ゲスト
(ka0000)
君が信じる君の為に
マスター:鹿野やいと

このシナリオは3日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/01/04 09:00
- リプレイ完成予定
- 2016/01/16 09:00
オープニング
ブラックバーン伯爵領は盗賊ギルドとの抗争以後、概ね大きな争いもなく世俗を忘れる平穏な日々が続いていた。その3ヵ月は虐げられていた者達にとって代え難い日々だった。盗賊ギルドマスターの養子であったレスターの生活環境は、ギルドで飼われていた頃に比べ劇的に改善されていた。発育不良で15才に見えない小柄な彼であったが、背が伸びて肉が付き、瞬く間に年相応の身体を獲得しつつある。
生活の余裕と共に笑顔の増えたレスターではあったが、ここ数日は一転して気落ちしているのが常となっていた。普段の夕食なら訓練の空腹でがっつくのだが、今日もまたもそもそとシチューと白パンを飲み下している。
兵士長のリカードは食後のエールを飲みながら、扱いに困りつつもレスターを眺めていた。親子程度に年の離れた2人だが、リカードが年不相応に童顔で口髭が似合わない為に、年の離れた兄弟のようにも見えた。
「大変だな、お前も」
「…………はい」
レスターはようやく言葉を発した。
情けないやら悔しいやら、気持ちはその表情を見るだけで容易に見て取れた。理由は城内の兵士であれば誰でも知っている。騎士との訓練が原因だ。ピースホライズンへ主力を増援に出したことで伯爵領は手薄となった。
その代替として王国からは負傷で帰国した赤の隊の騎士達が駐留することとなった。これはまたとない機会であると、ここ数日は彼らを交えての訓練が活発に行われている。
覚醒者であるレスターの相手を務めるのは、ツヴァイハンダーを自在に操る覚醒者の騎士アリサ。
アリサは猫科の動物のようなしなやかさと力強さを持ち合わせた、有り体に言えばメスライオンと形容するのがしっくりくる女性だった。野生的な美しさを備えつつも、鋭い牙の存在も強く感じさせる。
彼女がレスターに課した訓練は苛烈の一言だった。模擬戦でレスターが倒れるたびに彼女は強く叱咤する。
「情けない。伯爵があんたを置いていったのは、足手まといだからじゃなくて、ここの戦力として数えてるからよ。そのあんたがその体たらくでどーすんのよ!」
「……」
レスターは荒い息をつきながらも何度も立ちあがった。何度も彼女に挑みかかり、そのたびに手も足も出ずに敗れ去る。結果は何日繰り返しても同じ。今日も今日とてのされておしまいだ。
アリサに悪意はない。善意というには粗暴だが、未熟なレスターを彼女なりに慮ってのことだろう。彼女の出す課題をクリアできないレスターには、それが余計に重荷となった。自分より少し年上の若い女性に、為す術なく打ち倒されているという事実も大きいだろう。
「…………リカードさん」
「ん?」
「ぼく、つよくなりたいです」
絞り出すような声だった。リカードはその内容に驚きつつも、弟に向けるような優しい笑顔を浮かべた。純粋というには少々子供っぽいが、わかりやすく素直な点は評価できる。
とはいえ、リカードが教えられる範囲には限度があった。基礎的な筋力や反射速度が敵わない以上、教えられるのは技術のみだ。それすら長らく続いた激戦を越えて来たアリサには遠く及ばない。彼女の剣撃の激しさは領主の弟であるジェフリー・ブラックバーン(kz0092)にも迫るだろう。
同じ兵士長で覚醒者のオイヴァが居ればマシな教練もつけられるのだが、生憎と領主に連れられてピースホライズンに向かってしまった。とすれば残りの選択肢は限られてくる
「よし。明日ハンターの連中に私から相談しておいてやろう」
「あ……ありがとうございます! ……それと、その……」
「彼女には秘密に、だろう? わかっているとも」
レスターはほっとした顔でまた頭を下げる。安心したレスターは残ったパンをシチューで流し込むと、夜の雑務をこなしに席を立った。リカードはその背を見送りつつ、街に滞在する誰に頼むべきかを思案した。
■
王国より派遣された5人の騎士達は城内の余った兵舎に寝泊りしていた。騎士とはいえ遠征慣れして頻繁に野宿もしていたので、ベッドがあって壁があるだけで十分と言う者達ばかりだった。
夕食が終わると男性の騎士達はこぞって城内の井戸に向かい、手早くお湯を沸かして清拭を済ませた。ぱりっとした普段着に着替えると意気揚々と宿舎を出る。そこでばったりとアリサと鉢合わせた。
アリサは通り過ぎようとする男達を呆れてにらみ付けた。
「あんた達、もしかしてまたなの?」
「良いだろ、今夜は非番なんだし」
「非番の度にだから言ってるのよ」
男達は非難するアリサに悪びれながらも、平然と彼女の前を過ぎていく。行き先はわかっている。いわゆる、女の子ばかりのお店だ。これまで遠征続きで給料を使う機会が少なかったから取り戻してるのだろうが、幾ら何でもとも思う。
店側からすれば行儀が良くて金払いが良くて、いざとなれば用心棒の代わりにもなる彼らは良い顧客だった。店に行けばどこでもサービスが良いと男達は暢気に笑っている。
「お前も休みぐらいはゆっくりしろよ。どうせ次の合流まで仕事はねえんだしさ」
「それは……そうだけど」
言い淀んでいる間に男達は門をくぐっていってしまった。残されたアリサは、人知れずため息をついた。
アリサもわかっている。レスターへの対応は半分以上が八つ当たりなのだと。八つ当たりしかしてないアリサに比べれば、男達の発散方法は健康的だ。
レスターはよくやっている。指南役が居ない中でも毎日欠かさず鍛錬をし、終われば勉強する日もある。あんな稽古をつければ彼に良くない焦りを与えるだけだとわかっているのに、気づけば今日も彼に辛く当たってしまった。
今日に始まったことではない。王都に帰りこの仕事を与えられてからずっとだ。仲間達が今も帝国の激戦に身を置く中、自分達は不甲斐なくも送り返されてしまった。降ってわいた日常になじめず、悔しさと情けなさのやり場もない。夜毎孤独になるたびに無力感が心をむしばんでいく。
アリサは憂鬱な気持ちのまま、1人で与えられた柔らかい寝床へと帰って行った。その柔らかさでさえも、彼女は受け入れ難いと思い始めていた。
生活の余裕と共に笑顔の増えたレスターではあったが、ここ数日は一転して気落ちしているのが常となっていた。普段の夕食なら訓練の空腹でがっつくのだが、今日もまたもそもそとシチューと白パンを飲み下している。
兵士長のリカードは食後のエールを飲みながら、扱いに困りつつもレスターを眺めていた。親子程度に年の離れた2人だが、リカードが年不相応に童顔で口髭が似合わない為に、年の離れた兄弟のようにも見えた。
「大変だな、お前も」
「…………はい」
レスターはようやく言葉を発した。
情けないやら悔しいやら、気持ちはその表情を見るだけで容易に見て取れた。理由は城内の兵士であれば誰でも知っている。騎士との訓練が原因だ。ピースホライズンへ主力を増援に出したことで伯爵領は手薄となった。
その代替として王国からは負傷で帰国した赤の隊の騎士達が駐留することとなった。これはまたとない機会であると、ここ数日は彼らを交えての訓練が活発に行われている。
覚醒者であるレスターの相手を務めるのは、ツヴァイハンダーを自在に操る覚醒者の騎士アリサ。
アリサは猫科の動物のようなしなやかさと力強さを持ち合わせた、有り体に言えばメスライオンと形容するのがしっくりくる女性だった。野生的な美しさを備えつつも、鋭い牙の存在も強く感じさせる。
彼女がレスターに課した訓練は苛烈の一言だった。模擬戦でレスターが倒れるたびに彼女は強く叱咤する。
「情けない。伯爵があんたを置いていったのは、足手まといだからじゃなくて、ここの戦力として数えてるからよ。そのあんたがその体たらくでどーすんのよ!」
「……」
レスターは荒い息をつきながらも何度も立ちあがった。何度も彼女に挑みかかり、そのたびに手も足も出ずに敗れ去る。結果は何日繰り返しても同じ。今日も今日とてのされておしまいだ。
アリサに悪意はない。善意というには粗暴だが、未熟なレスターを彼女なりに慮ってのことだろう。彼女の出す課題をクリアできないレスターには、それが余計に重荷となった。自分より少し年上の若い女性に、為す術なく打ち倒されているという事実も大きいだろう。
「…………リカードさん」
「ん?」
「ぼく、つよくなりたいです」
絞り出すような声だった。リカードはその内容に驚きつつも、弟に向けるような優しい笑顔を浮かべた。純粋というには少々子供っぽいが、わかりやすく素直な点は評価できる。
とはいえ、リカードが教えられる範囲には限度があった。基礎的な筋力や反射速度が敵わない以上、教えられるのは技術のみだ。それすら長らく続いた激戦を越えて来たアリサには遠く及ばない。彼女の剣撃の激しさは領主の弟であるジェフリー・ブラックバーン(kz0092)にも迫るだろう。
同じ兵士長で覚醒者のオイヴァが居ればマシな教練もつけられるのだが、生憎と領主に連れられてピースホライズンに向かってしまった。とすれば残りの選択肢は限られてくる
「よし。明日ハンターの連中に私から相談しておいてやろう」
「あ……ありがとうございます! ……それと、その……」
「彼女には秘密に、だろう? わかっているとも」
レスターはほっとした顔でまた頭を下げる。安心したレスターは残ったパンをシチューで流し込むと、夜の雑務をこなしに席を立った。リカードはその背を見送りつつ、街に滞在する誰に頼むべきかを思案した。
■
王国より派遣された5人の騎士達は城内の余った兵舎に寝泊りしていた。騎士とはいえ遠征慣れして頻繁に野宿もしていたので、ベッドがあって壁があるだけで十分と言う者達ばかりだった。
夕食が終わると男性の騎士達はこぞって城内の井戸に向かい、手早くお湯を沸かして清拭を済ませた。ぱりっとした普段着に着替えると意気揚々と宿舎を出る。そこでばったりとアリサと鉢合わせた。
アリサは通り過ぎようとする男達を呆れてにらみ付けた。
「あんた達、もしかしてまたなの?」
「良いだろ、今夜は非番なんだし」
「非番の度にだから言ってるのよ」
男達は非難するアリサに悪びれながらも、平然と彼女の前を過ぎていく。行き先はわかっている。いわゆる、女の子ばかりのお店だ。これまで遠征続きで給料を使う機会が少なかったから取り戻してるのだろうが、幾ら何でもとも思う。
店側からすれば行儀が良くて金払いが良くて、いざとなれば用心棒の代わりにもなる彼らは良い顧客だった。店に行けばどこでもサービスが良いと男達は暢気に笑っている。
「お前も休みぐらいはゆっくりしろよ。どうせ次の合流まで仕事はねえんだしさ」
「それは……そうだけど」
言い淀んでいる間に男達は門をくぐっていってしまった。残されたアリサは、人知れずため息をついた。
アリサもわかっている。レスターへの対応は半分以上が八つ当たりなのだと。八つ当たりしかしてないアリサに比べれば、男達の発散方法は健康的だ。
レスターはよくやっている。指南役が居ない中でも毎日欠かさず鍛錬をし、終われば勉強する日もある。あんな稽古をつければ彼に良くない焦りを与えるだけだとわかっているのに、気づけば今日も彼に辛く当たってしまった。
今日に始まったことではない。王都に帰りこの仕事を与えられてからずっとだ。仲間達が今も帝国の激戦に身を置く中、自分達は不甲斐なくも送り返されてしまった。降ってわいた日常になじめず、悔しさと情けなさのやり場もない。夜毎孤独になるたびに無力感が心をむしばんでいく。
アリサは憂鬱な気持ちのまま、1人で与えられた柔らかい寝床へと帰って行った。その柔らかさでさえも、彼女は受け入れ難いと思い始めていた。
解説
■状況解説
現在PCはブラックバーン伯爵領に滞在しています
レスターの件は依頼ではないので、冷やかすだけでも構いません
大規模の幕間と思っていただくとより正確です
■選択可能なPCの立場
・ブラックバーン伯爵の依頼で防衛に参加した
・赤の隊の騎士達に随伴していた
・それ以外
(個人的に用事があった、戦闘以外の依頼を受けた、など)
必要に応じてプレイングで宣言してください
■PCの出来ること
・レスターに訓練をつける
・訓練に自分が参加する
・PC同士で模擬戦する
・それ以外(暇してるので城下町に遊びに出かけるのも可)
目標は設定されていませんので
自由にRPしてください
より良い結末となれば加点します
■場所
ブラックバーン伯爵の城下町
王都イルダーナを縮小したような構造をしている
■他
NPCの関連付けはありませんが
不明な点があればNPCで質疑応答を行います
■NPC紹介
・騎士アリサ(闘狩人)
負傷のため国へ帰還した赤の隊の騎士
治療が済んだため、リハビリ兼ねて待機中です
ブラックバーン伯爵領が一時的に戦力不足となるため
しばらく領地に滞在して防衛に当たっている
・レスター(闘狩人)
発育不良の少年剣士。武器は片手剣と盾を使用
伯爵の兵士として勉強と訓練の毎日を送っており、
最近は食生活が改善されてかなり背が伸びた
(初出:少年は明けない夜に夢を見る)
・リカード(非覚醒者)
伯爵領で先代から務めるベテランの兵士長。童顔で髭が似合わない
(初出:【黒祀】寄せ集めのセレネイド)
・ハロルド・ブラックバーン伯爵
20代後半の若い領主。顔と言動が怖い
現在は主力の私兵団を連れ、大規模作戦へ遠征中で不在
弟が絡んでるのでかなり本気の様子
(初出:生きる糧が足りるとも)
・男性騎士4名
赤の隊の脳筋族。爽やかマッチョな背景
現在PCはブラックバーン伯爵領に滞在しています
レスターの件は依頼ではないので、冷やかすだけでも構いません
大規模の幕間と思っていただくとより正確です
■選択可能なPCの立場
・ブラックバーン伯爵の依頼で防衛に参加した
・赤の隊の騎士達に随伴していた
・それ以外
(個人的に用事があった、戦闘以外の依頼を受けた、など)
必要に応じてプレイングで宣言してください
■PCの出来ること
・レスターに訓練をつける
・訓練に自分が参加する
・PC同士で模擬戦する
・それ以外(暇してるので城下町に遊びに出かけるのも可)
目標は設定されていませんので
自由にRPしてください
より良い結末となれば加点します
■場所
ブラックバーン伯爵の城下町
王都イルダーナを縮小したような構造をしている
■他
NPCの関連付けはありませんが
不明な点があればNPCで質疑応答を行います
■NPC紹介
・騎士アリサ(闘狩人)
負傷のため国へ帰還した赤の隊の騎士
治療が済んだため、リハビリ兼ねて待機中です
ブラックバーン伯爵領が一時的に戦力不足となるため
しばらく領地に滞在して防衛に当たっている
・レスター(闘狩人)
発育不良の少年剣士。武器は片手剣と盾を使用
伯爵の兵士として勉強と訓練の毎日を送っており、
最近は食生活が改善されてかなり背が伸びた
(初出:少年は明けない夜に夢を見る)
・リカード(非覚醒者)
伯爵領で先代から務めるベテランの兵士長。童顔で髭が似合わない
(初出:【黒祀】寄せ集めのセレネイド)
・ハロルド・ブラックバーン伯爵
20代後半の若い領主。顔と言動が怖い
現在は主力の私兵団を連れ、大規模作戦へ遠征中で不在
弟が絡んでるのでかなり本気の様子
(初出:生きる糧が足りるとも)
・男性騎士4名
赤の隊の脳筋族。爽やかマッチョな背景
マスターより
【初夢】、リリース開始されましたがそちらは苦手なのでこんな幕間の物語を用意してみました
訓練が1ミリも描写されない流れでも全く構いませんので、
自由にRPし倒していただければ幸いです
訓練が1ミリも描写されない流れでも全く構いませんので、
自由にRPし倒していただければ幸いです
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/01/20 18:59
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
ある冬の一日 トライフ・A・アルヴァイン(ka0657) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/12/30 20:05:01 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/01 16:15:14 |