• 調査

マカマユリの手のひら

マスター:鹿野やいと

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2014/08/22 22:00
リプレイ完成予定
2014/08/31 22:00

オープニング

 近海にヴォイドが出現したものの、海軍やハンターの活躍によって同盟の諸都市に大きな混乱はなかった。
 影響が小さければ自分のことと捉えないのは、危機管理としてはまずいが精神の平穏には良いだろう。
 結果としてヴァリオスは平和だった。辺境とも帝国とも王国とも違い、ここはいつまでも後方だ。
(学校が通常営業なぐらいだからな)
 その男、エドガーは魔術学院の敷地に堂々と入りながら、倦んだ視線で白い校舎を見上げた。
 顔立ちは芸術家の作る彫像のように整っており、着飾れば誰もが振り向くような美男子と言って差し支えない。
 しかし短く刈り込んだ金髪と街を歩くには十分以上の筋肉が彼の外見の評価を一変させている。
 紛れも無く戦場を闊歩する人種だ。そんな人間が教育機関で研究施設でもある学院に何の用か。
 守衛も特に気にせず彼を見送る。彼が依頼人から指名を受けるのは珍しくない。
「やあ、セレーナ」
 エドガーは何時もどおり中庭のベンチで腰掛けるセレーナに愛想良く声をかけた。
 白いローブに負けない豊かな金髪、鋭くも繊細な横顔が魅力的な学院の魔術師。
 セレーナは手をあげてエドガーに答えた。エドガーはいつものように空いたベンチの片方に座る。
 彼は皮袋から紙の束を取り出すと、セレーナの側に置いた。
 内容はここしばらくのヴォイドの出現報告の抜粋だ。
「……ありがと」
 エドガーは訝しむ。何時もなら彼女は確認のためにすぐにでも手に取る。
 だというのに今日はぼんやりしたまま下を向き、時折溜息をついていた。
「……何よ?」
「中は見なくて良いのかい? 研究に要るんだろ?」
「…………」
 セレーナは表情は更に曇った。
 時折エドガーに視線を投げかけ、また下を向き、更に大きな溜息をついた。
「研究どころじゃ無くなったのよ」
 そしてセレーナはようやく、ことのあらましを話し始めた。



 彼女の悩みはよくあるお見合い話だった。縁談の相手はブアデス酒造の社長の孫、ハイメ・ブアデス。
 彼女は現在商人の現在セブリアン家の養子として迎えられているため、
 縁談は商人同士の縁談ということになり、事態は少しややこしくなっていた。
「フェデリコさんにはお世話になってるし、私の今後のことを思ってのことだろうから無碍にも出来なくて。それで一度ぐらいは会おうと思ったの。そしたら……」
 セレーナの顔つきは一気に暗くなる。わかりやすくいうと、相手は女の敵だった。
 観劇にと誘われ二人で出かけたのだがそこからが酷い。何かにつけて身体に触れようとする上に、言動は無作法で傲慢。
 縁談もまとまってないうちからセレーナを自分の女のように遇した。
 何をするにも自分本位の命令口調で、セレーナの言葉を何一つ聞いている素振りがない。
「後腐れ無いなら間違いなく殺してたわ」
 話ながらその時のことを思い出したのか、セレーナは爪を噛みながら呟いた。
 本気の殺気を感じてエドガーは身震いする。後腐れさえ無ければ本当に実行しただろう。
「ハイメね。確かにそいつ、悪い噂だらけだ」
「私もあとで知ったわ。仕事はできるらしいけど台無しね」
 女遊びぐらいは甲斐性のうち。という男の文化が根付いていることもあって、商家の人間たちはセレーナの言うことを話半分に聞いた。
 それどころか親達は両方とも乗り気で結婚する前提で話が進んでいる。
 縁談を断りたいと言ったセレーナだが、居合わせた親族が揃って猛反発した。
「お前はこの家の体面に泥を塗るつもりか?」
 と言われれば為す術がない。援助を受け、恩もある身ではそれ以上の事は言えなかった。
「……大変だな」
「まったくだわ」
 話は終わったのか、セレーナはようやく依頼していた紙束を掴んだ。
 ぱらぱらと数枚めくり、すべてを確認する前に閉じる。
 傍目にも集中できていないセレーナは、再び口を開いた
「こういうのってなんとかならない?」
「なんとかなるにはなるが……」
 エドガーは腕組みして唸る。
 なんとかなるが1人で動くには面倒な案件だ。
「依頼で出すとして、費用は幾らまで出せる?」
「そうね。50万が限度よ。私の自由になるお金はそれだけ」
「ふむ……」
 それは彼女が研究の合間に協会の仕事をこなして、こつこつと貯めてきた金だ。
 友達と遊ぶ事もせず、好きな物を買うわけでもなく、青春を灰色に染めて作ったお金だった。
 しかしハンターに依頼する相場であれば4人。エドガーを抜いて3人しか雇えない。
 しかもそれは仲介料を抜いた場合の話だ。
 値段の相場がわかるからこそ、セレーナの顔も暗いままだ。
「よし、じゃあ今回は君からは10万貰おう。あとは僕が立て替えるよ」
「ダメよ、そんなの」
 セレーナはぴしゃりと言い放つ。その反応を、エドガーはなんとなく予想していた。
「借りを作りたくない?」
「それもあるけど、私のお見合い程度でそんな大金を出せないわ」
「真面目だな」
 こんな意地の張り方は嫌いではない。
「あのバカに嫁いで何かあるのか?」
「あれを財布だと思えば、我慢できるかもしれないわ」
 エドガーは鼻で笑った。それが自分に合わない生き方とわかっているのか、セレーナは言い返せない。
「貸しにはするけど、思うところあってのことさ。善意で金を出すわけじゃない。
 僕も男だからね。君があのバカに好きにされると思うと我慢ならないんだ」
 エドガーの顔を見ながらセレーナは随分迷ったが、それも30秒程のこと。
「……わかったわ。お願いする」
 しかと覚悟を決めた声音でセレーナは答えた。
 この思い切りのよさも、彼はたまらなく好きだった。
 見つめてくる瞳を見つめ返し、ぐっと顔を近づけた。
「外泊込みでデートしてくれるならもっとサービスしてあげるけど?」
 甘く囁くように。熱っぽい目で見つめながら。
 多くの女性は声音と視線に心が揺れるのだが、セレーナの視線は一気に冷えた。
 手はいつの間にか術具を握って居る。
「ははっ、冗談だ。失礼するよ」とだけ言って、エドガーはそそくさと腰を上げた。
 駆け足で庭を横切りながら、今後のことを考える。
 手段は色々あるだろう。噂を調べて被害者を探すか、それとも何かしらの失言・失態を引き出すか。
 何をするにせよ彼女と親しいとよくわかる自分が直接動くのはまずい。
 調査や潜入の得意な連中を集めなければならない。
 エドガーは仕事仲間の顔を思い浮かべながら、足取りは悠々と学院の門を出ていった。

解説

■依頼内容
・今回のセレーナ、ハイメ両名の縁談を破棄させる事
 以下に記する禁止条件を満たさない限り、方法は自由とする

■禁止事項
・依頼人セレーナ・メラス本人の風評を貶める事
・依頼人セレーナの養父一家、及びその商店の風評を貶める事

■縁談相手の詳細
 ハイメ・ブアデス(22)
 セレーナとの縁談の相手。親の商店で番頭として修行中で、じきに店主となる身。
 悪い遊び(特に女性関係)にばかりに手をだしているが、そこそこ上手く隠している
 同じように金を持った商人の悪友が数名居る


■その他の人物の簡単な紹介
・セレーナ・メラス(20)
 性格はOPの通り。研究一筋、清貧に甘んじる模範的な学院の魔術師。今回の依頼人。
・フェデリコ・セブリアン(65)
 セレーナの遠戚で養父。悪人ではないものの年齢相応に意固地なところ有り
 ヴァリオスで古くから店を構えている
・エドガー(20半ば?)
 セレーナの馴染みのハンターで文武両道のエンフォーサー
 女の敵というほどではないが女遊びが趣味

■依頼人の協力体制
 セレーナの友人という立場で学院やセブリアン家やブアデス家の商店に自由に入ることできます
 この場合は必ずセレーナの同伴が必要で見学の範疇です
 これ以上の良い条件を引き出すにはPCの舌先三寸が必要となります

 エドガーは彼女の顔馴染みと割れているので直接動く事は難しいので
 依頼にはPC6名のみで達成する必要があります

■報酬金額
 ハンター協会の規定どおりに支払われる

マスターより

ドラマでありがちな金持ちのボンボンですが、悪評を隠すことには長けています
しかしありがちな犯人による罪の激白大会は文字数の都合上カットする可能性が高いので、御了承ください

調査のシナリオとしてはそんなに難しくはないので
是非とも気楽に、ロールプレイも一緒に楽しんでください
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/08/31 14:05

参加者一覧


  • 上泉 澪(ka0518
    人間(紅)|19才|女性|霊闘士
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • 賢者モード
    加山 斬(ka1210
    人間(蒼)|17才|男性|闘狩人
  • 支援のタクト
    スノゥ(ka1519
    エルフ|14才|女性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • シャープシューター
    坂斎 しずる(ka2868
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 縁談を破断させるスマートな相談
ミグ・ロマイヤー(ka0665
ドワーフ|13才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/08/22 19:26:23
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/08/21 03:24:48