も、正午が近づくにつれて雲の隙間から洩れる陽光がその強さを増して少しずつ明るくなっている。
早い時間には各々の勤め先に赴く人々で混雑していた街路も落ち着き、人通りもまばら。
そこを歩く一際目立つ一団。
思い思いの改造が施され、左右非対称なデザインの軍服を着こなしつつ、全員が整然と盾を構える帝国の師団兵である。
市内の警備か、別の任務に向かう彼らだったが、そこに場違いな声が響いて来た。
「助けて兵隊さん!」
一口に帝国兵といっても、当然だが様々な人物がいる。この隊長は穏やかな風貌の中年男性で子供たちから見ても話しかけやすかったのだろう。
実際、彼は部下に手で合図すると腰をかがめて子供たちの話に耳を傾けていたが、やがて軍人らしい険しい表情になるとこう叫んだ。
「何てことをしたんだ!」
恐らく、何か事情があったのだろうが子供たちは6人でこのバルトアンデルスの地下に広がる下水道に入り込んでしまったという。
しかも、そこで汚水の中から這い上がって来た「何か」を目撃して命からがら逃げだしたは良いが、地上に出てみれば仲間の一人とはぐれてしまっていたというのだ。
「雑魔だな……」
子供たちには聞こえぬよう、顔を見合わせて囁き合う兵士たち。
バルトアンデルスは、勿論帝国の首都だけあって歪虚の勢力圏からは遠く隔たっている。
だが、最先端の機導術の代表として深刻な魔法公害を抱える帝国の中心部であるバルトアンデルスでも汚染の集中する下水という環境では、雑魔の自然発生は必然であった。
無論、下水が雑魔で溢れかえっているというほどではない。
それに、帝国の首都をまもる兵士たちが定期的に部隊を派遣し、雑魔の掃討を行っている。
だが、それでも汚染そのものと合わせて危険な環境である事は間違いなかった。
「とにかく、起こってしまった事は仕方がない。これから現場に向かうから君たちが見たそのお化けとやらのことを詳しく聞かせてもらえないか」
歩きながら隊長に向かって口々に説明する子供たちの声に、また兵士たちの声が曇る。
「ミジンコの化け物だと……」
「この前の掃討で取り逃がした奴じゃ……」
やがて、一行が市内の真ん中を流れるイルリ河に面した下水の入り口まで辿り着いた時一人の兵士が堪り兼ねたように声を上げた。
「皆さん、何をしているんですか!? 一刻も早く助けに行かないと……!」
それは、まだ若い女性の兵士であった。しかし、隊長は厳しい声でいう。
「二等兵。君の発言を許可した覚えはないぞ」
だが、その兵士はいまにも泣きそうな顔を見せ――何と命令も待たず、下水に向かって駆け出した!
制止する間もなく暗闇の向うに消えていくその姿に舌打ちする隊長。
「無理もないよ……あいつ、たしか弟とかを歪虚に殺されてるって……」
だが、隊長は冷たい視線でその部下を黙らせた。
「だから、現状を顧みず部隊を危険に晒しても許されると? ……いいか、然るべき準備もない状態で、この人数で飛び込むのがどれだけ危険か解るだろう。……不本意だが仕方がない。誰かハンターズオフィスへ、駆け足! それと上への報告を!」
幸い現場はオフィスの近く。増援を要請するよりもその辺で暇をしているハンターを捕まえた方が早いと判断したのだ。
一刻を争うかもしれない状況への対処。そしてそれは、決して間違いではなかった。
●
「お待たせしましたー! 本日のお勧め品でーす! ……お客さんたち、ハンター? 運が良いね! 今日のは特に美味しくできたよーっ」
そう言って、貴方たちのテーブルにドカン! と大皿を置いた三角布の良く似合う少女はにっこり笑って去っていた。
しかし、残された貴方たちは、引きつった笑みを浮かべ、こう思っている筈だ。
また、芋か――と。
ここ、帝都のハンターズオフィスの近くにある食堂にて、偶然居合わせたあなたたちは帝国領に入って以来運座入りしていた筈だ。
連日のじゃがいも尽くしに。
そして、食堂の看板に書かれた「一味違う本日のお勧め!」とやらを注文してでてきたのが――潰したじゃがいもに塩辛い干し肉を混ぜ込んだいわゆるジャーマンポテトの一種であった。
涙が出る。
だが、腹が減っては戦は出来ぬ。ハンターとして日々の糧を得るためには今日も依頼をこなさなければならない。そして、貴方たちが食器を取った時――向うから一人の帝国兵士が駈けてきたのだった。
●
「それ」は微かな光に照らされた、不気味に濁った汚水から頭だけを出して、たった一つしかない黒い眼球で周囲を見回していた。
鋭い口吻が、ぱくぱくと開閉する様は正に「それ」が空腹らしいことを示していた。
無理もないだろう。半透明の殻につつまれた内臓にはまだ、子供のものらしい小さな靴と、帝国軍で一般的に支給されている盾しか収まっていないのだから。
解説
★目的
下水道に迷い込んでしまった少年と彼を助けに行って連絡が途絶えてしまった女性兵士の救出。
★舞台
ゾンネンシュトラール帝国首都バルトアンデルスの地下下水道……の一画。OPの兵士の話によると然程時間が立っていないので捜索範囲は限られるとの事。通路内は機導術によりうっすらと明るい(我々の世界でいう非常灯のイメージ)。水位は深い所でも膝くらいまで。
PCたちは市内を流れるイルリ河に面した出口から潜入する。
★遭遇が予想される雑魔
ヴァッサーフローア
前回の掃討の際に確認された雑魔。
狼ほどの大きさに成長した巨大なミジンコ。汚染された下水の水で雑魔化したものと推測される。
通常のミジンコ同様、頭部の触覚を使って水の中を泳ぎ回る他、これを用いて壁を這いまわり、更に獲物を捕らえ引き裂いてくる。
人間を無感情に見据える黒い一つ目の複眼が特徴的である。
★NPCについて
隊長と部下たちは地上に残って出入り口を守ったりその他の用事を処理したりするので戦闘には参加しない。
二等兵の状態は不明だが体調によると負傷している可能性も高く戦力としては期待出来ないだろう。
下水道に迷い込んでしまった少年と彼を助けに行って連絡が途絶えてしまった女性兵士の救出。
★舞台
ゾンネンシュトラール帝国首都バルトアンデルスの地下下水道……の一画。OPの兵士の話によると然程時間が立っていないので捜索範囲は限られるとの事。通路内は機導術によりうっすらと明るい(我々の世界でいう非常灯のイメージ)。水位は深い所でも膝くらいまで。
PCたちは市内を流れるイルリ河に面した出口から潜入する。
★遭遇が予想される雑魔
ヴァッサーフローア
前回の掃討の際に確認された雑魔。
狼ほどの大きさに成長した巨大なミジンコ。汚染された下水の水で雑魔化したものと推測される。
通常のミジンコ同様、頭部の触覚を使って水の中を泳ぎ回る他、これを用いて壁を這いまわり、更に獲物を捕らえ引き裂いてくる。
人間を無感情に見据える黒い一つ目の複眼が特徴的である。
★NPCについて
隊長と部下たちは地上に残って出入り口を守ったりその他の用事を処理したりするので戦闘には参加しない。
二等兵の状態は不明だが体調によると負傷している可能性も高く戦力としては期待出来ないだろう。
マスターより
お世話になっております。
そして、お目にかかるのは最初という方は初めまして。
FではSSDを務めさせていただいております稲田和夫と申します。改めてよろしくお願いいたします。
禁呪扱いの強力な水系魔法っぽい名前の雑魔ですが、早い話がドイツ語でミジンコです。
本物も、横から見ると目が二つあるように見えるけど、正面から見ると一つ目だとか。
それでは、興味を持っていただければ幸いです。
そして、お目にかかるのは最初という方は初めまして。
FではSSDを務めさせていただいております稲田和夫と申します。改めてよろしくお願いいたします。
禁呪扱いの強力な水系魔法っぽい名前の雑魔ですが、早い話がドイツ語でミジンコです。
本物も、横から見ると目が二つあるように見えるけど、正面から見ると一つ目だとか。
それでは、興味を持っていただければ幸いです。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/06/25 01:06
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458) 人間(リアルブルー)|19才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/06/16 00:10:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/11 04:38:11 |