ゲスト
(ka0000)
優しくなんかしてやらない
マスター:波瀬音音

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/12/10 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/12/19 19:00
オープニング
●かき乱される
村の中心にある教会に、あたしを含めた村人たちは集まっていた。
村を囲む森に現れた雑魔を討伐しに、これからハンターが来るというのだけれど、自分たちの安全の為に一ヶ所に集まるようにしたのだ。そんなことはないと信じたいけれど、ハンターと戦闘中に雑魔が村に逃げてきたら……なんていう『万一』の事態に備える為だ。
あたしは教会の隅で、雑魔の影に怯えたり、でもハンターが来てくれるからもう大丈夫と安堵したりしている村の人達を見て、ざらついた感情を持て余していた。
あの時と似ている。
なんとなくそんなことを考えて鼓動を鎮めるように胸を押さえつけていると、
「ルネはどこ!? まだ来ていないの!?」
ある夫人の、そんな悲痛な叫びが教会中に響いた。
一瞬場が静まり返り、次に先程とは違うざわめきが起こり始める。
更にその直後、
「ぼく、あいつが行ってる場所に心当たりがあるので行ってきます!」
まだ声変わりもしていない男の子が叫んだ。
声の主――クレールは、大人たちが反応を返す前にはもう教会の扉のところまで行っていた。
その姿を見て、あたしの中でさっきまでとは別種の気持ちがざわめく。
「だめだよ、母さん! クレールなら戻ってくるってば! 待ってようよ!」
「あの子はまだ、友達と一緒じゃないと森で迷っちゃうのよ……!」
あの時の記憶が、あたしの中でフラッシュバックする。
だから今度も、「やめてよ、なんでそこであんたが行くのよ」と言いたかった。
でもクレールは、その前に既に教会を飛び出していた。
あたしは、一歩も動けなかった。
●とある姉弟のはなし
クレールがあたしの弟になったのは、あたしが六歳の頃だった。
彼とは、血は繋がっていない。
孤児院にいたところを、父さんが引き取って養子にしたのだ。
理由はわかっている。
あたしの為。
もちろん他にも色々あるだろうけど、少なくとも自分が理由になるだけの自覚はある。
父さんは仕事が忙しくて、家にいないことが多い。
兄弟もいない。
そして母さんは、あたしを産んだ後あたりから病気がちで、もう子供は望めないだろうと言われていた。
そうと知るのはクレールが来てから少し後の話になるのだけれども、それまでにあたしがどれだけ「弟か妹がほしい」と言っていたかと思うと、母さんに謝りたい気持ちでいっぱいになったものだった。
幸い、小さい村の中にある割に、あたしの家は決して貧しい訳ではなかった。
思うように動けない母さん、幼かったあたし以外にもお手伝いさんがいたりしたのだけど、寂しいものは寂しい。
だから、ある時帰ってきた父さんがクレールを連れてきたのだった。
突然の環境の変化にビックリしていたんだと思う。
当時まだ三歳だったクレールは、よく泣いた。
その度に彼を落ち着かせたのは、母さんだった。
……ただでさえベッドの上にいる時間が長くなっていた母さん。
クレールがきてからというもの、あたしが母さんとふれあえる時間は彼に奪われるかたちで少なくなった。
別に姉弟仲が悪いわけじゃなかった。あたしも「お姉さん」であろうと頑張ったし、クレールだって懐いてくれた。
でも、あたしでは母性までは埋められない。
だから仕方ないといえば仕方ないのだけど、それが寂しくて、そして悔しく思うこともあって――。
そして、あの日は訪れた。
三年も経てば、クレールも大分村に溶け込んだ。小さい村だけど、同世代の友達が何人か出来たらしい。村にはあたしとは同い年の子がいないから、ほんの少し羨ましかった。
でもその頃から、森には雑魔が現れるようになっていた。
雑魔の脅威と恐怖を、その時クレールたちはよく知らなかった。
あたしも、その点は人のことは言えない。
ハンターが雑魔討伐に来るにあたり念の為と村人たちが教会に集められて、あたしも初めて「そういうものだ」と知ったのだから。
集められた人々の中に、クレールの姿はなかった。
たまたま身体の調子が良かったのも手伝って、母さんはあたしや周りの制止を振り切って森に行き――。
次にクレールとともにハンターに発見された時には、もう助からない命になっていた。
あんたが、教会に居なかったから。
あんたが、あの時まだ森になんて居たから。
あんたが、この家に来たから――母さんは、死ななくていい時に、死んだ。
それ以来、あたしはろくにクレールとは口をきいていない。
当初、クレールは何度も泣きそうになりながら謝りにきたけれど、あたしは聞かなかった。
そのうち空気でも読んだのか、クレールがあたしに話しかけてくることもなくなって。
あたしもクレールも、家ではお手伝いさんか、たまに帰ってくる父さんとしか話さなくなっていた。
それなのに。
どうして今ここで、あんたが、あの時の母さんと同じことをするの。
今更何をやったって母さんは帰ってこない。それはわかっているはずなのに。
いや――違う、そうじゃないんだ。
あの時雑魔を倒したハンターが、気を失っているクレールをあたしのところに連れて来て言ったことを、不意に思い出す。
「もう事切れそうなのは、私たちの目からはすぐ分かった……。
それでもこの子は、泣きそうな顔だったけど、お母さんを守ろうと必死になって雑魔の前に立ち塞がろうとしていたよ」
守りたい。母さんを、友達を。
あの時も今も、ただそれだけで身体を動かしている。
泣き虫なのに。
――でもそんなのってないよ。
これであんたがあの時の母さんみたいなことになったら、あたしはどうすればいいっていうの?
そんなのは絶対に嫌だ。
だって何があってももう、クレールはあたしの弟なんだ。
考えれば考えるほど、頭の中に激しい感情が駆け巡る。
そんな時、あたしにとっては恐ろしいほどのタイミングの良さで、村人の安全を確認しに来たハンターたちが教会へ入ってきた。
いてもたってもいられなかった。あたしは思い切り教会の中を走り抜けるとハンターたちの前に躍り出て、叫んだ。
「早く行って!
ルネだけじゃなくクレールも――あたしの家族を、助けてよッ!!」
村の中心にある教会に、あたしを含めた村人たちは集まっていた。
村を囲む森に現れた雑魔を討伐しに、これからハンターが来るというのだけれど、自分たちの安全の為に一ヶ所に集まるようにしたのだ。そんなことはないと信じたいけれど、ハンターと戦闘中に雑魔が村に逃げてきたら……なんていう『万一』の事態に備える為だ。
あたしは教会の隅で、雑魔の影に怯えたり、でもハンターが来てくれるからもう大丈夫と安堵したりしている村の人達を見て、ざらついた感情を持て余していた。
あの時と似ている。
なんとなくそんなことを考えて鼓動を鎮めるように胸を押さえつけていると、
「ルネはどこ!? まだ来ていないの!?」
ある夫人の、そんな悲痛な叫びが教会中に響いた。
一瞬場が静まり返り、次に先程とは違うざわめきが起こり始める。
更にその直後、
「ぼく、あいつが行ってる場所に心当たりがあるので行ってきます!」
まだ声変わりもしていない男の子が叫んだ。
声の主――クレールは、大人たちが反応を返す前にはもう教会の扉のところまで行っていた。
その姿を見て、あたしの中でさっきまでとは別種の気持ちがざわめく。
「だめだよ、母さん! クレールなら戻ってくるってば! 待ってようよ!」
「あの子はまだ、友達と一緒じゃないと森で迷っちゃうのよ……!」
あの時の記憶が、あたしの中でフラッシュバックする。
だから今度も、「やめてよ、なんでそこであんたが行くのよ」と言いたかった。
でもクレールは、その前に既に教会を飛び出していた。
あたしは、一歩も動けなかった。
●とある姉弟のはなし
クレールがあたしの弟になったのは、あたしが六歳の頃だった。
彼とは、血は繋がっていない。
孤児院にいたところを、父さんが引き取って養子にしたのだ。
理由はわかっている。
あたしの為。
もちろん他にも色々あるだろうけど、少なくとも自分が理由になるだけの自覚はある。
父さんは仕事が忙しくて、家にいないことが多い。
兄弟もいない。
そして母さんは、あたしを産んだ後あたりから病気がちで、もう子供は望めないだろうと言われていた。
そうと知るのはクレールが来てから少し後の話になるのだけれども、それまでにあたしがどれだけ「弟か妹がほしい」と言っていたかと思うと、母さんに謝りたい気持ちでいっぱいになったものだった。
幸い、小さい村の中にある割に、あたしの家は決して貧しい訳ではなかった。
思うように動けない母さん、幼かったあたし以外にもお手伝いさんがいたりしたのだけど、寂しいものは寂しい。
だから、ある時帰ってきた父さんがクレールを連れてきたのだった。
突然の環境の変化にビックリしていたんだと思う。
当時まだ三歳だったクレールは、よく泣いた。
その度に彼を落ち着かせたのは、母さんだった。
……ただでさえベッドの上にいる時間が長くなっていた母さん。
クレールがきてからというもの、あたしが母さんとふれあえる時間は彼に奪われるかたちで少なくなった。
別に姉弟仲が悪いわけじゃなかった。あたしも「お姉さん」であろうと頑張ったし、クレールだって懐いてくれた。
でも、あたしでは母性までは埋められない。
だから仕方ないといえば仕方ないのだけど、それが寂しくて、そして悔しく思うこともあって――。
そして、あの日は訪れた。
三年も経てば、クレールも大分村に溶け込んだ。小さい村だけど、同世代の友達が何人か出来たらしい。村にはあたしとは同い年の子がいないから、ほんの少し羨ましかった。
でもその頃から、森には雑魔が現れるようになっていた。
雑魔の脅威と恐怖を、その時クレールたちはよく知らなかった。
あたしも、その点は人のことは言えない。
ハンターが雑魔討伐に来るにあたり念の為と村人たちが教会に集められて、あたしも初めて「そういうものだ」と知ったのだから。
集められた人々の中に、クレールの姿はなかった。
たまたま身体の調子が良かったのも手伝って、母さんはあたしや周りの制止を振り切って森に行き――。
次にクレールとともにハンターに発見された時には、もう助からない命になっていた。
あんたが、教会に居なかったから。
あんたが、あの時まだ森になんて居たから。
あんたが、この家に来たから――母さんは、死ななくていい時に、死んだ。
それ以来、あたしはろくにクレールとは口をきいていない。
当初、クレールは何度も泣きそうになりながら謝りにきたけれど、あたしは聞かなかった。
そのうち空気でも読んだのか、クレールがあたしに話しかけてくることもなくなって。
あたしもクレールも、家ではお手伝いさんか、たまに帰ってくる父さんとしか話さなくなっていた。
それなのに。
どうして今ここで、あんたが、あの時の母さんと同じことをするの。
今更何をやったって母さんは帰ってこない。それはわかっているはずなのに。
いや――違う、そうじゃないんだ。
あの時雑魔を倒したハンターが、気を失っているクレールをあたしのところに連れて来て言ったことを、不意に思い出す。
「もう事切れそうなのは、私たちの目からはすぐ分かった……。
それでもこの子は、泣きそうな顔だったけど、お母さんを守ろうと必死になって雑魔の前に立ち塞がろうとしていたよ」
守りたい。母さんを、友達を。
あの時も今も、ただそれだけで身体を動かしている。
泣き虫なのに。
――でもそんなのってないよ。
これであんたがあの時の母さんみたいなことになったら、あたしはどうすればいいっていうの?
そんなのは絶対に嫌だ。
だって何があってももう、クレールはあたしの弟なんだ。
考えれば考えるほど、頭の中に激しい感情が駆け巡る。
そんな時、あたしにとっては恐ろしいほどのタイミングの良さで、村人の安全を確認しに来たハンターたちが教会へ入ってきた。
いてもたってもいられなかった。あたしは思い切り教会の中を走り抜けるとハンターたちの前に躍り出て、叫んだ。
「早く行って!
ルネだけじゃなくクレールも――あたしの家族を、助けてよッ!!」
解説
貴方たちは雑魔の討伐の依頼を受け、この村を訪れました。
依頼としての成功を得る為には、まず討伐を果たす必要があります。
その上で、被害や犠牲をより少なくすることでより評価は上がります。
教会に村人たちが集まっていることも、事前情報として伝えられています。
●雑魔
体長2m程の、二足歩行の熊に酷似した姿の雑魔です。数は1体。
両腕が異常に長く、かつしなやかに動く為、思い切り振り回すだけで周辺1スクエアの相手にも攻撃が届きます。
また筋力も高く、目撃情報の中には自らが倒した木を投げ飛ばしていたというものもあります。
一方で、動きは鈍重である模様。但し、毛皮越しに見ても全身が筋肉質なのはわかります。
特に知能が高いわけではないらしく、ただ逃げるだけの餌なら距離を置いた時点ですぐに興味を失います。
●森
木々の密度は高くはなく、標的が余程離れていなければ射撃の射線に困ることはあまりありません。
村からは北へ幅2スクエア程の林道がまっすぐに伸びており、40スクエア進むと眼前に崖が聳え立ちます。
崖は只管横に長く続いており、崖の上は戦場とはなりません。
但し、林道の終着点から見てやや東の方角に、洞穴があります。
他、村から見て北西に15スクエア程進んだところに、後々薪に使う為に切り倒された木々が保管された小屋があります。
また、村から北東に20スクエア進んだあたりに他より一際太い巨木があり、その幹は洞になっているようです。
●NPC
リヌ(OP中の「あたし」):
村の中では裕福な家に暮らす少女。3年前の母親の死以来心を閉ざしがち。
クレール:
6年前にリヌの家に養子に入った子供。やや泣き虫だが友達思い。
ルネ:
クレールの同い年の友達。
依頼としての成功を得る為には、まず討伐を果たす必要があります。
その上で、被害や犠牲をより少なくすることでより評価は上がります。
教会に村人たちが集まっていることも、事前情報として伝えられています。
●雑魔
体長2m程の、二足歩行の熊に酷似した姿の雑魔です。数は1体。
両腕が異常に長く、かつしなやかに動く為、思い切り振り回すだけで周辺1スクエアの相手にも攻撃が届きます。
また筋力も高く、目撃情報の中には自らが倒した木を投げ飛ばしていたというものもあります。
一方で、動きは鈍重である模様。但し、毛皮越しに見ても全身が筋肉質なのはわかります。
特に知能が高いわけではないらしく、ただ逃げるだけの餌なら距離を置いた時点ですぐに興味を失います。
●森
木々の密度は高くはなく、標的が余程離れていなければ射撃の射線に困ることはあまりありません。
村からは北へ幅2スクエア程の林道がまっすぐに伸びており、40スクエア進むと眼前に崖が聳え立ちます。
崖は只管横に長く続いており、崖の上は戦場とはなりません。
但し、林道の終着点から見てやや東の方角に、洞穴があります。
他、村から見て北西に15スクエア程進んだところに、後々薪に使う為に切り倒された木々が保管された小屋があります。
また、村から北東に20スクエア進んだあたりに他より一際太い巨木があり、その幹は洞になっているようです。
●NPC
リヌ(OP中の「あたし」):
村の中では裕福な家に暮らす少女。3年前の母親の死以来心を閉ざしがち。
クレール:
6年前にリヌの家に養子に入った子供。やや泣き虫だが友達思い。
ルネ:
クレールの同い年の友達。
マスターより
一人称モノローグは筆がスイスイいってくれます。内容に関係なく。
興が乗りすぎて初稿は字数がとんでもないことになっていました。波瀬音音です。
ひたすら長いモノローグも、実はちらほら依頼としての意味もあったりします。
具体的に何が、とは、言いませんけれども。
興が乗りすぎて初稿は字数がとんでもないことになっていました。波瀬音音です。
ひたすら長いモノローグも、実はちらほら依頼としての意味もあったりします。
具体的に何が、とは、言いませんけれども。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/12/25 03:58
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 シャルア・レイセンファード(ka4359) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/12/09 23:14:38 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/07 00:43:20 |