• 調査

火山洞窟調査依頼

マスター:T谷

シナリオ形態
ショート
難易度
不明
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/03/24 12:00
リプレイ完成予定
2016/04/02 12:00

オープニング

 団長からしてあれなのだ。その下に付いて喜んでいるような奴らが、まともなはずがない。
 そう自分に言い聞かせ、湯水の如く湧く不満の数々を必死に受け流し続けて幾星霜。
 ここまで穏便に円滑に、時に過度なストレスに部屋を埋め付くす機械群を爆破してしまいたくなったとしても、必死で爪を噛み唇を噛み頭を掻きむしって何とか堪えて、この上なく完璧に上手くやって来たというのに。
 その努力が、音を立てて崩壊していく。
「……はい、何故君が今ここに呼び出されているのか。説明してみて」
 蚊の鳴くような声でジギー・デデキントは呟いた。
 幽鬼のように青白い肌、枯れ木のように細長い手足、こけた頬、手入れを全くしていないぼさぼさの髪。どれだけ寝ていないのか、濃いクマに縁取られた目はまるで爬虫類のように細められねっとりと虚空を見つめている。
 彼が戦闘部隊である第二師団の兵長の一人だと、誰が一目で気付くだろうか。
 そんなジギーの目の前には、一人の団員が立っている。筋骨隆々な青年だ。カールスラーエ要塞の外壁に針山のように設置されている数々の兵器群、それを制御管理するこの部屋に配属された、そこそこに機械が得意と周りから思われていたであろう人物だった。
 ジギー以外に機導師の存在しない第二師団において、彼の助手になると目され送られてきた人材の一人である。
 ふざけるなと言いたい。
 てへへと可愛くもないアホ丸出しの曖昧な笑みでばつの悪そうに頭を掻く、この爪先から脳みそまであらゆる全てが筋肉で構成された物体が機導に通じるなどと、そう思った愚か者は一体どこの誰なのか。よしんば機械の扱いが多少なりと得意だったと仮定して……かけ算割り算を習得した程度の秀才五歳児に、数学者の助手が務まるとでも言うつもりなのだろうか。
「あー、えっと……」
 そしてそいつは、自分が何故ここに呼ばれたのか、この期に及んで理解していない顔をしていた。曖昧な笑みは、あわよくば事無かれという叶わぬ期待の現れだろう。
「……これ、配線。こっちに差し込む奴が、あっちに差してあった。ねえ、プラグの形、違ったよね。大きさも。なんで無理矢理繋げたの?」
 とはいえ、純粋に興味もあった。
 言葉の分からない猿でもあるまいし、それより少しはマシな存在であるはずなのに、何故そんなことをしたのか。
 猿以下なら猿以下で、その頭の中にどんな思考回路を構築しているのか。
「え、と……他に差すとこ見当たらなかったもんで……まあ、放っておく訳にもいかないかなーって。とりあえず適当に……」
 バチンと、頭の中で何かが弾けた。
 ジギーの中でスイッチが入る。瞬時にカッと目を見開くと、
「まだ! 差さずにおいた方がマシだったわこの無能野郎が!! 僕が気付くのがあと十秒、いやあと五秒でも遅かったら!! 壁ごと!! 街もお前らも何より僕も!! 全部纏めて吹き飛んでたかもしれないんだぞ!!」
 口角泡を飛ばし、所々むせて咳を挟みつつ、ジギーは喉の奥からあらん限りの罵倒を絞り出す。
 しかしあろう事か、目の前のそいつはその言葉を聞いて、
「いや、そんな大げさな」
 そうのたまった。
「じゃあテメエの首かっさばいて動脈静脈入れ替えて試してみっかオラァっ!!」
 魂からの金切り声が、薄暗い部屋にこだました。


 数ヶ月掛けての調整は全てパーになり、充填していたマテリアルも余計な動作でその殆どが消費されてしまった。
 機械上部に浮かぶディスプレイに並んだ数字の寂しさに、ジギーは大きくため息をつく。無能な部下をクビにしたは良いが、だからといって問題が解決するわけではない。
「それで、どうなってるの」
 顔も向けずに尋ねた。
 先程、団本部に連絡してマテリアル鉱石の要請をしたのだが、やってきたのは物資係の団員一人。その後ろに荷車を引いている訳でもないらしく、新たに配属された優秀な助手、というわけでもないようだ。
「それが、今すぐの納入はどこも難しいとのことでして……」
 申し訳なさげな態度で、物資係は頭を下げた。
「それをどうにかするのが、君の仕事じゃないの?」
「一応、色々と問い合わせてはみたのですが……」
 つらつらと、聞こえてくるのは言い訳の羅列。
 近頃の情勢も合わさり、急な大量発注に答えられる在庫を残した場所などどこにもない。とのことだ。
「……そんなこと言ってさ、こっちの兵器が使えなかったら色々まずいの、分かってるよね。ここ、落とされるよ?」
「それは、そうなのですが」
 歯切れの悪い答え。
 ジギーはまたため息をつく。結局、下っ端に陳情など意味が無い。
 とはいえ現実問題、無い物ねだりをしても仕方が無い。ジギーとしてはこの都市が落ちようがなんだろうが知ったことではないが、受けた仕事を完遂できないというのはプライドに傷が付く。
「……そうだ」
 そして、ぐるぐると考えを巡らせてしばらく。一つ、思い出したことがあった。
「火山に鉱脈があるかもしれないって、前に言ってたよね。洞窟があるとかないとか」
「は、確かにハルクス副団長がそう仰っていましたが……探査が困難だということで保留に」
「じゃ、そこ調べてきて」
「いやそんな簡単に……」
「情勢がどうとか言うなら、供給元も多い方がいいでしょ」
「しかし――」
「ハンターに頼んだらいいよ、お金払えばやってくれるでしょ。地下のドワーフ連れてさ、鉱脈探し」
 ほら行った行ったと、ジギーは一瞥もくれずにしっしと手を振る。物資係が何を言っても、最早我関せずと一言も発することはなかった。


 第二師団からの正式な依頼がオフィスに降りる。
 そして団本部に集められたハンター達の前には、一人のドワーフが待っていた。身長は一メートルほど、体の横幅も同じくらいで、遠目に見れば玉のようなずんぐりむっくり。しかしその表情は天真爛漫といった風で、髭もなく、まだ若いドワーフだと一目で分かった。
 ドワーフは大きめの鞄を背負って、そわそわと火山のある方角に目をやっている。どうやら火山に行くのが、楽しみで仕方が無いらしい。
「えっとー、エミールです。よろしくねー」
 ハンター達が集まっていることに気付くと、ほわほわと間延びした穏やかな調子で、エミールと名乗ったドワーフはぺこりと頭を下げた。
 聞けば、だだをこねて大人のドワーフと無理に代わって貰ったらしい。危険なのは承知の上だと、エミールはふんと胸を張った。

解説

・概要
 エミールを護衛しながら火山の探索を行え。

・敵
 未探査のため不明です。

・洞窟
 ハンター達は火山の麓に存在する洞窟から火山内部に入ることになります。内部は奥に行くほど高温になり、場所によってはダメージを受ける程の熱気が渦巻いています。
 洞窟の構造は以下の通りです。

1、入り口からすぐ、しゃがまなければ通れない天井の低い洞穴。
2、左右に曲がりくねり下りになった、大きめの洞穴。
3、2から抜けた先に急に広がる、溶岩の流れる広い空間。大きな溶岩の湖の外縁に沿う形で、狭い岩場を進むことが出来ます。
4、最深部。抉り取られたような、ドーム状の空間です。

 なお、ハンター達は洞窟に入った直後から、洞窟自体に人工物などは見当たらないながらも言い知れない不自然さを感じます。
 最深部は特に顕著で、ひしひしと不穏な空気を感じるでしょう。

・エミール
 採掘に特化した、まだ子供のドワーフです。才能はあるのですが経験に乏しく、それを補う意味も込めて任務を任されたようです。
 都市の外に出ることが珍しいため、洞窟の不自然さには気付きません。
 暑いのは得意だそうですが、戦闘能力は皆無です。

マスターより

 いつの間にか三月になっていましたT谷です。
 寒さが和らいできましたが、たまには火山を散歩というのもいいと思います。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/04/01 02:48

参加者一覧

  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 刃の先に見る理想
    ブレナー ローゼンベック(ka4184
    人間(蒼)|14才|男性|闘狩人
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談ですっ!
ブレナー ローゼンベック(ka4184
人間(リアルブルー)|14才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/03/24 00:31:56
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/03/21 20:39:05