ゲスト
(ka0000)
君の塵芥を追う風
マスター:紺堂 カヤ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在7人 / 4~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/11/27 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/12/06 19:00
オープニング
手に手を取って逃げようと決めた。
彼女の透き通るように白い手を取って、東へ。
彼の無骨な手にすべてを預けて、ひたすら東へ。
彼女は街一番の貿易商の一人娘。彼はその貿易商の館へ出入りする酒屋の下働き。身分違いの恋だった。誰にも認めてもらえない愛だった。けれどそれは、ふたりにとって諦める理由になりはしなかった。
「駆け落ちしよう」
先にそう言ったのは、どちらだったかわからないが、頷き合ったのは間違いなくふたり同時だった。
宵闇に紛れて、生まれ故郷の街を出た。すぐに差し向けられる追手から逃れるには、夜明けまでには山をひとつ越えておく必要があった。
「もうこれ以上は歩けないわ」
彼女は山の手前で足を止めた。お嬢様育ちの身体では、仕方のないことではあった。
「では、俺が背負いましょう。心配いりません、足腰は貴女の十倍丈夫ですよ」
彼は頼もしく微笑んだ。羽のように軽い彼女を背負って、山を登った。
ほどなくして。
山の木々が妙なざわめき方をしていることに、彼女が気付いた。何か、不気味なものが近付いているような。
「この山は、なんだか恐ろしいわ」
「貴女は夜の山など初めてですからね。木の葉の影ですら恐ろしく見えるでしょう」
「でも、唸り声のようなものが聞こえるわ」
彼女があんまり怖がるので、彼も山の様子をよくよく窺ってみた。
すると、確かに、奇妙な唸り声と、人のものとは思えない足音がしていた。
ふたりは、知らなかったのだ。
この山は、数日前から雑魔の姿が目撃されている、危険な山であることを。
彼女を背負って、彼は足を速めた。すると、人ではない足音も速くなった。追われている、と気が付いて、彼は駆け出した。山は上りの行程を終え、下り坂にさしかかっていた。どんどんどんどん、スピードが出た。逃げきれる、と彼は思った。
下り坂を下りきり、山から出た時には、ほんのりと夜明けの気配がしていた。嫌な気配は去り、足音もなくなっていた。彼はホッと息をついて、彼女に声をかけた。
「ここまで来ればもう大丈夫。怖くありませんよ」
彼女から、返事はなかった。まだ怯えているのだろうか、と彼は笑い、彼女を振り返った。
そこには。
彼の背にいるはずの彼女の姿は、なかった。
「え……?」
それが、どういうことかを理解したとき、彼は。
「あああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
彼は。
己の絶叫で喉を焼いた。
ベルトの金具に引っかかって破れたのであろう、彼女の薄絹の切れ端が、ふわりと風に乗って、塵芥となって、消えた。
「許さない……、必ず、必ず、あのバケモノを!!!」
山の麓の小屋から飛び出してきた、農夫の制止も聞かず、彼はよろよろと山へ引き返して行った……。
彼女の透き通るように白い手を取って、東へ。
彼の無骨な手にすべてを預けて、ひたすら東へ。
彼女は街一番の貿易商の一人娘。彼はその貿易商の館へ出入りする酒屋の下働き。身分違いの恋だった。誰にも認めてもらえない愛だった。けれどそれは、ふたりにとって諦める理由になりはしなかった。
「駆け落ちしよう」
先にそう言ったのは、どちらだったかわからないが、頷き合ったのは間違いなくふたり同時だった。
宵闇に紛れて、生まれ故郷の街を出た。すぐに差し向けられる追手から逃れるには、夜明けまでには山をひとつ越えておく必要があった。
「もうこれ以上は歩けないわ」
彼女は山の手前で足を止めた。お嬢様育ちの身体では、仕方のないことではあった。
「では、俺が背負いましょう。心配いりません、足腰は貴女の十倍丈夫ですよ」
彼は頼もしく微笑んだ。羽のように軽い彼女を背負って、山を登った。
ほどなくして。
山の木々が妙なざわめき方をしていることに、彼女が気付いた。何か、不気味なものが近付いているような。
「この山は、なんだか恐ろしいわ」
「貴女は夜の山など初めてですからね。木の葉の影ですら恐ろしく見えるでしょう」
「でも、唸り声のようなものが聞こえるわ」
彼女があんまり怖がるので、彼も山の様子をよくよく窺ってみた。
すると、確かに、奇妙な唸り声と、人のものとは思えない足音がしていた。
ふたりは、知らなかったのだ。
この山は、数日前から雑魔の姿が目撃されている、危険な山であることを。
彼女を背負って、彼は足を速めた。すると、人ではない足音も速くなった。追われている、と気が付いて、彼は駆け出した。山は上りの行程を終え、下り坂にさしかかっていた。どんどんどんどん、スピードが出た。逃げきれる、と彼は思った。
下り坂を下りきり、山から出た時には、ほんのりと夜明けの気配がしていた。嫌な気配は去り、足音もなくなっていた。彼はホッと息をついて、彼女に声をかけた。
「ここまで来ればもう大丈夫。怖くありませんよ」
彼女から、返事はなかった。まだ怯えているのだろうか、と彼は笑い、彼女を振り返った。
そこには。
彼の背にいるはずの彼女の姿は、なかった。
「え……?」
それが、どういうことかを理解したとき、彼は。
「あああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
彼は。
己の絶叫で喉を焼いた。
ベルトの金具に引っかかって破れたのであろう、彼女の薄絹の切れ端が、ふわりと風に乗って、塵芥となって、消えた。
「許さない……、必ず、必ず、あのバケモノを!!!」
山の麓の小屋から飛び出してきた、農夫の制止も聞かず、彼はよろよろと山へ引き返して行った……。
解説
■成功条件
彼女を喰らっていった雑魔の退治と、彼の救出
■雑魔
狼タイプの雑魔1体。
体長3メートルのかなり巨大な狼。もとは群れに受け入れられなかった、はぐれ狼が雑魔化したものとみられる。
牙と爪が鋭く、凶暴。
■山
丘といっても通りそうなほどの小規模なものだが、広葉樹林が多く、昼間でも暗い上、落ち葉で道が覆われていて歩きづらい。
数日前に雑魔の目撃情報が出てから、周辺の町村が相談してハンターに依頼をしようとしていた矢先の事件であった。
彼女を喰らっていった雑魔の退治と、彼の救出
■雑魔
狼タイプの雑魔1体。
体長3メートルのかなり巨大な狼。もとは群れに受け入れられなかった、はぐれ狼が雑魔化したものとみられる。
牙と爪が鋭く、凶暴。
■山
丘といっても通りそうなほどの小規模なものだが、広葉樹林が多く、昼間でも暗い上、落ち葉で道が覆われていて歩きづらい。
数日前に雑魔の目撃情報が出てから、周辺の町村が相談してハンターに依頼をしようとしていた矢先の事件であった。
マスターより
駆け落ちをするほどに燃え上がった恋の火が、涙で消えてしまいました。
彼は、今は怒りで何も見えなくなっていますが、もともとは冷静な人物ですので、山へ入ってからは確実に敵討ちをすることを第一に行動し始めると思われます。むやみに正面から突っ込んでいくことはないかと……。
敵討ちに反対の方も賛成の方も、いろいろいらっしゃるでしょうが、助けていただけたらと思います。
彼は、今は怒りで何も見えなくなっていますが、もともとは冷静な人物ですので、山へ入ってからは確実に敵討ちをすることを第一に行動し始めると思われます。むやみに正面から突っ込んでいくことはないかと……。
敵討ちに反対の方も賛成の方も、いろいろいらっしゃるでしょうが、助けていただけたらと思います。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/12/03 18:45
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談卓 不動 シオン(ka5395) 人間(リアルブルー)|27才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/11/26 07:38:17 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/24 00:39:46 |