• 戦闘

犬猿の挟撃

マスター:硲銘介

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
現在10人 / 4~10人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/08/30 19:00
リプレイ完成予定
2015/09/08 19:00

オープニング


 とある田舎町、そこへ招かれざる客がやってきた。
 その正体は町を出て東の方角へ暫くいった所にある、小さな森の住人だった。
 少し大きめではあるが猿の姿をした歪虚を目撃した、という噂は前々からあったのだが被害があった訳でもなし、特に騒ぎにもならずにいた。
 その猿――歪虚が一匹、町に現れたのである。幸いだったのはこの個体、直接的に人を襲う事はなかった。
 しかし、決して無害という訳にいかないのが歪虚たる所以か。猿の特徴が強く表れたらしいそいつはどうもかなりの悪戯好きで町の中を、主に青果を狙い荒らし回った。
 そうなっては当然放置しておく訳にもいかず、町民達はこれの討伐を決めた。
 基本が猿とはいえ、相手は歪虚。町の有志で構成された討伐隊員たちは随分と気を引き締めて事にあたった――のだが、蓋を開けてみればあっさりと、勝利の女神は人間の側に微笑んだ。
 ……まぁ、よくよく考えてみれば歪虚とはいえ相手はたかが猿一匹。特別戦闘経験のない一般人であろうと、大の大人が数人でかかってしまえば太刀打ちなどできなかった。
 かくして、町に現れた小さな歪虚は呆気なく始末された。
「あんな猿が人間様に勝てるものかよ。悔しければもっと大群で押しかけてみやがれ」
 などと、勝利の美酒を味わいながら討伐隊員達は大笑いしていた。

 さて。この田舎町に訪れたのは何も猿だけではなかった。
 町の西方、草原の一角でも野犬の姿をした歪虚の目撃情報が上がっていた。
 そして何の因果か、またまた一匹の歪虚が町へと入り込んでしまったのだ。
 こちらは肉食ゆえ、主に狙われたのは肉屋――だけでなく、小さな子供が襲われる事件にまで発展した。
 幸い命に別状は無かったが、この一件を放置する訳にはいかなくなり、討伐隊が再び集められた。
 猿とは違い、野犬を模したこちらは人肉を喰らおうと牙剥く凶暴性を見せる。故に、隊員たちも気を引き締めてかかった――のだが、結局のところ、数の利の大きさを知る結果となった。
 歪虚、肉食動物といえど、獅子や虎じゃあるまいし、一撃で人の腕や足を噛み千切る訳でもない。ハイエナよろしく、弱者を狙い狩りを行う野犬の顎はそれほど発達していなかった。
 素早い動きで隊員に襲い掛かり噛み付くも、食いついたところに別の相手からの横槍が入る。そんな状況ではその歯牙の脅威も半減だろう。
 なんてことはない。結局は猿と同じように、始末される事となった。
「犬畜生が人間を喰らおうなんてな。そのつもりなら、もっと頭数を揃えてもらわねぇとなぁ」
 などと、勝利の美酒を味わう隊員達はなお大きくその笑い声を響かせるのだった。

 彼等の勝利は間違いない。
 あぁ、この結果にケチをつけるつもりもない。ただ、彼等には知らない事があったというだけの話で。
 猿と犬。住処も食性も何もかもが違う二種には歪虚であるという以外にも一つだけ、同じ性質が存在する。
 彼等は基本的に群れで行動し、その仲間意識は非常に強い。さながら、人間のように。
 ならば、それぞれ町に現れた一匹はなんだったのか。彼等との意思疎通が出来ぬ以上想像の域を出ないが、おそらくはただ迷い込んだだけだったのだろう。
 死んだのははぐれ者などではない。一匹の力を過信し思い上がり、群れから飛び出した蛮勇の徒でもない。ただただ、群れからはぐれただけの迷子だった。
 低級の歪虚におよそ感情と呼べるものが存在するかは疑問だが――同族を討たれたのなら怒りを覚えたとしても無理はない。
 町を荒らされた人間がその犯人に抱いたのと、おそらくは同じ理屈だ。


 町の東――名も無き森から猿達の雄たけびが上がる。
 住処を飛び出したるは小柄な体に怒気を秘めた小型の歪虚――猿を模した影が三十。
 そして偶然にも同時刻、西方より野犬の遠吠えが響く。
 四の足で地を駆け彼等――十五匹の野犬の歪虚は真っ直ぐに町へと向かう。
 歪虚にカテゴライズされるものの、両者共、元来強い種ではない。食物連鎖のヒエラルキーが歪虚にも当てはまるなら、それぞれの立ち位置は底辺に近い。
 だが、町へと向かう姿からはその弱さを思わせない。獲物を定め、狩り取る間際の気迫を湛えていた。
 士気の高さは当然だ。人の言葉を借りるなら、これは弔い合戦――仲間を殺された怒り、その強さは人間であるならば、よりよくわかるだろう。

 東西より押し寄せる獣の群れ。高台よりその動きを察知した町の衆は討伐隊に招集をかけた。
 ――が、彼等の顔色は青ざめていた。その表情に、かつて酒場で見せた威勢の良さは微塵も残っていない。
 討伐隊の人員は十一、迷い込んだ一匹に対しては十倍以上の数で圧倒したが――ここにきて彼我の戦力差は逆転した。
 彼等は異形を狩るハンターなどではない。それでも勝利を収めたのは紛れも無く、数の利があってこそだった。
 討伐隊はその勝因を熟知している。それ故に、この先の戦いに待つ結果を知っていた。

 戦わずして、町の守りである討伐隊は敗北した。それすなわち、これより押し寄せる獣の群れに抗う術を失ったことを意味する。
 このままでは町は全滅――とまでいかずとも、壊滅的な打撃を受ける事は間違いない。
 たかだか一匹の迷子を仕留めた事、その因果が町を滅ぼす要因になろうとは。これを非運と呼ばずなんと呼ぶ。
 ――だが、その運も、最悪の出目という訳でもない。
 この時、町に立ち寄っていた者の中に、いたのだ。この状況を跳ね除けられる――正真正銘の狩人が。

解説

『依頼内容』
 偶然町に居合わせたハンター達に防衛の依頼がありました。
 依頼内容は押し寄せる歪虚の群れより町を守る事です。具体的に言うなら、町の中への敵侵入を防いでください。
 東からは猿の、西からは野犬の群れが迫っています。人員を二手に分け、同時に二面を防衛する必要があります。

『地形情報』
 町は普通の小さな町。町の周囲には壁が立っており、東西の出入り口以外から侵入される恐れは無いでしょう。
 東西の出入り口はそれぞれ道幅10~15メートル程です。門などはありません。
 町の外は東西ともに平原地帯となっており、見晴らしがよく足場も確かです。

『敵勢情報』
・猿歪虚
 普通の猿より二周りほど大きい。気性はやや荒い。所詮は猿、戦闘力はお察し。
 東より約三十匹。

・犬歪虚
 野犬。
 西より約十五匹。猿と比べると一体一体はやや強い。

『その他』
 討伐隊は戦意喪失している。
 町の資材等は使用可能です。

マスターより

こんにちは、硲銘介です。
今回は二手に分かれての防衛線です。といっても、敵はさほど強敵でもありませんが……

皆様の参加をお待ちしております。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/09/07 06:26

参加者一覧

  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 孤高の射撃手
    アバルト・ジンツァー(ka0895
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 戦場の舞刀姫
    麗奈 三春(ka4744
    人間(紅)|27才|女性|舞刀士
  • マケズギライ
    牡丹(ka4816
    人間(紅)|17才|女性|舞刀士

  • 守屋 昭二(ka5069
    人間(蒼)|92才|男性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/29 09:50:38
アイコン 相談卓
麗奈 三春(ka4744
人間(クリムゾンウェスト)|27才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2015/08/30 18:56:58