• 日常

希望への『宣言』

マスター:赤山優牙

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―

難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,500
参加人数
現在6人 / 6~6人
サポート
現在0人 / 0~10人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
プレイング締切
2015/12/29 09:00
リプレイ完成予定
2016/01/12 09:00

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

●王国北西部ブルダズルダの街
 エクラ教会の鐘塔の中、小さい一室があった。
 壁には小さい格子窓が備え付けてあるだけ。家具は古めかしいベッドのみ。
 扉は分厚い木製に鉄板が張ってあって石壁は冷たさを感じさせている。
「……」
 緑髪の少女――ノゾミ――は、そんな部屋の中で微動だにせずにいた。
 救助が来るとは思えない。歪虚ズールは人を助けるような性格はしていないし、オキナは王国北部へと行っているはずだから。
(ネル・ベル様……)
 祈るように両手を組んで、主である名を心の中で呼んだ。
 捕われてから、かなりの日数が経過している。
 拷問はなかった。罪人というのに、その待遇も悪くなかった。父と過ごした絶望の日々を思えば、むしろ、楽な暮らしだ。

 ドンドンドン――ガチャガチャ――

 扉から音が響く。
 名を呼ばれているが、敢えて返事はしなかった。間もなく扉が開くと、女性騎士と数人の兵士達の姿が見えた。
「貴方達は、下で待っていて」
 女性騎士は振り返って兵士達に命令する。
 兵士達は各々承知の声をあげると、降りて行った。
「初めまして……いえ、お久しぶりというべきかしら?」
 扉を閉めながら、女性騎士は少女に向かって言った。
 続けて、姿勢を正し、この騎士は少女に名乗る。
「第13独立小隊国内潜伏歪虚追跡調査隊『アルテミス』の小隊長ソルラ・クートです。ノゾミさんですよね。色々、話を伺っていいですか?」

●二人
「ノゾミさん。貴方には、歪虚への協力行為、雑魔等の危険体の取り扱い、自殺ほう助、殺人協力等、少なくとも5つ以上の嫌疑がかけられています」
 ソルラの言葉に少女は無表情のままだ。
 まるで人形の様……そんな風に、ソルラは思う。
「答えてもらっていいですか? 雑魔をどういう手段で手に入れたのか、歪虚ネル・ベルとの関係は?」
 返事はない。
 黙秘を続けるノゾミに、ソルラは思わず溜め息をついた。
「……配下の兵達の言う通りね。私はできれば、手荒なマネをしたくないの……ノゾミさんとも縁のあるハンターの方々と知り合いですし……」
 石像の様に動かなかったノゾミが、その台詞でピクっと動いた気がした。
「ノゾミさん……」
「……拷問したかったらすればいいのです。でも、それは絶望には成り得ません」
 やっと口を開いたと思ったら、この言葉だ。
「やっぱり、その声、古都で私を捕まえた人ですね」
「……」
 再び黙りこむノゾミ。
「ノゾミさん、聞いて下さい。このままでは王都に連行され、本当に拷問になってしまいます。ノゾミさんが助かる手段は一つ。貴女が知っている事を教えてくれれば、それでいいのです」
 脅迫する様な言い方だが、今のソルラにはこれが精一杯だった。
「…………助かって、どうなるのですか?」
 長い沈黙の後に、ノゾミがボソっと口を開いた。
「苦しい拷問を受ける事もなければ、命を失う事もないのですよ」
「それが、どうかしましたか? もし、その時、助かっても、その後、どうなるか、知っていますか?」
「それは……けど、生きてさえいれば」
 違うはずだと。
 きっと、なにかできる。新しく一歩を踏み出す事ができるはず。
「甘いです。そんな言葉」
 冷たい雰囲気を発しながら緑髪の少女は目を見開いた。
「『貴方達』はいつも、そうです。綺麗な言葉を並べるだけで、後は知らない振り、見ない振り。しまいには、門前払いで話しも聞いてくれない……」
 ノゾミの言葉は静かにだったが、その言葉の一句一句に力が感じられた。
 その瞳は――怒りで満ちている。
「そんな事はないです。私達は苦しい人々の為の救済も忘れたりはしません」
「だったら……なんで、『あの人達』を助けてくれなかったのですか」
「そ、それは……」
 ソルラには分かっていた。
 社会の理不尽の中に、埋もれてしまった全ての人を救う事は、不可能に近い事を。救う側も人であり、資源や時間にも限りがある以上、越えられない諸事が存在する。
 救われた人と、救われない人との間に生じてしまった差は、埋めようにも埋められないのだ。
 そして……ソルラには、為政者として回答する言葉を持っていなかった……。

●苦悩
 川の土手でソルラが座り込んでいた。
 夕日は沈み、黄昏の時が静かに流れていく。
「私は甘い……のですね……」
 先の事を見通す想像力に欠けていると、リアルブルーから転移してきた人にも言われた事があった。
 まったくその通りだ。あの少女は、自分では経験もしない絶望を体験しているのだろう。
「どうすればいいのですか……」
 少女を助けるつもりでいた。
 歪虚に操られている可哀想な少女だと思っていた。
 けれど、実際は違った。頑なに黙秘を続けていたのは、主である歪虚の為だったのだから。
「私には……分かりません……」
 こんな時、システィーナ姫だったらどうしただろう。想い守る為に成せる事を行うのだろうか。
 エリオット団長はどうしただろうか。厳しい表情を浮かべたまま、騎士としての行動を取るのだろうか。
 あるいは、皇帝陛下だったら――己の信じる道を勇気を持って突き進むのだろうか。

 ――そのいずれも、今のソルラには無かった。
 緑髪の少女ノゾミは、いずれ、ブルダズルダの街の領主に身柄を移され、その後、王都へと連行される。
 苛辣な拷問が待ちうけているはずだ。そして、最後、歪虚の仲間として極刑が待っている。
 ある人は言うだろう。

 それが、罪の償い方だと。

「でも、私には……」
 少女は悪人だったのだろうか。
 その少女を生んだのは、誰なのか……王国なのか、社会なのか、それとも、関わっていた人なのか、無関心な人だったのか。

●再会
「力を貸してやってもいいぞ、王国の騎士よ」
 不意に背後から声を響き、慌てて振り返る。
「……ネル・ベル」
 ソルラは絶句した。まさか、こんな所で出逢うとは。
 咄嗟に、剣の柄に手をかけた。
「歪虚なんかの手など借りない!」
「威勢が良いな。だが、冷静に考えてみろ。私なら、我が従者を容易く救い出せるのだぞ」
 不敵に笑う歪虚。
 一瞬、その言葉に魅かれそうな自分がいた事にソルラは怒りを覚えた。
「信用できません! そもそも、歪虚という存在がいなければ、こんな事にはならないのに!」
 誘惑を振り払うようにソルラは叫び声をあげた。
 歪虚は大げさに両手を上げて見せる。
「なら、私は立ち去ろうとしよう。だが、私の力が必要になった時、逢いに来るといい。私には分かる。貴様は必ず、私の力が必要となるとな」
 それだけ言い残し、歪虚は瞬時に消え失せた。


★連動シナリオ「傲慢からの誘い」のオープニングに続きます★

解説

●依頼内容
歪虚の仲間と思われる少女ノゾミとの面会
(尋問でないので、少女から情報を集める必要はありません。これは、前依頼である≪『過去』の罪科≫において、ハンター達の活躍が認められた結果による面会の為です)

●ノゾミがいる部屋
ブルダズルダの街にあるエクラ教会の鐘塔の中に部屋はあります。
面会場所もここになります。

●アルテミス小隊
本来は部屋の前に見張りがいますが、面会の時は、塔の下で待機しています。
(塔に近付く不審者を警戒しています)

●面会
間違いがないように、必ず2人一組で面会をして下さい。
プレイング上で指定がない時は、ランダムに決定します。
道具類の持ち込みは禁止です。飲み物や食べ物も禁止となります。

●登場NPC
ソルラ、ネル・ベル共に、NPC欄を確認いただければと思います。
諸事情により、質問卓には、まるごとねるべるを被ったなにかが対応しますので、よろしくお願いします。

●サポート枠
描写の保障はありません。ご利用方法を確認の上、必要であれば、ご利用下さい。

――――――以下、マスターより――――――
●連動シナリオについて
当依頼は、『傲慢からの誘い』シナリオと連動しています。
当依頼で達成度を上げる為の条件の一つとして、『傲慢からの誘い』の達成度が『成功』以上が必要となります。
また、双方、連動シナリオに参加されるキャラクターが若干、リプレイ内に登場する可能性もあります。

●攻略のヒント
ヒントは過去依頼にちりばめて来ました。
あとは、各々が持てる力を発揮していただければと思います。

●その他
内容によっては、かなりのアドリブが入る事になります。
ご理解の程、よろしくお願いします。

●ご挨拶
皆さん、お元気ですか? 私は、たぶん元気です。

【ノゾミの大冒険 第12歩(話)】(最終回)です。依頼名は副題になります。
ここまで辿り着いたのも、皆さんのおかげです。本当に、ありがとうございます。

マスターより

難易度が『難しい』は、私の依頼の中で初めてだったりします。戦闘シナリオではなく、ただ面会するだけですが、『難しい』です。
これは、達成度を上げる為の条件が極めて厳しく、シビアである事。
万が一の事態の場合、今後のシナリオ展開において、ハンター達の前に強大な障害が発生してしまうかもしれない為です。
おまけに、面会なので、ゲーム内通貨の報酬はありません。

という事で、依頼内容的には、数値的にウマミがあまりない事になっています。
それでも、一人の少女の為に成し遂げられる事があるのであれば……ご参加をお待ちしております。

様々な結末があり得ます。その中から、皆さんが必ずやハッピーエンドを掴む事を信じて。

関連NPC

  • 歪虚
    ネル・ベル(kz0082
    歪虚|22才|男性|歪虚(ヴォイド)
  • 鉄壁の騎士
    ソルラ・クート(kz0096
    人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/01/07 16:59

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 憧れのお姉さん
    マヘル・ハシバス(ka0440
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • Beeの一族
    Non=Bee(ka1604
    ドワーフ|25才|男性|機導師
  • 甘えん坊な奥さん
    アルラウネ(ka4841
    エルフ|24才|女性|舞刀士

  • 小鳥遊 時雨(ka4921
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/12/24 01:26:55
アイコン 【相談卓】ノゾミへの『宣言』
Uisca=S=Amhran(ka0754
エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/12/29 08:50:57
アイコン 質問卓 ~まるごと☆ねるべる~
ネル・ベル(kz0082
歪虚|22才|男性|歪虚(ヴォイド)
最終発言