ゲスト
(ka0000)
デュニクス騎士団 第五篇『農業改革』
マスター:ムジカ・トラス

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/09/27 22:00
- リプレイ完成予定
- 2015/10/06 22:00
オープニング
●
「……やれやれ、ほんの息抜きのつもりで帰って来たんだけどなあ」
彼にとっては無数にある飛び地の一部屋の中。男――ヘクス・シャルシェレットは夜天を見上げて、呟いた。
「こっちはこっちで、楽しそうじゃないか」
「いや、それほどでもありません。騎士レヴィンは、当初想定していたよりもかなり有能でしたな」
「ふーん……大方ゲオルギウスの爺さんの差し金なんだろうけど……まあ、向いている方向に大きく違いはなさそう、かな」
この地のワインはとにかく香りが強い。グラスの淵から溢れるそれを味わいながら、ヘクスはポチョムへと笑いかけた。
「そういえば、君は随分入れ込んでいるみたいだね?」
「それは……」
「――ククッ」
堪え切れぬように笑ったのは、黒ずくめの痩身の男――ヴィサンだ。『事情』を察したポチョムはヴィサンを鋭く睨む。
「貴様か、ヴィサン」
「クク……何か、問題でも?」
「はーい、止め止め!」
ヘクスはへらり、と笑うと声色を落として続けた。
「とにかく、だ。『僕たち』は介入の大義名分を得た。『君たち』がそうなようにね」
男はそう言って、赤い雫で口元を湿らせる。
「彼らに頼まれたのもあるけどさ。ハンターの皆に頼まれたら、僕としても断るつもりにはなれないわけで」
「……ヘクス様も、随分と彼らを評価しているようですが」
「ふふ、まあね……と」
ポチョムの意趣返しをさらりとかわしたヘクスは、己の部下二人を眺める。
「段取りはしておいたよ。あとは自然と転がるだろう。
うまくやりなよ、ポチョム、ヴィサン」
その口元には獰猛な、笑みがあった。あるいは、獣のような笑みが。
「この街は必ず荒れるから、さ」
●
拝啓 ゲオルギウス様
王国北部の惨状、耳に致しました。
デュニクスの方はというと、順調――と、言えるかもしれません。
騎士団一同が、積極的にデュニクスに介入できるようになりました。
私が思っていたよりも滑らかな滑り出しは、ハンター達の介入によるものでしょうか。
――さて。ひとつ、お耳に入れたい事が有ります。
ゲオルギウス様が仰っておられたように、『商会』の介入が始まりました。
●
「……これは」
マリーベルは自らの手でまとめた資料を前に、眉をひそめた。
ありとあらゆるものが、加速度的に動きはじめている。爆発的に回る状況は――騎士団だけにとどまらない。デュニクス全域に、波及している。
第六商会は職人街へと何らかの、大規模な発注を掛けたようだった。その対価を職人たちが街の資金として共有したことで、デュニクス再興の資金にアテが出来る。例えば、防壁を作ったり、農場への設備投資であったり。
本当に、馬鹿げてる。それはマリーベルの常識を遥かに超えていた。
何気なく騎士団が前のめりに参画しているのも彼女の想定外だった。本来であれば護衛程度が役割だと考えていたのに、鍛冶担当のヴェルドに至ってはその技量から第六商会からの受注を支えている。アプリにしてもそうだ。彼女は支援物資の管理を数名の団員と共に効率よく運用している。その実務能力はマリーベルですら舌を撒くほどだった。
――何れにしても彼女たちの獅子奮迅の働きぶりは、大きい。なぜなら。
「……デュニクスは、変わろうとしている」
船頭が誰かも解らない。それでも、多くの人間が、総体で唯一つの目的へと向かって邁進しているだけだ。でも、そこには希望があった。
それの、なんて異質なことか。
「…………」
そして、自分のなんてちっぽけなことか。
吐く息は重く、そして、冷たい。
「……お父様」
その手元には、一つの手紙があった。
●
ハンター達が集められたのは、デュニクス町内の一角、職人街。
つい先日まで閑古鳥が鳴いていたであろうそこは、今や街で一番の賑わいを見せていた。男たちは鎚を振るい、弟子達は街を走り回って資材をかき集め、女達は炊事や水回り、その他を一手に担っている。
能動的で、律動的で、機能的な混沌だった。その中で、男たちの鎚を振るう音、火をいれる音が響く。
「慌ただしくて済まんな」
騒々しい中でも、デュニクス騎士団の鍛冶担当、ヴェルドの声は不思議と届いた。浅黒い肌に、筋骨隆々の体。かつてはグラズヘイム・シュヴァリエの職人だったという彼は、大きな紙が置かれた拾い作業机を間に挟んでハンター達に言葉を投げた。
彼の眼前の紙は、まっさらな白紙。
「お前らに来てもらったのは他でもない」
そこから視線を切って、ヴェルドはこう言った。
「この街の農業の――改革の為だ」
●
「この街のスポンサーになった第六商会のオーダーは幾つかある。その中の一つが、『農業用機械の開発』だ。
動力についてはなんといったか……ああ、そうだ。刻令術を使う、とさ。俺たちは30センチ四方程度のスペースさえ用意すれば、後は自由に設計していいとのことだ。幾つか制限があるらしい、がな」
そうして男は、手を伸ばして小さな模型を取ってみせた。木組みのおもちゃをカチャカチャと動かしながら、続ける。
「刻令術は対象を『変形』させるものではない。故に、設計時点で『関節』や『機構』を稼働部位に取り付けなくてはいけねえ。まあ、用途さえ決まればコッチでなんとでもするが……つまり、ガワ自体は魔導機械とそうかわらねえ……そこで、お前らの出番だ」
おもちゃを置いたヴェルドは、怜悧な目で一同を見回して言った。
「此処にはもちろん、農業の専門家はいる。だが、『魔導機械』を使った専門家、となるとこの国には少なく、いわんや、リアルブルーで行われていたような農業、となるとなおのこと、だ」
小さく言葉を区切ったヴェルドはハンター達を見渡す。
「今、この街は農場再生を急いでいる所だ。だが、前の通りじゃもったいないだろう、と第六商会は言うのさ。一理無いでもない。俺だって、以前通りの出来栄えで納得したことなんか一度たりとて無いからな。今が好機というのは素人の俺にだってわかる」
とん、と硬い指で白い紙を叩いたヴェルドはこう結んだ。
「――というわけで、お前らの意見を聞きたい」
「……やれやれ、ほんの息抜きのつもりで帰って来たんだけどなあ」
彼にとっては無数にある飛び地の一部屋の中。男――ヘクス・シャルシェレットは夜天を見上げて、呟いた。
「こっちはこっちで、楽しそうじゃないか」
「いや、それほどでもありません。騎士レヴィンは、当初想定していたよりもかなり有能でしたな」
「ふーん……大方ゲオルギウスの爺さんの差し金なんだろうけど……まあ、向いている方向に大きく違いはなさそう、かな」
この地のワインはとにかく香りが強い。グラスの淵から溢れるそれを味わいながら、ヘクスはポチョムへと笑いかけた。
「そういえば、君は随分入れ込んでいるみたいだね?」
「それは……」
「――ククッ」
堪え切れぬように笑ったのは、黒ずくめの痩身の男――ヴィサンだ。『事情』を察したポチョムはヴィサンを鋭く睨む。
「貴様か、ヴィサン」
「クク……何か、問題でも?」
「はーい、止め止め!」
ヘクスはへらり、と笑うと声色を落として続けた。
「とにかく、だ。『僕たち』は介入の大義名分を得た。『君たち』がそうなようにね」
男はそう言って、赤い雫で口元を湿らせる。
「彼らに頼まれたのもあるけどさ。ハンターの皆に頼まれたら、僕としても断るつもりにはなれないわけで」
「……ヘクス様も、随分と彼らを評価しているようですが」
「ふふ、まあね……と」
ポチョムの意趣返しをさらりとかわしたヘクスは、己の部下二人を眺める。
「段取りはしておいたよ。あとは自然と転がるだろう。
うまくやりなよ、ポチョム、ヴィサン」
その口元には獰猛な、笑みがあった。あるいは、獣のような笑みが。
「この街は必ず荒れるから、さ」
●
拝啓 ゲオルギウス様
王国北部の惨状、耳に致しました。
デュニクスの方はというと、順調――と、言えるかもしれません。
騎士団一同が、積極的にデュニクスに介入できるようになりました。
私が思っていたよりも滑らかな滑り出しは、ハンター達の介入によるものでしょうか。
――さて。ひとつ、お耳に入れたい事が有ります。
ゲオルギウス様が仰っておられたように、『商会』の介入が始まりました。
●
「……これは」
マリーベルは自らの手でまとめた資料を前に、眉をひそめた。
ありとあらゆるものが、加速度的に動きはじめている。爆発的に回る状況は――騎士団だけにとどまらない。デュニクス全域に、波及している。
第六商会は職人街へと何らかの、大規模な発注を掛けたようだった。その対価を職人たちが街の資金として共有したことで、デュニクス再興の資金にアテが出来る。例えば、防壁を作ったり、農場への設備投資であったり。
本当に、馬鹿げてる。それはマリーベルの常識を遥かに超えていた。
何気なく騎士団が前のめりに参画しているのも彼女の想定外だった。本来であれば護衛程度が役割だと考えていたのに、鍛冶担当のヴェルドに至ってはその技量から第六商会からの受注を支えている。アプリにしてもそうだ。彼女は支援物資の管理を数名の団員と共に効率よく運用している。その実務能力はマリーベルですら舌を撒くほどだった。
――何れにしても彼女たちの獅子奮迅の働きぶりは、大きい。なぜなら。
「……デュニクスは、変わろうとしている」
船頭が誰かも解らない。それでも、多くの人間が、総体で唯一つの目的へと向かって邁進しているだけだ。でも、そこには希望があった。
それの、なんて異質なことか。
「…………」
そして、自分のなんてちっぽけなことか。
吐く息は重く、そして、冷たい。
「……お父様」
その手元には、一つの手紙があった。
●
ハンター達が集められたのは、デュニクス町内の一角、職人街。
つい先日まで閑古鳥が鳴いていたであろうそこは、今や街で一番の賑わいを見せていた。男たちは鎚を振るい、弟子達は街を走り回って資材をかき集め、女達は炊事や水回り、その他を一手に担っている。
能動的で、律動的で、機能的な混沌だった。その中で、男たちの鎚を振るう音、火をいれる音が響く。
「慌ただしくて済まんな」
騒々しい中でも、デュニクス騎士団の鍛冶担当、ヴェルドの声は不思議と届いた。浅黒い肌に、筋骨隆々の体。かつてはグラズヘイム・シュヴァリエの職人だったという彼は、大きな紙が置かれた拾い作業机を間に挟んでハンター達に言葉を投げた。
彼の眼前の紙は、まっさらな白紙。
「お前らに来てもらったのは他でもない」
そこから視線を切って、ヴェルドはこう言った。
「この街の農業の――改革の為だ」
●
「この街のスポンサーになった第六商会のオーダーは幾つかある。その中の一つが、『農業用機械の開発』だ。
動力についてはなんといったか……ああ、そうだ。刻令術を使う、とさ。俺たちは30センチ四方程度のスペースさえ用意すれば、後は自由に設計していいとのことだ。幾つか制限があるらしい、がな」
そうして男は、手を伸ばして小さな模型を取ってみせた。木組みのおもちゃをカチャカチャと動かしながら、続ける。
「刻令術は対象を『変形』させるものではない。故に、設計時点で『関節』や『機構』を稼働部位に取り付けなくてはいけねえ。まあ、用途さえ決まればコッチでなんとでもするが……つまり、ガワ自体は魔導機械とそうかわらねえ……そこで、お前らの出番だ」
おもちゃを置いたヴェルドは、怜悧な目で一同を見回して言った。
「此処にはもちろん、農業の専門家はいる。だが、『魔導機械』を使った専門家、となるとこの国には少なく、いわんや、リアルブルーで行われていたような農業、となるとなおのこと、だ」
小さく言葉を区切ったヴェルドはハンター達を見渡す。
「今、この街は農場再生を急いでいる所だ。だが、前の通りじゃもったいないだろう、と第六商会は言うのさ。一理無いでもない。俺だって、以前通りの出来栄えで納得したことなんか一度たりとて無いからな。今が好機というのは素人の俺にだってわかる」
とん、と硬い指で白い紙を叩いたヴェルドはこう結んだ。
「――というわけで、お前らの意見を聞きたい」
解説
●目的
農業用の刻令術機械の開発
農業以外のものでも意見を求む
(デュニクスの現状に役立つものだと尚よい。オモシロでもよい)
●状況
農業開発。冬の種まきまでに農地確保をするため、難民と農民達の手によって農場の再生中。
職人街は第六商会からの大規模な外注が入り、資材を騎士団の手で輸送する形で実働体制が整った。
流通、原料のほとんど全てをデュニクスが担保できない為、開発した機械は第六商会の商品として扱われる形になる事は職人街代表は了承済み。
(その分、デュニクスの復興に際して過分な経済支援が第六商会の手によって開始されている)
今回、今後の農業運用も見据えて、魔導機械ならぬ刻令術制の農業用機械の開発依頼が入った。
門外漢であるヴェルドの手には負えず、より有用な機械の開発のため、意見を募集している。
●デュニクスについて
元々は葡萄などを中心とした大規模な農園や醸造業で知られていた。
昨年の歪虚の侵攻および人口流出により主産業であった農業および醸造業がほぼ破綻し、亜人・歪虚被害により現在では自活のための農業程度しかできておらず復興の目途は立っていなかったが、デュニクスに駐屯する騎士団や第六商会の資金援助を受けて復興真っ最中。
●刻令術について
刻令術とは、過去に魔術師協会によって禁術指定され、現在では不完全な魔術として復活しているもの。
魔術による命令文によって『ゴーレム』を動かす為の魔術で、人型にかぎらず関節や稼働部があれば動かす事ができ、過去に投石機や大型のトラックなどが作成されている。
ただし、『ゴーレム』のようなものを『自律』して動かす事は現状では不可能。
燃費が悪い、複雑な命令がこなせない、命令の変更が難しい、といった問題があったが、専門家のアダム・マンスフィールドが機導術の修行中であり、フィードバックが得られる見込み。
とはいえ、複数の機能を盛り込もうとすると地獄を見るクソ仕様は変わらない。
農業用の刻令術機械の開発
農業以外のものでも意見を求む
(デュニクスの現状に役立つものだと尚よい。オモシロでもよい)
●状況
農業開発。冬の種まきまでに農地確保をするため、難民と農民達の手によって農場の再生中。
職人街は第六商会からの大規模な外注が入り、資材を騎士団の手で輸送する形で実働体制が整った。
流通、原料のほとんど全てをデュニクスが担保できない為、開発した機械は第六商会の商品として扱われる形になる事は職人街代表は了承済み。
(その分、デュニクスの復興に際して過分な経済支援が第六商会の手によって開始されている)
今回、今後の農業運用も見据えて、魔導機械ならぬ刻令術制の農業用機械の開発依頼が入った。
門外漢であるヴェルドの手には負えず、より有用な機械の開発のため、意見を募集している。
●デュニクスについて
元々は葡萄などを中心とした大規模な農園や醸造業で知られていた。
昨年の歪虚の侵攻および人口流出により主産業であった農業および醸造業がほぼ破綻し、亜人・歪虚被害により現在では自活のための農業程度しかできておらず復興の目途は立っていなかったが、デュニクスに駐屯する騎士団や第六商会の資金援助を受けて復興真っ最中。
●刻令術について
刻令術とは、過去に魔術師協会によって禁術指定され、現在では不完全な魔術として復活しているもの。
魔術による命令文によって『ゴーレム』を動かす為の魔術で、人型にかぎらず関節や稼働部があれば動かす事ができ、過去に投石機や大型のトラックなどが作成されている。
ただし、『ゴーレム』のようなものを『自律』して動かす事は現状では不可能。
燃費が悪い、複雑な命令がこなせない、命令の変更が難しい、といった問題があったが、専門家のアダム・マンスフィールドが機導術の修行中であり、フィードバックが得られる見込み。
とはいえ、複数の機能を盛り込もうとすると地獄を見るクソ仕様は変わらない。
マスターより
お世話になっております、ムジカ・トラスです。
農業のお勉強をしているうちになんだかムラムラしてきた僕です。いやはや、凄いですね。
鬼の居ぬ間になんとやら、デュニクスの改革劇の始まりです。
潜在的な問題がまだ表出していない、この時期だからこそ、の依頼です。
実りが出るまで時間がかかる物事ですが――それだけに。
それでは、皆様のご意見、お待ちしております。
農業のお勉強をしているうちになんだかムラムラしてきた僕です。いやはや、凄いですね。
鬼の居ぬ間になんとやら、デュニクスの改革劇の始まりです。
潜在的な問題がまだ表出していない、この時期だからこそ、の依頼です。
実りが出るまで時間がかかる物事ですが――それだけに。
それでは、皆様のご意見、お待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/10/08 20:22
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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農業改革会議室(相談卓) エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142) 人間(リアルブルー)|30才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/09/25 18:32:39 |
|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/24 22:33:04 |