ゲスト
(ka0000)
灼熱の井戸の底
マスター:硲銘介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在5人 / 4~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/09/19 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/09/28 07:30
オープニング
●
暑い。暑い。暑い――ああ、くそったれ、暑くてしょうがない!
誰に言うでもなく、男はぶつぶつと同じ言葉を繰り返し歩いていた。
男に連れ添いはいない。無論、それはひとり言に過ぎないのだが、口に出さずにはいられなかった。
深く被った帽子の下から空を仰ぎ、男は憎き怨敵を睨みつける。
――それは太陽。頭上より燦々と光を降らせる赤の球体のなんと恨めしいことか。
旅人である男が往くのは木陰の一つもない枯れた荒野。真夏の猛暑はもう過ぎ去ったと思っていたが、ここ数日のそれは容赦が無い。
日射を遮る為の帽子は効いている気がしないし、飲み水は先程最後の分を飲み干してしまった。目的の町までもう数刻ほどだが、思いの外体力の消耗が激しい。
そもそも、日照り続きの後には雨を降らせるのが道理ではないのか。時折、自然にはそういったバランス感覚が致命的に欠如していると思うのだが。
……などと、こうくそ暑くては文句も言いたくなる。
炎天下を歩き続けるも風景は代わり映えのしない岩だらけ。この味気ないキャンバスに目で味わう旅の風流などが感じとれるものか。
地獄に仏、という言葉を聞いたことがあるが、それはおそらくこの瞬間の為に用意されたに違いない。
井戸だ。岩陰に小さな古びた井戸がある。
冷静に考えればこんな場所にある井戸などとうに死んでいるだろう。だが、水を得られるという高揚感が旅人の足を急がせた。
井戸の脇に桶が放置されている。釣瓶の機能はどうやら生きているらしい。期待に胸を膨らませ、井戸の底へと水桶を落とす。
さて、水はあるだろうか。加えて、それは人が飲んでも問題ないものなのか――いや、それは置いておこう。
この一瞬の潤いを得られるのなら、後々腹を壊そうともかまうものか。毒水だろうが飲み干して見せよう……いや、さすがにそれは止めておこうか。
などと逡巡していると、突然手にした縄の感覚が変わった。桶が底に叩きつけられたのでも、長さの限界に達したのでもない。
間違いない。これは桶が水に浸かった感覚に違いない。知らず、顔がにやける。
急いで釣瓶を引き戻す。水質がハッキリした訳でもないのに、無性に何かに勝利した気分になっていた。
そうして、縄の先端が地上へと戻ってくる――が、そこに水を湛えた桶の姿は無かった。
……切れた。どうも軽いとは思ったが、なんてことだ。せっかく井戸水の存在が分かったというのにこれとは、喜び損というやつではないか。
深い溜息を吐くと共に、恨めしく切れた縄の先端を睨む――と、妙なことに気づいた。
縄の先は黒く、焦げていた。触れてみるとついさっき焼き切った様に熱を帯びている。てっきり老朽化して切れたものと思っていたが、それにしてはおかしな痕跡だ。
不思議に思い、身を乗り出して井戸を覗き込む。広がっているのは暗闇ばかりで、底の様子などは分かる筈も無いのだが。
●
結論から言って、その井戸に水は無かった。代わりに、液体状の別のものが沈んでいた。
男が垂らした釣瓶の先は底で眠るそいつの身体に触れ、そのまま表面を突き破り沈み――燃え尽きた。
井戸に落ちてきた異物を溶かし、或いは井戸の底の地下空間を溶かし領域を広げつつ眠っていたそいつはそれで目を覚ました。
自身の内から逃れでた縄が地上へと戻っていくのを見つけて、そいつは久々に肥大化した身体を揺り動かした。
井戸の内側、垂直で取っ掛かりの無い壁をそいつは這うように昇っていく。
やがて、久方ぶりの陽が射すも、光に眩む事は無かった。だって、眼球などというものは最初から持ち合わせてはいない。
「うわああああぁぁぁッッッ!!!!」
人間の雄の悲鳴が響く。愚かにも、怪物の巣窟を覗き込んでいた男は急速浮上するそれに巻き込まれた。
赤い液体。いや、半固体と云うのが正しいのか――否、やはりここは知れ渡ったその種としての名で呼称しよう。
スライム――蠢く無形の怪物が旅人の男を呑み込む。その軟体に取り込まれた男は泳ぐ様に、溺れた様に手足を暴れさせていた。
その抵抗は無意味だ。水の中で人が泳げるのは、それが流れるだけの物質だからである。
しかし、これは違う。人には理解し得ない命の形、融合と分裂を繰り返しつつもそれぞれが個として成立する水溶の怪物が、獲物の脱出など許す筈もない。
やがて男の動きが停止する。無駄と悟ったのか力尽きたのか、なんにせよ、それでおしまい。
男の身体が発火する。液体の中に居るというのに、その五体は火に包まれ、灰になるようにその姿を消した。
これが赤いスライムの食事だ。高熱の体内に獲物を捉え、消化する。
もっとも、今回は目が覚めて飛び出した先に餌があっただけで、彼にとってはラッキーだった。餌食となった男にはアンラッキーなどでは片付けられないが。
想定外の食事を済ませたスライムはその巨体を再び枯れ井戸の底へと滑り込ませた。
地下深くで眠りながら岩石をゆっくりと嚥下し、成長していく。時折、今みたいな間抜けな餌がやってくる事もあり、その生活は中々に悪くない。
――事が済み、地上にはもう旅人の姿は見当たらない……あぁ、地下の何処を探したとしても彼は見つからないのだが。
ただ、旅人がその場に遺した荷物だけはすぐに見つかる事になった。
一時間ほど歩いた先の町、旅人が目指していたそこに住む知人が見つけたのは、本人ではなくその荷物だけだったのだ。
到着の遅い旅人を捜してみればあったのは荷物だけ。広がるのは緑の失せた岩の大地、傍らには使われなくなって久しい枯れ井戸。
そこから何かしらのトラブルに気づくのはそう難しい事じゃない。消えた旅人、彼が何処に何故消えたのか――それを解き明かすべく、ハンターオフィスへ一つの依頼が届けられた。
暑い。暑い。暑い――ああ、くそったれ、暑くてしょうがない!
誰に言うでもなく、男はぶつぶつと同じ言葉を繰り返し歩いていた。
男に連れ添いはいない。無論、それはひとり言に過ぎないのだが、口に出さずにはいられなかった。
深く被った帽子の下から空を仰ぎ、男は憎き怨敵を睨みつける。
――それは太陽。頭上より燦々と光を降らせる赤の球体のなんと恨めしいことか。
旅人である男が往くのは木陰の一つもない枯れた荒野。真夏の猛暑はもう過ぎ去ったと思っていたが、ここ数日のそれは容赦が無い。
日射を遮る為の帽子は効いている気がしないし、飲み水は先程最後の分を飲み干してしまった。目的の町までもう数刻ほどだが、思いの外体力の消耗が激しい。
そもそも、日照り続きの後には雨を降らせるのが道理ではないのか。時折、自然にはそういったバランス感覚が致命的に欠如していると思うのだが。
……などと、こうくそ暑くては文句も言いたくなる。
炎天下を歩き続けるも風景は代わり映えのしない岩だらけ。この味気ないキャンバスに目で味わう旅の風流などが感じとれるものか。
地獄に仏、という言葉を聞いたことがあるが、それはおそらくこの瞬間の為に用意されたに違いない。
井戸だ。岩陰に小さな古びた井戸がある。
冷静に考えればこんな場所にある井戸などとうに死んでいるだろう。だが、水を得られるという高揚感が旅人の足を急がせた。
井戸の脇に桶が放置されている。釣瓶の機能はどうやら生きているらしい。期待に胸を膨らませ、井戸の底へと水桶を落とす。
さて、水はあるだろうか。加えて、それは人が飲んでも問題ないものなのか――いや、それは置いておこう。
この一瞬の潤いを得られるのなら、後々腹を壊そうともかまうものか。毒水だろうが飲み干して見せよう……いや、さすがにそれは止めておこうか。
などと逡巡していると、突然手にした縄の感覚が変わった。桶が底に叩きつけられたのでも、長さの限界に達したのでもない。
間違いない。これは桶が水に浸かった感覚に違いない。知らず、顔がにやける。
急いで釣瓶を引き戻す。水質がハッキリした訳でもないのに、無性に何かに勝利した気分になっていた。
そうして、縄の先端が地上へと戻ってくる――が、そこに水を湛えた桶の姿は無かった。
……切れた。どうも軽いとは思ったが、なんてことだ。せっかく井戸水の存在が分かったというのにこれとは、喜び損というやつではないか。
深い溜息を吐くと共に、恨めしく切れた縄の先端を睨む――と、妙なことに気づいた。
縄の先は黒く、焦げていた。触れてみるとついさっき焼き切った様に熱を帯びている。てっきり老朽化して切れたものと思っていたが、それにしてはおかしな痕跡だ。
不思議に思い、身を乗り出して井戸を覗き込む。広がっているのは暗闇ばかりで、底の様子などは分かる筈も無いのだが。
●
結論から言って、その井戸に水は無かった。代わりに、液体状の別のものが沈んでいた。
男が垂らした釣瓶の先は底で眠るそいつの身体に触れ、そのまま表面を突き破り沈み――燃え尽きた。
井戸に落ちてきた異物を溶かし、或いは井戸の底の地下空間を溶かし領域を広げつつ眠っていたそいつはそれで目を覚ました。
自身の内から逃れでた縄が地上へと戻っていくのを見つけて、そいつは久々に肥大化した身体を揺り動かした。
井戸の内側、垂直で取っ掛かりの無い壁をそいつは這うように昇っていく。
やがて、久方ぶりの陽が射すも、光に眩む事は無かった。だって、眼球などというものは最初から持ち合わせてはいない。
「うわああああぁぁぁッッッ!!!!」
人間の雄の悲鳴が響く。愚かにも、怪物の巣窟を覗き込んでいた男は急速浮上するそれに巻き込まれた。
赤い液体。いや、半固体と云うのが正しいのか――否、やはりここは知れ渡ったその種としての名で呼称しよう。
スライム――蠢く無形の怪物が旅人の男を呑み込む。その軟体に取り込まれた男は泳ぐ様に、溺れた様に手足を暴れさせていた。
その抵抗は無意味だ。水の中で人が泳げるのは、それが流れるだけの物質だからである。
しかし、これは違う。人には理解し得ない命の形、融合と分裂を繰り返しつつもそれぞれが個として成立する水溶の怪物が、獲物の脱出など許す筈もない。
やがて男の動きが停止する。無駄と悟ったのか力尽きたのか、なんにせよ、それでおしまい。
男の身体が発火する。液体の中に居るというのに、その五体は火に包まれ、灰になるようにその姿を消した。
これが赤いスライムの食事だ。高熱の体内に獲物を捉え、消化する。
もっとも、今回は目が覚めて飛び出した先に餌があっただけで、彼にとってはラッキーだった。餌食となった男にはアンラッキーなどでは片付けられないが。
想定外の食事を済ませたスライムはその巨体を再び枯れ井戸の底へと滑り込ませた。
地下深くで眠りながら岩石をゆっくりと嚥下し、成長していく。時折、今みたいな間抜けな餌がやってくる事もあり、その生活は中々に悪くない。
――事が済み、地上にはもう旅人の姿は見当たらない……あぁ、地下の何処を探したとしても彼は見つからないのだが。
ただ、旅人がその場に遺した荷物だけはすぐに見つかる事になった。
一時間ほど歩いた先の町、旅人が目指していたそこに住む知人が見つけたのは、本人ではなくその荷物だけだったのだ。
到着の遅い旅人を捜してみればあったのは荷物だけ。広がるのは緑の失せた岩の大地、傍らには使われなくなって久しい枯れ井戸。
そこから何かしらのトラブルに気づくのはそう難しい事じゃない。消えた旅人、彼が何処に何故消えたのか――それを解き明かすべく、ハンターオフィスへ一つの依頼が届けられた。
解説
『依頼内容』
町の目前で行方不明になった旅人の捜索願が出されています。
原因を究明し行方不明者の救助をお願いします。
『地形情報』
荷物が発見された岩場の周りには荒涼とした平地が続いています。洞窟の様なものは確認されていません。
また、すぐ傍には長い間使われていない古井戸があります。
(以下、PL情報)
井戸の下はスライムが溶かし広げた地下空間が広がっています。
高さは一メートル四十程で、広さは半径5メートル程と大した広さではありません。
『敵勢情報』
(続けて、PL情報となります)
火属性の赤いスライム。レッドスライム。
通常のスライムと同様に軟体の身体を持ち、融合分裂を繰り返します。
この個体は高熱で、体内に取り込んだ対象を焼却、吸収します。
暫く地下空間に潜み時間を稼いだせいで身体が大きく、総合的な体力はけっこうあります。
町の目前で行方不明になった旅人の捜索願が出されています。
原因を究明し行方不明者の救助をお願いします。
『地形情報』
荷物が発見された岩場の周りには荒涼とした平地が続いています。洞窟の様なものは確認されていません。
また、すぐ傍には長い間使われていない古井戸があります。
(以下、PL情報)
井戸の下はスライムが溶かし広げた地下空間が広がっています。
高さは一メートル四十程で、広さは半径5メートル程と大した広さではありません。
『敵勢情報』
(続けて、PL情報となります)
火属性の赤いスライム。レッドスライム。
通常のスライムと同様に軟体の身体を持ち、融合分裂を繰り返します。
この個体は高熱で、体内に取り込んだ対象を焼却、吸収します。
暫く地下空間に潜み時間を稼いだせいで身体が大きく、総合的な体力はけっこうあります。
マスターより
こんにちは、硲銘介です。
今回のシナリオは暑い日に熱いのと遭遇してしまったというものですが……もっと早い時期に出すべきだった気もします。
最近はすっかり涼しくなってきましたからね……いえ、過ごしやすくて嬉しいんですけどね?
それでは、皆様の参加をお待ちしております。
今回のシナリオは暑い日に熱いのと遭遇してしまったというものですが……もっと早い時期に出すべきだった気もします。
最近はすっかり涼しくなってきましたからね……いえ、過ごしやすくて嬉しいんですけどね?
それでは、皆様の参加をお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/09/27 06:57
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談用 オルドレイル(ka0621) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/09/19 07:19:39 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/19 06:20:12 |