ゲスト
(ka0000)
箱入り娘の「裏」社会科見学
マスター:sagitta

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在10人 / 4~10人
- サポート
- 現在0人 / 0~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/11/10 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/11/19 19:00
オープニング
●
月夜。
静まりかえった住宅街を横切る、黒い人影があった。
大きな屋敷が建ち並ぶ中で、人影は一つの屋敷の塀にそっととりつき、音も立てずに上りはじめる。そこはちょうど門衛の死角に当たる位置で、人影が壁を登り切るまで、門衛は気づいた様子がなかった。
塀の上に立った人影は、庭に植えられた背の高い木に軽々と飛び移る。体重を感じさせない動きで細い枝の先まで移動した人影は、そこから屋敷の窓に手を伸ばした――。
人影が窓に手を伸ばしたとき、部屋の中ではひとりの若い女性が、ベッドの中で寝転がりながら夢中で本を読んでいた。
この屋敷の持ち主の一人娘、20歳のアデリーナだ。もともと宵っ張り気味の彼女は、最近、リアルブルーからもたらされたという本に夢中で、真夜中まで読みふけっていることが多かった。どうせ、昼間に起きていても退屈するばかり――。暇をもてあました彼女は、毎日だらだらと昼過ぎまで寝ているから、夜はなかなか眠くならないのだった。
「あー、面白かったわ」
読み終わった本を閉じて、アデリーナがふと寝返りを打つ。
と、ちょうど窓から侵入してきた人影と、目が合った。
「あ」
予想外の事態に、固まる侵入者。月明かりがばっちりと照らしたその顔は、まだ30にはなっていないだろう、若い男だ。
(あら、すっごいイケメン!)
それが、アデリーナの最初の感想。ちなみに「イケメン」というのは、リアルブルーの本で使われていた言葉で、「かっこいい男性」のことをさすらしい。
「……こんな時間に起きている悪い娘がいたとはな」
人影が、あきれたようにため息をつく。
「あなた、わたくしをどうするつもり? ま、まさかあんなことやこんなこと――この、ケダモノ!」
「しねーよ! ってか何想像してんだよ! ドンパチはこのユーリ様の流儀じゃねぇ! 今日は引き上げるぜ」
何を妄想したのか、身をくねらせて騒ぐアデリーナに気圧されたのか、ばか正直に自分の名前を告げる侵入者――意外と、お人好しなのかも知れない。
「ちょっと、逃げちゃうの? なによ、せっかく来たのに、つまんない!」
むちゃくちゃなことを言い始めるアデリーナを無視して、ユーリという侵入者が、窓枠に手をかける。
それから何を思ったのか、すっとアデリーナの方を振り返った。月明かりに照らされたその顔が、ニヤリ、と笑みをつくる。その手にはちゃっかりと、アデリーナの枕元にあったいくつかの装身具がにぎられていた。これだけでも、かなりの額になるだろう。
「俺はユーリ。そんなに会いたきゃ探してみな、お嬢様!」
どくん。
アデリーナの胸が、大きな音を立てた。ユーリのふてぶてしい笑顔が、頭に焼き付く。
――部屋が暗くてよかった。紅潮した顔を見られなくてすんだから。
場違いにも、そんなことを思ってしまう。
そんなアデリーナの思いなど知るよしもなく、ユーリはマントを翻して窓から飛び出した。
「ちょ、ちょっと待ちなさい」
アデリーナがあわてて窓の外をのぞき込むが、人影はあっという間に闇にまぎれてしまう。
「わたくしはお嬢様なんかじゃないわ、アデリーナよ!」
アデリーナが叫んだ声は、夜闇に溶けていった。
●
港湾都市ポルトワール。この町はその名の通り、各地からの船が寄港する港町として有名だ。多くの商船が、世界のさまざまな地域から数多くの品物を運び、貿易で財を成した商人も多く住む。
薬草や香辛料の貿易で一財産を築いたサンドロ・ド・ヴァスコもそのひとり。出身はジェオルジの田舎村で名もない家の出身だが、若いころに世界中を旅して名声を上げ、今では豪邸が建ち並ぶポルトワールの高級住宅街に屋敷を構えるまでになっていた。50歳を過ぎた今でも、衰えぬその体力で各地を飛び回っている。
そんなサンドロの、唯一の頭痛の種。それが、20歳になったばかりの一人娘、アデリーナだった。アデリーナの母、つまりサンドロの妻は身体が弱く、アデリーナが3歳のころに病で他界した。それ以来アデリーナは、家を空けがちなサンドロにかわり、多数の使用人たちによって育てられた。
幼いころから屋敷の主である「お嬢様」として、蝶よ花よと育てられたアデリーナが、わがままで世間知らずな娘に成長したのは、むべなるかな……。
「セバスチャン、わたくしの言葉が、聞こえなかったの?」
朝のポルトワール。高級住宅街の中心近くにある屋敷の中に、アデリーナの鋭い声が響き渡る。
「しかし、お嬢様、わたしには意味がわかりかねます……」
「わたくしは、ダウンタウンを見学したい、と言ったのよ」
しきりと額の汗をぬぐう使用人に対し、アデリーナがぴしゃり、と言い放つ。
「い、いったいなんのために」
「わたくしも、もう20だわ。ド・ヴァスコ商会の跡取りとして、もっと社会のことを学ぶ必要があります。そうじゃなくって?」
「ですがなにもダウンタウンなんぞに……先日あのようなことがあったばかりですし」
セバスチャン、とよばれた使用人は、先日の騒ぎを思い出してため息をつく。よもや、この屋敷に盗賊の侵入を許してしまうなんて。お嬢様に怪我がなかったからよかったものの、まんまと装飾品を盗まれてしまった。
「きっとあの薄汚い盗賊も、ダウンタウンに住んでいるに違いありません。かように、ダウンタウンというのは汚くて危険なところなのです。ですから、お嬢様をそのようなところにお連れするわけには――」
「なら、こうしましょう。わたくしの護衛を、腕の立つハンターに依頼するのです。そうすれば、危険はないでしょう?」
「え、いや、でも……」
「いいから、早くハンターオフィスにお行きなさい!」
月夜。
静まりかえった住宅街を横切る、黒い人影があった。
大きな屋敷が建ち並ぶ中で、人影は一つの屋敷の塀にそっととりつき、音も立てずに上りはじめる。そこはちょうど門衛の死角に当たる位置で、人影が壁を登り切るまで、門衛は気づいた様子がなかった。
塀の上に立った人影は、庭に植えられた背の高い木に軽々と飛び移る。体重を感じさせない動きで細い枝の先まで移動した人影は、そこから屋敷の窓に手を伸ばした――。
人影が窓に手を伸ばしたとき、部屋の中ではひとりの若い女性が、ベッドの中で寝転がりながら夢中で本を読んでいた。
この屋敷の持ち主の一人娘、20歳のアデリーナだ。もともと宵っ張り気味の彼女は、最近、リアルブルーからもたらされたという本に夢中で、真夜中まで読みふけっていることが多かった。どうせ、昼間に起きていても退屈するばかり――。暇をもてあました彼女は、毎日だらだらと昼過ぎまで寝ているから、夜はなかなか眠くならないのだった。
「あー、面白かったわ」
読み終わった本を閉じて、アデリーナがふと寝返りを打つ。
と、ちょうど窓から侵入してきた人影と、目が合った。
「あ」
予想外の事態に、固まる侵入者。月明かりがばっちりと照らしたその顔は、まだ30にはなっていないだろう、若い男だ。
(あら、すっごいイケメン!)
それが、アデリーナの最初の感想。ちなみに「イケメン」というのは、リアルブルーの本で使われていた言葉で、「かっこいい男性」のことをさすらしい。
「……こんな時間に起きている悪い娘がいたとはな」
人影が、あきれたようにため息をつく。
「あなた、わたくしをどうするつもり? ま、まさかあんなことやこんなこと――この、ケダモノ!」
「しねーよ! ってか何想像してんだよ! ドンパチはこのユーリ様の流儀じゃねぇ! 今日は引き上げるぜ」
何を妄想したのか、身をくねらせて騒ぐアデリーナに気圧されたのか、ばか正直に自分の名前を告げる侵入者――意外と、お人好しなのかも知れない。
「ちょっと、逃げちゃうの? なによ、せっかく来たのに、つまんない!」
むちゃくちゃなことを言い始めるアデリーナを無視して、ユーリという侵入者が、窓枠に手をかける。
それから何を思ったのか、すっとアデリーナの方を振り返った。月明かりに照らされたその顔が、ニヤリ、と笑みをつくる。その手にはちゃっかりと、アデリーナの枕元にあったいくつかの装身具がにぎられていた。これだけでも、かなりの額になるだろう。
「俺はユーリ。そんなに会いたきゃ探してみな、お嬢様!」
どくん。
アデリーナの胸が、大きな音を立てた。ユーリのふてぶてしい笑顔が、頭に焼き付く。
――部屋が暗くてよかった。紅潮した顔を見られなくてすんだから。
場違いにも、そんなことを思ってしまう。
そんなアデリーナの思いなど知るよしもなく、ユーリはマントを翻して窓から飛び出した。
「ちょ、ちょっと待ちなさい」
アデリーナがあわてて窓の外をのぞき込むが、人影はあっという間に闇にまぎれてしまう。
「わたくしはお嬢様なんかじゃないわ、アデリーナよ!」
アデリーナが叫んだ声は、夜闇に溶けていった。
●
港湾都市ポルトワール。この町はその名の通り、各地からの船が寄港する港町として有名だ。多くの商船が、世界のさまざまな地域から数多くの品物を運び、貿易で財を成した商人も多く住む。
薬草や香辛料の貿易で一財産を築いたサンドロ・ド・ヴァスコもそのひとり。出身はジェオルジの田舎村で名もない家の出身だが、若いころに世界中を旅して名声を上げ、今では豪邸が建ち並ぶポルトワールの高級住宅街に屋敷を構えるまでになっていた。50歳を過ぎた今でも、衰えぬその体力で各地を飛び回っている。
そんなサンドロの、唯一の頭痛の種。それが、20歳になったばかりの一人娘、アデリーナだった。アデリーナの母、つまりサンドロの妻は身体が弱く、アデリーナが3歳のころに病で他界した。それ以来アデリーナは、家を空けがちなサンドロにかわり、多数の使用人たちによって育てられた。
幼いころから屋敷の主である「お嬢様」として、蝶よ花よと育てられたアデリーナが、わがままで世間知らずな娘に成長したのは、むべなるかな……。
「セバスチャン、わたくしの言葉が、聞こえなかったの?」
朝のポルトワール。高級住宅街の中心近くにある屋敷の中に、アデリーナの鋭い声が響き渡る。
「しかし、お嬢様、わたしには意味がわかりかねます……」
「わたくしは、ダウンタウンを見学したい、と言ったのよ」
しきりと額の汗をぬぐう使用人に対し、アデリーナがぴしゃり、と言い放つ。
「い、いったいなんのために」
「わたくしも、もう20だわ。ド・ヴァスコ商会の跡取りとして、もっと社会のことを学ぶ必要があります。そうじゃなくって?」
「ですがなにもダウンタウンなんぞに……先日あのようなことがあったばかりですし」
セバスチャン、とよばれた使用人は、先日の騒ぎを思い出してため息をつく。よもや、この屋敷に盗賊の侵入を許してしまうなんて。お嬢様に怪我がなかったからよかったものの、まんまと装飾品を盗まれてしまった。
「きっとあの薄汚い盗賊も、ダウンタウンに住んでいるに違いありません。かように、ダウンタウンというのは汚くて危険なところなのです。ですから、お嬢様をそのようなところにお連れするわけには――」
「なら、こうしましょう。わたくしの護衛を、腕の立つハンターに依頼するのです。そうすれば、危険はないでしょう?」
「え、いや、でも……」
「いいから、早くハンターオフィスにお行きなさい!」
解説
「社会科見学に行く!」と言いだして聞かないお嬢様の護衛として、ポルトワールのダウンタウンを案内してください。
……というのは表向きの依頼で、お嬢様の目的は、「ダウンタウンに住んでいると思われる盗賊ユーリとの再会」です。
お嬢様が覚えている顔と、「ユーリ」という名前から、人捜しをお願いします。
……というのは表向きの依頼で、お嬢様の目的は、「ダウンタウンに住んでいると思われる盗賊ユーリとの再会」です。
お嬢様が覚えている顔と、「ユーリ」という名前から、人捜しをお願いします。
マスターより
わがままで世間知らずなお嬢様。しかしそれ故にピュアで好奇心旺盛なアデリーナと、仲良くしていただけるとうれしいです。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/11/19 00:29
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/10 02:07:02 |
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相談しましょう 烏丸 涼子 (ka5728) 人間(リアルブルー)|26才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2015/11/10 18:00:59 |