• 無し

p903『地に蠢く』

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在11人 / 4~11人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/09/12 07:30
リプレイ完成予定
2015/09/21 07:30

オープニング

 薄暗い洞穴で、キアーヴェはランタンに灯した緑色の炎の灯りを頼りに本へと向かっていた。
 走らせるペンのインクは止まることを知らず、文字通り走り、流れるかのような速度で白紙のページを埋めてゆく。
 そうしてページの最後を「ピリオド」で締めくくると、一つ大きな息を吐いてパタリと表紙を閉じるのであった。
「――進捗はいかがなものかな?」
 不意に、洞穴に響いた男の声にピクリとその眉を動かすキアーヴェ。
 ザワリとインクが滲むかのように片目を真っ赤に充血させながら暗がりへと目を凝らし、そうしてまた一つ、今度は盛大にため息を吐いて見せた。
「何か御用かな。あいにく、作品の批評なら間に合っているんだが」
 そう口にして、手のひらに緑色の炎の弾を作り出すと、空中を滑らせるようにして声のした方向へと投げ放つ。
 炎の色に照らされて、暗闇の中へと浮かび上がる人影。
 仮面の紳士、カッツォ・ヴォイはコツリとステッキの先で地面を突くと、炎は風にでも掻き消えるかのように消失してしまった。
「演出家にスポットライトは掲げないものだよ」
「これは失礼」
 キアーヴェは両手を広げて謝って見せると、手元のランタンを取り上げて2人の間へとそれを滑らせた。
「戻って来ていると聞いたのでね。世界を旅し、随分と書き溜めたようだな」
 カッツォの存在しない視線の先に捉えるのは、怪しげに輝くタイトルの本。
 キアーヴェはその表紙を慈しむように撫でると、自らの懐へと仕舞い込んでいた。
「ああなに、取り上げようというわけではないよ。ただ、キミにしては珍しく人の記憶に触れたようだからね。忠告をしに来た次第だ」
 カッツォは仮面の前で人差し指をチッチと振ると、ハットを押さえて暗がりへと表情を落とす。
「裏方の人間が脚光を浴びるのは、作品が世に出、賞賛を受けてからだ。それまでは、我々の存在など舞台上の役者に比べれば何の価値も無いものだ。しかしだね、我々が舞台という箱庭を管理しているのは間違いの無い事実であり、そこに介入しようとする輩はすべからく敵であるという事は疑いようの無い真実であるのだよ」
「つまり、処分すべき対象であると。そう言うのかな?」
「いいや、そこまで暴力的に言うつもりは無い。ただ、関係者で無いものは舞台裏からつまみ出さねばなるまいと……そう言うことだよ」
 それだけ口にして、キアーヴェの返事も待たずにコツリコツリと暗がりへと姿を消して行くカッツォ。
 後に残されたキアーヴェは、もう一度のため息と共に小さく肩を竦めて、彼の消えて行って闇へと真っ赤な眼を向ける。
「全く、不躾な話だ。そもそも私とあなたとでは立場が違うというのに……」
 そう呟いてランタンの灯りを宙に、はらりと開いた白紙のページ。
「とは言え、嗅ぎまわられるのは確かに趣味じゃない。ならば私は私の方法で、始末を付けるだけだ」
 そこへ、ペンのインクを走らせて行きながら洞穴を歩き出すキアーヴェ。
 赤く染まる瞳の先には、とある少女の姿を捉えていた。

 『地に蠢く』

 エスト隊の控え室には、どうも忙しない空気が漂っていた。
 先の依頼でハンター達が接触したキアーヴェ・A・ヴェクターなる青年。
 その素性は計り知れないが、事件の重要な鍵となる人物である事は間違いの無い事。
 それを明らかにするためには現状、過去の事件の資料を漁るほか無く。
 それを除けば、迷子探しの要領で彼自身の行方を捜す他無いと言う、ある種同盟陸軍にはうってつけの仕事ではあったわけだが。
 それにしても相変わらず雲を掴むかのようなその調査対象を前に、難儀しているのは明白な事であった。
 現在、控え室にはアンナとフィオーレ、そしてバンの3名。
 ピーノは「迷子探し」の方に当たっており、今は席を外している。
「はぁ……正直な話よ、また事件でも起きてくれた方がとっ捕まえんのには楽なんだけどな」
 そう口にして、机に身を投げ出したのはバンであった。
 顔のすぐ横でぺらりと捲りあげた事件帳簿を指で弾くようにして閉じると、もう一度大きなため息を漏らす。
「とはってもそれが仕事でしょ~。ま~、めんど~なのは確かだけど~」
 言葉上は彼を諌めるように口にしたフィオーレであったが、釣られるようにして零れたため息がその心境をありありと物語っていた。
 そんな2人を前にして、アンナは何も言わずにただただ自らの担当分の確認に没頭する。
 上司として2人を諌めるのは簡単だ。
 だがそれ以上に、2人の気持ちが痛いほどよく分かるからである。
 ようやく手に入れたかに思った解決の糸口。
 しかしながらそれが余計に調査を泥沼へと引きずり込んでおり、果たして何者なのか、何が目的なのか、歪虚との関係は。
 疑問は次から次に増えるばかりで、その後、何一つ得る事のできる情報など有りはしなかったのだから。
 
 室内の集中が一気に解け始めていたその時、ばたりと扉を開け放ち、駆け込むようにして陸軍兵が部屋へと訪れた。
「え、エスト隊へ伝令……!」
 相当急いできたのか、息を切らして来た伝令兵を前に、すぐに何かあったと理解した面々は解けた緊張を無理やりに結びなおしていた。
「どうした?」
「わ、歪虚発生。おそらくは、狂気であるとの報告です」
「っしゃぁ、来たぜ来たぜ!」
 その言葉に、バンは目の色を変えて壁に立てかけたバスタードソードを背負った。
 思わず口に出してしまうほど待ちに待った動きなのだ、無理も無い。
「それで、発生地点は?」
「そ、それがその……」
 アンナの言葉に、兵士の表情が一層蒼白となった。
 その様子を見て、アンナも嫌な予感を感じ取っていたのか、背筋を冷たい汗が伝う。
「――ヴァリオス・ポルトワール間街道です」
「ヴァリオス・ポルトワール間街道……?」
 その言葉を前に、嫌な予感を感じながらも果たしてどんな不安点があったのかと、一瞬アンナの脳裏には何も思い当たる節が無かった。
 が、それはすぐに別の人間の言葉によって打ち砕かれる事となる。
「――パパ」
 思わず振り返るアンナ。
 視線の先には、肩を震わせて、兵士と同じように顔を蒼白にしたフィオーレの姿。
 そう、今日この時ヴァリオスとポルトワールを繋ぐ街道は、ポルトワールの海軍施設へと出かけた帰りの大佐――彼女達の上司であり、フィオーレの父でもあるその人が、同盟軍本部のあるヴァリオスへの帰路へと付いているハズであったのだ。
「っ……ピーノを呼び戻す時間は……いや、やむを得ん、出るぞ! 伝令兵は直ちにオフィスへ連絡を。兵も募るが、おそらくハンターを募った方が早い!」
「はっ!」
 アンナの指令に、自らのやるべき事を悟ったのか、伝令兵はキビキビとした動きで部屋を駆け出して行く。
 残された3人――アンナと、どこか急いた様子のバン、そして蒼白なフィオーレもまた、現場へ急行するために部屋を飛び出していくのであった。

解説

▼目的
クラッシャーの撃破

▼概要
 ヴァリオスとポルトワールを繋ぐ街道に現れた歪虚を撃破してください。
 歪虚は同街道を通行中であった同盟軍の魔導自動車の一団を襲っており、乗員の生死は不明です。
 皆さんの到着時、現場では先行しているエスト隊が戦闘を行っております。
 合流後、同隊は同僚の救出に重きを置いて行動しますので、協力して事件の解決へと臨んでください。
 

▼敵情報
エネミー:歪虚“クラッシャー”

 イソギンチャクのような頭を持った、ワーム状のモンスターです。
 報告されている数は1体ですが、先のヴァリオスの前例がありますので油断は禁物です。
 頭部の触手は自由にその硬度を変えられるようで、硬化させ、地中を掘り進む能力を持っているようです。
 地中は歪虚の独壇場であり、引きずり込まれれば命の保障はできません。
 十分に注意し、討伐に当たってください。
 
 特殊スキル「根源的狂怖」により、その不可解でおぞましい外見を見た対象は、本能的に恐怖、嫌悪、あるいは見惚れるなどし、動作にためらいが起きます。
 具体的には50%ほど命中と回避が下がり、ラウンドの経過と共に減少値は緩和されていきます。
 
 
重要参考人:キアーヴェ・A・ヴェクター

 傾向から事件現場付近に居ると思われますが、街道上で起きた事件のためどこに居るのか検討が付きません。
 その正体も不確定であり、見つけた場合は可能であれば確保。
 そうで無ければ殺害が軍の基本方針です。
 あくまで軍の方針のため、依頼書には「要注意」との書き込みがあるのみです。

▼エスト隊情報
アンナ=リーナ曹長:♀:隊を指揮して救助に励みます。装備は軍用拳銃と大型魔導射杭。
フィオーレ軍曹:♀:父の危険を前に、気が立っています。装備は魔導ライフル。
バン:♂:フィオーレをフォローするように動くようですが……。装備はグレートソード。
ピーノ:♂:今回は別件で席を外して居ます。

マスターより

おはようございます、のどかです。
夏の終わりに、6度目の怪異のお届けです。
前回、重要参考人と目される人物へと接触する事が出来た皆様。
それにより、物語は少し加速いたします。
今後、どのような展開を迎えることになるかは皆様のプレイング次第です。
望むべき未来を掴むことができるのか。
それを知るのは、その人その人の本質――に因るところとなるのでしょう。
今までの依頼で得てきた情報、雲の掴み方は、これからもきっと大きく役立って行くはずです。

質問がございましたらアンナがお答えいたしますので、別途質問卓を立ててご用命ください。
皆様のご参加を、お待ちしております。

関連NPC


  • アンナ=リーナ・エスト(kz0108
    人間(リアルブルー)|20才|女性|機導師(アルケミスト)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/09/30 21:31

参加者一覧

  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人

  •  (ka0824
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • 生身が強いです
    鈴胆 奈月(ka2802
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 特務偵察兵
    水城もなか(ka3532
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 魂の灯火
    クリス・クロフォード(ka3628
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人

  • テリア・テルノード(ka4423
    人間(紅)|24才|女性|聖導士
  • 共に紡ぐ人を包む風
    ミューレ(ka4567
    エルフ|50才|男性|魔術師
  • そよ風に包まれて
    来未 結(ka4610
    人間(蒼)|14才|女性|聖導士
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレ(ka5113
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/09/11 21:12:36
アイコン 質問卓
イルム=ローレ・エーレ(ka5113
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
アイコン 相談卓
イルム=ローレ・エーレ(ka5113
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2015/09/12 05:37:10