ゲスト
(ka0000)
VSコロシアム:憂いの騎士と陽気な連れ
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/09/24 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/10/03 12:00
オープニング
「飽きましたわ」
部屋に散乱する無数の未承認書類を前に咎められた際、第二師団副団長スザナ・エルマンはとても良い笑顔でそうのたまった。書類の内容は、彼女が自ら管理を買って出たコロシアム関係のものばかり。
おかげで、ここしばらくコロシアムには何の予算も落ちていない。現場担当者は、スザナ副団長が怖くて現状を伝えられなかったと涙ながらに訴えた。
「そんなこったろうと思ったよ。だってあいつだぜ? あいつが、命のやりとりもねえ試合なんて見て楽しめる訳ねえじゃねえの」
「……わしの見込みが甘かったのう」
そんな完全無欠な不祥事を笑い話と豪快に受け取る第二師団長シュターク・シュタークスン(kz0075)に、スザナと同じく副団長を務めるハルクス・クラフトはため息と共にすっかり白く染まった頭を掻いた。
●
第二師団都市カールスラーエ要塞。その地下に広がる広大な空間は、いくつかの区画に分けられる。
地上との連結部、多目的に使われる広場、避難路、居住スペース、食料庫や武器弾薬庫、ドワーフ達の力を借りて拡張を続ける未開発区……その中で、最も巨大で人通りの多いのが都市中心部の真下に位置する中央空洞だ。
その中央空洞の北西部に、コロシアムは建てられている。都市内では、「地下で一番むさ苦しい場所」などと言われている場所だ。娯楽性を高めすぎないようとの達しにより、出場者も観客も殆どが第二師団員であり筋肉だるまの集団なのだから、非戦闘員からしてみれば異様に写るのだろう。
スザナの失態の発覚後、コロシアムの管理を第二師団から委託されたロジーナ商会は、そんな状況を今すぐにでも打破しなければならないと息巻いていた。そこで行われたのが、コロシアムに関する基本方針の軌道修正だ。
すなわち、「もう少しだけ一般人の受けが良いコロシアム」。その第一歩として、十分に実力があって、尚且つ流行の発信となり得る女性を取り込めるように、
「お前のそのイケメン面に、目が付けられたってことだ」
「……はあ」
コロシアムにおいて、より華やかな試合を観客に提供する必要がある。そんなわけで、第二師団の一等兵、オウレルがコロシアムの事務所まで呼び出されていた。
話が飲み込めず首を捻るオウレルに向けて書類片手に淡々と命令を読み上げるのは、都市防衛部隊の一つ「ティーガー」の小隊長ラディスラウス兵長だ。所属する小隊の配置が近いから、という理由だけで言い渡された委託先との仲介という本来の業務から離れた職務に若干の不満を滲ませながら、オウレルに険しい視線を投げている。
「えっと……顔、って、あまり関係ないような気がするのですが……」
「そんなことは知らん。既に決まったことだ。貴様に拒否権はないし、異を唱えることなどもっての外。ま、復帰の第一歩だと思え」
諦めるんだな、とにべもなく言い切るラディスラウス。何を言っても聞き入れるはずもないその姿に、オウレルは気付かれないよう息をつく。
任務の失敗続きで訓練送りになったのは、自分の責任だ。とはいえ、下水道でハンター達にもらった言葉によって多少は気持ちを持ち直し、訓練でしごかれ、そしてようやく本来の役割を果たす事が出来そうだと希望を持ち始めたところに来た任務が……よりによって見世物だとは。
「……はい、了解しました」
とはいえラディスラウスの言うとおり、嫌だから断るなどという選択肢は与えられていない。
渋々とオウレルは、手渡された指示書にざっと目を通す。
そして、
「――団長推薦?」
書類の末尾に記されたサインに目がとまった。とても公的なものとは思えない下手くそな字で、シュターク・シュタークスンの名前が書かれている。
「ああ。何でもお前、以前に団長の部隊に所属――」
「申し訳ありませんが、この任務、お断りさせて頂きます」
「ああ?」
ラディスラウスがぽかんと顔を上げる。そこにあったのは、普段のぼうとした様子が嘘のように険しい顔を浮かべ、書類を握り潰したオウレルの姿だ。
そして声を掛ける前に、オウレルは立ち上がり止める間もなく部屋を出ていった。
「……なんだあいつ」
叩き付けるようなドアの音に眉をしかめるラディスラウスは、遠ざかっていくきつい足音を耳にしながら一人ぽつりと呟いた。
●
「んで、逃げてきたん?」
カッとなって、などと口下手に言い訳を口にする不器用な親友の姿を見て、オウレルの同期であるヴァルターは苦笑いを浮かべた。
「バカじゃねえの」
「……うん」
オウレルは心底、やってしまった事を反省しているらしい。ヴァルターのからかうような言葉にも、先程から殊勝に頷き通しだ。
「お前が団長をどう思ってるか知らねえが、それで仕事に支障が出るのは良くねえわなぁ」
「……うん」
「兵長にもちゃんと、頭下げとかねえとな」
また懲罰でももらうかもしれないなと笑うヴァルターの横で、オウレルはじっと遠くを見つめていた。
●
数日後、予定通りに闘技大会が開催される運びとなった。
結局、頭を下げたオウレルに対し、ラディスラウスは「何のことだ」と仏頂面で答え、当日に備え訓練を怠るなと声を掛けるだけだった。
「……なんで俺まで出ることになってんだ」
控え室から闘技場へ続く選手用の狭い通路を歩きながら、オウレルに並ぶヴァルターは先程からずっと愚痴をこぼしている。どうやら、これが懲罰ということらしい。それにしては、関係のないヴァルターにとってとばっちりも良いところだが。それでも文句を言いながらここまで付き合ってくれる、そんな人間に出会えたことは、オウレルにとってこの師団に志願して良かったと思えることの一つだった。
『さあ、今回から装いも新たに! 熱い戦いが始まろうとしております!』
異様なほどにトーンの高い声が場内に鳴り響く。それに対し、観客の盛り上がりはかなりのものだった。施設全体を揺るがすよう歓声が上がる。
師団員同士の地味な戦いではない、ハンターという華やかな存在への期待感は相当なものらしい。
「ここまで来ちまったら仕方ねえ。ハンターが相手となっちゃあきっついが、何、勝っちまったら明日から俺らも人気者の一員だ」
「……ずっと欲しがってた彼女も、出来ちゃうかもね」
「そ、そうか、そんな可能性もあるのか……! うーし、ぜってえ勝つぞ!」
ヴァルターが腕を振り上げると同時に、幕が上がり洪水のように歓声が流れ込んでくる。
娯楽に飢えたこの都市の住人が、日頃のストレスを発散させる数少ない機会だ。
オウレルは剣を抜き放つ。
暗い話題も多い世の中で、人々に笑顔を思い出させることが出来るなら。こんな見世物も、悪いものではないのかもしれない。
部屋に散乱する無数の未承認書類を前に咎められた際、第二師団副団長スザナ・エルマンはとても良い笑顔でそうのたまった。書類の内容は、彼女が自ら管理を買って出たコロシアム関係のものばかり。
おかげで、ここしばらくコロシアムには何の予算も落ちていない。現場担当者は、スザナ副団長が怖くて現状を伝えられなかったと涙ながらに訴えた。
「そんなこったろうと思ったよ。だってあいつだぜ? あいつが、命のやりとりもねえ試合なんて見て楽しめる訳ねえじゃねえの」
「……わしの見込みが甘かったのう」
そんな完全無欠な不祥事を笑い話と豪快に受け取る第二師団長シュターク・シュタークスン(kz0075)に、スザナと同じく副団長を務めるハルクス・クラフトはため息と共にすっかり白く染まった頭を掻いた。
●
第二師団都市カールスラーエ要塞。その地下に広がる広大な空間は、いくつかの区画に分けられる。
地上との連結部、多目的に使われる広場、避難路、居住スペース、食料庫や武器弾薬庫、ドワーフ達の力を借りて拡張を続ける未開発区……その中で、最も巨大で人通りの多いのが都市中心部の真下に位置する中央空洞だ。
その中央空洞の北西部に、コロシアムは建てられている。都市内では、「地下で一番むさ苦しい場所」などと言われている場所だ。娯楽性を高めすぎないようとの達しにより、出場者も観客も殆どが第二師団員であり筋肉だるまの集団なのだから、非戦闘員からしてみれば異様に写るのだろう。
スザナの失態の発覚後、コロシアムの管理を第二師団から委託されたロジーナ商会は、そんな状況を今すぐにでも打破しなければならないと息巻いていた。そこで行われたのが、コロシアムに関する基本方針の軌道修正だ。
すなわち、「もう少しだけ一般人の受けが良いコロシアム」。その第一歩として、十分に実力があって、尚且つ流行の発信となり得る女性を取り込めるように、
「お前のそのイケメン面に、目が付けられたってことだ」
「……はあ」
コロシアムにおいて、より華やかな試合を観客に提供する必要がある。そんなわけで、第二師団の一等兵、オウレルがコロシアムの事務所まで呼び出されていた。
話が飲み込めず首を捻るオウレルに向けて書類片手に淡々と命令を読み上げるのは、都市防衛部隊の一つ「ティーガー」の小隊長ラディスラウス兵長だ。所属する小隊の配置が近いから、という理由だけで言い渡された委託先との仲介という本来の業務から離れた職務に若干の不満を滲ませながら、オウレルに険しい視線を投げている。
「えっと……顔、って、あまり関係ないような気がするのですが……」
「そんなことは知らん。既に決まったことだ。貴様に拒否権はないし、異を唱えることなどもっての外。ま、復帰の第一歩だと思え」
諦めるんだな、とにべもなく言い切るラディスラウス。何を言っても聞き入れるはずもないその姿に、オウレルは気付かれないよう息をつく。
任務の失敗続きで訓練送りになったのは、自分の責任だ。とはいえ、下水道でハンター達にもらった言葉によって多少は気持ちを持ち直し、訓練でしごかれ、そしてようやく本来の役割を果たす事が出来そうだと希望を持ち始めたところに来た任務が……よりによって見世物だとは。
「……はい、了解しました」
とはいえラディスラウスの言うとおり、嫌だから断るなどという選択肢は与えられていない。
渋々とオウレルは、手渡された指示書にざっと目を通す。
そして、
「――団長推薦?」
書類の末尾に記されたサインに目がとまった。とても公的なものとは思えない下手くそな字で、シュターク・シュタークスンの名前が書かれている。
「ああ。何でもお前、以前に団長の部隊に所属――」
「申し訳ありませんが、この任務、お断りさせて頂きます」
「ああ?」
ラディスラウスがぽかんと顔を上げる。そこにあったのは、普段のぼうとした様子が嘘のように険しい顔を浮かべ、書類を握り潰したオウレルの姿だ。
そして声を掛ける前に、オウレルは立ち上がり止める間もなく部屋を出ていった。
「……なんだあいつ」
叩き付けるようなドアの音に眉をしかめるラディスラウスは、遠ざかっていくきつい足音を耳にしながら一人ぽつりと呟いた。
●
「んで、逃げてきたん?」
カッとなって、などと口下手に言い訳を口にする不器用な親友の姿を見て、オウレルの同期であるヴァルターは苦笑いを浮かべた。
「バカじゃねえの」
「……うん」
オウレルは心底、やってしまった事を反省しているらしい。ヴァルターのからかうような言葉にも、先程から殊勝に頷き通しだ。
「お前が団長をどう思ってるか知らねえが、それで仕事に支障が出るのは良くねえわなぁ」
「……うん」
「兵長にもちゃんと、頭下げとかねえとな」
また懲罰でももらうかもしれないなと笑うヴァルターの横で、オウレルはじっと遠くを見つめていた。
●
数日後、予定通りに闘技大会が開催される運びとなった。
結局、頭を下げたオウレルに対し、ラディスラウスは「何のことだ」と仏頂面で答え、当日に備え訓練を怠るなと声を掛けるだけだった。
「……なんで俺まで出ることになってんだ」
控え室から闘技場へ続く選手用の狭い通路を歩きながら、オウレルに並ぶヴァルターは先程からずっと愚痴をこぼしている。どうやら、これが懲罰ということらしい。それにしては、関係のないヴァルターにとってとばっちりも良いところだが。それでも文句を言いながらここまで付き合ってくれる、そんな人間に出会えたことは、オウレルにとってこの師団に志願して良かったと思えることの一つだった。
『さあ、今回から装いも新たに! 熱い戦いが始まろうとしております!』
異様なほどにトーンの高い声が場内に鳴り響く。それに対し、観客の盛り上がりはかなりのものだった。施設全体を揺るがすよう歓声が上がる。
師団員同士の地味な戦いではない、ハンターという華やかな存在への期待感は相当なものらしい。
「ここまで来ちまったら仕方ねえ。ハンターが相手となっちゃあきっついが、何、勝っちまったら明日から俺らも人気者の一員だ」
「……ずっと欲しがってた彼女も、出来ちゃうかもね」
「そ、そうか、そんな可能性もあるのか……! うーし、ぜってえ勝つぞ!」
ヴァルターが腕を振り上げると同時に、幕が上がり洪水のように歓声が流れ込んでくる。
娯楽に飢えたこの都市の住人が、日頃のストレスを発散させる数少ない機会だ。
オウレルは剣を抜き放つ。
暗い話題も多い世の中で、人々に笑顔を思い出させることが出来るなら。こんな見世物も、悪いものではないのかもしれない。
解説
・概要
闘技大会に出場し、会場を盛り上げろ!
・成功条件
勝敗よりも、如何に観客の関心を引いたか、盛り上げたか、が基準になります。格好良く可愛く、楽しくいきましょう。
・敵
第二師団一等兵オウレル、ヴァルターの二人が率いる師団員、計六人です。
オウレル、ヴァルター含む四人が闘狩人、残りの二人が聖導士という構成になっています。第二師団員は基本的に遠距離攻撃を好まない傾向にあるため、聖導士の二人も攻撃魔法を使うことはありません。
実力のほどは、オウレル>>ヴァルター>他四人、となっています。
・場所
直径百メートルを誇る円形闘技場です。足下は砂地になっています。
・補足
カールスラーエ要塞に住む人々は、第二師団の正々堂々と正面からぶつかる戦法を見てきているためか、遠距離攻撃や背後からの奇襲など、戦術的には正しくても、素人目には卑怯にも見える行為を好まない傾向にあります。
闘技大会に出場し、会場を盛り上げろ!
・成功条件
勝敗よりも、如何に観客の関心を引いたか、盛り上げたか、が基準になります。格好良く可愛く、楽しくいきましょう。
・敵
第二師団一等兵オウレル、ヴァルターの二人が率いる師団員、計六人です。
オウレル、ヴァルター含む四人が闘狩人、残りの二人が聖導士という構成になっています。第二師団員は基本的に遠距離攻撃を好まない傾向にあるため、聖導士の二人も攻撃魔法を使うことはありません。
実力のほどは、オウレル>>ヴァルター>他四人、となっています。
・場所
直径百メートルを誇る円形闘技場です。足下は砂地になっています。
・補足
カールスラーエ要塞に住む人々は、第二師団の正々堂々と正面からぶつかる戦法を見てきているためか、遠距離攻撃や背後からの奇襲など、戦術的には正しくても、素人目には卑怯にも見える行為を好まない傾向にあります。
マスターより
ご無沙汰しておりますT谷です。
またもつらつらと書いてありますが、要は単純な戦闘依頼なのでお気軽にどうぞ。
またもつらつらと書いてありますが、要は単純な戦闘依頼なのでお気軽にどうぞ。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/10/02 17:14
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/21 09:09:46 |
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作戦卓みたいなもの アイビス・グラス(ka2477) 人間(リアルブルー)|17才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/09/24 11:46:42 |