ゲスト
(ka0000)
蒼の不協和音
マスター:紺堂 カヤ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/10/22 09:00
- リプレイ完成予定
- 2015/10/31 09:00
オープニング
その洞窟は暗い中にも、不思議な蒼い光がぼんやりと反射する、幻想的な空間であった。
「すごい……」
噂にたがわぬ、いや、噂以上に優美なその光景に、十歳の少年は目を奪われた。三日三晩歩き通しだった足の痛みも忘れていた。
誘われるようにふらふらと洞窟の中へ入ると、デコボコした洞内の地面にたちまち転びそうになる。ハッと頭を振って、気を引き締めた。少年──、アレンはこの美しい光景を見るために、はるばるやって来たわけではない。
アレンは、ひんやりした洞窟の壁に手をついて体を支えながら、よろよろと進んだ。奥深くなればなるほど、洞窟の中へ差し込む日の光は薄くなるはずなのに、この洞窟は奥へ行けば行くほど、蒼い光が強くなっていった。
そうして、自分の体も、吐く息ですらも、蒼く染まってしまうのではないかと思うほど深くへたどり着いたとき、アレンは、目的のものを見つけた。
洞窟の最奥に、何本も垂れ下がる鍾乳石。そこから、ぽたり、ぽたり、滴り落ちる雫。この雫こそが、アレンがぼろぼろになりながらこの洞窟へやってきた理由だった。この洞窟の鍾乳石から滴り落ちる水は、どんな病にも効果のある、万能薬になるという。
「これで、母さんの病気を……!」
鍾乳石の下には、同じく薬を手に入れようとしている人々が置いて行ったらしい壺がいくつも置かれていた。一滴落ちるごとに、ひたり、ぴたり、と涼やかな音がして、あちこちで共鳴し合うように洞窟に響いていた。その中で、アレンは下に何も受けとめる物の置かれていない鍾乳石をなんとか見つけ、大事に背負ってきた赤銅の壺をそっと置いた。パン、ピン、と、ひときわ華やかな音が、蒼き洞窟に響き始めた。
それから、三日が過ぎた。
壺ひとつがいっぱいになるには、最低でも五日間はかかると聞いていたアレンは、洞窟からしばらく歩いたところにある村の宿屋で旅の疲れを癒していた。
宿屋の食堂で朝食を食べていると、ひとりの若い猟師が、両脇を支えられてやってきた。食堂は、にわかに騒がしくなった。
「どうだった」
「いや、ダメだ、下手に近付くとこっちの命が危ない」
「そんなに凶暴化しているのか、熊のやつは」
「ああ、冬眠空けの母熊よりも気が荒くなっている。これはもう、ハンターに頼まなければダメだ」
漏れ聞こえる会話から、熊が人里近くまで下りてきて暴れているらしいことがわかった。
「いったい、なんだってこんなことに」
「どうにも暴れ方がおかしいんだ。何かに、酔っているような、乱されているような」
「もしかして、あれじゃないのか。洞窟の、音」
「音? ああ、そういえば、ここ三日くらい奇妙な響き方をしていたな」
「俺たちでさえ、長く聞いていると気持ちが悪くなりそうな音だった、熊ならもっとだろうなあ」
「まさか、洞窟に、陶器の壺以外のものを置いたヤツがいるんじゃないのか……?」
誰かの、その一言に、アレンの血の気が引いた。
知らなかった。
陶器の壺でなくてはならなかったなんて。
アレンが赤銅の壺を持ってきたのは、道中で割れてしまっては困る、と思ってのことだった。
「なんにせよ、熊をどうにかしないことには、洞窟にも近付けないしなあ」
まさか、こんなことになるなんて。
アレンは、朝食を食べかけのまま、ふらふらと立ち上がった。
「おい、坊主、どうしたんだ?」
宿屋の主人が声をかけると、アレンの目からぼろぼろと涙があふれた。
「僕は、母さんの病気を治したかっただけなんです……!!!」
アレンの頭の中でも、ぐらぐらと不協和音が響き出した。
「すごい……」
噂にたがわぬ、いや、噂以上に優美なその光景に、十歳の少年は目を奪われた。三日三晩歩き通しだった足の痛みも忘れていた。
誘われるようにふらふらと洞窟の中へ入ると、デコボコした洞内の地面にたちまち転びそうになる。ハッと頭を振って、気を引き締めた。少年──、アレンはこの美しい光景を見るために、はるばるやって来たわけではない。
アレンは、ひんやりした洞窟の壁に手をついて体を支えながら、よろよろと進んだ。奥深くなればなるほど、洞窟の中へ差し込む日の光は薄くなるはずなのに、この洞窟は奥へ行けば行くほど、蒼い光が強くなっていった。
そうして、自分の体も、吐く息ですらも、蒼く染まってしまうのではないかと思うほど深くへたどり着いたとき、アレンは、目的のものを見つけた。
洞窟の最奥に、何本も垂れ下がる鍾乳石。そこから、ぽたり、ぽたり、滴り落ちる雫。この雫こそが、アレンがぼろぼろになりながらこの洞窟へやってきた理由だった。この洞窟の鍾乳石から滴り落ちる水は、どんな病にも効果のある、万能薬になるという。
「これで、母さんの病気を……!」
鍾乳石の下には、同じく薬を手に入れようとしている人々が置いて行ったらしい壺がいくつも置かれていた。一滴落ちるごとに、ひたり、ぴたり、と涼やかな音がして、あちこちで共鳴し合うように洞窟に響いていた。その中で、アレンは下に何も受けとめる物の置かれていない鍾乳石をなんとか見つけ、大事に背負ってきた赤銅の壺をそっと置いた。パン、ピン、と、ひときわ華やかな音が、蒼き洞窟に響き始めた。
それから、三日が過ぎた。
壺ひとつがいっぱいになるには、最低でも五日間はかかると聞いていたアレンは、洞窟からしばらく歩いたところにある村の宿屋で旅の疲れを癒していた。
宿屋の食堂で朝食を食べていると、ひとりの若い猟師が、両脇を支えられてやってきた。食堂は、にわかに騒がしくなった。
「どうだった」
「いや、ダメだ、下手に近付くとこっちの命が危ない」
「そんなに凶暴化しているのか、熊のやつは」
「ああ、冬眠空けの母熊よりも気が荒くなっている。これはもう、ハンターに頼まなければダメだ」
漏れ聞こえる会話から、熊が人里近くまで下りてきて暴れているらしいことがわかった。
「いったい、なんだってこんなことに」
「どうにも暴れ方がおかしいんだ。何かに、酔っているような、乱されているような」
「もしかして、あれじゃないのか。洞窟の、音」
「音? ああ、そういえば、ここ三日くらい奇妙な響き方をしていたな」
「俺たちでさえ、長く聞いていると気持ちが悪くなりそうな音だった、熊ならもっとだろうなあ」
「まさか、洞窟に、陶器の壺以外のものを置いたヤツがいるんじゃないのか……?」
誰かの、その一言に、アレンの血の気が引いた。
知らなかった。
陶器の壺でなくてはならなかったなんて。
アレンが赤銅の壺を持ってきたのは、道中で割れてしまっては困る、と思ってのことだった。
「なんにせよ、熊をどうにかしないことには、洞窟にも近付けないしなあ」
まさか、こんなことになるなんて。
アレンは、朝食を食べかけのまま、ふらふらと立ち上がった。
「おい、坊主、どうしたんだ?」
宿屋の主人が声をかけると、アレンの目からぼろぼろと涙があふれた。
「僕は、母さんの病気を治したかっただけなんです……!!!」
アレンの頭の中でも、ぐらぐらと不協和音が響き出した。
解説
□成功条件
熊の退治、および、洞窟内の赤銅の壺の回収。
□熊
洞窟の近くをねぐらにしている、オスの熊。非常に力が強く、体力もあるため、銃弾の一発や二発は平気。
洞窟から響いてくる音の不快さに狂わされ、凶暴化している。見境がなくなっているため、人が近付くだけで襲い掛かってくる。
洞窟への道は熊の行動範囲であり、不協和音の原因である赤銅の壺を回収して熊の狂気を覚ます、という方法は不可能であると考えられる。
□洞窟への道のり
草木が深く生い茂っており、昼間でも夜露の水分が抜けない湿っぽい道。岩場が多く、滑りやすい。けもの道を少し広くした程度の道幅であるため、一人ずつ一列になってしか通ることができない。
熊の退治、および、洞窟内の赤銅の壺の回収。
□熊
洞窟の近くをねぐらにしている、オスの熊。非常に力が強く、体力もあるため、銃弾の一発や二発は平気。
洞窟から響いてくる音の不快さに狂わされ、凶暴化している。見境がなくなっているため、人が近付くだけで襲い掛かってくる。
洞窟への道は熊の行動範囲であり、不協和音の原因である赤銅の壺を回収して熊の狂気を覚ます、という方法は不可能であると考えられる。
□洞窟への道のり
草木が深く生い茂っており、昼間でも夜露の水分が抜けない湿っぽい道。岩場が多く、滑りやすい。けもの道を少し広くした程度の道幅であるため、一人ずつ一列になってしか通ることができない。
マスターより
不協和音もときには良いスパイスとなるものですが、聞かされ続ければ不快はつのるもの。悪意なき少年の行動もときに不幸な結果を招く、ということもまた、ままならぬ世の中の不協和音でしょうか。
余談ですが、本物の青の洞窟には死ぬまでに一度行ってみたいと思っている次第でございます。
余談ですが、本物の青の洞窟には死ぬまでに一度行ってみたいと思っている次第でございます。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/10/28 01:35
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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(・(ェ)・) レイ・T・ベッドフォード(ka2398) 人間(リアルブルー)|26才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/10/21 22:20:09 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/21 21:04:46 |