• 日常

メシ屋を救え! 無謀なる少女達の挑戦

マスター:芹沢かずい

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
現在5人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/09/19 09:00
リプレイ完成予定
2015/09/28 09:00

オープニング

 爽やかな早朝。
 小さなメシ屋の裏庭からはいつもの音がテンポ良く響いていた。主が薪割りをしているのだ。……が。
「ぬぅあぁっ!」
 リタとエマが階段を降りてきた所にそれは聞こえてきた。
「おやっさんかしら」
「『おやっさん』って呼ぶのどうかと思うけど……どうしたのかしら?」
 二人が見たのは、薪割りの途中、振り上げた斧もそのままに固まっているおやっさん。……店主のことだが。
「お、お……あああ」
「ど、どうしたんです?!」
 エマは駆け寄ると、握り締めていた柄からその指を引き剥がし、半ば無理矢理その場に座らせる。
 顔色は悪く、流れる汗が尋常ではない。
「さては、ギックリ腰ねっ?」
 何故か自信ありげにおやっさんを指差し、腰に手を当てたポーズで言い切るリタ。
「……指さしちゃだめよ」
 突っ込む所はそれでいいのか。
「せ、正解だ……全く動けん……」
 青から土気色に変化していく顔色。
「薪割りならやるわよ! 大きさがバラバラでも文句言わないならね!」
 やはり偉そうに言い放つと、早速斧をスタンバって、リタは手慣れた様子で薪をセット。
「うぅむ……仕方ないか……それよりも、今日は厨房に立てそうもな……うぐぅ」
「困りましたね。女将さんも今は留守ですし……今日はお休みですね」
 おやっさんの腰をさすりながら、エマが諦めたように言う。
「いや……それがマズいんだよ」
「マズいって?」
 リタが斧を片手に会話に混ざる。
「今日は『GLK』の予約が入っているんだ」
「『GLK』?」
「あ、私聞いたことあるよ。『ご近所で(G)ランチする(L)会(K)』のことなんだって」
「そう、そのGLKのマダム達が来るんだ。それに選ばれた食堂は、何故かその後評判が上がるというジンクスがあるんだよ」
 腰の痛みと格闘しているおやっさんは、何とも苦々しい表情。

 お洒落で特別なものではなく、得意の家庭料理を良心的な値段で提供し、ほっと一息つける空間を作りたい。そんな願いで店主と女将さんが始めたこの店。
 常連さんや通りすがりに来店する者もいて、普段はそれなりにやっていけていたのだが、ここ数ヶ月は、客足はまばら。
 店自体はいつも掃除や手入れを欠かしていないし、味が落ちたわけでもない。『年だからなぁ』なんていう理由で、そろそろこの店も閉めようか、という話をしていた頃、ハンター志望でこの町にやって来たリタとエマが転がり込んだのだ。……空腹を抱えて。
 おやっさんたちの孫くらいの年頃の姉妹が、たった二人で(現役ハンターの協力もあったのだが)この町のハンターオフィスに書類登録してきたのだという。
 それがキッカケで、子供のいないおやっさんたちは、店の二階を二人に住居として提供し、さらには食事の世話までしているのだ。
「そのジンクスが本当ならな、腕によりをかけて作ってやろうと思ってたんだけどなぁ……諦めるしかねぇか」
 腰が痛い所為で奇妙な格好で固まってしまったおやっさん。エマの力ではどうしようもない。
「おやっさん! 諦めるなんてらしくないわっ! あたしたちを誰だと思ってるのっ? 書類登録してきたハンターなのよっ!」
「……覚醒もまだしてないけどね、お姉ちゃん」
 エマの突っ込みは取り敢えず無視。
「あたしたちに任せてみない? 大丈夫よ! 店の仕事はある程度見てるから分かってるし、今日の準備だってもう初めてたんでしょ?」
 リタの自信は何処から来るのか……エマと顔を見合わせて苦笑すると、おやっさんは諦めたように一つ息を吐き出す。


「ハンターオフィスへようこそ……って、エマ。どうしたんだい?」
「お早うございます。あの、今日は……私が依頼人です」
「ん?」
 愛想の良い受付の男性に、エマは事の詳細を話した。
 本日七名の予約が入っているのだが、店の主がギックリ腰で動けずにいる事。
 予約以外の客もそれなりにいるだろうが、普段なら五人程度来れば良い方だ。しかし、姉と二人で対応していくには不安がある事。
 材料は店の主がやたらと買い込んでいて、予想される客数は乗り切れそうなので、料理と接客、それぞれを担当してくれる人材が欲しい事。
 勿論自分たちも手伝うが、殆ど店を手伝ったことがないので何につけても自信が無いことに加え、猪突猛進な姉のリタは何をしでかすか分からないから、自分は姉のフォローに回ることになりそうな事。
 それに近頃、オーブンの調子が悪いらしく煙突も掃除しなければならないらしい。……薪割りが終わった後でやるつもりだったのだが、今その店主は裏庭に座り込んだままだ。
 早口で一気に言い切ると、エマは大きく息をついた。そして、思い出したかのように付け加える。
「親父さん、ギックリ腰が酷いらしくて、私達じゃ運べなくて……寝てれば治るって言うんですけど」
「分かったよ、オープンは十一時で予約は十二時だったね。準備があるなら出来る限り早い方がいいね。店主さんのこともあるし」
「すいません……ハンターさんにこんな依頼を出すのは、その……気が引けるんですけど……」
「大丈夫、人の好いハンターも多いからね、さあ、君はお店に戻って」
「宜しくお願いします!」


「お姉ちゃん、薪は出来た?」
「ええ、この通りよ! オーブン用と、かまど用ね。お鍋もフライパンもあるし。オーブン用のお皿とか、調理用のボウルやザルに包丁、普段使ってるっぽい道具はちゃんと揃ってるわ! それから、煙突の中から奇妙な音がするのよ。アレは間違いなくネズミの声ね! 追い払わなきゃだわっ!」
 意気込むリタは、煙突掃除用の金属ブラシ付きの長い棒を握っている。……足元には原型を留めていない食器の残骸。……見なかったことにする。
「そ、そうだね……オープンまでにやらなきゃ。あとは……食材の確認だね」
「あたしたち二人だけでも大丈夫なんじゃない?」
「ダメよ!」
 即答。
「お姉ちゃん、お肉丸焼きにする以外にお料理なんて出来ないでしょ。私だって家庭料理なんて良く分からないもん。パンも上手く焼けたことないし。それに、お客様に出すんだから味とか盛りつけとか……もう不安しかないよぅ……」
「大丈夫よ、エマ! 依頼出して来たんでしょ? だったら、色んな地域の家庭料理を知ってる人もいるかも知れないわ!」
「うん……今はこの店の料理に限らなくてもいいのかもね」
「そうよ! この際、色んな料理を食べてみたいわね!」
「大皿料理とか沢山作って、好きなものだけ選んで……っていうのも面白いかもね」
「でしょ?! 可能性は多い方が良いわ!」
 両腕を腰に当て、やはり偉そうにリタ。
 彼女の言い分も一理ある。が、エマはやはり不安で頭を抱える。……そんな時だった。
 カランカラン……
 ドアに付けられたチャームが、控えめな音を立てる。そこには、エマの必死の懇願を聞きつけた心優しきハンター達が立っていた。

解説

ギックリ腰になってしまった店主の代わりに、姉妹と共に予約客であるGLKの皆さんにランチを提供し、その他のお客様への接客も合わせ、一日を乗り切って下さい。

オープン前には煙突の掃除とネズミ退治をする必要がありそうです。

このメシ屋の開店時間は十一時。予約は十二時になっています。
ちなみに現在時刻は八時になろうとしている頃。閉店は食材が無くなるか、十六時を回る頃です。
通常ですとお昼に混雑が予想されますが、敢えてそれを外して来るお客様も多いのが、小さな店のいい所(?)

おやっさんが買い込んだ食材は、どれも近所のお店で手に入る、ありふれたもの。
ジャガイモ、人参、タマネギなどの保存の利く野菜に、レタスやキャベツなどの葉もの野菜。ピーマン、茄子、トマトなどは裏庭に実っています。
乾燥パスタや小麦粉や強力粉、店でよく使っている調味料やスパイスも山ほどストックしてあります。
冷蔵庫には牛肉や豚肉、鶏肉に羊肉、新鮮な白身魚まで用意してあるようです。

小さな店ですが厨房は広く、大人が五人は入れる程の広さがあります。おやっさん愛用の調理器具達は健在。

今回障害となりそうなのは、多分リタでしょう。お皿を割るのは当たり前、何も無い所で躓いて転ぶのだから、料理を運ばせたら要注意です。

評判が良ければこの店は持ち直すと思われます。が、万が一最低ランクの評価になった場合には、おやっさんの性格上、潔く店仕舞いすることになるでしょうね。

マスターより

今回は小さな食堂を舞台にしてみました。『食堂』というよりは『小さなメシ屋』といったほうがしっくりくる感じの、地域に根ざしたこじんまりとしたお店。
お洒落なお店で気取った食事というのもたまにならアリなのですが、芹沢はどちらかというと居酒屋派(笑)
定食屋というのにも憧れます。
『ここに行けば家庭的な味が楽しめて、アットホームな雰囲気で』っていう庶民的なメシ屋が近所に在ればなぁ……ふと思い立って書いてみました。
大皿に山盛りになった料理……何となく、ファンタジーな匂いがしませんか……?
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/09/24 02:07

参加者一覧

  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • スライムの御遣い
    藤堂 小夏(ka5489
    人間(蒼)|23才|女性|闘狩人
  • 大衆食堂の貴公子
    ルルヴィス・リヒテルソン(ka5586
    人間(紅)|12才|男性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談板?
岩井崎 メル(ka0520
人間(リアルブルー)|17才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/09/19 07:37:14
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/09/17 22:47:47