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【深棲】BABEL

マスター:藤山なないろ

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
プレイング締切
2014/08/08 19:00
リプレイ完成予定
2014/08/17 19:00

オープニング



 固く閉ざされた一室では円卓会議――グラズヘイム王国の最高意思を決定する会議が開かれていた。
 王女システィーナ・グラハムを始め、大司教セドリック・マクファーソン、騎士団長エリオット・ヴァレンタイン、侍従長マルグリッド・オクレール、聖堂戦士団長ヴィオラ・フルブライト、そして王族の一としてヘクス・シェルシェレット。
 その他、大公マーロウ家を筆頭とした王国貴族を含め、十数名が白亜の卓子に各々の思惑滲む顔を写している。
 重苦しい空気の中、王女が懸命に言葉を紡ぐ。
「自由都市同盟――隣人の危機です。私は急ぎ騎士団の派兵……」
「規模が、問題ですな」
 王女を制したのは大司教だった。
「騎士団と安易に仰るが、その数は? その間の国内をどうされる?」
「……どうにかやりくりして、できるだけ多くを」
 王女の縋るような視線を受け、騎士団長の眉が寄る。彼だけではない。大司教も侍従長も、そして聖堂戦士団長ですら同じ表情だ。
 言わんとするところは、誰もが同じだった。
「……現在の騎士団に、余力はありません」
「……ごめ、んなさい……私が……」
 ちゃんとした指導者だったら、きっと国はもっと強かった。
 無念そうに言葉を絞り出す騎士団長に、王女は消え入りそうな声で詫びる。
「まあ」ヘクスが軽薄に笑う。「余力はない、が全くの知らんぷりもよろしくない。さて、どうしよう」
 ねぇ、と問うた彼の視線の先。
「聖堂戦士団は半数を派遣致します。当然私も向かうことになるでしょう」
 ヴィオラが応じた。エクラ教の絶対的教義故、迷いのない言葉。
「良いのでは。王国たるに相応しい威光を示す良い機会かと」
 マーロウ家現当主、ウェルズ・クリストフ・マーロウが穏やかに言うと幾人かの貴族が首肯し、残りが眉を動かした。王女が口を出す前に大司教が言う。
「『騎士団の派遣は現実的ではない』。殿下、その慈悲で以て我が国の現状にまず目を向けて頂きたい」
「でも……」
 王女が何かを堪えるように唇を引き結ぶ。誰かが、小さく苦笑した。
「少数ならば」エリオットだ。「派遣できましょう」
「す、少しならできるのですか!?」
 大司教が騎士団長を睨めつけ、諦めたように息を吐く。
「騎士団長がそう言われるのであれば、是非もありませんな。――侍従長?」
「私は特に。異論ありません」
 侍従長の目が、他の出席者を巡る。
 出来る限りの譲歩だ、異論が出るはずもない。――王女の、本音を除いて。
「……で、では、少数の騎士団と半数の聖堂戦士団を派遣、同時に備蓄の一部を支援物資に回しましょう」
 次々と席を立つ面々。最後に部屋を後にするへクスと両団長の背に、王女は一度だけ目を向けた。


● UNKNOWN

「ニンゲン居ないね」
「貴女の目は節穴なのね」
「ワァーシン暴れてるからだよ」
「ここでは暴れてないじゃない」

 ──王国某所。遠方に町を望むそこに、不穏な集団が居た。
 半人半羊型の歪虚の群れ。その中央に、“人の姿をした何か”が2体。

「この辺どうかな?」
「あっちの方がいいと思うわ」
「……文句あるの?」
「あら、貴女は文句はないの?」
「ないよ。あっち行こう!」

 遠くに見える町を襲うでもなく、おかしな“群れ”は去ってゆく。
 王国の、別の場所へと──


● BABEL

 それは、世界が生まれて間もない頃のお話。
 人は、神より与えられた使命を全うすべく、地で産み、増え、満ちた。
 やがて文明は発展し、人々は様々な力を手に入れ始めた。
 だが、そんな力が人を驕らせたのだろうか。
 ある日、人は天にも届く“塔”を作り始めた。それはすなわち天国への門。
 地に栄えよという使命も忘れ、人は地を離れようとした。
 神は、人をどう思ったのだろう。
 ついぞ天に手が届こうとした時、神は人を裁いた。

 それは、傲慢の代償───。


「へぇ、変わった歌だな」
 グラズヘイム王国の首都。その第3街区のとある酒場で吟遊詩人がそんな意味合いの歌をうたっていた。
 だが感想の礼もそこそこに、吟遊詩人は酒場のマスターに別の話を切り出す。
「これはね、リアルブルー人の祖母から伝わった歌よ。それより……最近お客が少ないんじゃない?」
 気にもするだろう。彼女の収益にも関わる。だが、これにはマスターも苦い表情を浮かべるばかり。
「隣の同盟領で大きい戦が始まるってんで、騎士団も出兵したそうだ」
 お陰で国内の任務はギリギリの大忙し。酒を飲みに来る余裕すらないのだろう。
 マスターはため息を零し、洗い上がった金属製のコップを丁寧に拭いて棚にしまった。

 王国首脳陣を集めた円卓会議の後、王国騎士団長はすぐさま2人の副団長を招集。団長を含めた計3名の幹部で首脳会議を開いた。結果、此度の大規模戦闘のため騎士団全体の編成の見直しを実施。現場の騎士たちの強い覚悟もあったのだろう。騎士団は大規模戦闘終了までの間、今より少人数で国を守り遂せるよう騎士各位の負担増をベースにした再編案を確定した。同時に、同盟領へ派遣する為の王国騎士団特別編成部隊を結成。副団長のダンテ・バルカザールを筆頭に、特別編成部隊は同盟領へと発った。それが数日前のこと。
 特別編成部隊が王都を発ったと言うことは、その分の人員が王国の守りから抜けたと言うことだ。
 王国の警備体制は、今、前代未聞の手薄さを露呈していた。

「エリオット様!」
 現場の騎士同様に哨戒任務にあたっていた騎士団長エリオット・ヴァレンタインが、業務の切れ目に騎士団本部へ帰還した時だった。本部ロビーには騎士団在籍経験の長い数名の騎士が集まっており、その中にいた1人の騎士が、エリオットを見つけるなり駆け寄ってきた。
「ご報告です! また、羊型の歪虚が……!」
 騎士たちは、皆深刻な表情だ。その“原因”を、彼らは共有しているのだろう。
「……どこだ」
「西です。どうやら、群れで北に向かっている様子で……」
 エリオットは深い息を吐いた。昂りそうになる鼓動を、抑える為に。だが、古参の騎士が不安を隠しきれない様子で問う。
「一月以上前だったか。羊が、西に現れたんだった、よな?」
「……単発の討伐依頼として対応し、以後の調査結果も異変は感知していない」
 勤めて冷静に。それが青年にできる最大限の対応だ。
「現場から近い駐屯地の騎士団員に早馬を飛ばして対処させますか?」
 ある騎士の提案に、別の騎士が声を上げた。
「大規模戦闘の影響で現場は……特に西部は既に限界に近い! そこに歪虚の大群を討伐しろなんて……!」
 張りつめた空気は、王国の現状を如実に表した。
 円卓会議でエリオットが口にした言葉は、一言一句適切だったのだ。

『……現在の騎士団に、余力はありません』

「俺が出る」
「エリオット様お一人では……!」
「ハンターを少数、ソサエティに依頼する。騎士団の現状は……俺の責任だ」
 そう言い残し、王国騎士団長はもう随分休息していない体で本部を後にした。

解説

エリオット
「同盟領での大きな戦いの中、自国の事で煩わせてしまうことを申し訳なく思う。
 ……どうか、王国のために……数名でいい。力を貸してはもらえないだろうか?」

▼状況
同盟領での大規模戦闘勃発にあたり、余力のない王国騎士団も身を切って戦力を派遣。
しかし、それによって国内の守りが手薄になっていたところに、歪虚の群れが現れました。
本来国を守るべき王国騎士団が自国の事件にうって出られないのは、悔しく、辛いのですが…騎士団は限界です。
どうか、皆さまのお力をお貸し頂けると幸いです。

▼目的
敵戦力の殲滅

▼成功条件
目的の達成

▼大成功条件
目的を達成したうえで××××××××××する。

▼敵戦力
【白羊】
二足歩行する半人半羊型の雑魔。各々に武器を持ち、哀れっぽい声で鳴く
数は一般人発見者の情報曰く『20匹前後』いたようだ、とのこと
(歪虚を見つけて逃げ出したため正確な数を数えられなかった)

▼地形その他
場所は王国西部、遮るもののないなだらかな平地。
発見地点から、雑魔の群れは北へ進んでいた、という情報を得ており
現地に行くと、平地の彼方に群れを見つけることができます
皆さんは、それを駆逐してください

時刻は昼
天候は晴れ

▼注意
OP中の「UNKNOWN」の箇所は、PC様は知り得ない情報です。
今回の敵戦力にも“人の形をした何か”は居ません。
その他にもPL情報にはお気をつけ下さい。

●NPC
グラズヘイム王国騎士団長エリオット・ヴァレンタインが騎士団から唯一本件に同行
皆様と共に戦います
クラスは闘狩人
強さは規格外
武器は西洋剣

※補足※
外からは分かりませんがどうやら多少疲労しているようです。
(本人が疲れていることを悟られたくない、気を遣わせたくないようですが)
数日間徹夜した後で当日も休憩なく討伐依頼へ急行。
そんな状況で100%の力を出せるほど人外ではなかったようですね。安心しました(

マスターより

大規模戦闘に人員を派遣した王国騎士団。
彼らの想いは「隣人の危機を放っておけない」とか「誰かが困っていたら助けたいと思うのは自然」とか。
“騎士本来の役目”を体現したようなものだったのかな、と。
少なくとも、彼らのそれは傲慢からくるものではないでしょう。
王国、そしてそこに集う人々は、優しい。優し過ぎる故に弱いのだと、私は思っています。

さて、ナイトメア三夜目。羊の饗宴が再び始まります。
いやぁ、きな臭いですねー(

「きみは、この世界・この舞台で、何かを成してもいいし、成さなくてもいい」
“貴方は何にでもなれるし、どこにでも行ける”んです。

あとはお気持ちひとつだけ。
皆さまのご活躍を心より楽しみにしております。

関連NPC

  • 王国騎士団“黒の騎士長”
    エリオット・ヴァレンタイン(kz0025
    人間(クリムゾンウェスト)|29才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/08/16 17:42

参加者一覧

  • 古塔の守り手
    クリスティア・オルトワール(ka0131
    人間(紅)|22才|女性|魔術師
  • 大口叩きの《役立たず》
    トライフ・A・アルヴァイン(ka0657
    人間(紅)|23才|男性|機導師
  • 不動の癒し手
    シェール・L・アヴァロン(ka1386
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • 思い出の守り手
    無銘(ka2060
    人間(蒼)|10才|男性|疾影士
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 未来を想う
    アイシュリング(ka2787
    エルフ|16才|女性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/08/04 23:41:53
アイコン 相談しましょ、そーしましょ♪
無銘(ka2060
人間(リアルブルー)|10才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/08/07 22:09:07