ゲスト
(ka0000)
【深棲】海底に沈む紅玉
マスター:旅硝子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/08/04 15:00
- リプレイ完成予定
- 2014/08/13 15:00
オープニング
長き船旅も、終わりを迎えようとしていた。
甲板に立つ少女は、そっと胸元のブローチに手を当て、見え始めた陸地に視線を向ける。
冒険都市リゼリオへと向かう船である。甲板の上は、そろそろ下船準備を始めた人々で埋まりつつあった。
この街を訪れるのは、少女は初めてであった。けれど、少女の父はしょっちゅうここに足を運んでいたという。
少女の父は有能な行商人であった。そして、少女もまた行商人であった。
もっとも、彼女は父にはまだまだ及ばぬ新米であった。けれど、急な病で亡くなった父の作った人脈と、彼女自身の隠れた商才と誠実な人柄によって、リゼリオと生まれ育った町の間で行商を行うだけの準備と商品を整え、彼女は初めて見るリゼリオへと向かったのだ。
胸元のブローチは、父の形見でもあり、母の形見でもあった。父が初めて行商で得た利益で買った、ルビーで薔薇を象ったブローチは、当時はまだ恋人であった少女の母に贈られ、少女の母が若くして亡くなった時に少女へと受け継がれたのだ。
近づきつつあるリゼリオの街を見つめていた少女は――はっと、海面へと視線を移した。
揺らいでいる。
それは波の揺らぎにしても、船の作る飛沫にしても、不自然であった。
少女は思い出す。冒険都市リゼリオ、そして同盟諸国を襲う、狂気の眷属と呼ばれる歪虚の噂を――。
「皆さん、避難して下さい! 歪虚です!」
少女がそう声を張り上げたのと、水面からざばりと奇怪なる歪虚が姿を現したのは、ほぼ同時の事であった。
既に下船も近く、甲板に集まっていた人々が恐慌をきたす中、船長は冷静に船員に指示を出し、同時に警戒を行っていたハンター達が飛びかかってくる歪虚達と戦闘を繰り広げる。
蛸の触手を持つ帆立貝、といった姿の歪虚が甲板に乗り上げたことで、慌てて反対側へと逃げ出そうとする人々に、船長が叫ぶ。
「中央にお集まりください! 片側に寄りますと船が不安定になります!」
ハンター達の戦いの邪魔になるまいと下がった少女は、人の波に押されながら何とか甲板の中央へと戻ろうとする。
――びりり、と音がした。
はっと音の源、胸元を見れば、服の布地が裂け――ブローチが、なかった。
僅かな板の上を滑る音。見れば、ブローチは甲板の上を滑って行き――咄嗟に走り出そうとした少女が人の足につまづいて転ぶ間に、海へと落ちた。
「あ……」
恐らくは、誰かの持ち物か服の飾りに引っかかってしまったのだろう。そう冷静に考えながら、けれど少女の身体は勝手に動き、人々の間を抜け出して甲板の縁に立ち、海の中を覗き込んでいた。
「危ないッ!」
はっと顔を上げれば、甲板の上を這うように向かってくる歪虚。動けない。動いても、きっと歪虚の方が速い。
けれど――歪虚が少女に触れる前に、銃声と共に歪虚の身体が弾け飛ぶ。
「船長さん、船の速度を上げられますか!?」
「おう、あと少しならな!」
ハンターと船長の会話に、思わず待って、と言いそうになって口をつぐむ。
歪虚が群れているであろう水底に沈んだブローチを、己が潜って取りに行く事など、ましてや誰かに取って来てもらう事など、出来ないのだから。
甲板に手を付いたままの少女の頬を、涙が伝った。
「嬢ちゃん」
横から優しく呼ぶ声に、はっと振り向く。
「なんか落としたんだろ、さっき見えた」
声をかけたのは、さっき甲板で戦っていたハンターの1人だった。
「はい……」
「大事なものだったんだな」
「……」
ぎゅ、と少女は拳を握る。そうでないと、また涙がこぼれてしまいそうだったから。
ブローチがあるから、父が、母が守ってくれている気がした。胸元の重みがなくなった今、心細くて、辛くて――両親を喪った時の辛さまで思い出して、幼い子どものように泣いてしまいそうだった。
「泣くんじゃない、まだ手はある」
「……え?」
ぽん、と頭に手を置かれ、思わずハンターの顔を見上げる。
「ハンターってのは、どんな小さな仕事にも集まって、助けてくれることがある。これ持って、助けてくれってハンターズソサエティに行きゃいい」
差し出された皮袋の中からは、じゃらりと硬貨の揺れる音がした。
けれど、少女は首を横に振る。その顔には、明るさが僅かに戻っていた。
「ありがとうございます。けれど、私は商人ですから」
自らのお金で、依頼を出せるよう頑張ります。
そう言った少女に、ハンターはにこりと笑って。
「おう、じゃあ、頑張れよ。首尾よく見つかるといいな」
再びぽんと少女の頭に手を置いて、仲間達の元へと去って行った。
リゼリオに到着した少女は、凄まじい勢いで商品を売り捌き、必要な金額を整えるとすぐさまハンターズソサエティの扉を叩いた。
『海に落としたブローチを、探し出してほしい』
それは、彼女が最初に稼いだ金で、ただ一つ叶えたいと思った願いだった。
甲板に立つ少女は、そっと胸元のブローチに手を当て、見え始めた陸地に視線を向ける。
冒険都市リゼリオへと向かう船である。甲板の上は、そろそろ下船準備を始めた人々で埋まりつつあった。
この街を訪れるのは、少女は初めてであった。けれど、少女の父はしょっちゅうここに足を運んでいたという。
少女の父は有能な行商人であった。そして、少女もまた行商人であった。
もっとも、彼女は父にはまだまだ及ばぬ新米であった。けれど、急な病で亡くなった父の作った人脈と、彼女自身の隠れた商才と誠実な人柄によって、リゼリオと生まれ育った町の間で行商を行うだけの準備と商品を整え、彼女は初めて見るリゼリオへと向かったのだ。
胸元のブローチは、父の形見でもあり、母の形見でもあった。父が初めて行商で得た利益で買った、ルビーで薔薇を象ったブローチは、当時はまだ恋人であった少女の母に贈られ、少女の母が若くして亡くなった時に少女へと受け継がれたのだ。
近づきつつあるリゼリオの街を見つめていた少女は――はっと、海面へと視線を移した。
揺らいでいる。
それは波の揺らぎにしても、船の作る飛沫にしても、不自然であった。
少女は思い出す。冒険都市リゼリオ、そして同盟諸国を襲う、狂気の眷属と呼ばれる歪虚の噂を――。
「皆さん、避難して下さい! 歪虚です!」
少女がそう声を張り上げたのと、水面からざばりと奇怪なる歪虚が姿を現したのは、ほぼ同時の事であった。
既に下船も近く、甲板に集まっていた人々が恐慌をきたす中、船長は冷静に船員に指示を出し、同時に警戒を行っていたハンター達が飛びかかってくる歪虚達と戦闘を繰り広げる。
蛸の触手を持つ帆立貝、といった姿の歪虚が甲板に乗り上げたことで、慌てて反対側へと逃げ出そうとする人々に、船長が叫ぶ。
「中央にお集まりください! 片側に寄りますと船が不安定になります!」
ハンター達の戦いの邪魔になるまいと下がった少女は、人の波に押されながら何とか甲板の中央へと戻ろうとする。
――びりり、と音がした。
はっと音の源、胸元を見れば、服の布地が裂け――ブローチが、なかった。
僅かな板の上を滑る音。見れば、ブローチは甲板の上を滑って行き――咄嗟に走り出そうとした少女が人の足につまづいて転ぶ間に、海へと落ちた。
「あ……」
恐らくは、誰かの持ち物か服の飾りに引っかかってしまったのだろう。そう冷静に考えながら、けれど少女の身体は勝手に動き、人々の間を抜け出して甲板の縁に立ち、海の中を覗き込んでいた。
「危ないッ!」
はっと顔を上げれば、甲板の上を這うように向かってくる歪虚。動けない。動いても、きっと歪虚の方が速い。
けれど――歪虚が少女に触れる前に、銃声と共に歪虚の身体が弾け飛ぶ。
「船長さん、船の速度を上げられますか!?」
「おう、あと少しならな!」
ハンターと船長の会話に、思わず待って、と言いそうになって口をつぐむ。
歪虚が群れているであろう水底に沈んだブローチを、己が潜って取りに行く事など、ましてや誰かに取って来てもらう事など、出来ないのだから。
甲板に手を付いたままの少女の頬を、涙が伝った。
「嬢ちゃん」
横から優しく呼ぶ声に、はっと振り向く。
「なんか落としたんだろ、さっき見えた」
声をかけたのは、さっき甲板で戦っていたハンターの1人だった。
「はい……」
「大事なものだったんだな」
「……」
ぎゅ、と少女は拳を握る。そうでないと、また涙がこぼれてしまいそうだったから。
ブローチがあるから、父が、母が守ってくれている気がした。胸元の重みがなくなった今、心細くて、辛くて――両親を喪った時の辛さまで思い出して、幼い子どものように泣いてしまいそうだった。
「泣くんじゃない、まだ手はある」
「……え?」
ぽん、と頭に手を置かれ、思わずハンターの顔を見上げる。
「ハンターってのは、どんな小さな仕事にも集まって、助けてくれることがある。これ持って、助けてくれってハンターズソサエティに行きゃいい」
差し出された皮袋の中からは、じゃらりと硬貨の揺れる音がした。
けれど、少女は首を横に振る。その顔には、明るさが僅かに戻っていた。
「ありがとうございます。けれど、私は商人ですから」
自らのお金で、依頼を出せるよう頑張ります。
そう言った少女に、ハンターはにこりと笑って。
「おう、じゃあ、頑張れよ。首尾よく見つかるといいな」
再びぽんと少女の頭に手を置いて、仲間達の元へと去って行った。
リゼリオに到着した少女は、凄まじい勢いで商品を売り捌き、必要な金額を整えるとすぐさまハンターズソサエティの扉を叩いた。
『海に落としたブローチを、探し出してほしい』
それは、彼女が最初に稼いだ金で、ただ一つ叶えたいと思った願いだった。
解説
●目的
ブローチの発見。
●少女について
行商人のネリッサ。14歳。
まだ非常に若いですが、商人としての才覚は確かなようです。
特にプレイングで望まれない限り、探索に同行はしません。同行した場合、彼女の護衛が目的に加わりますが、ブローチを落とした場所をほぼ完全に特定できます。
(ただし、落とした場所にそのまま落ちているとは限りません)
●ブローチについて
掌に載るほどの、薔薇を象ったルビーのブローチです。
装飾部分などに金属が使われていて、やや重めです。水にはすぐに沈みそうです。
●落とした地点について
船の航路とネリッサ自身、そして船に乗っていたハンター達の証言から、ほぼ正確な場所が確認できています。
現地までは、ネリッサが小舟を調達しています。6人乗りの手漕ぎの小舟を2つまで用意できます。
壊れても問題ありませんが、壊れなければその分報酬に色がつくかもしれません。
2つとも壊れたら頑張って泳いで帰って来て下さい。大丈夫覚醒者だから戻って来られます。
水深は30m程度。覚醒者ならば水圧によって体調に問題をきたすことはありません。
波は割と穏やかな場所です。
天候は晴れ。灯りがなくても探すのに支障はないと思われます。
●歪虚について
落とした地点には、まだ歪虚が存在すると思われます。
帆立貝に蛸の触手を生やしたような狂気の眷属であり、貝の部分で挟む攻撃、触手で叩く攻撃、触手で相手を絡めとって動きを阻害する攻撃(移動力と回避にマイナス修正)を行ってきます。
ただし、体力や攻撃力は高くはありません。
今回の依頼の性質上、水中戦闘が発生します。水中戦闘のルールをよくご確認くださいませ。
ブローチの発見。
●少女について
行商人のネリッサ。14歳。
まだ非常に若いですが、商人としての才覚は確かなようです。
特にプレイングで望まれない限り、探索に同行はしません。同行した場合、彼女の護衛が目的に加わりますが、ブローチを落とした場所をほぼ完全に特定できます。
(ただし、落とした場所にそのまま落ちているとは限りません)
●ブローチについて
掌に載るほどの、薔薇を象ったルビーのブローチです。
装飾部分などに金属が使われていて、やや重めです。水にはすぐに沈みそうです。
●落とした地点について
船の航路とネリッサ自身、そして船に乗っていたハンター達の証言から、ほぼ正確な場所が確認できています。
現地までは、ネリッサが小舟を調達しています。6人乗りの手漕ぎの小舟を2つまで用意できます。
壊れても問題ありませんが、壊れなければその分報酬に色がつくかもしれません。
2つとも壊れたら頑張って泳いで帰って来て下さい。大丈夫覚醒者だから戻って来られます。
水深は30m程度。覚醒者ならば水圧によって体調に問題をきたすことはありません。
波は割と穏やかな場所です。
天候は晴れ。灯りがなくても探すのに支障はないと思われます。
●歪虚について
落とした地点には、まだ歪虚が存在すると思われます。
帆立貝に蛸の触手を生やしたような狂気の眷属であり、貝の部分で挟む攻撃、触手で叩く攻撃、触手で相手を絡めとって動きを阻害する攻撃(移動力と回避にマイナス修正)を行ってきます。
ただし、体力や攻撃力は高くはありません。
今回の依頼の性質上、水中戦闘が発生します。水中戦闘のルールをよくご確認くださいませ。
マスターより
こんにちは。旅硝子です。
今回は、行商人として独り立ちしたばかりの女の子の、たっての願いを叶えて頂けましたら幸いです。
水中戦闘と探し物は大変ですが、きっと皆さんならできるはず。
どうぞよろしくお願いいたします!
今回は、行商人として独り立ちしたばかりの女の子の、たっての願いを叶えて頂けましたら幸いです。
水中戦闘と探し物は大変ですが、きっと皆さんならできるはず。
どうぞよろしくお願いいたします!
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/08/12 23:58
参加者一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/29 22:43:57 |
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相談卓! 酔仙(ka1747) エルフ|20才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/08/04 04:25:32 |