ゲスト
(ka0000)
小さな森、秘められた過去
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/09/12 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/09/21 07:30
オープニング
「ギムレット、見て!」
懸命に大工仕事をしていたドワーフのギムレットにかかった声はいつになく力と喜びに満ち溢れていた。
アガスティアの声はいつだって抑揚がなかった。細く、小さく。緑に縁の深いエルフという種族とその痩せこけた身体からして、本当に枯れ枝のようと思わせるに至るほどだった。だが、今日の声は違う。
それが何を意味しているかすぐに気づいて、ギムレットは飛び上がるように立ち上がり、小さな森、歪虚に襲われ焼け失せた森に唯一生えたシラカシの元へと急いだ。
「お、おおお!」
その大地に緑が見えた。まだそれは小さく産毛のようで、頼りない。
だが、草一本生えなかったこの荒涼とした大地に緑が生まれたのだ。
野草や薬草、ハンター達が持って来て一緒に撒いた種が芽吹いたのだ。ハンターと共に負のマテリアルを祓うための音楽を祭をし、種を撒いたことが結実した。
「やった、やったな! 緑だ!!」
ギムレットは空に向かって拳を突き上げ吼えるようにして喜んだ。
アガスティアの祈りが、ギムレットの力が、関わってくれたハンターの願いが結実した瞬間だった。
「あ……」
突如、陽光がギムレットの視界を縦に切り裂いた。
揺れる世界。
世界に大変化が襲ったのかと思ったが、すぐに自分の意識が疲労で途切れはじめていたことが原因だと気が付いた。
「ギムレット? ……ギムレット!!」
遠くでアガスティアの声が響いた。
●
微睡みの中でギムレットは機杖を持って立っていた。目の前には鬱蒼とした森が広がる。
「さっさと終わりにしようぜ!」
ああ、過去だ。ハンターとして活動していた3年前だ。
ギムレットは森の中へ飛び込むと、突如、落ち葉が巻き上がる音がした。
歪虚だ。カビが集合して山になったような不定形の緑の塊。大地のマテリアルを吸い上げて膨れ上がる生命力だけがウリのバケモノだった。エルフ達は明確に倒す方法を見つけられなかったこのバケモノ退治に、ギムレットをはじめとするハンターを雇用した。
「はっ、見たまま炎に弱そうだよな」
ギムレットは杖を歪虚に向け、そしてファイアスローワーを放った。
やめろ。それはダメなんだ。
若かりし自分に向かって、ギムレットは叫んだ。
ギムレットの目論見通り、カビの歪虚は一瞬で燃え上がり、火柱の塊となった。苦しみもがく歪虚はそのまま身体を何度も激しくよじった。飛び散るカビの塊。炎の粉。
「燃え尽きちまいな!」
冬の乾いた空気が熱せられた空気に反応して舞い上がる。
マテリアルで作り出した炎は引火したりはしない。歪虚だけを叩き、後には何にも被害をまき散らさない。はずだった。
だが、歪虚の身体に取り込まれた落ち葉の類が類焼したのか。カビの腐食反応で可燃性のガスが発生していたのか。
後は、地獄絵図だった。
「助けて、助けて……熱い、熱いよ」
「誰か、誰か! あああっ」
「待ってろ、今、いま助けるから」
「馬鹿野郎、死ににいくつもりか!!」
ギムレットにはそんな引き留める仲間を突き飛ばす程度の力はあったが、森全体を渦巻く炎に飛び込んでどうにかできるような力はなかった。
負の空気が焦熱に紛れて臭う。
正のマテリアルがどんどん焼き尽くされる中、負のマテリアルだけが残っていく。
他に潜んでいた歪虚のほとんども一緒に焼け死んだが、生命力の塊であるそれは何体かは生き残り、森だけが消えた。
歪虚は炭になった森の残骸をすすり続け、討伐し終えたころには最初に見た森の姿などどこにもなかった。
「すまん……」
消え去った森を歩き、エルフの小柄な骸を見るたびにギムレットは心が焼ききれそうになる。
せめて安らかに眠るように。いつしかギムレットは骸を回収し、墓を建てることだけに専念するようになった。
●
水で冷やされた布の感触が顔に当てられ、ギムレットは目を覚ました。
「……大丈夫ですか」
ギムレットを覗き込んだ顔を見て、彼はぼやけた頭を一気に目覚めさせた。
つる草のような緑の巻き髪。重たるそうな目蓋の奥に見える翡翠の瞳。病的な白い肌に尖った耳。エルフだ。
あ、いや。森を再生しようと共に戦い続けるアガスティアだ。
「ギムレット。あなたのそれは過労です。最初に出会った時もそうでしたね……この森にどうしてそこまでされるのですか?」
アガスティアの言葉にギムレットはしばし逡巡してから笑った。
「もうすぐ水車が完成するんだよ。そしたら川から水を引き上げられる。もっと緑も増えて、すぐ森らしくなる。そう思ったら寝られやしなくてさ」
ギムレットはそう言ったが、元は巫女であるアガスティアは黙ってギムレットを見つめるばかりだった。
「ドワーフってのはな、エルフほど長生きできるもんじゃねぇんだ。だから、命ってのは……物に託すのさ。一瞬のきらめきを物に込める、ってのかな。口より手で語れ。なんて言われたものさ」
自分の力で壊したんだから、自分で尻拭いをするのは当然だ、ともね。
背を向け外に出ようとするギムレットに、アガスティアの言葉が鋭く突き刺さった。
「ギムレット。貴方は何か隠していますね? 多少の事ならお伺いはしません。ですが、このままでは貴方の命に関わります」
ギムレットは動けなくなった。アガスティアの声がほんの僅かに揺れている。
「エルフは一度信じた人はずっと家族のように思います。ドワーフは、違うのですか?」
真実を知ったら、絶対今まで通りにはいかなくなる。八つ裂きにされても仕方ないとは思うが、ようやく輝きだした彼女の心をまた壊してしまうことは何より忍びなかった。
だから口でなく、手で語れって言われるんだよな。
ギムレットはそんな言葉も呑みこんで、黙って外へと出て行った。
にしてもこのままでは森の復興作業にも影響はでることは間違いない。
今度来たハンターに相談してみようか。
太陽を隠すこの霧を晴らしてくれる方法を。
懸命に大工仕事をしていたドワーフのギムレットにかかった声はいつになく力と喜びに満ち溢れていた。
アガスティアの声はいつだって抑揚がなかった。細く、小さく。緑に縁の深いエルフという種族とその痩せこけた身体からして、本当に枯れ枝のようと思わせるに至るほどだった。だが、今日の声は違う。
それが何を意味しているかすぐに気づいて、ギムレットは飛び上がるように立ち上がり、小さな森、歪虚に襲われ焼け失せた森に唯一生えたシラカシの元へと急いだ。
「お、おおお!」
その大地に緑が見えた。まだそれは小さく産毛のようで、頼りない。
だが、草一本生えなかったこの荒涼とした大地に緑が生まれたのだ。
野草や薬草、ハンター達が持って来て一緒に撒いた種が芽吹いたのだ。ハンターと共に負のマテリアルを祓うための音楽を祭をし、種を撒いたことが結実した。
「やった、やったな! 緑だ!!」
ギムレットは空に向かって拳を突き上げ吼えるようにして喜んだ。
アガスティアの祈りが、ギムレットの力が、関わってくれたハンターの願いが結実した瞬間だった。
「あ……」
突如、陽光がギムレットの視界を縦に切り裂いた。
揺れる世界。
世界に大変化が襲ったのかと思ったが、すぐに自分の意識が疲労で途切れはじめていたことが原因だと気が付いた。
「ギムレット? ……ギムレット!!」
遠くでアガスティアの声が響いた。
●
微睡みの中でギムレットは機杖を持って立っていた。目の前には鬱蒼とした森が広がる。
「さっさと終わりにしようぜ!」
ああ、過去だ。ハンターとして活動していた3年前だ。
ギムレットは森の中へ飛び込むと、突如、落ち葉が巻き上がる音がした。
歪虚だ。カビが集合して山になったような不定形の緑の塊。大地のマテリアルを吸い上げて膨れ上がる生命力だけがウリのバケモノだった。エルフ達は明確に倒す方法を見つけられなかったこのバケモノ退治に、ギムレットをはじめとするハンターを雇用した。
「はっ、見たまま炎に弱そうだよな」
ギムレットは杖を歪虚に向け、そしてファイアスローワーを放った。
やめろ。それはダメなんだ。
若かりし自分に向かって、ギムレットは叫んだ。
ギムレットの目論見通り、カビの歪虚は一瞬で燃え上がり、火柱の塊となった。苦しみもがく歪虚はそのまま身体を何度も激しくよじった。飛び散るカビの塊。炎の粉。
「燃え尽きちまいな!」
冬の乾いた空気が熱せられた空気に反応して舞い上がる。
マテリアルで作り出した炎は引火したりはしない。歪虚だけを叩き、後には何にも被害をまき散らさない。はずだった。
だが、歪虚の身体に取り込まれた落ち葉の類が類焼したのか。カビの腐食反応で可燃性のガスが発生していたのか。
後は、地獄絵図だった。
「助けて、助けて……熱い、熱いよ」
「誰か、誰か! あああっ」
「待ってろ、今、いま助けるから」
「馬鹿野郎、死ににいくつもりか!!」
ギムレットにはそんな引き留める仲間を突き飛ばす程度の力はあったが、森全体を渦巻く炎に飛び込んでどうにかできるような力はなかった。
負の空気が焦熱に紛れて臭う。
正のマテリアルがどんどん焼き尽くされる中、負のマテリアルだけが残っていく。
他に潜んでいた歪虚のほとんども一緒に焼け死んだが、生命力の塊であるそれは何体かは生き残り、森だけが消えた。
歪虚は炭になった森の残骸をすすり続け、討伐し終えたころには最初に見た森の姿などどこにもなかった。
「すまん……」
消え去った森を歩き、エルフの小柄な骸を見るたびにギムレットは心が焼ききれそうになる。
せめて安らかに眠るように。いつしかギムレットは骸を回収し、墓を建てることだけに専念するようになった。
●
水で冷やされた布の感触が顔に当てられ、ギムレットは目を覚ました。
「……大丈夫ですか」
ギムレットを覗き込んだ顔を見て、彼はぼやけた頭を一気に目覚めさせた。
つる草のような緑の巻き髪。重たるそうな目蓋の奥に見える翡翠の瞳。病的な白い肌に尖った耳。エルフだ。
あ、いや。森を再生しようと共に戦い続けるアガスティアだ。
「ギムレット。あなたのそれは過労です。最初に出会った時もそうでしたね……この森にどうしてそこまでされるのですか?」
アガスティアの言葉にギムレットはしばし逡巡してから笑った。
「もうすぐ水車が完成するんだよ。そしたら川から水を引き上げられる。もっと緑も増えて、すぐ森らしくなる。そう思ったら寝られやしなくてさ」
ギムレットはそう言ったが、元は巫女であるアガスティアは黙ってギムレットを見つめるばかりだった。
「ドワーフってのはな、エルフほど長生きできるもんじゃねぇんだ。だから、命ってのは……物に託すのさ。一瞬のきらめきを物に込める、ってのかな。口より手で語れ。なんて言われたものさ」
自分の力で壊したんだから、自分で尻拭いをするのは当然だ、ともね。
背を向け外に出ようとするギムレットに、アガスティアの言葉が鋭く突き刺さった。
「ギムレット。貴方は何か隠していますね? 多少の事ならお伺いはしません。ですが、このままでは貴方の命に関わります」
ギムレットは動けなくなった。アガスティアの声がほんの僅かに揺れている。
「エルフは一度信じた人はずっと家族のように思います。ドワーフは、違うのですか?」
真実を知ったら、絶対今まで通りにはいかなくなる。八つ裂きにされても仕方ないとは思うが、ようやく輝きだした彼女の心をまた壊してしまうことは何より忍びなかった。
だから口でなく、手で語れって言われるんだよな。
ギムレットはそんな言葉も呑みこんで、黙って外へと出て行った。
にしてもこのままでは森の復興作業にも影響はでることは間違いない。
今度来たハンターに相談してみようか。
太陽を隠すこの霧を晴らしてくれる方法を。
解説
アガスティアが守っていた森を焼失した原因は自分に原因の一端があるとギムレットは考えていますが、それを問いただそうとするアガスティアに話すことができず、ここ数日復興作業は停滞しています。
二人の関係を改善するお手伝いをお願いします。
●前シナリオ
「小さな森、秘められた命」です。
●目的
二人の関係改善
ギムレットの過去についてはギムレットが素直に教えてくれます。
正直に伝えても構いませんし、何かしらアガスティアが納得できる当たり障りのない内容に変えても構いません。
●登場人物
ギムレット ドワーフ 男 40代
ハンターで機導士をしています。
森が無くなってからずっと負のマテリアルに冒された森をくまなく歩き続けて活動していた為、自然回復が追いつかず体力損耗が激しく、過労状態です。
最近は離れたところに流れる川の水を引き込むための水車と水路を準備していました。
アガスティア エルフ 女 外見30代 中身60代
元はこの森の巫女で聖導士です。森が焼けた時には幸運にも生き残りましたが、それ以後、森を覆う負のマテリアルを祓い続け、再興をしていました。
この間、ギムレットとは一度も出会っておらず、先日ようやく出会いました。彼女のいる場所は森のはずれの方で、森が失われた後も案内なしには簡単に見つけられる場所ではありませんでした。
ギムレットについては森の再生を命をかけて手伝ってくれる信頼の置ける人物であると考えています。
●森について
帝国のとある地方にある森でした(エルフハイムとは離れています)。
割と大きな森でしたが、3年前に全焼した後も歪虚の影響により、何もない荒野に変貌しました。今は歪虚もギムレットに倒されています。
今は復興活動により、アガスティアのいる場所にシラカシの苗木が根付き、その周辺に草が生え始めるなど少し再生へと向かっています。
二人の関係を改善するお手伝いをお願いします。
●前シナリオ
「小さな森、秘められた命」です。
●目的
二人の関係改善
ギムレットの過去についてはギムレットが素直に教えてくれます。
正直に伝えても構いませんし、何かしらアガスティアが納得できる当たり障りのない内容に変えても構いません。
●登場人物
ギムレット ドワーフ 男 40代
ハンターで機導士をしています。
森が無くなってからずっと負のマテリアルに冒された森をくまなく歩き続けて活動していた為、自然回復が追いつかず体力損耗が激しく、過労状態です。
最近は離れたところに流れる川の水を引き込むための水車と水路を準備していました。
アガスティア エルフ 女 外見30代 中身60代
元はこの森の巫女で聖導士です。森が焼けた時には幸運にも生き残りましたが、それ以後、森を覆う負のマテリアルを祓い続け、再興をしていました。
この間、ギムレットとは一度も出会っておらず、先日ようやく出会いました。彼女のいる場所は森のはずれの方で、森が失われた後も案内なしには簡単に見つけられる場所ではありませんでした。
ギムレットについては森の再生を命をかけて手伝ってくれる信頼の置ける人物であると考えています。
●森について
帝国のとある地方にある森でした(エルフハイムとは離れています)。
割と大きな森でしたが、3年前に全焼した後も歪虚の影響により、何もない荒野に変貌しました。今は歪虚もギムレットに倒されています。
今は復興活動により、アガスティアのいる場所にシラカシの苗木が根付き、その周辺に草が生え始めるなど少し再生へと向かっています。
マスターより
二人の関係は前シナリオの皆様のおかげで、ずっと近くなりました。近くなると見えてくるものも色々あります。
それを乗り越えられるか、そうでないかの分かれ道に差し掛かろうとしています。二人とも近づきたいとは思いつつ互いを傷つけあうことを恐れるヤマアラシのジレンマのように。
次の最終話に向かって、気持ちを一つにできますように是非お力添えをよろしくお願いいたします。
それを乗り越えられるか、そうでないかの分かれ道に差し掛かろうとしています。二人とも近づきたいとは思いつつ互いを傷つけあうことを恐れるヤマアラシのジレンマのように。
次の最終話に向かって、気持ちを一つにできますように是非お力添えをよろしくお願いいたします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/09/16 00:27
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
【相談卓】向き合うか、否か。 ラティナ・スランザール(ka3839) ドワーフ|19才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/09/11 23:19:59 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/08 21:06:50 |