ゲスト
(ka0000)
悪意撒き散らす不定形
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/03/30 19:00
- リプレイ完成予定
- 2016/04/08 19:00
オープニング
※このシナリオは難易度が高く設定されています。所持金の大幅な減少や装備アイテムの損失、場合によっては、再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
再起不能、死亡判定の下されたキャラクターはログイン、及びコンテンツへのアクセスが制限されます。
それは暗闇の中で生まれた。
石畳の隙間を縫い、溶け広がっていく体を繋ぎ止めるように本能が芽生え、徐々に広がる世界にそれは大きく感動を覚えた。
世界は、音に満ちあふれていた。数え切れない音の群れが、それの体を震わせる。
――悲鳴、怨嗟、嗚咽。命を乞い、帰してくれと叫ぶ声。罵り、あらん限りに叩き付けられる怒号。潰れ、千切れ、ねじ切られ、摺り下ろされ、抉り取られ、剥がし、引き抜き、突き刺し、流れ出て、噴き出して、垂れ流されて、そして滴り落ちて広がっていく。
様々な音を聞いた。だがそれが、いま聞こえているものなのか、元々別の何かだったときの記憶なのか。
そんなことは、最早それにとってどうだって良いことだった。
その音をかつて自分が発していたことさえ、忘れてしまっていた。
●
「なんかここ、超くっさくね?」
「はい」「長らく」「放置」「しておりました故」
とある小屋の地下室の扉を開いた途端、溢れ出した臭気に、エリザベートは顔をしかめた。真っ先に扉の先に顔を入れた事が災いし、長く封鎖され濃縮された上澄みを吸ってしまったらしい。
普段から腐臭や死臭など嗅ぎ慣れて、むしろそれらを好む性質すら持つ彼女が嫌悪するほどの、圧倒的にこの世ならざるな臭いが地下に満ちていた。
「つか、管理とかさ、やんねえ? ふつーさ。こんなんじゃこの別荘もう使えねえじゃん」
エリザベートは鼻を摘まんで後退る。戸棚の奥に取っておいたお菓子が、いつの間にかダメになっていたような落胆と苛立ちを隠しもしない。
非難を向けられて、彼女の背後に付き添った、燕尾服とメイド服をきっちりと着こなす二体のゾンビが深く頭を下げた。
「……別に、捨てたら良いじゃないか。こんなところ」
続いて、静かな声が響く。その男の声が聞こえた途端、エリザベートはバッと勢いよく振り返っていた。
「は? 何、あたしに口出しすんの?」
眉間に皺を寄せ、牙を剥き、敵意も露わにエリザベートが声の主に詰め寄る。
声の主、青黒い鎧に身を包んだ戦士風の男は、その勢いにも全く動じず、目を細めて彼女に目を向けた。
「あんたは、あたしの部下なの。命令は絶対だし、あたしのやることに一々ケチ付けんじゃねえ。そういうの、マジムカつくから!」
指を差す要領で、男の首に尖った爪をぐりぐりと突き刺して、エリザベートが怒鳴りつける。
指を伝って流れ出る血を見ながらも、男は表情一つ変えない。
「……分かった」
そして静かにそれだけを返した。
「――ちっ」
面白くない反応だったのだろう、エリザベートは舌打ちと共に爪を引き抜くと、濡れた爪を一舐めしながら男の顔を睨むと踵を返した。
「で、掃除屋は? 出来てたんでしょ」
気を取り直したように、ゾンビに声を掛ける。
「はい」「どうやら」「捕らえておいた内の一人が」「変化した」「ようですが」「壁の隙間から」「外に出てしまったようです」
「はあ? 何それマジ使えねえじゃん。じゃあ何? このくっさい部屋が残っただけ?」
有り得ねえと呟き、エリザベートはため息をつく。
どうやら、この小屋は本当に捨てた方が良いようだ。一度掃除屋が生まれてしまうと、そこはオモチャを保存するに適さない空間になってしまう。それを改善するくらいなら、新たな拠点を見つけた方が断然早いし楽だろう。
スカートの裾を翻し、聞こえがしに高らかな足音を響かせてエリザベートは小屋を後にする。
「おら、行くよ!」
すれ違い様に、ひっそりと佇む男に腹いせの蹴りを叩き込みながら。
「……何故蹴る」
「ムカつくから!」
小屋の外に置いたアイアンメイデンの鎖を乱暴に掴むと、エリザベートは次の拠点を目指し宙に浮かび上がった。
●
第二師団都市カールスラーエ要塞の地下に広がる大空間。今日も今日とてドワーフ達がせっせと作業を続けるそこに、野太い悲鳴が響き渡った。
「おい、どうした!」
親方と呼ばれるドワーフ達のまとめ役は、慌てて作業を中断すると声の聞こえた場所へと向かう。
声には聞き覚えがあった。部下のドワーフの一人だ。
悲鳴に驚いたのだろうか、地下は軽いパニックに陥っていた。現場と思われる方角から、次々に人が逃げていく。それこそ、流れに逆らう親方の姿も見えていないように、必死な形相だ。
不安が募る。
そして、それを裏付けるようにまたいくつかの悲鳴が上がった。
「何があった!」
「お、親方! グレオンの奴が!」
そこは、魔導アーマー格納庫予定地の近く、物資倉庫として掘り進めていた地点だ。未だ壁は全て岩で覆われていて、これから金属によって補強を施す予定になっていた。
その奥に、よく知るドワーフの倒れた姿と――何か、赤黒い水溜まりのようなものが広がっていた。
「きゅ、急にあれが岩の間から!」
よく見れば、水溜まりは蠢いている。
一目で分かった、あれは間違いなく歪虚だ。
「グレオンが触った途端に、あいつ急に苦しみだして……!」
「全員下がれ! 地上に逃げるんだ」
言葉を遮り、親方は叫ぶ。
あれは危険だ。
遠目から見ても分かる。グレオンは、既に事切れている。その肌は黒く変色し、まるで流行病に罹患して病魔が急速に体を蝕んだようだった。
「で、でもあいつが……!」
「そう思うなら、さっさと走って誰でもいいから呼んでこい!」
親方の一喝に、若いドワーフはもんどり打って走って行く。
その足音が消えないうちに、水溜まりに変化があった。
「……やめて、助けて、痛い、嫌だ、ふざけんな、死ね、殺す、てめえ覚えてろ、許さねえからな、殺してくれ、うぎゃあああ……」
ぐちゅぐちゅと粘液の混ざる音で象った、そんな言葉が聞こえてきた。同時に、水溜まりの蠢きが激しくなる。
水溜まりの中心に、粘液の柱がせり上がる。水は吸い込まれるように柱に集まって行き――そして全てが集まった後、赤黒い液体は二本足で立つ巨大な人型へと形を変えていた。
人型がのそりと歩き出す。その先には、倒れ伏したグレオンの姿。
「おい、おいやめろ!」
親方が駆け出す。そのまま背負ったツルハシを引き抜くと、人型の頭に向け思い切り振り下ろした。
ぐちゃりと、人型の頭が弾ける。同時に、鼻がもげるような悪臭が親方を襲った。
それは、憤怒に燃える心を一瞬に折るほどに強力で。
親方は思わず鼻を覆って地面を転がっていた。
対して人型は、頭を失ったことを気にもとめず、崩れた体でグレオンの元へと辿り着き。
その体に、覆い被さった。
「や、やめ……!」
ぐつぐつと、粘液に包まれた体が泡立つ。肉体が、骨が、見知った姿が見る間に醜く変貌していく。
ほんの、十数秒の出来事だった。
グレオンというドワーフがこの世に存在した、その証はもう、どこにも残っていなかった。
ぐるりと人型が、既に再生した頭を親方へと向ける。どうやら、次の獲物を見つけたようだ。
再起不能、死亡判定の下されたキャラクターはログイン、及びコンテンツへのアクセスが制限されます。
それは暗闇の中で生まれた。
石畳の隙間を縫い、溶け広がっていく体を繋ぎ止めるように本能が芽生え、徐々に広がる世界にそれは大きく感動を覚えた。
世界は、音に満ちあふれていた。数え切れない音の群れが、それの体を震わせる。
――悲鳴、怨嗟、嗚咽。命を乞い、帰してくれと叫ぶ声。罵り、あらん限りに叩き付けられる怒号。潰れ、千切れ、ねじ切られ、摺り下ろされ、抉り取られ、剥がし、引き抜き、突き刺し、流れ出て、噴き出して、垂れ流されて、そして滴り落ちて広がっていく。
様々な音を聞いた。だがそれが、いま聞こえているものなのか、元々別の何かだったときの記憶なのか。
そんなことは、最早それにとってどうだって良いことだった。
その音をかつて自分が発していたことさえ、忘れてしまっていた。
●
「なんかここ、超くっさくね?」
「はい」「長らく」「放置」「しておりました故」
とある小屋の地下室の扉を開いた途端、溢れ出した臭気に、エリザベートは顔をしかめた。真っ先に扉の先に顔を入れた事が災いし、長く封鎖され濃縮された上澄みを吸ってしまったらしい。
普段から腐臭や死臭など嗅ぎ慣れて、むしろそれらを好む性質すら持つ彼女が嫌悪するほどの、圧倒的にこの世ならざるな臭いが地下に満ちていた。
「つか、管理とかさ、やんねえ? ふつーさ。こんなんじゃこの別荘もう使えねえじゃん」
エリザベートは鼻を摘まんで後退る。戸棚の奥に取っておいたお菓子が、いつの間にかダメになっていたような落胆と苛立ちを隠しもしない。
非難を向けられて、彼女の背後に付き添った、燕尾服とメイド服をきっちりと着こなす二体のゾンビが深く頭を下げた。
「……別に、捨てたら良いじゃないか。こんなところ」
続いて、静かな声が響く。その男の声が聞こえた途端、エリザベートはバッと勢いよく振り返っていた。
「は? 何、あたしに口出しすんの?」
眉間に皺を寄せ、牙を剥き、敵意も露わにエリザベートが声の主に詰め寄る。
声の主、青黒い鎧に身を包んだ戦士風の男は、その勢いにも全く動じず、目を細めて彼女に目を向けた。
「あんたは、あたしの部下なの。命令は絶対だし、あたしのやることに一々ケチ付けんじゃねえ。そういうの、マジムカつくから!」
指を差す要領で、男の首に尖った爪をぐりぐりと突き刺して、エリザベートが怒鳴りつける。
指を伝って流れ出る血を見ながらも、男は表情一つ変えない。
「……分かった」
そして静かにそれだけを返した。
「――ちっ」
面白くない反応だったのだろう、エリザベートは舌打ちと共に爪を引き抜くと、濡れた爪を一舐めしながら男の顔を睨むと踵を返した。
「で、掃除屋は? 出来てたんでしょ」
気を取り直したように、ゾンビに声を掛ける。
「はい」「どうやら」「捕らえておいた内の一人が」「変化した」「ようですが」「壁の隙間から」「外に出てしまったようです」
「はあ? 何それマジ使えねえじゃん。じゃあ何? このくっさい部屋が残っただけ?」
有り得ねえと呟き、エリザベートはため息をつく。
どうやら、この小屋は本当に捨てた方が良いようだ。一度掃除屋が生まれてしまうと、そこはオモチャを保存するに適さない空間になってしまう。それを改善するくらいなら、新たな拠点を見つけた方が断然早いし楽だろう。
スカートの裾を翻し、聞こえがしに高らかな足音を響かせてエリザベートは小屋を後にする。
「おら、行くよ!」
すれ違い様に、ひっそりと佇む男に腹いせの蹴りを叩き込みながら。
「……何故蹴る」
「ムカつくから!」
小屋の外に置いたアイアンメイデンの鎖を乱暴に掴むと、エリザベートは次の拠点を目指し宙に浮かび上がった。
●
第二師団都市カールスラーエ要塞の地下に広がる大空間。今日も今日とてドワーフ達がせっせと作業を続けるそこに、野太い悲鳴が響き渡った。
「おい、どうした!」
親方と呼ばれるドワーフ達のまとめ役は、慌てて作業を中断すると声の聞こえた場所へと向かう。
声には聞き覚えがあった。部下のドワーフの一人だ。
悲鳴に驚いたのだろうか、地下は軽いパニックに陥っていた。現場と思われる方角から、次々に人が逃げていく。それこそ、流れに逆らう親方の姿も見えていないように、必死な形相だ。
不安が募る。
そして、それを裏付けるようにまたいくつかの悲鳴が上がった。
「何があった!」
「お、親方! グレオンの奴が!」
そこは、魔導アーマー格納庫予定地の近く、物資倉庫として掘り進めていた地点だ。未だ壁は全て岩で覆われていて、これから金属によって補強を施す予定になっていた。
その奥に、よく知るドワーフの倒れた姿と――何か、赤黒い水溜まりのようなものが広がっていた。
「きゅ、急にあれが岩の間から!」
よく見れば、水溜まりは蠢いている。
一目で分かった、あれは間違いなく歪虚だ。
「グレオンが触った途端に、あいつ急に苦しみだして……!」
「全員下がれ! 地上に逃げるんだ」
言葉を遮り、親方は叫ぶ。
あれは危険だ。
遠目から見ても分かる。グレオンは、既に事切れている。その肌は黒く変色し、まるで流行病に罹患して病魔が急速に体を蝕んだようだった。
「で、でもあいつが……!」
「そう思うなら、さっさと走って誰でもいいから呼んでこい!」
親方の一喝に、若いドワーフはもんどり打って走って行く。
その足音が消えないうちに、水溜まりに変化があった。
「……やめて、助けて、痛い、嫌だ、ふざけんな、死ね、殺す、てめえ覚えてろ、許さねえからな、殺してくれ、うぎゃあああ……」
ぐちゅぐちゅと粘液の混ざる音で象った、そんな言葉が聞こえてきた。同時に、水溜まりの蠢きが激しくなる。
水溜まりの中心に、粘液の柱がせり上がる。水は吸い込まれるように柱に集まって行き――そして全てが集まった後、赤黒い液体は二本足で立つ巨大な人型へと形を変えていた。
人型がのそりと歩き出す。その先には、倒れ伏したグレオンの姿。
「おい、おいやめろ!」
親方が駆け出す。そのまま背負ったツルハシを引き抜くと、人型の頭に向け思い切り振り下ろした。
ぐちゃりと、人型の頭が弾ける。同時に、鼻がもげるような悪臭が親方を襲った。
それは、憤怒に燃える心を一瞬に折るほどに強力で。
親方は思わず鼻を覆って地面を転がっていた。
対して人型は、頭を失ったことを気にもとめず、崩れた体でグレオンの元へと辿り着き。
その体に、覆い被さった。
「や、やめ……!」
ぐつぐつと、粘液に包まれた体が泡立つ。肉体が、骨が、見知った姿が見る間に醜く変貌していく。
ほんの、十数秒の出来事だった。
グレオンというドワーフがこの世に存在した、その証はもう、どこにも残っていなかった。
ぐるりと人型が、既に再生した頭を親方へと向ける。どうやら、次の獲物を見つけたようだ。
解説
・概要
都市を襲った正体不明の歪虚を討伐せよ。
・敵
赤黒い粘液で構成された、人の形をした歪虚です。体格の良いドワーフを取り込んだことでその体積は増しており、既に体長は四メートルを超えています。
動きは非常に遅く、単純で知性は見当たりません。言葉を発しますが、オウムのように覚えたものを繰り返しているだけのようです。
攻撃方法として、自らを構成する粘液を高速で飛ばしてきます。
特筆する特徴として、その歪虚に直接触れた場合、覚醒者でも無視の出来ない毒を受けることになります。それは感染症に近いものであり、放っておけば容易く命を落としてしまうでしょう。
直接触れない場合でも、強力な腐食性により多くのものを溶かしてしまいます。
また歪虚は、覚悟していても抗いがたいほどの悪臭を常に放っています。
・場所
倉庫として建造された、それなりの広さを持つ四方を岩壁に囲まれた部屋です。
歪虚のいる地点を正面に見る形で幅の広い物資搬入口があり、その入り口には金属製の強固な扉が付いています。
・補足
ハンター達は軍に先立って、救援に応じ現場へ向かいます。
しばらくすると、肉弾戦と土木建築に長けた第二師団員複数名が増援として到着します。
都市を襲った正体不明の歪虚を討伐せよ。
・敵
赤黒い粘液で構成された、人の形をした歪虚です。体格の良いドワーフを取り込んだことでその体積は増しており、既に体長は四メートルを超えています。
動きは非常に遅く、単純で知性は見当たりません。言葉を発しますが、オウムのように覚えたものを繰り返しているだけのようです。
攻撃方法として、自らを構成する粘液を高速で飛ばしてきます。
特筆する特徴として、その歪虚に直接触れた場合、覚醒者でも無視の出来ない毒を受けることになります。それは感染症に近いものであり、放っておけば容易く命を落としてしまうでしょう。
直接触れない場合でも、強力な腐食性により多くのものを溶かしてしまいます。
また歪虚は、覚悟していても抗いがたいほどの悪臭を常に放っています。
・場所
倉庫として建造された、それなりの広さを持つ四方を岩壁に囲まれた部屋です。
歪虚のいる地点を正面に見る形で幅の広い物資搬入口があり、その入り口には金属製の強固な扉が付いています。
・補足
ハンター達は軍に先立って、救援に応じ現場へ向かいます。
しばらくすると、肉弾戦と土木建築に長けた第二師団員複数名が増援として到着します。
マスターより
出来る限りホラーっぽく書いてみたかったT谷です。
要はスライムですので、気軽に戯れてみるのもいいと思います。
要はスライムですので、気軽に戯れてみるのもいいと思います。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/04/08 13:45
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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【相談卓】INFECTION フォークス(ka0570) 人間(リアルブルー)|25才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/03/30 17:13:36 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/27 07:14:48 |