ゲスト
(ka0000)
冷たき海より招くは
マスター:風華弓弦

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/04/01 19:00
- リプレイ完成予定
- 2016/04/15 19:00
オープニング
●来たりて、誘うモノ
「えい、やぁ! えい、やぁ!」
夜明け前の暗い海に、力のこもった男らの掛け声が響く。
波間に浮かぶ二隻の舟は、片方が篝火を船首に掲げ、もう一隻は舟の片側に男達が集まっている。
隆々とした太い腕が海に繋がる綱を引き、やがて沈んだ網の縁が波の下に見えてきた。
網を掴んで更に手繰り寄せれば、海面に激しい水飛沫が立つ。
「それ、もう少しだ!」
「「「おーぅ!」」」
音頭を取る頭(かしら)の老漁師に男達は揃って応え、息を合わせて網を引いた。
篝火の下、逃げ場を失って跳ねる魚が銀色に煌めく。
魚が飛ばす飛沫を浴びながら、漁師達は一気に網を舟へ引き上げた。
「やれやれ。今日も無事に漁が出来て、何よりだな」
「後は早く帰って、温まりたいモンだ」
そんなやり取りを交えながら、港へ戻るべく漁師達が舟を漕いでいると。
唄が、聞こえた。
ゆるい風に混じって流れてきたのは、美しい女の声。
寂しげで憂いを帯びた、切なくも心地よい歌声。
何気なく耳を傾けていると頭の芯がぼぅっとしてきて、櫂(かい)を漕ぐ力も緩む。
「まずい、流されてるぞ!」
気付いた老漁師が怒鳴り、虚ろな連中の石頭にゲンコツを食らわせ、あるいは頬を張り倒した。
「手が空いてるモンは耳ぃ塞げ! 漕ぎ手は無心で舟を漕げ!」
正気に戻った漁師達は再び櫂を漕ぎ始めるが、手が止まった仲間の舟は潮に流されていく。
「おーい、流されてるぞ! おーい!!」
「あいつらは、どうするんです!?」
大声で呼びかけても返事がない舟に、老漁師が頭を振った。
「今は諦めろ。どうやら、何かしら海の化物が目ぇ覚ましやがったらしい。儂らに出来るのは、早く港に戻ってハンターに助けを頼む事くれぇだな……あいつらが、化物に喰われちまう前に」
漁師達は青ざめた顔を見合わせ、舟を漕ぐ腕に一層の力を込める。
間もなく、大きな水音と恐怖で引きつった悲鳴が一つ、夜明け前の静寂を裂いた。
思わず振り返った、その先で。
波間で漂う篝火にイルカの様に水面から跳ねる影――人の形と長い『尾』を持つソレは、人魚を思わせた――が照らされ、そして炎と共に没する。
「う、うわあぁぁぁぁ!?」
「なんだ、今の!」
「かーちゃん、ごめん。美人かと思った俺が悪かったぁぁーっ!」
「えぇい、うるさいッ!! 気合を入れて漕がんか、それ! ほーい、ほーい!」
老漁師の声に合わせ、恐怖に駆られた漁師達は一心不乱に舟を漕いだ
遠ざかる舟を引き止めるように、まだ唄は微かに流れていたが。
それも大きな掛け声と、櫂の軋む音でかき消される。
ただ仲間の漁船が消えた方角を、じっと老漁師は睨んでいた。
「ところで、ナンで頭(かしら)は何ともなかったんだ?」
唄も届かなくなり、やっと港が見えてきた頃。
安堵した若い漁師の一人が、おもむろに年上の漁師へ小声で尋ねると。
「ああ……じーさん、歳のせいか少し耳が遠くてな。普段から俺達も声がデカいから、あんま不自由はないが」
「そのお陰で、俺達も命拾いしたなんてな。老いぼれるってのも悪くないというか」
もっともな答えに、若い漁師は納得顔で頷いた。
●リゼリオの一角~島の小さな港
「おぅ。配達屋、ちょうどいいところにいた。儂と漁師の一人を、ハンターオフィスまで運んでくれんか。急ぎでな」
ちょうど桟橋に停泊していた配達屋の舟が、目に入ったのか。漁船が港へ着くなり、老漁師は舟の漕ぎ手を掴まえた。
「揉め事か、じーさん」
「海で化物が出よった。そいつに、篝火役の漁船が取られてのう……ああ、ディン。お前も一緒に来い」
呼ばれた漁師の顔色が、一気に青ざめる。
「けど、お頭……」
「見たモンをギルドで話すだけの用だ。お前が一番、目がいいからな」
老漁師は残る漁師達に魚の水揚げを託し、怯える漁師と共に配達屋の舟へ移った。
「詳細不明の、化物退治……ですか」
少し困ったように、ハンターオフィスの職員が溜め息をついた。
「過去に、同じような被害はあったんですか?」
「伝聞の域なら、幾つか古い話が漁師の間で伝えられとる。幸運にも覚醒者が近くに滞在していた場合は彼らへ依頼し、いない場合は漁師達が銛や網を手に撃退したそうだ……それなりの犠牲と引き換えにな」
「俺達が見たヤツは、一匹だった。上は人で、魚体の長い魚や海蛇みたいな胴体をして……聞こえてきた唄は、そいつが歌ってるんだと思う」
老漁師に続き、神妙な表情で同行した漁師が付け加える。
「人魚の可能性も否定できませんが、警告や意思の疎通なく襲ってきたならセイレーンのような幻獣か、何処かから流れてきた魔法生物や雑魔の類と考えた方がいいでしょうね。いずれにしても、放置しておけるモノではありません。流された漁師達の安否も、不明ですし」
誰かが安否を確かめ、誰かが危険な化物を始末しなければならない――誰か、が。
「沈んでおらねば舟は潮に運ばれ、近くにある小さな無人島へ漂着している筈じゃ。漁場や他の島からも離れた孤島で暗礁が多く、熟練の漁師以外は近づかん」
「では孤島への舟は、漁師の誰かが?」
「いや。儂らも漁があり、既に臆病風に吹かれた者もいよう。運ぶのは、それを生業(なりわい)とした者に頼むのが筋よ」
「……じいさんよぅ」
ここへきて、何故かこの場に引き止められていた配達屋が理由を悟り、恨めしげにうめく。
「運ぶだけじゃあなかったのか?」
「何年も、広く海を漕いでいるお前さんなら、あの辺の海にも詳しかろ? 波の下で何が息を潜めているか、上からは分からんからの。それに、戦う前からハンターを疲れさせる訳にもいかん」
「移動手段を用意していただけるなら、こちらとしても問題ありません」
否応なく話がまとまるのを聞く配達屋はくるりと目玉を動かして天井を仰ぎ、同行の漁師は気の毒そうな苦笑を向けた。
「えい、やぁ! えい、やぁ!」
夜明け前の暗い海に、力のこもった男らの掛け声が響く。
波間に浮かぶ二隻の舟は、片方が篝火を船首に掲げ、もう一隻は舟の片側に男達が集まっている。
隆々とした太い腕が海に繋がる綱を引き、やがて沈んだ網の縁が波の下に見えてきた。
網を掴んで更に手繰り寄せれば、海面に激しい水飛沫が立つ。
「それ、もう少しだ!」
「「「おーぅ!」」」
音頭を取る頭(かしら)の老漁師に男達は揃って応え、息を合わせて網を引いた。
篝火の下、逃げ場を失って跳ねる魚が銀色に煌めく。
魚が飛ばす飛沫を浴びながら、漁師達は一気に網を舟へ引き上げた。
「やれやれ。今日も無事に漁が出来て、何よりだな」
「後は早く帰って、温まりたいモンだ」
そんなやり取りを交えながら、港へ戻るべく漁師達が舟を漕いでいると。
唄が、聞こえた。
ゆるい風に混じって流れてきたのは、美しい女の声。
寂しげで憂いを帯びた、切なくも心地よい歌声。
何気なく耳を傾けていると頭の芯がぼぅっとしてきて、櫂(かい)を漕ぐ力も緩む。
「まずい、流されてるぞ!」
気付いた老漁師が怒鳴り、虚ろな連中の石頭にゲンコツを食らわせ、あるいは頬を張り倒した。
「手が空いてるモンは耳ぃ塞げ! 漕ぎ手は無心で舟を漕げ!」
正気に戻った漁師達は再び櫂を漕ぎ始めるが、手が止まった仲間の舟は潮に流されていく。
「おーい、流されてるぞ! おーい!!」
「あいつらは、どうするんです!?」
大声で呼びかけても返事がない舟に、老漁師が頭を振った。
「今は諦めろ。どうやら、何かしら海の化物が目ぇ覚ましやがったらしい。儂らに出来るのは、早く港に戻ってハンターに助けを頼む事くれぇだな……あいつらが、化物に喰われちまう前に」
漁師達は青ざめた顔を見合わせ、舟を漕ぐ腕に一層の力を込める。
間もなく、大きな水音と恐怖で引きつった悲鳴が一つ、夜明け前の静寂を裂いた。
思わず振り返った、その先で。
波間で漂う篝火にイルカの様に水面から跳ねる影――人の形と長い『尾』を持つソレは、人魚を思わせた――が照らされ、そして炎と共に没する。
「う、うわあぁぁぁぁ!?」
「なんだ、今の!」
「かーちゃん、ごめん。美人かと思った俺が悪かったぁぁーっ!」
「えぇい、うるさいッ!! 気合を入れて漕がんか、それ! ほーい、ほーい!」
老漁師の声に合わせ、恐怖に駆られた漁師達は一心不乱に舟を漕いだ
遠ざかる舟を引き止めるように、まだ唄は微かに流れていたが。
それも大きな掛け声と、櫂の軋む音でかき消される。
ただ仲間の漁船が消えた方角を、じっと老漁師は睨んでいた。
「ところで、ナンで頭(かしら)は何ともなかったんだ?」
唄も届かなくなり、やっと港が見えてきた頃。
安堵した若い漁師の一人が、おもむろに年上の漁師へ小声で尋ねると。
「ああ……じーさん、歳のせいか少し耳が遠くてな。普段から俺達も声がデカいから、あんま不自由はないが」
「そのお陰で、俺達も命拾いしたなんてな。老いぼれるってのも悪くないというか」
もっともな答えに、若い漁師は納得顔で頷いた。
●リゼリオの一角~島の小さな港
「おぅ。配達屋、ちょうどいいところにいた。儂と漁師の一人を、ハンターオフィスまで運んでくれんか。急ぎでな」
ちょうど桟橋に停泊していた配達屋の舟が、目に入ったのか。漁船が港へ着くなり、老漁師は舟の漕ぎ手を掴まえた。
「揉め事か、じーさん」
「海で化物が出よった。そいつに、篝火役の漁船が取られてのう……ああ、ディン。お前も一緒に来い」
呼ばれた漁師の顔色が、一気に青ざめる。
「けど、お頭……」
「見たモンをギルドで話すだけの用だ。お前が一番、目がいいからな」
老漁師は残る漁師達に魚の水揚げを託し、怯える漁師と共に配達屋の舟へ移った。
「詳細不明の、化物退治……ですか」
少し困ったように、ハンターオフィスの職員が溜め息をついた。
「過去に、同じような被害はあったんですか?」
「伝聞の域なら、幾つか古い話が漁師の間で伝えられとる。幸運にも覚醒者が近くに滞在していた場合は彼らへ依頼し、いない場合は漁師達が銛や網を手に撃退したそうだ……それなりの犠牲と引き換えにな」
「俺達が見たヤツは、一匹だった。上は人で、魚体の長い魚や海蛇みたいな胴体をして……聞こえてきた唄は、そいつが歌ってるんだと思う」
老漁師に続き、神妙な表情で同行した漁師が付け加える。
「人魚の可能性も否定できませんが、警告や意思の疎通なく襲ってきたならセイレーンのような幻獣か、何処かから流れてきた魔法生物や雑魔の類と考えた方がいいでしょうね。いずれにしても、放置しておけるモノではありません。流された漁師達の安否も、不明ですし」
誰かが安否を確かめ、誰かが危険な化物を始末しなければならない――誰か、が。
「沈んでおらねば舟は潮に運ばれ、近くにある小さな無人島へ漂着している筈じゃ。漁場や他の島からも離れた孤島で暗礁が多く、熟練の漁師以外は近づかん」
「では孤島への舟は、漁師の誰かが?」
「いや。儂らも漁があり、既に臆病風に吹かれた者もいよう。運ぶのは、それを生業(なりわい)とした者に頼むのが筋よ」
「……じいさんよぅ」
ここへきて、何故かこの場に引き止められていた配達屋が理由を悟り、恨めしげにうめく。
「運ぶだけじゃあなかったのか?」
「何年も、広く海を漕いでいるお前さんなら、あの辺の海にも詳しかろ? 波の下で何が息を潜めているか、上からは分からんからの。それに、戦う前からハンターを疲れさせる訳にもいかん」
「移動手段を用意していただけるなら、こちらとしても問題ありません」
否応なく話がまとまるのを聞く配達屋はくるりと目玉を動かして天井を仰ぎ、同行の漁師は気の毒そうな苦笑を向けた。
解説
【依頼】
海に現れた化物を退治し、戻らぬ漁師を助けて欲しい。
漁師を乗せたまま行方不明になった舟は一隻で、漁師が三人乗っていた。
普段から海で漁をしている漁師によると、潮に流され、近くの孤島に漂着している可能性が高いという。
問題の孤島までは、舟での配達を専門としている『配達屋』が自前の舟で運んでくれる(あくまで運ぶのみで、化物退治には参加しない)。
海水の温度はまだ低く、落水には注意が必要である。
【孤島】
漁場や陸、他の島から離れた、小さな無人島。
周辺の海には暗礁が多い。そのため潮の流れも複雑で、熟練の漁師でも用がなければ滅多に近付かない。
海岸は崖や岩場が目立ち、少ない入り江の奥に砂浜がある程度。島全体も起伏が激しく、中心部に行くほど草木が茂っている。
【化物】
上半身は女、胸から下は長い魚体を持った、半人半魚の化け物。
幻獣、魔法生物、雑魔、いずれかの可能性が考えられるものの、不明。
歌声による一種の魅了で獲物の意識を朦朧(もうろう)とさせ、鈍ったところを襲うと考えられる。武器は持たず、また意思の疎通も出来ない模様。
【ご注意】
・スキルのセット
プレイングに使用するスキルを書いていても、セットしていないと使えません。
・○○参照は不可
プレイングに「詳細は○○参照(リプレイ/OMC/相談卓、など)」と指定しても、マスタリングでは基本的に反映されません。
・ユニットやペットの扱い
舟に乗せられる重量が限られているため、ユニットや大型ペットの持ち込みは出来ません。
海に現れた化物を退治し、戻らぬ漁師を助けて欲しい。
漁師を乗せたまま行方不明になった舟は一隻で、漁師が三人乗っていた。
普段から海で漁をしている漁師によると、潮に流され、近くの孤島に漂着している可能性が高いという。
問題の孤島までは、舟での配達を専門としている『配達屋』が自前の舟で運んでくれる(あくまで運ぶのみで、化物退治には参加しない)。
海水の温度はまだ低く、落水には注意が必要である。
【孤島】
漁場や陸、他の島から離れた、小さな無人島。
周辺の海には暗礁が多い。そのため潮の流れも複雑で、熟練の漁師でも用がなければ滅多に近付かない。
海岸は崖や岩場が目立ち、少ない入り江の奥に砂浜がある程度。島全体も起伏が激しく、中心部に行くほど草木が茂っている。
【化物】
上半身は女、胸から下は長い魚体を持った、半人半魚の化け物。
幻獣、魔法生物、雑魔、いずれかの可能性が考えられるものの、不明。
歌声による一種の魅了で獲物の意識を朦朧(もうろう)とさせ、鈍ったところを襲うと考えられる。武器は持たず、また意思の疎通も出来ない模様。
【ご注意】
・スキルのセット
プレイングに使用するスキルを書いていても、セットしていないと使えません。
・○○参照は不可
プレイングに「詳細は○○参照(リプレイ/OMC/相談卓、など)」と指定しても、マスタリングでは基本的に反映されません。
・ユニットやペットの扱い
舟に乗せられる重量が限られているため、ユニットや大型ペットの持ち込みは出来ません。
マスターより
今回の依頼は、海で歌う化物退治。
世の中の大きな流れとはかけ離れた、小さくも面倒な仕事です。
場所が場所、そして残念ながら泳ぐには少し早い時期ですので、もし海に入る時はそれなりに覚悟して下さい。
海中での戦闘となった場合は、FNBトップページから「ルール>戦闘ルール>特殊な状況>水中での戦闘ルール」が適応されます。
遭遇した海上で戦うか、覚醒者に有利な場所まで誘導するのか、その辺りは参加したPCさん次第。
現場までの足となる配達屋は戦闘に参加せず、舟の安全保持と落水者の救助に専念します。
なおスローペースで活動中のため、執筆期間を多めにいただいております。
世の中の大きな流れとはかけ離れた、小さくも面倒な仕事です。
場所が場所、そして残念ながら泳ぐには少し早い時期ですので、もし海に入る時はそれなりに覚悟して下さい。
海中での戦闘となった場合は、FNBトップページから「ルール>戦闘ルール>特殊な状況>水中での戦闘ルール」が適応されます。
遭遇した海上で戦うか、覚醒者に有利な場所まで誘導するのか、その辺りは参加したPCさん次第。
現場までの足となる配達屋は戦闘に参加せず、舟の安全保持と落水者の救助に専念します。
なおスローペースで活動中のため、執筆期間を多めにいただいております。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/04/26 05:51
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼の相談用スレッド 天王寺茜(ka4080) 人間(リアルブルー)|18才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/04/01 17:57:11 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/29 19:46:54 |