ゲスト
(ka0000)
リリーの願い
マスター:西尾厚哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在4人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/04/14 22:00
- リプレイ完成予定
- 2016/04/23 22:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
「ハンターに会いたい? どうして?」
フォン・シュタイン農園主、ブリッツ・フォン・シュタインはリリーに差し出された紙を見て不思議そうに彼女に目を向けた。
リリーは再び紙に書いた。
『小さい時、私を助け出してくれた。お礼が言いたい』
『誰かの依頼なら、ハンターへの報酬は終わってるよ』
ブリッツは返事を書く。
『私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。母が守った命を大切に生きろと言ってくれた』
リリーの書いた文字をブリッツは見つめた。
几帳面に整った文字だった。
リリーは、一年前に他界したブリッツの父が雇い入れたらしい。
でも、屋敷ではなく農園のほうにいた彼女のことをブリッツは知らなかった。
葡萄の栽培からワイン造りの管理は亡き父と叔父がやっていて、甘やかされて育ったブリッツがようやっと家業について学ぼうと腰をあげたのは半年前だ。
叔父夫婦や親類がブリッツを落ち着かせようと嫁探しに躍起になったため、疎ましくなったのだ。
「や、僕ね、結婚はちゃんと家の仕事の勉強してからって思うんだ。奥さんも自分で探すよ」
そんなことを嘯いていた彼がふとリリーに目を止めたのは、彼女の風貌がブリッツの価値観にある女性像とはかけ離れていたからだった。
大きくがっしりした体つきで、眉が太く鼻梁も太い。
きゅっと髪を後ろでひっつめているので角ばった顎が余計に際立った。
彼女は大きなシーツをまるで小さなテーブルクロスのようにぱんとはたいてひらりと干した。
リリーは数か月前にぎっくり腰になっていて、それがどうもそれが癖になってしまったために叔父の勧めで農園から屋敷の方の仕事をすることになったらしい。
彼女の耳が不自由で、喋ることもできないと知ったのはだいぶんあとになってからだ。
教えてくれたのは叔父だ。
「小さい時に、生家で歪虚の襲撃に遭ったらしい」
リリーの母は彼女を台所の床下に押し込んだ。
「リリー、何があっても声を出してはだめ。耳を塞ぎなさい。あなたは何も聞こえない」
そう言われて閉められた扉の奥で、彼女は身を縮めて自分の手で耳を塞いだ。
どれくらいの時間がたったのか、ようよう扉が開いて救いあげられた時、母の姿はなかった。
「兄貴(ブリッツの父)が言うには、彼女の不自由は心の問題らしいんだが、仕事をする分には問題ないし、きっと回復するから長い目で見てやってくれ、ということだった」
叔父は言った。
実際、働き手としてのリリーは優秀で、勘もいいし常に胸元に紙切れと鉛筆を入れているので、ややこしいことは筆談すれば事足りた。
気遣いは細やかで特に洗濯が大好きらしかった。
ブリッツは何となくリリーに興味を持った。
父はどうして彼女をわざわざ雇い入れたのだろう。
働き手は十分に足りていたはずだった。
「父とはどうやって知り合ったの?」
干したばかりのシーツの影から顔を覗かせてリリーに話しかけてみた。
リリーは不思議そうにブリッツの顔を見つめる。
「僕の 父とね 知り合い?」
ゆっくり言ってみる。
じっとブリッツの口元を見ていたリリーは、胸元から紙きれと鉛筆を取り出すと何やら書いてブリッツに示した。
―― 飲み物をお持ちしましょうか?
ブリッツは暫くそれを見つめたあと、リリーの手から鉛筆をとってその下に書いた。
『僕と一緒に農園の見回りに。お弁当の用意をして』
リリーはそれを読んで少しびっくりしたような目をしたが、すぐに頷いて屋敷に入って行った。
ブリッツはカッコよくリリーを馬上で自分の前に乗せたかったが、彼女の壁のような背で前が全く見えないので、やむなく後ろに乗せた。
そうすると、ブリッツは彼女の胸の下あたりでちんまりと収まり、手綱を握っているのはリリーのようにも見えた。
でも、リリーの大きな胸が自分の肩あたりでゆさゆさ揺れているのを感じるのは何となく嬉しかったりした。
農園を一回りして、ふたりは見晴らしの良い場所でお弁当を広げた。
リリーは敷物をきっちりと皺のないように敷き、ブリッツが食べやすいように食べ物を広げ、自分は隅に腰を下ろした。
ブリッツがもっとそばに来るようにと勧めても頑として近づかなかった。
お弁当を食べている間、ブリッツはリリーがそっと花を摘んでいるのを見た。
その花が夕食のテーブルの上にそっと飾られていた。
リリーを連れて農園の見回りに行くことが多くなった。
彼女を馬に乗せるとふんわりと石鹸の匂いがした。
近くで見ると、意外に睫毛が長いことがわかった。
彼女との会話は主に筆談だった。
リリーは農園にいたから、ブリッツよりも葡萄のことに詳しかった。
彼女が教えてくれることをブリッツは夢中で覚えた。
『次の収穫で父がやっていたように僕も手伝いを。一緒にやってくれる? 君の腰に負担はかけないよ。重いものは僕が持つから』
ブリッツはリリーに紙を渡した。
リリーはそれを見て何やら書き加えてきた。
『葡萄の房をひとつずつ運ぶおつもりですか?』
「ひどいな、僕はそんなにひ弱じゃないよ」
ブリッツが口を尖らせると、リリーは微かに笑った。
その時、ブリッツの心を貫いたものがあった。
リリーが笑った。
リリー、もっと笑ってよ。
君の声が聞きたいよ。
そして気づいた。
僕は、もしかしてリリーに恋してる?
ブリッツにとってそれは衝撃だった。
リリーのごつい手をぎゅっと握り締めたい。
長い睫毛の下から自分をじっと見つめて欲しい。
そしてあの豊かな胸にぱっふんと身を埋めてみたい。
そんなことを想像したら、もういてもたってもいられない。
まさかこんな気持ちになるなんて。
プロポーズしたら、リリーは受けてくれるかな。
「リリー、あのね、葡萄のことたくさん教えてくれてありがとう」
ブリッツはいつものようにお弁当を広げたリリーに言った。
リリーは不思議そうにブリッツを見つめている。
「あのさ、僕ね、君と……」
言いかけた時、リリーはふいと顔を反らし、お弁当に寄って来た蜂を手で追い払った。
ブリッツは紙と鉛筆を取り出す。
―― 結婚してください。
……書けなかった。
代わりに書いた。
『葡萄のこと教えてくれたお礼がしたい。何か望みがありますか』
それを読んだリリーはいらないというようにかぶりを振ったが、ブリッツは紙をリリーに押しつけた。
困ったような顔をしていたリリーは暫くして紙を差し出した。
『ハンターに会いたい』
「ハンターに会いたい? どうして?」
フォン・シュタイン農園主、ブリッツ・フォン・シュタインはリリーに差し出された紙を見て不思議そうに彼女に目を向けた。
リリーは再び紙に書いた。
『小さい時、私を助け出してくれた。お礼が言いたい』
『誰かの依頼なら、ハンターへの報酬は終わってるよ』
ブリッツは返事を書く。
『私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。母が守った命を大切に生きろと言ってくれた』
リリーの書いた文字をブリッツは見つめた。
几帳面に整った文字だった。
リリーは、一年前に他界したブリッツの父が雇い入れたらしい。
でも、屋敷ではなく農園のほうにいた彼女のことをブリッツは知らなかった。
葡萄の栽培からワイン造りの管理は亡き父と叔父がやっていて、甘やかされて育ったブリッツがようやっと家業について学ぼうと腰をあげたのは半年前だ。
叔父夫婦や親類がブリッツを落ち着かせようと嫁探しに躍起になったため、疎ましくなったのだ。
「や、僕ね、結婚はちゃんと家の仕事の勉強してからって思うんだ。奥さんも自分で探すよ」
そんなことを嘯いていた彼がふとリリーに目を止めたのは、彼女の風貌がブリッツの価値観にある女性像とはかけ離れていたからだった。
大きくがっしりした体つきで、眉が太く鼻梁も太い。
きゅっと髪を後ろでひっつめているので角ばった顎が余計に際立った。
彼女は大きなシーツをまるで小さなテーブルクロスのようにぱんとはたいてひらりと干した。
リリーは数か月前にぎっくり腰になっていて、それがどうもそれが癖になってしまったために叔父の勧めで農園から屋敷の方の仕事をすることになったらしい。
彼女の耳が不自由で、喋ることもできないと知ったのはだいぶんあとになってからだ。
教えてくれたのは叔父だ。
「小さい時に、生家で歪虚の襲撃に遭ったらしい」
リリーの母は彼女を台所の床下に押し込んだ。
「リリー、何があっても声を出してはだめ。耳を塞ぎなさい。あなたは何も聞こえない」
そう言われて閉められた扉の奥で、彼女は身を縮めて自分の手で耳を塞いだ。
どれくらいの時間がたったのか、ようよう扉が開いて救いあげられた時、母の姿はなかった。
「兄貴(ブリッツの父)が言うには、彼女の不自由は心の問題らしいんだが、仕事をする分には問題ないし、きっと回復するから長い目で見てやってくれ、ということだった」
叔父は言った。
実際、働き手としてのリリーは優秀で、勘もいいし常に胸元に紙切れと鉛筆を入れているので、ややこしいことは筆談すれば事足りた。
気遣いは細やかで特に洗濯が大好きらしかった。
ブリッツは何となくリリーに興味を持った。
父はどうして彼女をわざわざ雇い入れたのだろう。
働き手は十分に足りていたはずだった。
「父とはどうやって知り合ったの?」
干したばかりのシーツの影から顔を覗かせてリリーに話しかけてみた。
リリーは不思議そうにブリッツの顔を見つめる。
「僕の 父とね 知り合い?」
ゆっくり言ってみる。
じっとブリッツの口元を見ていたリリーは、胸元から紙きれと鉛筆を取り出すと何やら書いてブリッツに示した。
―― 飲み物をお持ちしましょうか?
ブリッツは暫くそれを見つめたあと、リリーの手から鉛筆をとってその下に書いた。
『僕と一緒に農園の見回りに。お弁当の用意をして』
リリーはそれを読んで少しびっくりしたような目をしたが、すぐに頷いて屋敷に入って行った。
ブリッツはカッコよくリリーを馬上で自分の前に乗せたかったが、彼女の壁のような背で前が全く見えないので、やむなく後ろに乗せた。
そうすると、ブリッツは彼女の胸の下あたりでちんまりと収まり、手綱を握っているのはリリーのようにも見えた。
でも、リリーの大きな胸が自分の肩あたりでゆさゆさ揺れているのを感じるのは何となく嬉しかったりした。
農園を一回りして、ふたりは見晴らしの良い場所でお弁当を広げた。
リリーは敷物をきっちりと皺のないように敷き、ブリッツが食べやすいように食べ物を広げ、自分は隅に腰を下ろした。
ブリッツがもっとそばに来るようにと勧めても頑として近づかなかった。
お弁当を食べている間、ブリッツはリリーがそっと花を摘んでいるのを見た。
その花が夕食のテーブルの上にそっと飾られていた。
リリーを連れて農園の見回りに行くことが多くなった。
彼女を馬に乗せるとふんわりと石鹸の匂いがした。
近くで見ると、意外に睫毛が長いことがわかった。
彼女との会話は主に筆談だった。
リリーは農園にいたから、ブリッツよりも葡萄のことに詳しかった。
彼女が教えてくれることをブリッツは夢中で覚えた。
『次の収穫で父がやっていたように僕も手伝いを。一緒にやってくれる? 君の腰に負担はかけないよ。重いものは僕が持つから』
ブリッツはリリーに紙を渡した。
リリーはそれを見て何やら書き加えてきた。
『葡萄の房をひとつずつ運ぶおつもりですか?』
「ひどいな、僕はそんなにひ弱じゃないよ」
ブリッツが口を尖らせると、リリーは微かに笑った。
その時、ブリッツの心を貫いたものがあった。
リリーが笑った。
リリー、もっと笑ってよ。
君の声が聞きたいよ。
そして気づいた。
僕は、もしかしてリリーに恋してる?
ブリッツにとってそれは衝撃だった。
リリーのごつい手をぎゅっと握り締めたい。
長い睫毛の下から自分をじっと見つめて欲しい。
そしてあの豊かな胸にぱっふんと身を埋めてみたい。
そんなことを想像したら、もういてもたってもいられない。
まさかこんな気持ちになるなんて。
プロポーズしたら、リリーは受けてくれるかな。
「リリー、あのね、葡萄のことたくさん教えてくれてありがとう」
ブリッツはいつものようにお弁当を広げたリリーに言った。
リリーは不思議そうにブリッツを見つめている。
「あのさ、僕ね、君と……」
言いかけた時、リリーはふいと顔を反らし、お弁当に寄って来た蜂を手で追い払った。
ブリッツは紙と鉛筆を取り出す。
―― 結婚してください。
……書けなかった。
代わりに書いた。
『葡萄のこと教えてくれたお礼がしたい。何か望みがありますか』
それを読んだリリーはいらないというようにかぶりを振ったが、ブリッツは紙をリリーに押しつけた。
困ったような顔をしていたリリーは暫くして紙を差し出した。
『ハンターに会いたい』
解説
●「ハンターに会いたい」というリリーの願いを叶えます。
依頼主はブリッツです。
●リリーは現在24歳です。
幼い頃、歪虚に襲われ、母を亡くしています。
助けてくれたのがハンターのようです。
20年近く前のことで、それが誰なのか、何の依頼で来たのかもリリーには分かりません。
ただ、ハンターは恐怖の中で助けられた彼女のその後の支えになったようです。
誰かは分からなくても、せめて感謝を伝えたいのでしょう。
●リリーは女性としては恵まれた容姿ではありませんが、一生懸命生きてきた真面目で心優しい女性です。
歪虚襲撃時のショックと推測される不自由があります。
ブリッツはもし可能なら彼女のトラウマを取り除く方法を一緒に考えてくれればと思っています。
そして、彼女にプロポーズしたいようです。
●リリーに会い、筆談ででも彼女と会話をして、彼女の思っている「お礼」を受けてくださればそれで普通判定です。
ブリッツがプロポーズできたり(結果はともかく)、リリーの不自由が解消されるなど、その他皆さんの動きで成功、もしくはそれ以上に結びつきます。
●補足
ブリッツは、既出のシナリオ『シュネとギフトとリンゴパイ』に登場した、あのブリッツです。
彼は両親が既に故人ですが、甘やかされて育ったお坊ちゃんで、態度がいまひとつはっきりしない優柔不断な点があります。
リリーが好きだと思う気持ちに嘘偽りはないでしょうが、いざ求婚、となると、背中を蹴り飛ばしでもしなければ及び腰で動けないかもしれません。
依頼主はブリッツです。
●リリーは現在24歳です。
幼い頃、歪虚に襲われ、母を亡くしています。
助けてくれたのがハンターのようです。
20年近く前のことで、それが誰なのか、何の依頼で来たのかもリリーには分かりません。
ただ、ハンターは恐怖の中で助けられた彼女のその後の支えになったようです。
誰かは分からなくても、せめて感謝を伝えたいのでしょう。
●リリーは女性としては恵まれた容姿ではありませんが、一生懸命生きてきた真面目で心優しい女性です。
歪虚襲撃時のショックと推測される不自由があります。
ブリッツはもし可能なら彼女のトラウマを取り除く方法を一緒に考えてくれればと思っています。
そして、彼女にプロポーズしたいようです。
●リリーに会い、筆談ででも彼女と会話をして、彼女の思っている「お礼」を受けてくださればそれで普通判定です。
ブリッツがプロポーズできたり(結果はともかく)、リリーの不自由が解消されるなど、その他皆さんの動きで成功、もしくはそれ以上に結びつきます。
●補足
ブリッツは、既出のシナリオ『シュネとギフトとリンゴパイ』に登場した、あのブリッツです。
彼は両親が既に故人ですが、甘やかされて育ったお坊ちゃんで、態度がいまひとつはっきりしない優柔不断な点があります。
リリーが好きだと思う気持ちに嘘偽りはないでしょうが、いざ求婚、となると、背中を蹴り飛ばしでもしなければ及び腰で動けないかもしれません。
マスターより
お世話になります。西尾厚哉です。
身辺が落ち着かない状態でしたので、暫くお休みの状態で申し訳ありませんでした。
一段落つきましたので復帰です。
戦闘も発生しないのでどなたでもご参加いただけます。
見た目おやじっぽいけど、心優しいリリーと一緒に過ごしてあげてくださいね。
それではよろしくお願いいたします。
身辺が落ち着かない状態でしたので、暫くお休みの状態で申し訳ありませんでした。
一段落つきましたので復帰です。
戦闘も発生しないのでどなたでもご参加いただけます。
見た目おやじっぽいけど、心優しいリリーと一緒に過ごしてあげてくださいね。
それではよろしくお願いいたします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/04/22 17:20