ゲスト
(ka0000)
スキレの戦闘記録・砂地の犬
マスター:硲銘介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/10/24 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/11/02 19:00
オープニング
●
――怪物が怪物として成立しているのは、彼らが僕達の想像を事も無げに踏み越えていくからだ。
暗闇を怖いと感じるのと理屈は同じだ。わからないもの、知らないものは怖い……これは幼子も大人も関係ない、人間なら誰しもが抱く当然の感情だよ。
その恐怖を軽減する為に人は予測を立て、予め思考の道筋を作っておくんだ。そうする事で頭が空白になってしまう時間を少しでも短くするためにね。
でも、その予測も何も無いところからでは組む事はできない。だからこそ、未知の領域に住まう怪物は畏怖の対象に成り得る――それは当たり前の事だけど。
けれど、僕達は既に入口に立っている。未知の領域にいる存在との邂逅を経験し実感している。僕達は知る為の第一歩として彼らを認識し始めているんだ。
それはきっと何でもないような事だけど、同時にとても凄い事でもあるんじゃないかって僕は思うんだ。
……あぁ、だから僕は―――
●
――不意に、そんな事を話す男の姿を思い出した。
子供相手に難しい話をだらだらと話すそいつは、うん……なんというか、えらく鈍感だったのだと思う。
柔和な笑みを絶やさずにいたそいつは一見そうは見えないが、人間らしい感情を欠いていた。特に、恐れるという事柄に関しては壊滅的だった。
曰く、幼い頃から恐怖という感情がまるでわからなかった。厳しい巨漢を目の前にして泣く事もない幼子とか、嫌だなと思った。
だから、男は恐怖というものについて学んだ。未知が誘発するその感情を知識として完全に把握した男は――遂に、その感情を自分のものとする事はなかった。
結局のところ、そもそもそいつには感情を司る何かが欠落していたのだろう。人間性に問題は無いのに、そこだけはどうしようもなかったのだ。
自身に付随する欠陥。それを認めた男は克服をあっさりと諦めた。諦めて、それを活かす事にした。
いつからか世界を脅かし続ける怪物――歪虚と呼ばれる存在について独自の研究を始め、その性質について書物に纏め始めたのだ。
下手くそな手製の表紙に“歪虚図鑑”と得意気に印し、やはり下手くそな字の手書きのページを重ねていく男は無邪気に笑っていた。
大した能力も無いくせに、恐れる心だけは無い男はあちこちの戦場跡や秘境を巡り、歪虚についての情報を書き溜めていった。
数ヶ月おきに家に戻ってきては冒険譚を聞かせてくるそいつの体には、どんどん傷が増えていった。
誰もが恐れ、やりたがらない行為。だからこそ、僕がやるんだ――男はそう言って、降りかかる苦難をものともしなかった。
要するに、そいつは底なしに純粋だったのだ。誰かの為になって、自分にしか出来ない事。それを見つけた男は子供のようにそれに熱中していった。
まぁ、そんな人も、もういない。恐怖というのは危機を感知する機能の一端でもあるのだから、それが壊れた男はそもそも、生き残ることに不器用だったのだ。
私が師匠と慕っていた人。魔境の冒険を嬉しそうに語る異端者。私が恋をした冴えない男は――ある日、あっさりと死んでしまった。
「……ほんと、物好きな師弟。我が事ながら趣味が悪いわよね、スキレ」
そして自嘲気味に呟いた私は――彼が遺した書きかけの書物を手に旅に出た。
その汚い本を完成させ、歪虚に怯える人たちの為になるのが彼の夢だったのだ。
それが叶う事無く彼は逝ってしまったけど……生憎と、あんな男の弟子になった私は負けず劣らずのお人好しだった。
図鑑の完成。それを、成し遂げたいと思った。多分、理由は意志を継ぐとかそんな大層なものではない。
ただ、見たかったのだ。あの不器用極まりない朴念仁の夢を――あと、それを成し遂げた時に彼がどんな顔をするのか。
私が知る限り一度だって涙を流さなかったあの男が歓喜のあまり泣くところとか、超見たい。
恐怖もそうだけど、あの人はとことん鈍かった。私がなんで毎日のように自分の元に通っていたのかなんて、まるで気づきもしなかった。
そんな男が感情を堪えきれなくなる様を見てみたかった。こっちまで感極まって泣いてしまうかもしれないし、もしかして逆に笑ってしまうかも。
……なんにせよ、あの人と共にその時を迎えるのはきっと途轍もなく楽しいに決まってる。だったら、躊躇う理由はない。
再会はきっとあの世だろうけど、完成した本をドヤ顔で突きつけてやりたいと思ってしまった。
その時の彼の顔を想像し励みにすれば、私の旅は存外悪くなかったのだ。
●
「さて、と……」
高台に立った私は眼下のそれを見下ろしながら師匠の本を紐解いた。
汚い字とちょっと上手なスケッチが並ぶページを捲って行くと、ちょうど現実で目にしているものに似た姿を見つけた。
歪虚、砂犬。もしくはサンドワンワン。……ちなみに、前者が師匠。後者が私のネーミングになる。
師匠は名前は分かりやすく簡潔にと言っていたが、恐怖を軽減する為の本なのだから名前は可愛いほうがいいに決まってるのだ。
そもそも私は話を聞いただけで実物を見たのは初めてだったのだが、見てみなさいあの姿を。なんか黒ずんでてダークな感じではあるけどどことなく愛嬌があるような気がしないでもない。
……うん。まぁ、思ってたより可愛くはなかったけど。でも砂犬ではあんまりにも味気ないんじゃないかな!?
――さて、そのワンワンについてだけど私はアレを退治しなくてはならないのだ。
旅の途中に立ち寄った村で受けた依頼になるのだが、あの群れは村の畑を荒らしていく困ったやつららしい。私が歪虚に詳しい旅人と聞きつけた村人に頼られ、こうして討伐に赴いたのだ。
といっても、私に歪虚をどうにかする力なんてものはない。師匠のような精神構造でもないので普通の人間と変わらない。要するに、滅茶苦茶怖いし近寄りたくない。
なので村人から受け取った依頼金で雇ったハンター達を連れてきた。餅は餅屋、歪虚には覚醒者をぶつけるのが常道というものだ。
戦闘は彼らに任せて、私は安全な場所で全力で応援すると決めている。無論、狙われないように心の中で唱えるのだが。
私は歪虚の知識を提供し彼らの助けとなる。ハンター達は私の情報を元に戦う。これは立派な共闘と言える。言いたい。
「――それでは皆さん、よろしくお願いします。怪我とか出来るだけしないよう、適度に頑張ってきちゃってくださいね」
私の声に応じてくれたハンター達を振り返る。その容姿はバラバラだし、正直私には技量なんて見て取れないのだが……彼らならきっと成し遂げてくれる筈だろう。
師匠が集めた情報を活かし、村の人達を救ってくれること――そして彼らが全員無事に戻ってくることを祈りながら、私はその背中を見送った。
――怪物が怪物として成立しているのは、彼らが僕達の想像を事も無げに踏み越えていくからだ。
暗闇を怖いと感じるのと理屈は同じだ。わからないもの、知らないものは怖い……これは幼子も大人も関係ない、人間なら誰しもが抱く当然の感情だよ。
その恐怖を軽減する為に人は予測を立て、予め思考の道筋を作っておくんだ。そうする事で頭が空白になってしまう時間を少しでも短くするためにね。
でも、その予測も何も無いところからでは組む事はできない。だからこそ、未知の領域に住まう怪物は畏怖の対象に成り得る――それは当たり前の事だけど。
けれど、僕達は既に入口に立っている。未知の領域にいる存在との邂逅を経験し実感している。僕達は知る為の第一歩として彼らを認識し始めているんだ。
それはきっと何でもないような事だけど、同時にとても凄い事でもあるんじゃないかって僕は思うんだ。
……あぁ、だから僕は―――
●
――不意に、そんな事を話す男の姿を思い出した。
子供相手に難しい話をだらだらと話すそいつは、うん……なんというか、えらく鈍感だったのだと思う。
柔和な笑みを絶やさずにいたそいつは一見そうは見えないが、人間らしい感情を欠いていた。特に、恐れるという事柄に関しては壊滅的だった。
曰く、幼い頃から恐怖という感情がまるでわからなかった。厳しい巨漢を目の前にして泣く事もない幼子とか、嫌だなと思った。
だから、男は恐怖というものについて学んだ。未知が誘発するその感情を知識として完全に把握した男は――遂に、その感情を自分のものとする事はなかった。
結局のところ、そもそもそいつには感情を司る何かが欠落していたのだろう。人間性に問題は無いのに、そこだけはどうしようもなかったのだ。
自身に付随する欠陥。それを認めた男は克服をあっさりと諦めた。諦めて、それを活かす事にした。
いつからか世界を脅かし続ける怪物――歪虚と呼ばれる存在について独自の研究を始め、その性質について書物に纏め始めたのだ。
下手くそな手製の表紙に“歪虚図鑑”と得意気に印し、やはり下手くそな字の手書きのページを重ねていく男は無邪気に笑っていた。
大した能力も無いくせに、恐れる心だけは無い男はあちこちの戦場跡や秘境を巡り、歪虚についての情報を書き溜めていった。
数ヶ月おきに家に戻ってきては冒険譚を聞かせてくるそいつの体には、どんどん傷が増えていった。
誰もが恐れ、やりたがらない行為。だからこそ、僕がやるんだ――男はそう言って、降りかかる苦難をものともしなかった。
要するに、そいつは底なしに純粋だったのだ。誰かの為になって、自分にしか出来ない事。それを見つけた男は子供のようにそれに熱中していった。
まぁ、そんな人も、もういない。恐怖というのは危機を感知する機能の一端でもあるのだから、それが壊れた男はそもそも、生き残ることに不器用だったのだ。
私が師匠と慕っていた人。魔境の冒険を嬉しそうに語る異端者。私が恋をした冴えない男は――ある日、あっさりと死んでしまった。
「……ほんと、物好きな師弟。我が事ながら趣味が悪いわよね、スキレ」
そして自嘲気味に呟いた私は――彼が遺した書きかけの書物を手に旅に出た。
その汚い本を完成させ、歪虚に怯える人たちの為になるのが彼の夢だったのだ。
それが叶う事無く彼は逝ってしまったけど……生憎と、あんな男の弟子になった私は負けず劣らずのお人好しだった。
図鑑の完成。それを、成し遂げたいと思った。多分、理由は意志を継ぐとかそんな大層なものではない。
ただ、見たかったのだ。あの不器用極まりない朴念仁の夢を――あと、それを成し遂げた時に彼がどんな顔をするのか。
私が知る限り一度だって涙を流さなかったあの男が歓喜のあまり泣くところとか、超見たい。
恐怖もそうだけど、あの人はとことん鈍かった。私がなんで毎日のように自分の元に通っていたのかなんて、まるで気づきもしなかった。
そんな男が感情を堪えきれなくなる様を見てみたかった。こっちまで感極まって泣いてしまうかもしれないし、もしかして逆に笑ってしまうかも。
……なんにせよ、あの人と共にその時を迎えるのはきっと途轍もなく楽しいに決まってる。だったら、躊躇う理由はない。
再会はきっとあの世だろうけど、完成した本をドヤ顔で突きつけてやりたいと思ってしまった。
その時の彼の顔を想像し励みにすれば、私の旅は存外悪くなかったのだ。
●
「さて、と……」
高台に立った私は眼下のそれを見下ろしながら師匠の本を紐解いた。
汚い字とちょっと上手なスケッチが並ぶページを捲って行くと、ちょうど現実で目にしているものに似た姿を見つけた。
歪虚、砂犬。もしくはサンドワンワン。……ちなみに、前者が師匠。後者が私のネーミングになる。
師匠は名前は分かりやすく簡潔にと言っていたが、恐怖を軽減する為の本なのだから名前は可愛いほうがいいに決まってるのだ。
そもそも私は話を聞いただけで実物を見たのは初めてだったのだが、見てみなさいあの姿を。なんか黒ずんでてダークな感じではあるけどどことなく愛嬌があるような気がしないでもない。
……うん。まぁ、思ってたより可愛くはなかったけど。でも砂犬ではあんまりにも味気ないんじゃないかな!?
――さて、そのワンワンについてだけど私はアレを退治しなくてはならないのだ。
旅の途中に立ち寄った村で受けた依頼になるのだが、あの群れは村の畑を荒らしていく困ったやつららしい。私が歪虚に詳しい旅人と聞きつけた村人に頼られ、こうして討伐に赴いたのだ。
といっても、私に歪虚をどうにかする力なんてものはない。師匠のような精神構造でもないので普通の人間と変わらない。要するに、滅茶苦茶怖いし近寄りたくない。
なので村人から受け取った依頼金で雇ったハンター達を連れてきた。餅は餅屋、歪虚には覚醒者をぶつけるのが常道というものだ。
戦闘は彼らに任せて、私は安全な場所で全力で応援すると決めている。無論、狙われないように心の中で唱えるのだが。
私は歪虚の知識を提供し彼らの助けとなる。ハンター達は私の情報を元に戦う。これは立派な共闘と言える。言いたい。
「――それでは皆さん、よろしくお願いします。怪我とか出来るだけしないよう、適度に頑張ってきちゃってくださいね」
私の声に応じてくれたハンター達を振り返る。その容姿はバラバラだし、正直私には技量なんて見て取れないのだが……彼らならきっと成し遂げてくれる筈だろう。
師匠が集めた情報を活かし、村の人達を救ってくれること――そして彼らが全員無事に戻ってくることを祈りながら、私はその背中を見送った。
解説
『依頼内容』
歪虚を研究する旅人、スキレからの依頼になります。
村の畑を荒らすという歪虚の退治をお願いします。一体も逃さず、確実に村への被害を断ち切ってください。
歪虚に関しては依頼者からデータが提供されています。
『敵性情報』
・歪虚(砂犬。もしくはサンドワンワン)
主に砂地に生息する種類の歪虚。淀んだ色をした野犬の様な姿をしている。
砂犬は6~8程度の少数の群れで行動する傾向がある。
一番の特徴はその巣の形態にある。周辺の地面を掘り起こし、軟らかくした砂の中を巣とする。
砂の中の移動に慣れた砂犬の動きは素早く、巣の中で捉える事は困難だろう。
また外敵にとっては巣の上は劣悪な足場となり、動きを著しく阻害する要因となる。
しかし、砂犬の脅威は巣の中で遭遇した場合に集約されている。巣の外、真っ当な地面の上で戦う事が出来れば通常の野犬と大差ない。
(歪虚図鑑より抜粋)
『その他』
・スキレ
歪虚の研究者を自称する女性。20歳。
現場の近くまで同行しているが、戦闘に巻き込まれないよう避難済み。
戦闘力は皆無だが歪虚との遭遇自体には慣れている為、彼女の保護は特別必要無い。
歪虚を研究する旅人、スキレからの依頼になります。
村の畑を荒らすという歪虚の退治をお願いします。一体も逃さず、確実に村への被害を断ち切ってください。
歪虚に関しては依頼者からデータが提供されています。
『敵性情報』
・歪虚(砂犬。もしくはサンドワンワン)
主に砂地に生息する種類の歪虚。淀んだ色をした野犬の様な姿をしている。
砂犬は6~8程度の少数の群れで行動する傾向がある。
一番の特徴はその巣の形態にある。周辺の地面を掘り起こし、軟らかくした砂の中を巣とする。
砂の中の移動に慣れた砂犬の動きは素早く、巣の中で捉える事は困難だろう。
また外敵にとっては巣の上は劣悪な足場となり、動きを著しく阻害する要因となる。
しかし、砂犬の脅威は巣の中で遭遇した場合に集約されている。巣の外、真っ当な地面の上で戦う事が出来れば通常の野犬と大差ない。
(歪虚図鑑より抜粋)
『その他』
・スキレ
歪虚の研究者を自称する女性。20歳。
現場の近くまで同行しているが、戦闘に巻き込まれないよう避難済み。
戦闘力は皆無だが歪虚との遭遇自体には慣れている為、彼女の保護は特別必要無い。
マスターより
こんにちは、硲銘介です。
図鑑が埋まっていくのって楽しいですよね。
何の話でしょうね。
皆様の参加をお待ちしております。
図鑑が埋まっていくのって楽しいですよね。
何の話でしょうね。
皆様の参加をお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/11/01 08:27
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/23 19:12:32 |
|
![]() |
砂犬もしくはサンドワンワン狩り クウ(ka3730) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/10/24 15:24:35 |