その雑魔の剣は速く正確すぎた。
　熟練の騎士が受け流そうとしてもかわされてしまい、禍々しい切っ先が騎士の急所を狙う。
　覚醒者の身体能力と日々の鍛錬を最大限に活かし、騎士は無理矢理小型盾を刃の前にねじむ。威力は並でも技が高すぎて、騎士は盾をはじき飛ばされてしまった。
「援護します！」
　地元の魔術師が光の矢を飛ばそうとするが既に射程内に雑魔の姿はない。
「そんなぁっ」
　泣き言をこぼす魔術師へ騎士が飛ぶ。
　細身の全身鎧、否、白兵特化の高速雑魔が魔術師の死角から突きかかり、ぎりぎりで騎士によって防がれる。
　高い音を立てて騎士の剣が宙を舞い、数メートル横の地面に突きたった。
「騎士さん！」
「撤退しろ。私もすぐに行く」
　予備の短剣を腰から抜いて構える。
　たどたどしくうしろに向かって走る魔術師のため、なんとしても時間を稼ぐ必要があった。
　が、雑魔の動きは雑魔離れしている。
　頭部の向きだけで牽制し、騎士の注意が右側に向いた瞬間左側を抜ける。
「おたすけっ」
「逃げろ！」
　３者が魔術師の死を確信する。
　ほとんど偶然で当たった騎士の刃が雑魔の肩を砕く、けれど動きを止めるに至らない。このままでは雑魔の刃は骨をすり抜け心臓を貫くと思われた。
「え？」
　雑魔の動きが乱れ魔術師のローブに傷がつく。魔術師本人にはかすり傷すらついていない。
「止まるな馬鹿者」
　騎士が無傷の魔術師を横抱きして跳躍。
　雑魔と覚醒者の距離が離れたことに気付き、後方の弓兵が猛烈な勢いで矢を射かける。
「ふぇぇぇん、リアルブルー風でデザインで高かったのにぃ」
　魔術師は騎士に抱えられたまま本気で泣く。
　雑魔は戸惑うような視線を魔術師のローブに向けている。ローブには、原色を多用したアニメプリントが全面に施されていて、それに向けられた雑魔の視線が定まらない。
「魔除けなのか？」
　雑魔から逃げ伸びた後、アニメプリントを真面目な顔で凝視する騎士がいた。

●
　唐突にディスプレイが現れた。
　驚いて飛び退いたハンターが嫌そうな顔をしたとき、ディスプレイから３頭身雑魔の立体映像が飛び出てくる。
　ハンターが口笛を吹く。
　雑魔の動きは速さ強さ巧さを兼ね備えている。鍛え抜いた技をぶつけるには最適な相手だろう。
　機嫌良さげなハンターを気にせずに新たな立体映像が現れる。
　痛車、いや痛全身鎧に痛ブレードというべきだろう。それらを装備した３頭身騎士が雑魔に仕掛けると、雑魔の動きが甘く雑になる。
「何、これ」
　ディスプレイに表示された文章を眺めて肩を落とすハンター。
　一度戦い撤退した騎士達によると、この雑魔は派手な色使いの物が苦手なようだ。防具に着色すれば命中が、武器に着色すれば回避が低下する。ただし元の能力が雑魔の割に非常に強力なので低下しても弱くはない。
「俺には無理だぜ……」
　ハンターが肩を落として去っていく。
　着色例と表示されたものは、アニメがプリントされた痛鎧と痛剣であった。

　武器防具を痛車もしくは萌車っぽく着色して、剣士っぽい動きの雑魔と戦う依頼です。
　着色しなくても戦えますけども、その場合雑魔はとても強いの注意してください。
　体に直接着色していいかもです。

●戦場
　騎士撤退後に数体の雑魔が増援に現れ、現在は３体でゆっくりと街道を移動中です。周辺１キロメートルの避難は完了しています。
　街道は幅４メートルの踏み固められた土の道。左右には高さ数センチの草地が広がっています。
　使用後ハンターがもとに戻すのを条件に、穴を掘る等の罠をしかける許可が出ています。

●敵
　細身の全身鎧型雑魔３体。ロングソード装備が１体（射程１で左肩を損傷）、グレートソード装備が１体（射程１～２）、大型大威力槍装備が１体（射程２）です。
　移動、命中、回避が雑魔の中で特に高い強敵です。色鮮やかなものを見るのも判断するのも苦手です。
　防御点と受け防御は非常に低いです。知性も低く、最も近くにいるハンターを攻撃しようとします。

●登場しないＮＰＣ
　雑魔と戦い撤退した覚醒者達。内訳は騎士１人、魔術師１人、弓使い１。相手は１体でした。戦闘で得られた全ての情報をハンター本部に渡し、その情報をもとにこの依頼が公開されました。現在は別の場所の雑魔討伐に向かっています。

●装備
　ペイント用の塗料は無償で提供されます。
　装備に着色したり絵を描いたりした場合、依頼終了時点で洗って色を落としてから帰還することになります。
　元から派手な色合いの装備は、地味目の色で着色しないと無着色の状態でも雑魔に効果を発揮します。
　戦場から数キロの地点に、騎士が装備していたバスタードソードとラウンドシールドが転がっています。ギルドショップで売っている品より数パーセント高性能かもしれません。借りて壊しても問題ありませんがお持ち帰り不可です。ペイントしたまま返すのは可能です。

　このシナリオは、プレイングによって限りなくコメディに近くなったり純粋な戦闘依頼に近くなったりします。
　プレイングで実在のアニメ等を指定された場合、似通った架空の作品に置き換えて描写されますのでご注意ください。