• 調査

ララ・デアの歯車

マスター:西尾厚哉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/11/17 22:00
リプレイ完成予定
2015/11/26 22:00

オープニング

「よくも私の大切なおうちを。あの偽物の差し金か?
 名乗れと言うから教えてあげる。私の名はララ・デア。
 血の一滴までも奪い取ってやるからと伝えるがいい。
 錬魔とイルリヒトは皆殺しだ」


「すげぇのが出たんだよ、すげぇのが。イルリヒトとハンターで死闘だったらしいぜ」
「森だろ? あそこやっぱ行くもんじゃないね」
「いや、訓練に使う森なんて、もうちょっと人のいないところ使って欲しいよ」
「でもイルリヒトの宿舎があるから、治安も多少いいってこともあるし」
「ゴブリンとコボルト相手にしてる訓練生だぜ? あのでけぇのだってハンターがいなきゃ無理だったんだろ?」
 どこでどう漏れたのか、剣機団子との戦闘が周囲の住民の噂話になっている。
「まあ、廃材集めに回ったんだし、しかたないね」
 と、イルリヒト教官のトマス・ブレガ。
 剣機と廃材を幾重にも纏ってその身を巨大化させる剣機団子。
 村や町からの廃材集めは団子を森の外にを誘き出すの餌場づくりのため。
 その剣機団子を『おうち』と言い、イルリヒトと錬魔院に強烈な敵愾心を示した『ララ・デア』は、過去の関係者かと双方で20年ほどまで遡って調べたが、それらしき人物は見当たらなかった。
 錬魔院は対巨大歪虚の兵器開発と、マテリアル爆弾の進化系を作ることにしたが、再び相手が暴れるのと開発とどっちが早いかは陽の目を見るより明らかだ。
 魔導アーマーが使えればいいが、その時はもうイルリヒトの出番ではあるまい。
 また、イルリヒト教官、レイ・グロスハイムは吸血鬼少女の『偽物』となじられたが、すっぱりと問題視しないことになった。
『歪虚の名前が同じだからといって、それを聞いたのは意識が朦朧とした訓練生であり、言ったのは歪虚自身である、というのが何の意味も持たない』
 それが、上層部の出した結論。
 レイ・グロスハイムと反りが合わないヒューグラー教官が異を唱えたが、あんまりごたごた言うなら主任候補から外すと脅せば黙るだろうと呆気なく無視された。


「いやぁん、もう、お世辞が上手なんだからぁ~」
「お世辞じゃないよ。俺、マリーちゃんと飲めるんなら他の約束なんて丸めて捨てちゃう」
 ノア・ベンカーはグラスをかちりと相手のグラスに当てて、くいっと酒を飲み干した。
「あーあ、でも、明日からまた仕事かぁ」
 はふう、と真っ赤な顔で溜息をつく女性の肩にノアは腕を回す。
「忙しそうだねぇ。イルリヒトの事務ってそんな大変だっけ?」
「んー、いつもは備品補充の書類作ったり、訓練生の日用品の手配したりするんだけどぉ、おとといまで名簿ずーっと調べててさー」
「訓練生の?」
 マリーはこくんとグラスの中身を飲んで、周囲をちらと見てからノアに顔を寄せた。
「関係者全部。女性なんだけど、ララ・デアって人がいなかったか探したの」
「あったの?」
「ないわよぉ。でも、ないのは私の責任じゃないっての。なーんか、みんな不機嫌そうな顔してさ。ピリピリしてんのよねー」
 冗談じゃないわ、というようにマリーはぷんと口を尖らせる。
「あれかな、こないだのデカい歪虚との件で?」
「ん、そうかも。ララ・デアってさ、歪虚がそう名乗ったみたいよ? なんかよくわかんないけど、グロスハイム教官が啖呵切られたって訓練生が噂してた」
 なんじゃそら、とノアは思わず笑った。
 そして次に『ん?』と首を傾げる。
「それ、レイ・グロスハイムのこと?」
「そうよ? いっつも不愛想な顔してる人。笑えばハンサムなのにもったいない」
 へー、とノアは頭のメモに書き入れる。レイ・グロスハイム、不愛想でハンサム。
「あ、迎えが来た」
 ふいにマリーが立ち上がった。見れば店の入り口に男が一人立っている。
「今日はありがと。今度、友達も誘っていい? 錬魔院の子よ?」
「ん、大歓迎」
 ノアの額に軽くキスをしてマリーは彼の顔をしげしげと眺めた。
「新聞記者ってもっと怪しいのかと思ってたけど、ノアさん、いつも紳士ねえ。好きな人でもいるの?」
「マリーちゃん、使用人雇えるくらいなのになんで事務員やってるの?」
 マリーはアハハと笑った。
「軍人さんが好きだから~。と思ったらイルリヒトはおじさんばっかりだった。師団に行かないとだめかなぁ」
 マリーはそこで再びノアに顔を寄せ、素早く囁いた。
「レイ・グロスハイムとトマス・ブレガは若くてイケメンだけど、あの2人、つるみ過ぎてもしかしたらそっち系ではないかと、う・わ・さ」
 じゃぁね~、と去っていくマリーを見送ってノアは失笑する。
 女の子ってなぁ、怖いねえ。
 そのまま彼はポケットから短伝話を取り出した。
「あ、俺。人、探して欲しいんだ。ララ・デアって女性。年齢? んー、わかんねぇ。名前だけ。うん、あっちにも連絡してみてよ。んじゃ」
 通話を切って、ノアは嘆息する。
 名前だけだからなあ……。でもまあ、意外と『あっち方面』でひっかかるかも。


 一週間後、ノアは調査結果の連絡を受けた。
「慈善家?」
 思わず我が耳を疑う。慈善家歪虚? ……じゃないよな……さすがに。
『もうけっこうな歳だよ。地方で細々と活動してるらしい。ちょっと歌もうまいし、孤児院や老人宅慰問したり、ボランティア募って過疎化の村の仕事手伝ったり。でもマスコミ嫌いでね。今まで取材お断りだったらしい。マスコミは嫌いなんだと。今は北方の小さな村町にいるみたいだ。ええと……ハルツハイム』
 短伝話の相手が言う。
「『あっち』と繋がりあんの?」
『ないみたいだ。でも本人が知る知らないは別問題だからな。話を聞いて辿るしかないんじゃないかな』
 本人に話ねえ……
 俺、今、動けねえし。
 でも、これ何か掴めたらイルリヒトに入り込める、いいチャンスなんだよな。
「ハンター……頼んでみっかな。マスコミは駄目みたいだし」
 ノアは呟いたのだった。
 彼女ももしかしたら会えるかもしれねーじゃん。彼に。
「ね、ピアちゃん」

解説

●このシナリオは既出の『歯車の起動』が関連しています

●経緯概要
 イルリヒトが訓練に使う森に巨大な歪虚が出現。
 直径20mほどの球体で、全周剣機と鉄屑、木屑、スクラップ武器などで幾重にも固められた状態。
 その剣機団子を森から峡谷に落とす作戦が実行されました。
 剣機団子と共に出現した少女(吸血鬼)は『ララ・デア』と名乗った上でイルリヒトと錬魔院に深い憎悪を示して、団子と共に追い払われています。
 なお、剣機団子の名前は『レイ・グロスハイム』で、戦闘に参加したイルリヒト教官と同じ名前であると思われます。

●依頼内容
 地方で慈善活動をする『ララ・デア』に会いにハルツハイムという町に向かいます。
 ノア・ベンカーが下調べした段階では
  ・地方でのみで活動する人物である
  ・マスコミが嫌いである
  ・主な活動は孤児院や老人宅慰問、ボランティア活動
 という情報です。
 ここから吸血鬼『ララ・デア』に繋がる道筋を探します。

 本人に辿り着けなくても手掛かりさえ掴めれば目的は達成されたものとします。
 ※ノア・ベンカーは同行しません。
 ※吸血鬼少女『ララ・デア』は10~14歳くらいまでの少女の姿です。

●補足
 ノア・ベンカー/帝国通信社の記者
 飄々とした性格で、ピア・ファティ(kz0142)と縁があって彼女の周りを割とうろうろしていますが、あまり詳細が明確になっていません。

 レイ・グロスハイム/イルリヒトの教官。ピア・ファティの血の繋がらない家族(幼馴染)。
 トマス・ブレガ/イルリヒト教官。レイとよく行動を共にする。
 マリー/イルリヒトの事務員。ノア・ベンカーが時々イルリヒトのネタを仕入れる飲み友達

マスターより

 皆さんいつもお世話になります。西尾厚哉です。
 歯車はいくつも連なって大きな動きを出しますが、1つの歯車を見ただけではどこを動かしているのかな、とすぐには全体が分からないかもしれません。
 でも、全部を集めたら、最後に何が動いていたかわかるかも。
 歯車を見つけ出すお力添えくださいまし。
 それではよろしくお願いいたします。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/11/24 00:38

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 時軸の風詠み
    ウィルフォード・リュウェリン(ka1931
    エルフ|28才|男性|魔術師
  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 時の守りと救い
    マキナ・バベッジ(ka4302
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • 未来を思う陽だまり
    バジル・フィルビー(ka4977
    人間(蒼)|26才|男性|聖導士
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/11/17 15:05:17
アイコン 相談卓
マキナ・バベッジ(ka4302
人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/11/17 21:37:11