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【深棲】壊れた聖女は涙する

マスター:冬野泉水

このシナリオは4日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在7人 / 5~7人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2014/08/13 22:00
リプレイ完成予定
2014/08/26 22:00

オープニング

 固く閉ざされた一室では円卓会議――グラズヘイム王国の最高意思を決定する会議が開かれていた。
 王女システィーナ・グラハムを始め、大司教セドリック・マクファーソン、騎士団長エリオット・ヴァレンタイン、侍従長マルグリッド・オクレール、聖堂戦士団長ヴィオラ・フルブライト、そして王族の一としてヘクス・シェルシェレット。
 その他、大公マーロウ家を筆頭とした王国貴族を含め、十数名が白亜の卓子に各々の思惑滲む顔を写している。
 重苦しい空気の中、王女が懸命に言葉を紡ぐ。
「自由都市同盟――隣人の危機です。私は急ぎ騎士団の派兵……」
「規模が、問題ですな」
 王女を制したのは大司教だった。
「騎士団と安易に仰るが、その数は? その間の国内をどうされる?」
「……どうにかやりくりして、できるだけ多くを」
 王女の縋るような視線を受け、騎士団長の眉が寄る。彼だけではない。大司教も侍従長も、そして聖堂戦士団長ですら同じ表情だ。
 言わんとするところは、誰もが同じだった。
「……現在の騎士団に、余力はありません」
「……ごめ、んなさい……私が……」
 ちゃんとした指導者だったら、きっと国はもっと強かった。
 無念そうに言葉を絞り出す騎士団長に、王女は消え入りそうな声で詫びる。
「まあ」ヘクスが軽薄に笑う。「余力はない、が全くの知らんぷりもよろしくない。さて、どうしよう」
 ねぇ、と問うた彼の視線の先。
「聖堂戦士団は半数を派遣致します。当然私も向かうことになるでしょう」
 ヴィオラが応じた。エクラ教の絶対的教義故、迷いのない言葉。
「良いのでは。王国たるに相応しい威光を示す良い機会かと」
 マーロウ家現当主、ウェルズ・クリストフ・マーロウが穏やかに言うと幾人かの貴族が首肯し、残りが眉を動かした。王女が口を出す前に大司教が言う。
「『騎士団の派遣は現実的ではない』。殿下、その慈悲で以て我が国の現状にまず目を向けて頂きたい」
「でも……」
 王女が何かを堪えるように唇を引き結ぶ。誰かが、小さく苦笑した。
「少数ならば」エリオットだ。「派遣できましょう」
「す、少しならできるのですか!?」
 大司教が騎士団長を睨めつけ、諦めたように息を吐く。
「騎士団長がそう言われるのであれば、是非もありませんな。――侍従長?」
「私は特に。異論ありません」
 侍従長の目が、他の出席者を巡る。
 出来る限りの譲歩だ、異論が出るはずもない。――王女の、本音を除いて。
「……で、では、少数の騎士団と半数の聖堂戦士団を派遣、同時に備蓄の一部を支援物資に回しましょう」
 次々と席を立つ面々。最後に部屋を後にするへクスと両団長の背に、王女は一度だけ目を向けた。

 ● 

 壮観であった。
 聖堂教会が派遣する聖堂戦士団は団長のヴィオラ・フルブライトを筆頭に、各地の教会に派遣されていた者と合流しながらリゼリオ付近に到着する頃には、円卓会議での発言どおり、全戦士団の約半数の数に膨れ上がっていた。
 離脱し、あるいは合流し、それらを繰り返しながら聖堂戦士団は戦地に展開していった。先行隊は既にリゼリオに入っており、ひと通りの偵察で成果を見せている。
 ヴィオラを含む本隊は一度リゼリオに入り、聖堂戦士団の動向を各所に伝えた上で、リゼリオまで数キロ地点まで一時後退していた。
 これは最前線を支えることになるであろうハンター達の背中を盤石にするという意図の元の行動である。
 リゼリオから数キロの場所にあるこの村には、聖堂教会の加護を受けた教会がある。それ自体珍しいことではないが、出迎えた司祭の表情があまりにも異様で、ヴィオラですら思わず息を呑んだほどだった。
「ようこそ……本当に、ヴィオラ様……」
 今にも息絶えそうな細い声で、青白い肌の司教は平伏した。

 ●

 王国から赤の副団長が出陣したことも、また王国付近で『また』羊の群れが見られたことも、ヴィオラはその夜になって初めて聞かされた。
 戦士団をそれぞれの持ち場に向かうよう指示を出し、ヴィオラが一息ついたのは夜も更けた頃だ。
「このような時に……」
 こちらでは狂気(ワァーシン)、あちらではしぶとい羊――徐々に世界が混沌に飲まれようとしているのか。
「聖女。どうぞお休み下さい」
「その、聖女というのは……」
「私にとって、ヴィオラ様は聖女ですから、変えることは出来ません」
 きっぱりと言った副官に嘆息して、ヴィオラは説得を諦めた。今できるなら、きっと初めて会った時にできているからだ。様付でない辺り、副官らしい。
「そういえば、聖女。面白い話を聞きました。この教会にも聖女がいるらしいのです」
「珍しいですね。聖堂教会は偶像崇拝を禁じてこそいませんが、光ではなく人……ですか」
 自分で言って妙な気持ちになったヴィオラである。その偶像に祭りあげられんとしているのは、誰でもなく自分であるというのに。
 ふふん、と鼻を鳴らした副官は嫌味っぽく続けた。
「と言っても、その聖女は人ではなく人形だそうで。元は人の骸だったようですが、流石に腐乱を止められなかったとか」
「なるほど」
「それで、その聖女、泣くそうですよ」
「……は?」
 呆気にとられたヴィオラに、副官は小さな頭を縦に振り、「泣くんです」と繰り返した。
「人形ですよね?」
「そうです」
「泣くのですか?」
「だ、そうです。故に聖女の座を譲り受けたとか。それで、その聖女……紛らわしいな。人形が泣くと、歪虚が現れるんだそうです」
「……」
 迷信を排して宗教論は語れないが、流石に眉唾ものだろうと思ったヴィオラの脳裏に、司祭のやつれた顔が過った。
 異常なまでに痩せ細って、生気の失せた顔。
「――」
 副官の名を呼ぶ前に、“それ”は起こった。


「ひ……ぃっ」
 引き攣った声を上げた司祭の喉が潰れる。血泡を吐いて倒れた彼が細い腕で抱くのは、あの聖女の人形だ。
「アハ、アハ、アハハハハハハハハ!」
 甲高い声が響く。カタカタと音を立てるのは、まさにその聖女の人形の唇だった。ぎょろりと剥き出しになった蒼い瞳の球体がボロリと零れ落ちる。
「キャハハハハハハッ」
 別の声が重なり、今度は説教台の人形が笑い出す。
 不気味な不協和音が満ちる中、扉を蹴破って入ってきたその人に、人形たちは目を向ける。限界まで引き上げた唇を裂きながら。
「聖女、危険です。援軍を」
「これらを外に出す方が危険です」
 槍を構えたヴィオラは冷静に副官を制した。背中を這うような悪寒。ずるり、と何かを引きずる音。
「……遅かったようですね」
 ゆらりと起き上がった司祭は、ぐるりと首を大きく捻る。本能的な嫌悪感に副官の端正な顔が歪んだ。
「ク、ケ……ケケケケケケ!」
「無粋な……」
 淡々と言い放つヴィオラは手近な燭台をステンドグラス目掛けて放り投げた。高い音が響き、鮮やかなガラスが飛散る。
 これで周辺警備の仲間が気づいてくれれば良いが――。
「ともかく、あれを片付けましょう」
「最近、趣味悪いのばかりですよね、聖女……」
 げんなりした副官の声には答えず、ヴィオラは凍てつく視線を壊れた“聖女”の涙に向けていた。

解説

 教会内に蔓延る狂気(ワァーシン)の歪虚を殲滅して下さい。
 全滅が最善ですが、相手を撤退に追い込むこともできます。
 一方、ハンター達が倒されるか、歪虚が教会の外に(撤退以外で)出た場合、失敗となります。

【状況】
 教会内は煌々としており、視界に対するペナルティはありません。
 内装は一般的な西洋教会です。特殊な装飾等もなく、むしろ地味目です。

【教会の外】※教会内部の2人は知り得ない事実
 教会の外で周辺警備中の聖堂戦士団もまた、雑魔の集団による襲撃を受けています。
 ハンター達は(任意の理由で)この教会の外から始まりますが、教会の外の雑魔を相手にする必要はありません。
 なぜなら、彼ら聖堂戦士団は、その誇りにかけて団長の元に雑魔を行かせようとはしないのだから。

【歪虚】
 ・壊れた聖女(人形)、壊れた人形
  教会で祀られていた聖女の成れの果てです。元は可愛らしい球体関節人形です。
  両手に両刃の包丁やナイフ等、主に刃物を持っています。
  高さは人形が50cm、聖女が80cmです。
  狂気(ワァーシン)の歪虚であり、体力が高く、基本的に撤退を知りません。

 ・壊れた司祭×1
  教会の司祭の亡骸です。狂気に捕らわれており、歪虚化しています。
  元は聖堂戦士の端くれだったようで、戦闘能力は標準的な聖導士です。

【友軍】
 ・ヴィオラ・フルブライト
  聖堂戦士団長。その実力は、言うに及ばず。
 ・副官
  団長に従順な男。少年のような外見だが、物腰は尊大。
  ただし、その実力は折り紙つき。獲物は弓。

【その他】
 ・この歪虚は普通のものより強めに設定されています。
  ハンター達での殲滅も可能ですが、友軍2名をうまく使うことを推奨します。
 ・質問があればヴィオラまで。
 ・口調や性格把握のため、積極的なRPをお勧めします。
 ・白紙プレイングにはお気をつけください。

マスターより

 これって、大規模と何の関係があるんだろう……ですと?
 依頼に失敗する→ヴィオラ重傷or死亡→聖堂戦士団瓦解→応援勢力がごっそりやられる、ということで、皆様しっかり団長を助けてください!(←

 あと、副官はヴィオラの忠実なる下僕(自称)です。
 どうすれば使いやすいか、お分かりですね?

 皆様のご参加、お待ちしております。

関連NPC

  • 聖堂戦士団長
    ヴィオラ・フルブライト(kz0007
    人間(クリムゾンウェスト)|26才|女性|聖導士(クルセイダー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/08/25 15:27

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 猛毒の魔銀
    ギルベルト(ka0764
    エルフ|22才|男性|疾影士
  • 紫桃の令嬢
    エルウィング・ヴァリエ(ka0814
    人間(蒼)|16才|女性|聖導士
  • 献身的な旦那さま
    テオバルト・グリム(ka1824
    人間(紅)|20才|男性|疾影士
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • 超☆嗅覚
    狛(ka2456
    人間(紅)|17才|男性|霊闘士

  • 雲類鷲 伊路葉 (ka2718
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【質問卓】
メイム(ka2290
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/08/12 22:48:06
アイコン 仮プレイング公開用
メイム(ka2290
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/08/13 21:38:45
アイコン 【相談卓】
メイム(ka2290
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/05/11 19:30:02
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/08/09 07:43:01